E36956
前期
6.41億 円
前期比
149.0%
株価
349 (04/18)
発行済株式数
25,577,500
EPS(実績)
3.53 円
PER(実績)
98.98 倍
前期
768.2万 円
前期比
113.4%
平均年齢(勤続年数)
46.1歳(1.6年)
従業員数
10人
当社は、代表の坪田一男の基本理念である“ごきげん”をキーワードに近視(*1)、ドライアイ(*2)、老眼(*3)の新たな治療法の開発を目指す慶應義塾大学発ベンチャーであり、2012年5月に慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究成果を社会に届けるために、また、イノベーションを起こすために、当社の前身である株式会社ドライアイKT(現 当社)が設立されました。
近視、ドライアイ、老眼は、超高齢社会における健康長寿とQuality of Visionの観点から眼科医療領域において大きな課題と認識されておりますが、いまだ原因療法が確立していない、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズ領域(*4)であります。世界では、近視は約26億人(出典1)、ドライアイは約7.5億人(出典2)、老眼は約18億人(出典3)の患者数が推定されています。当社では、これらの3領域に加えて、眼と同じ中枢神経系である脳関連の疾患にも研究領域を拡大し、患者様に対して革新的なイノベーションによる研究開発成果を届けるため、提携大学と連携し先進的な研究を行っております。その研究成果を評価するパートナー企業と共同開発を行い、新しい価値を提供する製品を上市しております。なお、当社の事業セグメントは、研究開発事業のみの単一セグメントであります。
出典1 Holden BA, et al. Ophthalmology. 2016;123(5):1036-42.
出典2 各国の対象年齢人口に罹患率を乗じることにより当社試算。各国の対象年齢人口は、世界銀行グループ統計データを基に当社推計。罹患率は、Tan LL, et al. Clinical and Experimental Optometry. 2015;98(1):45-53.
出典3 Fricke TR, et al. Ophthalmology. 2018;125(10):1492-9.
主な提携研究機関 :学校法人慶應義塾、学校法人順天堂
主なパートナー企業:株式会社ジンズホールディングス、ロート製薬株式会社、 住友ファーマ株式会社、わかもと製薬株式会社、マルホ株式会社、Twenty/Twenty Therapeutics、Laboratoires Théa
当社のビジネスモデルは、パートナー企業との共同研究開発契約および実施許諾契約による契約一時金、マイルストーン・ペイメントならびに事業化後(上市後)のロイヤリティ契約によるロイヤリティで収益化し、その収益を新しい研究に投資することで、新たな価値創造につなげることです。
大学は研究のレベルが高く、特許を取得し、研究内容に関する論文の執筆までは行います。しかしながら、それを商業化するのは困難であり、社会全体にその研究開発成果を届けることが難しくなっています。大学単独ではイノベーションが起こりにくいことを踏まえ、当社では慶應義塾大学発ベンチャーとして、大学の研究成果・知的財産“サイエンス”を商業化“コマーシャリゼーション”してイノベーションを生み出すべく、日々研究開発・事業展開に取り組んでおります。
当社の事業領域は基礎的な研究開発から一部治験までとなっております。これらの研究開発成果に基づく製品は、患者様に利用いただくことになると思いますが、当社は患者様との直接的な接点を持っていないため、最終的なユーザーである患者様に接する大手企業が当社の直接的な顧客となるB to Bのビジネスモデルとなっております。
また、当社の研究開発では、多くの研究が外部委託研究員によって進められています。これが当社の特徴の一つであり、これらの各外部委託研究員は様々な領域で、高度な専門性を持つ研究者であり、当社の幅広いパイプラインに対し、確固たるエビデンスに基づいた研究成果を上げ、新たなパイプラインを創出する役割を果たしています。
また、医薬品、医療機器の開発・販売には時間を要するため、コモディティの開発・販売も並行して進めるデュアル戦略を採っております。さらにコンサルティング業務などで安定的な収入も得ております。現在までに数十社の企業と早期に契約を締結しています。
以下の図は、当社の標準的な収益構造を示しております。
当社の研究成果、知財をパートナー企業に提供し、その対価として、共同研究開発契約又は実施許諾契約の契約一時金、ならびに開発のステージに伴うマイルストーン・ペイメントを順次受け取ります。そして事業化後(上市後)はロイヤリティ収入を得るビジネスモデルですが、現時点で当社収益の中心は、契約一時金とマイルストーン・ペイメントとなっております。
(当社における収益構造)
(事業系統図)
また、成長戦略の基本としてT型戦略(「深化」と「探索」)の概念を取り入れ、サイエンス(研究)においては、研究予算全体の70%を深化(研究の深堀、知財の導出等)に、30%を探索(基礎研究による発見、新規知財等)に配分し、バランスの取れた研究を目指しております。
近視は、失明の主要因であり、有病率の増加は大きな社会問題となっております。近視が激増している現在、世界保健機関(WHO)が発表した「THE IMPACT OF MYOPIA AND HIGH MYOPIA」によると、世界には2020年時点において約26億人の患者が存在しており、2050年には約48億人にもなると試算されています。また、近視は単にメガネをかければよいものではなく、失明につながる重大な疾患であり、予防方法の確立が急がれています。その市場規模は数兆円ともいわれ、巨大なアンメット・メディカル・ニーズが存在する研究領域であります。
当時、当社代表取締役社長坪田一男が教授を務めていた慶應義塾大学医学部眼科教室では2017年に、バイオレットライト(波長360~400nmの可視光)(*5)の光が近視の予防に効果がある事を発見いたしました。
バイオレットライトは、下の図のように、OPN5(*6)という非視覚系光受容体(*7)を刺激し、脈絡膜(*8)を介した眼の血流を維持、増大することが判明いたしました。これら一連の発見の知財化を進めてきております。「現代社会で欠乏しているバイオレットライトを効率的に子供たちに供給することにより近視の進行を抑える」ということが当社の基盤技術となっております。
ヒトは9種類の光受容体を持っており、このうち4つが視覚系光受容体(*9)、5つが非視覚系光受容体であります。非視覚系光受容体のほとんどがブルーに最大吸収波長帯があり活性化されますが、OPN5はバイオレットに最大吸収波長帯があり、このバイオレットライトによって活性化されます。
ここ最近、非視覚系光受容体の重要な機能がわかってきており、大きな研究領域となっております。OPN5においては体温調整、眼の血管の発達、サーカディアンリズム(*10)、毛根細胞の刺激など、さまざまな効果が次々に発見されており、現在特許申請中であります。
太陽光の中にはバイオレットライトが豊富に含まれておりますが、屋内にはほとんどこの波長帯の光が存在しないことを当社での測定により確認いたしました(Torii H, et al. Violet Light Exposure Can Be a Preventive Strategy Against Myopia Progression. EBioMedicine. 2017;15:210-9.)。光源である白色LEDはほとんどが青色LEDをベースにしたものであり、バイオレットライトを含んでおりません。蛍光灯も同様にバイオレットライトを発しません。さらに最近の窓ガラスは有害な紫外線(*11)を除去するために紫外線カットと称して、可視光であるバイオレットライトの波長までブロックしてしまっております。さらに、紫外線カットされていない旧来のガラスの場合でも、バイオレットライトは窓周辺にしか存在していません。そこで、パートナー企業とともに屋内にいてもバイオレットライトを取り込むための共同研究開発を展開しております。
近視進行抑制へのアプローチは以下の通りです。
*1 TTT=Twenty/Twenty Therapeutics
*2 基本合意契約書は最終的な契約締結を確約するものではなく、今後両社で協議をした上で詳細条件につき合意に至った場合に、その後必要な手続きを経て生成期契約締結する(2023年以降の予定)
*3 Thea=Laboratoires Théa
TLG-001は、バイオレットライトを1日に3時間310μW/cm2の強度(東京における水平方向で東西南北方位の年間平均バイオレットライト放射照度)で供給することにより、子供の近視の予防を行うメガネフレーム型近視予防デバイスであります。
2019年より、目標症例数40例(20例被験機群、20例対照機群)で6ヵ月間の探索治験を行い、バイオレットライトの安全性が確認されました。本結果を踏まえ、医療機器製造販売承認に向け、2022年6月より最終的な検証治験(*12)を実施しております。
当社は株式会社ジンズホールディングスと日本国内における実施許諾契約を締結しており、近視予防を請求できる医療機器製造販売承認を株式会社ジンズホールディングスが取得し販売開始する計画があります。ビジネスモデルとしては開発契約金に加えて、マイルストーン・ペイメント、ロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。
また海外においては、2022年11月にTwenty/Twenty Therapeuticsと、当社が所有する知的財産権のアメリカ大陸における独占的実施許諾契約を締結しました。
TLM-003は1日1回~2回の点眼によって近視の進行を予防する、新しいタイプの近視進行予防点眼薬です。TLG-001がバイオレットライトにより眼の血流を増大させ近視予防をするのに対して、本点眼薬は強膜の菲薄化を抑制することにより、強膜の伸展を抑え、近視となることを抑制します。すでにマウスの動物実験において、近視進行抑制効果を証明しており(特許第6637217号、特許第6856275号)、ロート製薬株式会社と長期の開発契約を締結し、治験を行い近視予防点眼薬として上市することを計画しております。
また海外においては、2022年12月にLaboratoires Théaと、米欧を中心とした地域において、当社が所有する知的財産権の独占的実施許諾契約を締結しました。
(c) TLM-007 (Tsubota Lab Medicine-007)
TLM-007は血流増大の効果がある緑内障の点眼薬を適用拡大し、近視の進行を予防する点眼薬としての開発です。現在まだ基礎研究段階ではありますが、今後もう一つの近視抑制点眼薬のパイプラインとして、引き続き研究を進めて参ります。
ドライアイは現代社会において急激に激増している病気であり、文字どおり眼が乾くことにより起きますが、外部環境として眼からの蒸発、内部環境として涙液の分泌低下、この2つによって引き起こされます。
現代の視覚情報化社会において眼は酷使され、乾燥による蒸発増大や、現代社会のストレスによる涙液分泌の低下によりドライアイを引き起こします。症状としては眼が乾く、眼が疲れる、眼が重いなどの不定愁訴(*13)が多く、日本だけで2,000万人(ドライアイ研究会ホームページより)の潜在患者がいると考えられております。ドライアイ研究会によると、「ドライアイは、さまざまな要因により涙液層(*14)の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。」と定義されています。
またドライアイの診断基準として、以下の2つの両者を有するものとされています。
①眼不快感、視機能異常などの自覚症状
②涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下
このようにドライアイは涙液層の不安定さを伴う不定愁訴であり、現代社会においては急増しており、特に新型コロナウイルス感染症の影響による在宅勤務の増大により、ドライアイ症状を持つ患者が急増していると考えられております。涙液層の不安定化の原因は主に3つの要因から成り立っており、涙液そのものの減少、ムチン層(*14)の減少、異常及び油層(*14)の異常による蒸発量の亢進とされております。現在この3つのメカニズムについて全世界で治療法の開発が行われており、当社では眼の周りの環境を整えるためのメガネや、涙液の量を増やすためのサプリメントの開発などを行っております。
ドライアイは上図にありますように3層からなる涙液層が不安定になり、慢性疼痛を引き起こす疾患です。3層は油層、涙液層(水層)、ムチン層から構成されておりどの層が障害を受けても涙液層は不安定となります。最近増えているタイプのドライアイはこのうち油層に影響するものが多いとされています。油層を構成する油成分はまぶたの縁にあるマイボーム腺という脂腺から分泌されます。加齢や炎症によってこの脂腺の機能が落ちますが、我々はビタミンD関連物質がこの機能を回復させることを動物実験および臨床研究によって証明しました。現在ビタミンD関連物質を主体とした眼軟膏を開発しており、すでにマルホ株式会社と全世界の導出に関する契約を結んでおります。開発が進むにつれてマイルストーン収入を得ますとともに、上市されればロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。
老眼は加齢によって水晶体が硬くなるために生じる調節力障害であり、40歳以降の多くの人が罹患します。顕著な症状として、近くのものが見にくくなります。従来は多焦点メガネや眼内レンズ等で対応しておりますが、根本的に老眼を予防治療する医薬品はまだ開発されておりません。しかし、2015年時点では世界の老眼人口は約18億人(出典1)の患者がいると考えられ、市場規模はアジア太平洋地域で1,936億円(出典2)、北米地域では1,826億円(出典3)と考えられています。
(出典1) Fricke TR, et al. Ophthalmology. 2018;125(10):1492-9.
(出典2) Research Nester Private Limited. “Asia-Pacific Presbyopia Treatment Market Segmentation By Age Group (Less Than 40, 40-60-Year-Old, Above 60) and By Treatment Type (Corrective Eyeglasses, Contact Lenses, Refractive Surgery, Lens Implants, And Pharmacological Treatment) - Demand Analysis & Opportunity Outlook 2028.” (2020年12月10日).
(出典3) Report Ocean 社 PR Timesプレスリリース. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000725.000067400.html (2021年2月2日).
老眼は、老眼研究会より以下のように医学的老視と臨床的老視の2つの定義がされています。
(老眼の定義)
老眼は、加齢による水晶体の硬化することにあり、これにより調節力が低下し、40~50歳になるとその調節力が十分でないために、30cmほど先方の近見の視力が低下することを言います。現在、患者数は40歳または50歳以上の全人類に相当するといわれ、超高齢化社会の到来とともに老眼問題はさらに拡大するのが予測されます。従来、老眼鏡、多焦点のコンタクトレンズや眼内レンズなどが使用されてきましたが、近年になり、より簡便で治療可能な点眼やサプリメントなどの需要が高まってきている領域であります。
水晶体は前面の水晶体上皮、ほぼ全域をカバーする水晶体皮質及び中心部の水晶体の核によって構成されています。若いときはこの水晶体に弾力があり、ピントを合わせるために弾力をもって動きますが、加齢によりこれが硬くなりピントの度数合わせができなくなります。水晶体のたんぱく質はクリスタリン(*15)と呼ばれるたんぱく質で透明性を保ち、なおかつ弾力性を持ちます。加齢によりクリスタリンのたんぱくの架橋が増進し、柔軟性が失われることで、ピントの度数調整が困難となり老眼になると考えられております。
水晶体の老化は、まさにエイジングそのものであるため、代謝からの新しい切り口により、医薬品等の開発を進めて参ります。
眼が脳の神経組織の一部であることを考えると、バイオレットライトが眼の血流を上げるだけでなく脳の血流も上げることを予期し研究を重ねた結果、実際にこの現象を発見いたしました。バイオレットライトには、近視の予防効果があることに加えて、うつ病や認知症等、脳に対しても効果があることが徐々に解明されており(特願2019-565489)、うつ病や軽度認知障害(MCI)等の疾患については複数の特定臨床研究を行っております。なお、うつ病に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より公的研究費の支援を受けることができました。また、疾患ではないものの、睡眠改善や集中力増大にも効果が期待できます。
TLG-003は、バイオレットライトが角膜の中に存在するリボフラビン(*16)と反応することにより、角膜を硬くし円錐角膜(*17)の進行を予防するデバイスであります。本製品を使用した新たな治療法を「ケラバイオ」と定義しています。
円錐角膜は、思春期に発症する進行性に角膜が菲薄化・突出・不整化する疾患であります。有病率は2,000人に1人とされております。円錐角膜はハードコンタクトレンズで視力矯正を行いますが、重症化した場合は角膜移植に至ることがあります。角膜クロスリンキング(*18)の登場によって、病期の進行を遅延可能となりましたが、角膜クロスリンキングは手術時に角膜上皮を剥離するために疼痛を伴い、まれに角膜感染症を生じることがあります。
ケラバイオは、手術ではないため在宅での治療が可能となり、上記のような合併症を回避することができます。なお、リボフラビン点眼薬との併用による臨床研究はすでに完了し、安全性と有効性を共に確認しております。
以下の表は、当社の開発製品並びにその適応症、市場、開発段階及び本書提出日現在の進捗状況を示しております。
なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴います。当社製品の開発リスクの概要については、「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」の通りであります。
(注記:日=日本、米=米国、欧=欧州、亜=アジア、中=中国、台=台湾、星=シンガポール、韓=韓国、香=香港、英=英国、仏=フランス、独=ドイツ、伊=イタリア、印=インド、伯=ブラジル、以=イスラエル、PCT=特許協力条約に基づく国際出願)
(医薬品・医療機器)
(医薬品・医療機器以外)
本書提出日現在における、当社の特許権は近視領域25件、ドライアイ領域15件、老眼6件及びその他11件の合計57件(うち、登録済28件)であります。なお、当該特許権については、出願人が当社である案件だけではなく、出願人が学校法人慶應義塾であり、発明者が当社代表取締役社長坪田一男である特許権も含めております。また、同じ特許権でも国際出願又は分割出願等、同じ出願に属するものは1件としてカウントしております。そして、他社のみが出願人となっているものは含めておりませんが、一方で他社と当社で共同出願している特許権は含めております。以下は当社の主要な特許権の一覧表であります。
(注記:日=日本、米=米国、欧=欧州、中=中国、台=台湾、星=シンガポール、韓=韓国、香=香港、英=英国、仏=フランス、独=ドイツ、伊=イタリア、比=フィリピン、泰=タイ、越=ベトナム、印=インド、尼=インドネシア、馬=マレーシア、伯=ブラジル、以=イスラエル、PCT=特許協力条約に基づく国際出願)
<用語解説>
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度(2022年4月1日~2023年3月31日)におけるわが国経済は、ロシアのウクライナ侵攻による資源、穀物価格の高騰、グローバルなサプライチェーンの不安定化、米欧の相次ぐ利上げを受けた円安の影響が加わり、物価が大きく上昇しました。また日本銀行も金融緩和策を一部修正し、長期金利の上昇を認める上限を引き上げ、マーケットでは実質的な利上げと受け止められるなど、事前の想定を超える展開となりました。
このような環境の中、当社は慶應義塾大学発ベンチャーとして、“ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする”をミッションに掲げ、「近視、ドライアイ、老眼の治療に革新的なイノベーションを起こす」という目標のもと、新型コロナウイルス感染症の感染防止を第一に、自宅勤務、時差出勤、事務所及び研究室の衛生管理等を実施し事業活動を行ってまいりました。
研究開発につきましては、引き続き新規知財の発見及び新規パイプライン追加の為の基礎研究、知財の導出及びアカデミアやパートナー企業との共同研究を強化してまいりました。またバイオレットライト技術を用いた近視進行抑制のための医療機器開発(TLG-001)の検証的臨床試験(治験)も継続しております。一方事業開発では、上記医療機器開発(TLG-001)の検証的臨床試験(治験)の開始に基づき、国内を対象とした実施許諾契約のマイルストーンを達成したほか、海外では北及び南アメリカ大陸を対象とした新規実施許諾契約を締結しました。また、近視進行抑制作用が期待される点眼薬TLM-003では、開発を進めている共同研究開発契約のマイルストーンを達成し、海外では米欧を対象とした新規実施許諾契約を締結しました。
これらの結果、当事業年度における当社の経営成績は以下のとおりとなりました。
なお、当社は研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。
(単位:千円)
(固定資産)
当事業年度末の固定資産の残高は、104,345千円となり、前事業年度末に比べて1,677千円増加いたしました。これは、建物及び構築物が4,517千円、工具、器具及び備品が2,689千円、繰延税金資産が2,059千円、その他に含まれる敷金及び保証金が5,120千円増加し、特許権が3,382千円及び長期前払費用が9,175千円減少したことが主な要因であります。
(流動負債)
当事業年度末の流動負債の残高は、607,728千円となり、前事業年度末に比べて66,373千円減少いたしました。これは、買掛金が15,199千円、未払金が5,242千円及び未払法人税等が20,451千円増加し、契約負債が102,630千円減少したことが主な要因であります。
(固定負債)
当事業年度末の固定負債の残高は、114,860千円となり、前事業年度末に比べて84,480千円減少いたしました。これは、長期借入金が84,480千円減少したことが要因であります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、2,161,016千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
投資活動の結果使用した資金は54,027千円(前年同期は72,228千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出43,758千円、無形固定資産の取得による支出4,999千円、敷金及び保証金の差入による支出5,805千円の支出があったことによるものです。
当社は直接的な生産活動は行っておりませんが、製造原価の品目としては経費のみであることから、生産実績にはなじまないため、記載を省略しております。
当社の事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。
販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。なお、前事業年度のLaboratoires Théaに対する販売実績はありません。㈱ジンズホールディングスにする販売実績は当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。また、当事業年度のマルホ㈱に対する販売実績はありません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
当事業年度末の経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりでありますが、主要な表示科目に沿った認識及び分析は次のとおりであります。
・売上高
当事業年度の売上高は954,693千円(前期比313,772千円増)となりました。これは主に、国内を対象としたTLG-001(*1)の実施許諾契約による、マイルストーン・ペイメント200,000千円、日本及びアジアを対象としたTLM-003(*2)の実施許諾契約及び共同研究契約による、マイルストーン・ペイメント380,000千円、米欧を対象としたTLM-003の実施許諾契約締結による契約一時金286,860千円、合計866,860千円の計上によるものであります。
*1 バイオレットライト技術を用いた、近視進行抑制のための医療機器開発
*2 近視進行抑制作用を発揮する点眼薬開発
・売上原価、売上総利益
当事業年度の売上原価は235,557千円(前期比151,654千円増)となりました。これは主に、TLG-001の治験等における研究費の計上によるものであります。その結果、売上総利益は719,136千円(前期比162,117千円増)となりました。
・販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度の販売費及び一般管理費は552,105千円(前期比131,256千円増)となりました。これは主に、事業拡大による人件費191,616千円(前期比24,105千円増)、研究開発強化による研究開発費126,266千円(前期比9,294千円増)、特許費用25,694千円(前期比9,663千円増)及び減価償却費32,304千円(前期比4,045千円増)等の計上によるものであります。その結果、営業利益は167,031千円(前期比30,861千円増)となりました。
・営業外収益、営業外費用、経常利益
当事業年度の営業外収益は4,311千円(前期比62,889千円減)となりました。これは主に、助成金収入2,641千円(前期比63,459千円減)の計上によるものであります。営業外費用は27,121千円(前期比26,090千円増)となりました。これは主に、上場関連費用13,274千円及び株式交付費6,459千円の計上によるものであります。その結果、経常利益は144,221千円(前期比58,119千円減)となりました。
・特別損失、法人税等合計、当期純利益
当事業年度の特別利益、特別損失の計上はありません。当事業年度の法人税等合計額は54,039千円(前期比5,018千円増)となりました。これは主に、法人税、住民税及び事業税を56,098千円(前期比8,690千円増)計上したことによるものであります。これらの結果を受け、当事業年度の当期純利益は90,181千円(前期比63,137千円減)となりました。
財政状態につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容
当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、各パイプラインの事業化(上市)を目指して実施許諾または共同研究開発を行うベンチャー企業であり、事業化後(上市後)のロイヤリティ収入を安定的に計上するステージにはまだありません。従いまして、当社は、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標を目的とせず、各パイプラインの進捗状況等を適時かつ正確に管理することを目標においた事業活動を推進してまいりました。当事業年度の達成状況につきまして、売上高については、国内を対象としたTLG-001の実施許諾契約によるマイルストーンを達成、日本及びアジアを対象としたTLM-003の実施許諾契約及び共同研究契約によるマイルストーンを達成、米欧を対象としたTLM-003の実施許諾契約を締結したことにより954,693千円となりました。また、研究開発費については、126,266千円となりました。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」並びに「第2 事業の状況 6研究開発活動」に記載のとおりであります。
今後もパートナー企業とともに共同研究開発を行うため、基礎研究の強化を図るとともに、国内に展開している各パイプラインを海外へと横展開を推進し、各パイプラインの進捗状況等を目標に努めてまいります。
なお、パイプラインの開発の進捗については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 当社のパイプライン」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
当社の資金の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資、補助金等を通して、安定的に開発に必要な資金調達の多様化を図ってまいります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、継続して企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資資金となります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、資産、負債、収益及び費用に影響を与える見積り及び判断を必要としております。
当社は財務諸表の基礎となる見積り及び判断を過去の実績を参考に合理的と考えられる判断を行った上で計上しております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。
仕掛品の貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しております。
当該収益性の見積りには、マイルストーンの達成などの将来の未確定事象に係る見積要素が含まれており、パートナー企業における研究開発の進捗状況に大きく依存するものであります。
そのため、翌事業年度において、研究開発結果によりマイルストーンの達成が困難となり共同研究開発が終了した場合には、損失が発生する可能性があります。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社は、“ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする“をミッションに掲げ、「近視、ドライアイ、老眼の治療に革新的なイノベーションを起こす」ということを経営方針としております。この経営方針実現のために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の課題に対して取り組んでまいります。