売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01231 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

①経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間の我が国経済は、物価上昇や世界的な需要低迷を背景に一部で足踏みが見られるものの、個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向が継続しました。海外経済は、米国では良好な雇用情勢を背景に個人消費が底堅く推移していましたが、足元では成長率の鈍化が見られており、また、欧州では金利上昇に伴う景気の下押し圧力により足踏み状態が続いております。中国では金融緩和等により景気の押上げが図られているものの、不動産市場の低迷などにより国内需要は伸び悩んでおり、景気回復ペースは不透明な状況が続いております。

このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に掲げる「安定収益基盤の確立」に向けた重点施策を着実に実行するとともに、引き続きものづくり力の強化や販売価格の改善に努めてまいりました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比890億円増収の1兆8,737億円となり、営業利益は、鉄鋼アルミでの販売数量の減少や在庫評価影響の悪化などがあったものの、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴う鉄鋼メタルスプレッドの大幅な改善、機械・エンジニアリングでの売上高の増加、電力での神戸発電所4号機の稼働や燃料費調整の時期ずれ影響の改善、売電価格に関する一過性の増益影響(売電価格の指標となる石炭の輸入貿易統計価格と当社購入価格の差異)などにより、前年同期比844億円増益の1,382億円となりました。経常利益は、建設機械における北米でのエンジン認証に関する補償金収入の剥落などの減益要因があったものの、営業利益の増益により、前年同期比590億円増益の1,339億円となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、経常利益の増益に加え、子会社において固定資産の譲渡益を計上したことなどから、前年同期比622億円増益の1,097億円となりました。

 

当第3四半期連結累計期間のセグメント毎の状況は次のとおりであります。

なお、従来、「その他」の区分に含めていたコベルコ科研は、所管の変更に伴い、第1四半期連結会計期間より「機械」セグメントに含めております。以下の前年同四半期比較については、前年同四半期の数値を所管変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 

[鉄鋼アルミ]

(鉄鋼)

鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が増加した一方、自動車向け以外の需要が減少したことから、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期並の6,691億円となりました。経常利益は、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴う鉄鋼メタルスプレッドの大幅な改善があったものの、販売数量の減少や在庫評価影響の悪化などにより、前年同期比105億円減益の325億円となりました。

(アルミ板)

アルミ板の販売数量は、自動車向けは前年同期並であった一方、需要の調整局面にあるIT・半導体向けの大幅な減少により、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比2.7%減の1,436億円となりました。経常損益は、販売数量の減少や在庫評価益の縮小などにより、前年同期比37億円悪化の59億円の損失となりました。

 

鉄鋼アルミ全体では、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期並の8,128億円となり、経常利益は、前年同期比143億円減益の266億円となりました。

 

 

[素形材]

素形材の販売数量は、造船向け需要を取り込んだ鋳鍛鋼、自動車向け需要が回復したアルミ押出、サスペンションで前年同期を上回りました。一方、IT・半導体向け需要の減少により、銅板、アルミ鋳鍛で前年同期を下回りました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比7.2%増の2,184億円となり、経常損益は、固定費を中心としたコストの増加などがあったものの、販売数量の増加や販売価格改善の進展などにより、前年同期比7億円改善の6億円の利益となりました。

 

[溶接]

溶接材料の販売数量は、国内は前年同期並の一方、中国、東南アジアでの需要回復が遅れていることから、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比8.4%増の701億円となり、経常利益は、販売数量は減少したものの、高付加価値品の販売数量が増加したことや、販売価格改善の進展などにより、前年同期比17億円増益の33億円となりました。

 

[機械]

当第3四半期連結累計期間の受注高は、石油化学やエネルギー分野を中心に好調に推移した一方、樹脂機械で大型案件を受注した前年同期と比較すると4.9%減の1,798億円となり、当第3四半期連結会計期間末の受注残高は2,329億円となりました。

また、既受注案件の進捗やサービス案件の増加により、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比13.5%増の1,570億円となり、経常利益は、好調な受注を受けた受注採算の改善もあり前年同期比99億円増益の181億円となりました。

 

[エンジニアリング]

当第3四半期連結累計期間の受注高は、還元鉄関連事業で海外大型案件を受注したことや廃棄物処理関連事業での堅調な受注などにより、前年同期比36.4%増の1,435億円となり、当第3四半期連結会計期間末の受注残高は4,250億円となりました。

また、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比19.5%増の1,178億円となり、経常利益は、前年同期比90億円増益の116億円となりました。

 

[建設機械]

油圧ショベルの販売台数は、需要が低迷した中国や、エンジン認証問題により欧州で減少したものの、北米等で増加したことから前年同期並となりました。クローラクレーンの販売台数は、エンジン認証問題対応の進展により、北米を中心に増加した一方、欧州でのエンジン認証問題や生産・出荷のずれなどにより、前年同期並となりました。

当第3四半期連結累計期間の売上高は、販売台数の減少があるものの、為替レートが円安に推移したことに伴う為替換算差等により、前年同期比8.5%増の3,044億円となり、経常利益は、円安による輸出採算の改善の一方、エンジン認証問題に関する補償金収入の剥落などにより、前年同期比12億円減益の95億円となりました。

 

[電力]

販売電力量は、神戸発電所4号機の稼働により、前年同期を上回りました。販売電力単価は発電用石炭価格の変動に伴い前年同期比で下落しました。

この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比9.7%増の2,339億円となり、経常利益は、神戸発電所4号機の稼働や、神戸発電所3・4号機における燃料費調整の時期ずれ影響の改善、神戸発電所1~4号機における売電価格に関する一過性の増益影響(売電価格の指標となる石炭の輸入貿易統計価格と当社購入価格の差異)などにより、前年同期比571億円増益の635億円となりました。

 

[その他]

当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比5.8%増の72億円となり、経常利益は、前年同期比4億円減益の29億円となりました。

 

②資本の財源及び資金の流動性に関する情報

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当第3四半期連結会計期間末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,326億円、返済期限が1年を超えるものが4,626億円となっております。

 

当第3四半期連結会計期間末現在の実績

(単位:億円)

 

前連結会計年度末

当四半期連結会計期間末

有利子負債 ※1

5,905

5,952

有利子負債 ※2

(プロジェクトファイナンスを含む)

8,618

8,496

株主資本

8,382

9,145

 

※1 当第3四半期連結会計期間末現在の有利子負債の内訳

(単位:億円)

 

合計

1年内

1年超

短期借入金

357

357

-

長期借入金

4,445

969

3,476

社債

1,150

-

1,150

合計

5,952

1,326

4,626

 

※2 当第3四半期連結会計期間末現在の有利子負債の内訳(プロジェクトファイナンスを含む)

(単位:億円)

 

合計

1年内

1年超

短期借入金

357

357

-

長期借入金

6,988

1,253

5,735

社債

1,150

-

1,150

合計

8,496

1,610

6,885

 

 

 

(2) 研究開発活動

当第3四半期連結累計期間における当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発費は、274億円であります。

また、当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況の変更内容は、次のとおりであります。

 

当社グループでは、2023年3月末に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)助成事業の大規模水素エネルギー利用技術開発プロジェクトとして2022年3月に採択された「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」(以下、本事業)において、運転圧力1MPa以下での実証試験を予定通り完了しました。本事業では、液化天然ガス気化器で実績のある中間媒体式気化器※1の要素技術をベースに、CO2排出を冷熱回収の形で抑制する冷熱回収型液化水素気化器を採用しました。この実証試験において、実用規模では世界で初めて安定した気化性能及び冷熱回収が可能であることが確認できました。また、水素発電において求められる臨界圧(約1.3MPa)以上での課題点の抽出・検証を行うために、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/(ロ)地域モデル構築技術開発」の2023年度第1回公募「水素CGSの地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化に向けた技術開発」に川崎重工業(株)と応募し、2023年6月に採択されました(実施期間:2023~2024年度)。

また、「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を予定通り2023年3月から当社高砂製作所(兵庫県高砂市)内で開始するとともに、2023年6月より試験用ボイラーへの水素供給による水素燃焼試験において、水素混焼を開始しました※2。さらにNEDOから調査委託として採択された「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に係る水素製造・利活用ポテンシャル調査では、主要なエネルギー消費設備であるボイラー及び加熱炉でのCO2フリー水素の利活用について、当社高砂製作所で実稼働する設備を対象とした水素利用ポテンシャルの調査と水素利活用モデルの検討を行い、100基以上の加熱炉で消費される化石燃料を水素に置き換える場合、最大36,000t/年の水素利活用ポテンシャルがあるとの試算結果が得られました。本調査で抽出された課題解決に向けた方策として、実機規模のボイラー及び加熱炉での水素利活用を「ハイブリッド型水素ガス供給システム」を用いて実証することを、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/(ロ)地域モデル構築技術開発」の2023年度第1回公募「熱エネルギー消費が主体の工場の脱炭素化に向けた燃焼式工業炉での水素利活用の実証」に応募し、2023年6月に採択されました(実施期間:2023~2025年度)。今後、各種実証試験において水素気化器と水電解式水素発生装置の同時運転等を行い、水素供給時の水素コストやCO2発生量/炭素集約度を評価し、安価で安定した水素供給ができる運転マネジメントシステムの構築を行っていきます。

また、加古川製鉄所の大型高炉(4,844 m3)でCO2排出量を25%削減(高炉単体、SCOPE1+2)できる技術の実機実証に成功しました。これは、2021年2月に当社が公表した「KOBELCOグループの製鉄工程におけるCO2低減ソリューション」での実証結果(約20%)を大幅に上回る結果であり、高炉実機でのCO2削減手法としてこれまで公表されている中では、世界最高水準のCO2削減効果を有する極めて先進的な技術です。多様な事業を営む企業としての特長を活かし、エンジニアリング事業のミドレックス技術※3と鉄鋼事業の高炉操業技術がより一層、融合・深化した結果となっています。当社グループは、今回の実機実証実験の成功も含めて、生産プロセスにおける2030年のCO2排出削減目標の実現に向けた取組みを着実に進展させていきます。

※1 気化熱源として海水や工業用水を用い、プロパン等の中間媒体を介して、液化天然ガス(LNG)等の低温流体を気化させるタイプの気化器

※2 本システム実証の一部は、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業」に採択されています。

※3 当社の100%子会社(Midrex Technologies, Inc.)が有する直接還元製鉄法に関する技術

 

[鉄鋼アルミ]

鉄鋼では、当社の低CO2高炉鋼材「Kobenable Steel」が、トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ自動車)の競技車両「GR86(カーボンニュートラル燃料車)」に使用される(株)青山製作所製のエンジン部品締結ボルトに、自動車用特殊鋼線材としては初めて採用されました。採用された鋼材は、マスバランス方式により鋼材製造工程におけるCO2排出量を100%削減した「Kobenable Premier」です。また本ボルトは、非調質ボルト用鋼を使用することで「焼鈍(軟化熱処理)」と「調質(焼入れ焼戻し熱処理)」というボルト製造工程における熱処理を省略しており、鋼材の製造工程とボルトの製造工程の両面においてCO2排出量を低減した製法で製造されています。

また、厚鋼板に疲労亀裂の発生を抑制する機能を付加し、疲労亀裂発生寿命を改善した耐疲労鋼板「EX-Facter®」を商品化しました。金属材料の疲労過程は、亀裂発生と亀裂進展に分けられます。当社は、厚鋼板の疲労亀裂発生までの損傷に着目し、最適成分設計とTMCP技術※1を駆使した製造法により、亀裂の発生を抑制可能とする業界初の鋼板を新たに開発しました。全厚試験片での疲労試験の結果、従来鋼に比べて繰返し数:1千万回における疲労強度が36%向上したことを確認しました。「EX-Facter®」は特に造船分野における従来以上の燃費効率の改善及び橋梁分野における路面下の床構造部位である鋼床版の疲労損傷対策の課題解決に貢献でき、耐久性・安全性向上に関するお客様のニーズに応えるべく、「EX-Facter®」の特長を活かした利用技術の開発、提案活動を通じ、当社グループのマテリアリティのひとつである「安全・安心なまちづくり・ものづくりへの貢献」を推進してまいります。

※1 Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)の略。鋼板圧延時の温度と圧下率、圧延後の冷却速度を管理する製造方法

 

[素形材]

チタンでは、燃料電池セパレータ用チタン圧延材「NCチタン」が、トヨタ自動車とともに「市村産業賞 功績賞」を受賞しました。NCチタンは、チタン表面の緻密な酸化皮膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有させており、プレス成形でも皮膜が剥離せず、燃料電池内部の腐食環境でも表面導電性を維持できます。これにより、従来セパレータ製造において、律速となっていたプレス成形後の表面処理を省略できるプレコート型セパレータの実用化を可能としました。またトヨタ自動車とともに、コイル状チタン材への連続表面処理技術を確立し、NCチタンの量産化を実現しました。NCチタンはトヨタ自動車の「MIRAI」に独占的に供給されています。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へと適用を拡大し、水素社会実現に貢献してまいります。

 

[溶接]

溶接材料では、NEW REGARC™プロセスに最適なソリッドワイヤを新たに2銘柄リリースしました。400MPa級鋼用FAMILIARC™ MG-50R(A)、550MPa級鋼用FAMILIARC™ MG-60R(A)では、新ワイヤ表面技術により、安定したワイヤ送給性、良好な耐チップ摩耗性を実現しました。従来よりも多様な鋼種で、NEW REGARC™プロセスによる高能率な溶接が可能になります。引き続き、溶接の自動化を課題とする国内外の建築鉄骨市場向けに生産性向上を提案してまいります。

溶接システムでは、新たな立向溶接法SESLA™へ対応した新エレクトロスラグ溶接装置SG-3用の「リモートモニタリング機能」を開発しました。溶接装置から離れた場所で、溶接波形のモニタリングや溶接完了予定時間の表示が可能となります。SG-3は、SESLA™法に加え、以前より定評のあるエレクトロガスアーク溶接を用いるSEGARC™法も適用可能であり、トーチや水冷摺動銅板の動作をすべてデジタル制御することで、溶接品質の向上に加え、操作性向上による作業負荷軽減と技能レス化を実現しており、造船分野への採用決定や、エネルギー分野でも洋上風力発電への採用の検討が進んでいます。モニタリングデータの活用により施工管理・品質管理を効率化することで、お客様の製造現場での、更なる生産性向上に貢献してまいります。

また、建築鉄骨市場向けに、「鉄骨梁CAD連係ソフトウェア SMART TEACHING™」を開発しました。一般的に溶接ロボットは、溶接線位置と溶接施工条件をロボットに記憶する教示作業が必要になります。特に梁部材はすみ肉溶接が主体の多様な形状であるため、建築構造物における梁部材数量は非常に多いものの、教示作業に時間を要するなどの課題から、溶接自動化が遅れています。これに対し、鉄骨製作のために設計されたモデルの梁部材の3Dデータから溶接に必要な情報を取り込み、ロボットの動作軌跡や溶接条件データを自動生成する機能を実現しました。既に鉄骨ファブリケータより受注しており、今後、国土交通省の建築BIMデータ利用拡大の推進も背景に、溶接の自動化を課題にする建築鉄骨市場向けでの拡販が期待されます。

 

[エンジニアリング]

(株)神鋼環境ソリューションでは、長崎県長崎市にDX推進の新たな拠点として「デジタルイノベーションLab長崎」を新設することを決定しました。技術系大学等から優秀なIT関連人材を多く輩出し、IT企業も充実している長崎県に新拠点を設置し、2024年8月より事業を開始する予定です。新拠点を設置することで、研究開発等におけるDX推進(データ分析による課題提起・ソリューション提供等)を加速するとともに、産学官での連携によるイノベーション創出や更なる変革へ挑戦していきます。

水処理関連分野では、日本下水道事業団と共同で、下水処理における「水熱炭化技術」の実証実験を富士市西部浄化センターで開始しました。従来、下水汚泥を炭化方式で固形燃料化する場合、乾燥工程と炭化工程で多くのエネルギーを必要としていましたが、本技術では汚泥を低温かつ湿式状態で炭化することで、固形燃料化に要するエネルギーの大幅削減が可能になります。下水汚泥のメタン発酵と本技術を組み合わせて導入することにより、CO2排出量を実質ゼロにすることを目指します。

 

[建設機械]

ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)と、これまでの共同研究や現場実験を踏まえ、1人の作業管理者が2台の自動運転ショベルの運転管理を同時に行う実証実験を行いました。今回の実験では、ダンプトラックへの土砂積込みの作業時間について、有人運転(1人で1台)と自動運転で比較を行い、1人で2台の自動運転ショベルを管理することにより、1人あたりの土砂積込み量が有人運転時より約3割増加することを確認しました。このことで、建設現場での省人化と生産性の向上に寄与すると考えています。本件は、初期段階での結果であり、今後、お客様の現場毎に動作を最適化することで生産性をさらに向上できると考えています。

コベルコ建機は遠隔就労を実現するプラットフォーム「JIZAIPAD」の開発を手掛ける(株)ジザイエ(以下、ジザイエ)に対し、Human Augmentation(人間拡張)を投資テーマに掲げるベンチャーキャピタルである15thRock Fund等とともに出資を行いました。今回の出資に合わせ、コベルコ建機はジザイエと遠隔技術分野における業務提携を行いました。本業務提携により、コベルコ建機は、自身が長年培ってきた遠隔技術分野に関する技術・ノウハウをジザイエに提供し、ジザイエが他業種展開も可能な知的財産・技術として発展させて活用することによって成長し、その技術を当社K-DIVE®等へ還元すること、さらには本取組みによって豊かな社会の建設に貢献していくことを期待しています。

また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環として、燃料電池式電動ショベルの試作機を開発し、水素を駆動源とした稼働評価を開始しました。この試作機は、中型油圧ショベルに電気駆動システムを搭載し、トヨタ自動車の燃料電池ユニットと水素タンクを採用しています。評価結果では、従来のエンジン搭載機と遜色がない動作速度、圧倒的な低騒音、CO2排出量がゼロであることを確認しました。今後、試作機での改善を進め、従来のエンジン搭載機と同等の作業性能を実現させ、商品化を目指す予定です。また、KOBELCOグループの総合力を活かし、安全性と信頼性の確立に向けた研究開発、及び水素供給と充填方法等インフラ面での課題解決に取り組み、上市販売に向けた環境構築を加速します。

コベルコ建機と(株)冨島建設は、国土交通省近畿地方整備局主催の「建設技術展2023近畿」の「2023年度インフラDX※1」で、K-DIVE®を活用した重機遠隔操作の実用化検証により「優秀技術賞」を受賞しました。今回の実用化検証では、土砂災害の対策工事現場でK-DIVE®を使用して油圧ショベルの無人化施工を問題なく、実施できることを確認しました。 K-DIVE®は、建設現場の生産性向上、多様な人材活用、働き方改革に加え、無人化施工により、災害現場での安全確保にも役立ちます。今後もK-DIVE®の技術開発を進め、より多様な現場で活用できる、実用化に向けた取組みを継続していく予定です。

コベルコ建機と安藤ハザマは、K-DIVE®に自動運転機能を搭載し、コックピットから遠隔操作と自動運転を切り替えながら、2台の油圧ショベルを、同時に稼働させる現場検証を行いました。現在、建設現場の生産性向上等を実現するため、建設機械の自動化、遠隔化技術が期待される一方、現場における安全に関する新たなルールが必要となります。今回、国土交通省が募集した「建設機械施工の自動化・遠隔化技術に係る現場検証」として、油圧ショベルと人が混在するエリアでは、K-DIVE®の非常停止機能を使うというルールに基づき、2台の油圧ショベルを同時に稼働させ、ダンプトラックへの土砂積み込み作業を安全に実施できました。今後もK-DIVE®の技術開発を進め、より多様な現場で活用できる、実用化に向けた取組みを継続していく予定です。

クレーンでは、国土交通省が従前よりBIM/CIM※2の活用を推奨しており、2022年度に「建築BIM加速化事業」を創設、さらに2023年4月以降に入札を開始する小規模を除く、全ての公共工事へのBIM/CIM原則適用を開始しました。これらによりBIM活用の流れは加速しており、その潮流にこたえるべく、コベルコ建機は、安全性と生産性向上に貢献するためのツールとして、クレーン施工計画の策定支援ソフト『K-D2 PLANNER®』の一般販売を開始しました。開発にあたり多くのお客様のご意見をもとに製品改良を重ね、直感的な操作性や現場へ施工計画を共有するためのプレゼンテーションに加え、クレーンブームのたわみ・接地圧等のシミュレーションや最適クラスのクレーン選定等、建機メーカならではの機能も実装しました。これらにより施工計画が容易に作成でき、運用経費の削減に繋がるとともに、現場の安全性と生産性の向上が期待できます。

また、クローラクレーン「Mastertech7200G NEO」が機械工業デザイン賞 IDEA※3の日本産業機械工業会賞を受賞しました。このクローラクレーンは、従来のコンパクトボディを継承しながらも、つり上げ能力が最大25%向上し、大幅な作業性能向上を達成しています。また、新型運転席「delight(デライト)キャブ」やオペレータアシスト機能等、安全性や快適性にも配慮しています。受賞理由として、ヒューマンコンセプト・クレーンを基軸に、輸送性・組立性・省エネ性等の既得性能を継承しつつ、機能・性能・品質をより向上させ、ハードとソフトにバランスの取れた完成度の高い仕上がりとした点が評価されました。

※1 国土交通省近畿地方整備局は、これまで生産性向上として取り組んできたi-Construction 等をより進化させるため、インフラ分野のDXに活用できる優れた技術を発掘、試行フィールドを提供することによってインフラDXを推進しています。

※2 BIMはBuilding Information Modeling、CIMはConstruction Information Modelingの略を示します。

※3 (株)日刊工業新聞社が、日本の工業製品におけるデザインの振興と発展を目的に1970年に創設した賞であり、製品の機能や外観だけではなく、市場性や社会性、安全性等、さまざまな面から総合的な審査を行います。審査委員会は関係省庁や大学、各工業団体の専門家等で構成されています。