E00394 IFRS
(1)業績
当第1四半期連結累計期間(2024年1月1日~3月31日)における世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大を背景に景気は堅調に推移し、欧州においては、インフレ圧力の緩和とともに、景気の持ち直しが見られました。日本においても、物価高騰の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の増加により、景気は緩やかな回復の兆しが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、『中長期経営方針』に基づき、各地域におけるプレミアム戦略の推進などによる事業ポートフォリオの強靭化に取り組みました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとしたコア戦略の一層の推進に加えて、真のグローバル化に向けた人的資本の高度化やグループガバナンスの強化により、長期戦略を支える経営基盤を強化しました。
その結果、アサヒグループの売上収益は6,166億1千4百万円(前年同期比10.8%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は362億9千3百万円(前年同期比12.2%増)、営業利益は325億5千8百万円(前年同期比1.7%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は238億3千万円(前年同期比19.3%増)、調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益※2は238億3千万円(前年同期比19.3%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比5.1%の増収、事業利益は前年同期比8.4%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益とは、親会社の所有者に帰属する四半期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 当第1四半期連結累計期間の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案の強化などにより、成長基盤の拡大に取り組みました。また、各事業の枠を超えたシナジー創出に加えて、人的資本や組織機能の高度化、サステナビリティへの取り組み推進などにより、日本全体の経営基盤を強化しました。
酒類事業では、ビール類において、『アサヒスーパードライ』や『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』の広告・販売促進活動を強化し、「スーパードライ」ブランドの価値向上に取り組みました。また、『アサヒ生ビール』の世界観を体験できる「出張マルエフ横丁」の展開や、『アサヒ食彩』を全業態で全国発売するなど、ビールカテゴリーの更なる強化を図りました。さらに、『アサヒスタイルフリー<生>』をリニューアルし、新たな飲用機会の創出に注力しました。アルコールテイスト飲料においては、「アサヒスタイルバランス」をリニューアルし、健康機能を訴求したラインアップに刷新するなど、お酒を飲む人と飲まない人が共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、「三ツ矢」ブランドの生誕140周年を記念した『三ツ矢PREMIUM SWEET』に加えて、リターナブル瓶で展開していた『ウィルキンソン ドライジンジャエール』を、飲用機会拡大を目指しPETボトルで発売するなど、市場の活性化を図りました。また、「食事の糖の吸収を抑える」「食後の血中中性脂肪値が高めになる方の食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」という機能を有する食物繊維「イソマルトデキストリン」を配合した機能性表示食品『アサヒ ぎゅっと濃い十六茶』を発売し、健康志向を踏まえた価値提案の強化に取り組みました。
食品事業では、エチケットケアニーズの高まりに対応した『ミンティア クリアプラス ペパーミント』などを発売し、ユーザー層の拡大を図りました。また、月経に関する機能性を訴求したフェムケア※商品『わたしプロローグ』を発売するなど、女性の健康課題解決への貢献にも取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、2,827億5百万円(前年同期比3.3%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、195億7千7百万円(前年同期比10.3%増)となりました。
※ フェムケアとは、女性の体や健康をケアすることです。
[欧州]
欧州においては、各国のプレミアム戦略に基づく競争優位性の向上に加えて、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』を軸とした世界的なパートナーシップの活用などにより、グローバルブランドの認知度向上を図りました。また、「環境」や「コミュニティ」を中心としたサステナビリティへの取り組みを強化することなどにより、成長基盤を更に拡大しました。
欧州の主要地域では、チェコにおいて、『Pilsner Urquell』や『Radegast』などの主力ブランドにおけるプロモーションの強化に加えて、新たな消費者の開拓に向けて、苦みとアルコール度数を抑えたラガービール『Proud』を発売しました。また、イタリアでの『Peroni』におけるサッカーイタリア代表チームとのオフィシャルパートナーシップ契約の締結やプレミアムラガービール『Raffo』の発売、ルーマニアでの『Ursus』や『Peroni Nastro Azzurro』の積極的な拡販など、ブランド価値の向上に取り組みました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』と『Tyskie 0.0%』、ルーマニアの『Ursus Cooler』などを積極的に展開し、新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの拡大展開では、『Asahi Super Dry』において、「City Football Group」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動やノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』の販売強化に取り組みました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、プレミアムな世界観を演出するためのプロモーション展開をしたほか、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、F1チーム「Scuderia Ferrari」との新たなパートナーシップを開始するなど、グローバルでのブランド認知度の向上に努めました。
以上の結果、売上収益は、各国のプレミアムビールやグローバルブランドの強化などにより、1,446億2千4百万円(前年同期比22.2%増)となりました。
事業利益は、人件費などは増加しましたが、増収効果や各種コストの効率化を推進したことにより、54億1千2百万円(前年同期比20.2%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比6.7%の増収、事業利益は前年同期比12.1%の増益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、『Great Northern』など主力ブランドを中心とした持続的な成長に加え、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略により、商品ポートフォリオの強化を図りました。また、各種オペレーションの最適化などによる収益構造改革やサステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Victoria Bitter』において、高まる健康需要に応えるべく低糖質のビールを新たに発売しました。また、『Peroni』や『Somersby』ブランドにおいて全豪オープンテニストーナメントとのスポンサーシップを再契約したことに加え、RTD※ブランド『Hard Rated』の発売や『Vodka Cruiser』から新たなフレーバーの商品を発売するなど、様々なニーズに対応した酒類事業全体のポートフォリオ拡充を図りました。
飲料事業では、『Pepsi』ブランドにおいて大規模なリニューアルを行い伝統的な価値観と最新のトレンドを融合させることで、主力ブランドの価値向上に取り組みました。
さらに、豪州では、農家から大麦を直接調達する取り組みを継続しており、農業や製麦業に従事している方とイベントを開催するなどコミュニティ支援活動への参画を通じて、展開地域との「つながり」を強化しました。
以上の結果、売上収益は、主力ブランドの好調な販売などにより、1,690億4千万円(前年同期比12.2%増)となりました。
事業利益は、増収効果や為替変動の影響はあったものの、原材料関連の費用増加などの影響により、218億7千万円(前年同期比2.6%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比4.0%の増収、事業利益は前年同期比9.6%の減益となりました。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心とした主力ブランドへの投資強化や販売チャネルの最適化を推進し、マレーシアなど展開国における収益性向上の取り組みを推進しました。また、健康需要の取り込みやDX投資、人材育成などの強化を通じて、成長基盤の拡大を図りました。
マレーシアでは、『CALPIS』において、春節やハリラヤなど季節のイベントと関連付けたキャンペーンの実施などにより、ブランド力を強化しました。また、『WONDA』では、公共交通機関において、映像だけではなく香りや音を再現して商品の魅力を訴求するなど、新たなマーケティング手法を展開しました。
以上の結果、売上収益は、主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定や為替変動の影響などにより、156億4千7百万円(前年同期比16.3%増)となりました。
事業利益は、固定費全般の効率化などを推進したことにより、2億3千1百万円(前年同期比34.0%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比10.5%の増収、事業利益は前年同期比31.1%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、66億5千8百万円(前年同期比158.1%増)、事業利益は、前年同期比19億7千3百万円増の21億3千6百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円) |
|
売上収益 |
前年同期比 |
事業利益 |
前年同期比 |
売上収益 事業利益率 |
営業利益 |
前年同期比 |
||
|
為替一定 |
|
為替一定 |
||||||
日本 |
282,705 |
3.3% |
3.3% |
19,577 |
10.3% |
10.3% |
6.9% |
18,647 |
3.2% |
欧州 |
144,624 |
22.2% |
6.7% |
5,412 |
20.2% |
12.1% |
3.7% |
△2,243 |
- |
オセアニア |
169,040 |
12.2% |
4.0% |
21,870 |
△2.6% |
△9.6% |
12.9% |
17,359 |
△5.0% |
東南アジア |
15,647 |
16.3% |
10.5% |
231 |
34.0% |
31.1% |
1.5% |
212 |
△47.9% |
その他 |
6,658 |
158.1% |
141.2% |
2,136 |
- |
- |
32.1% |
2,098 |
- |
調整額計 |
△2,062 |
- |
- |
△3,318 |
- |
- |
- |
△3,515 |
- |
無形資産 償却費 |
- |
- |
- |
△9,616 |
- |
- |
- |
- |
- |
合計 |
616,614 |
10.8% |
5.1% |
36,293 |
12.2% |
8.4% |
5.9% |
32,558 |
1.7% |
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間の連結総資産は、季節要因等により営業債権が減少したものの、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して1,140億8千4百万円増加し、5兆3,999億9千8百万円となりました。
負債は、季節要因等による営業債務の減少はあったものの社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して483億3千万円増加し、2兆8,684億6千2百万円となりました。
資本は、前年度末に比べ657億5千4百万円増加し、2兆5,315億3千5百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当第1四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.8%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が314億8千万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があった一方で、法人所得税等の支払による減少があり、629億6千6百万円(前年同期比:142億7千2百万円の支出増)の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出や連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出などにより、522億4千3百万円(前年同期比:79億3千8百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の増加などがあり、1,120億3千9百万円(前年同期比:133億1千2百万円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間では、前第1四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は239億2千8百万円増加し、664億8百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、35億1千9百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。