キッズウェル・バイオ株式会社

ブランドなど:旧ジーンテクノサイエンス
医薬品バイオ創薬グロース

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E27032 Japan GAAP

売上高

27.8億 円

前期

15.7億 円

前期比

176.9%

時価総額

54.9億 円

株価

141 (04/19)

発行済株式数

38,939,913

EPS(実績)

-16.88 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

737.3万 円

前期

749.4万 円

前期比

98.4%

平均年齢(勤続年数)

48.6歳(3.9年)

従業員数

41人

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

(1) 事業環境

 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で現在は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品が世界の医療業界を牽引しております。

 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)市場は今後競争が激化しながらも伸長していくことが見込まれております。

 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。特に、再生医療は、これまで根治が難しかった疾患に対して新たな医療を提供できる可能性を秘めるものとして期待され、国内外において、創薬活動の主流となっております。

 

(2) 当社のビジネスモデル

 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品及び再生医療等製品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開していきます。

 

(3) 当社のビジネスモデルの特長

 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。

① ハイブリッド事業体制

 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。

 一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。

 そこで、当社は、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。

 

② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント

 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。

 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。

 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。

 

(4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針

① バイオ後続品事業

イ 開発の流れ(図表1、図表2)

 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。

 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。

 

図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業)

 

※画像省略しています。

 

(注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。

 

図表2 事業系統図(バイオ後続品事業)

 

※画像省略しています。

 

ロ 収益モデル(図表1)

 バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。

ハ 開発品目の選定方針

 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。

 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。

 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。

 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。

 

② バイオ新薬事業

イ 開発の流れ(図表3、図表4)

 バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。

 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。

 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。

 

図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業)

 

※画像省略しています。

 

(注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。

 

図表4 事業系統図(バイオ新薬事業)

 

※画像省略しています。

 

ロ 収益モデル(図表3)

 バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。

ハ 開発品目の選定方針

 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。

 

③ 細胞治療事業(再生医療)

イ 開発の流れ(図表5、図表6)

 細胞治療事業(再生医療)の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。

 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。

 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。

 

図表5 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業(再生医療))

 

※画像省略しています。

 

図表6 事業系統図(細胞治療事業(再生医療))

 

※画像省略しています。

 

ロ 収益モデル(図表5)

 細胞治療事業(再生医療)における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。

ハ 開発品目の選定方針

 細胞治療事業(再生医療)の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。

 

(5) 主力上市品・開発品

 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。

 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて細胞治療事業(再生医療)の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。

 

① バイオ後続品事業

・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん)

 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。

 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。

 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱が販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。

 

・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患)

 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所との共同開発の下、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市されました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じて利益の分配を受けております。

 

・ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん)

 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該医薬品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。

 

・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患)

 世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い、黄斑変性症等の眼疾患の患者が増加しております。これらの治療薬としてバイオ医薬品が注目されておりますが、当該領域のバイオ医薬品は高額であり、様々な患者様にご使用頂くためにもバイオ後続品の開発の社会的必要性を感じております。当社が千寿製薬㈱と共同開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。一方で、今後の事業拡大を目指して国内における本開発品の適応症追加、より市場規模の大きい海外展開を検討・推進しております。

・アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患)

 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結しました。今後は、当該医薬品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該医薬品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。

 

② バイオ新薬事業

・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん)

 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。

・新規抗体

 2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。

 

③ 細胞治療事業(再生医療)

・心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患)

 当社の子会社である㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、心臓内幹細胞(以下、「CSC」といいます。)と呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができるCSCを培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。なお、本開発品は、同じ心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の子会社である㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。今後、当社は開発活動の支援という形で開発に関与いたします。

・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂)

 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。歯髄幹細胞(以下、「SHED」といいます。)は、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスをSHEDと組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。

・SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症)

 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有するSHEDと持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。

・SHEDを活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究

 当社は、SHEDが神経堤由来の細胞であることに着目し、この特性に適性のある疾患を選定し、様々な大学と当該疾患に対する新たな治療法を創出するべく、共同研究契約を締結し、基礎研究を進めております。具体的には、昭和大学と骨関連疾患、岐阜薬科大学と眼関連疾患、名古屋大学医学部附属病院・東京医科歯科大学と脳性麻痺、大分大学と末梢神経麻痺、名古屋大学と脊髄損傷、北海道大学・総合せき損センターと難治性骨折に関する共同研究を進めております。

23/06/30

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当社は、「バイオで価値を創造する -こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。上述の目標を達成するために、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業、細胞治療事業(再生医療)の3つを主要事業とした研究開発活動を推進しております。バイオ後続品事業においては、安定的な収益基盤を確立させると共に、我が国の医療費削減を目的としたジェネリック医薬品の普及政策を背景に、患者様へ新たな治療の選択肢と、より安価な治療を届けられるよう事業展開を図っております。バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)においては、未だ世にない画期的な治療法の開発を目的に、新たな医薬品を創出するというチャレンジを鋭意推進し、その成長性を追求しております。

 当事業年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。

 

イ バイオ後続品事業

 各上市済製品においてはパートナー会社との協働の下、フィルグラスチムバイオ後続品の原薬販売、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上していることに加え、2021年12月9日に上市されたラニビズマブバイオ後続品にかかる販売収益においては、想定を超える受注と2023年1月に糖尿病黄斑浮腫に対する追加適応症の承認取得により、さらなる売上増が見込まれることから、今後の経営基盤を支える収益源としての役割が期待されます。その他、上述の3製品に続いての上市を目指す第4製品目のバイオ後継品の研究開発並びに新たなバイオ後継品の開発も着実に推進しております。

ロ バイオ新薬事業

 次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結しました。また、2022年5月には㈱カイオム・バイオサイエンスとの抗体医薬品開発に関する共同研究契約を締結し、当社が保有するがん領域の抗体医薬品の開発候補品について、両社の技術・知見を組み合わせて共同研究を行うことを目的に開発活動をスタートさせております。その他、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する抗RAMP2抗体に関して特許査定を受ける等、知財戦略と並行しながら、開発中のパイプラインについても着実に開発活動を推進しております。

ハ 細胞治療事業(再生医療)

 当社は、今後の企業価値向上に大きく寄与する重要な研究ソースとして、乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用したプロジェクトの推進、アカデミア及び企業との共同研究又は提携を推進しております。

 当社は、これまでのSHEDの疾患に対する適性の見極めの結果、神経及び骨疾患などの分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれの分野で研究開発活動を推進しております。

 複数のアカデミア及び企業と研究開発を進めていく中で、SHEDを基盤とした治療法開発の可能性に関して着実に成果が得られつつあり、当社の成長ドライバーであるSHEDを活用した世界初の再生医療等製品の創出を目指してまいります。また、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との間で進めている脳性まひに対する取り組みに関して、世界で初めて慢性期脳性まひモデルの運動障害の改善をSHEDの投与で確認したことを基に、2022年10月には名古屋大学と脳性まひ治療に関する特許の共同出願や、同年11月に開催された「第66回日本新生児成育医学会・学術集会」において、名古屋大学より当該研究成果を発表する等、各アカデミアとの連携を通して進めています。

 さらに、SHEDの臨床入りのスタートとして、名古屋大学が主導する脳性まひを対象とした臨床研究(SHEDのファーストインヒューマン試験)において、現在投与開始に向けた準備が進められています。2019年にSHEDを導入して以来進めてきた探索・基礎研究の段階から、ヒトへの投与を行う臨床段階へと開発ステージが上がったことにより、SHEDを医薬品として早期に上市させる蓋然性も高まり、今後も精力的に研究開発を推進してまいります。

 そのほか、将来の成長戦略として、より高い治療目標を達成するためにSHEDへの遺伝子導入や培養法改変によってSHEDの機能を強化した第二世代SHED(次世代型細胞治療「デザイナー細胞」)の研究開発を推進しております。

 具体的な進捗として、2021年9月8日にナノキャリア㈱と共同研究契約を締結、さらには同12月6日には㈱バイオミメティクスシンパシーズと疾患指向性のあるSHEDを取得可能とする新規培養法の開発に係る委託開発契約をそれぞれ締結し、開発活動を本格化させております。加えて、アカデミアとの研究開発においては、国立大学法人浜松医科大学と協働で進めてきました脳腫瘍に対する新規治療法に関する基礎研究において、高い研究成果が得られており、浜松医科大学と共同で論文発表を行う等、第二世代SHEDの研究開発も確実に進展しております。引き続き当社は、第二世代SHEDの臨床応用に向けた研究開発も、アカデミア及び企業と推進してまいります。

 さらに、SHEDを再生医療等製品として製品化するための基盤として開発を進めてきたSHEDマスターセルバンク(MCB)が2022年8月に完成し、これにより、SHEDの製造の原料となる乳歯を提供頂く体制構築のための「ChiVo Net 未来医療子どもボランティアネットワーク」、東京大学医学部附属病院、昭和大学歯科病院、それぞれとの連携から、㈱ニコン・セル・イノベーションのGMP/GCTP対応製造施設において細胞培養、MCBのGMP製造を行うまでの一連の体制(S-QuatreⓇ)を構築することができました。加えて、2022年9月には、昭和電工マテリアルズ㈱と再生医療等製品の製法開発及び治験薬製造に関する基本取引契約を締結し、上述の体制下において製造された信頼性の高い高品質なSHEDマスターセルバンクを活用した治験薬製造に向けて、開発活動を加速させております。

 以上の試みを通して、当社における再生医療等製品の研究・開発活動をさらに一層加速すると共に、S-QuatreⓇを基盤としたSHED創薬プラットフォームを用いて、アカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化をより確実に進めてまいります。

 なお、これまでSHEDと共に取り組んでまいりました心臓内幹細胞(CSC)に関するパイプライン(JRM-001)については、将来の上市を目指したパートナリング活動を継続する中で、心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う㈱日本再生医療の全株式譲渡を2022年4月4日付で決議・実行し当社の連結子会社ではなくなりましたが、今後も当社による開発活動の支援を継続いたします。

 これらの結果、当事業年度の売上高は2,776,241千円(前期比 76.9%増)、営業損失は550,929千円(前期は651,139千円の営業損失)、経常損失は624,769千円(前期は968,535千円の経常損失)、当期純損失は657,434千円(前期は550,863千円の当期純損失)となりました。

 なお、2022年4月4日付で、連結子会社であった㈱日本再生医療の株式を譲渡したことにより、連結子会社が存在しなくなったため、当事業年度より連結財務諸表を作成しておりません。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産の残高は、前事業年度度末比12.2%増の3,894,765千円となりました。これは主に、仕掛品が366,387千円減少したものの、売掛金及び契約資産が626,912千円、前渡金が325,992千円増加したことによるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末比50.6%増の2,661,259千円となりました。これは主に、受注損失引当金が475,243千円減少したものの、長期借入金(1年内返済予定を含む)が850,000千円、転換社債型新株予約権付社債が400,000千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末比27.6%減の1,233,505千円となりました。これは、資本金及び資本剰余金がそれぞれ88,285千円、新株予約権が11,461千円増加したものの、当期純損失を657,434千円計上したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,067,162千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により減少した資金は1,421,259千円となりました。これは主に、棚卸資産の減少353,498千円があったものの、売上債権の増加626,912千円、受注損失引当金の減少475,243千円、税引前当期純損失を656,224千円計上したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は28,825千円となりました。これは主に、関係会社貸付金の回収による収入26,254千円あったものの、投資有価証券の取得による支出50,000千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により増加した資金は1,356,312千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出150,000千円あったものの、長期借入れによる収入970,000千円、転換社債型新株予約権の発行による収入499,720千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

1,222,980

269.2

 

原薬等販売収益

1,222,980

269.2

合計

1,222,980

269.2

(注)金額は、製造原価によっております。

 

b.受注実績

 フィルグラスチムバイオ後続品及びラニビズマブバイオ後続品につきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。

 なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

2,572,702

166.7

 

原薬等販売収益

2,331,444

161.1

 

知的財産権等収益

241,258

252.5

バイオ新薬事業

-

-

細胞治療事業(再生医療)

203,539

778.9

 

知的財産権等収益

203,539

778.9

合計

2,776,241

176.9

(注)当事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

千寿製薬㈱

1,369,494

49.3

富士製薬工業㈱

665,880

24.0

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

当事業年度における売上高は、新たに販売開始となったラニビズマブバイオ後続品を含めて主にバイオ後続品の原薬等の販売が順調に推移したことに加え、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の販売に伴うロイヤリティ収益、バイオ後続品の第4製品目の製造プロセス開発に係る原薬販売等により、2,776,241千円となりました。一方、主にバイオ後続品事業におけるラニビズマブバイオ後続品の商用製造に向けた最終段階の開発及び将来の原価低減に向けた開発費用並びに細胞治療事業(再生医療)におけるSHEDマスターセルバンク開発等に取り組んだ結果、研究開発費を1,216,349千円計上したため、営業損失は550,929千円、当期純損失は657,434千円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社が業を営む医薬品業界の特質として、研究開発投資がリターンを生み出すまでの期間が長く、これに伴うリスクも高いと考えられております。当社は、そのリスクを分散させるために、複数の開発品を保有し、パイプラインの充実を図ることが最重要課題であると考えておりますが、そのためには多額の研究開発資金が必要となります。一方で、特にバイオ後続品については、既存バイオ医薬品の特許期間の満了時期から逆算して研究開発を開始する必要があるため、機を逸することのない意思決定と経営資源の投入を行う必要があります。今後も直接金融による資金調達が基本になりますが、開発品の優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と安定的な収益基盤の確立につながるものと考えております。

なお、今後1年の資金繰りの状況は研究開発費として1,600,000千円を計上する予定であります。これら研究開発費は、SHEDの成長戦略実現に向けた開発、ラニビズマブバイオ後続品の原価低減のための施策による一時的支出が主な内訳であります。当社は、当事業年度末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて2,155,929千円の残高を有しており、今後中長期的には上述のとおり原価低減施策の結果、高い利益率を持ったバイオ後続品の販売による売掛債権の回収及びロイヤリティ収益並びに新株予約権行使等で必要十分な資金調達がされることが見込まれるため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していないものと評価しております。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化も想定し、資金調達も含め、手許流動性の維持・向上に努めてまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りには不確実性が伴うため、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。

 当社の財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等  注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。