E00369 Japan GAAP
前期
1,812.5億 円
前期比
107.2%
株価
2,539 (04/23)
発行済株式数
92,714,538
EPS(実績)
108.49 円
PER(実績)
23.40 倍
前期
762.3万 円
前期比
101.0%
平均年齢(勤続年数)
43.2歳(18.9年)
従業員数
1,472人(連結:3,076人)
当社グループは、森永製菓㈱、連結子会社16社、非連結子会社2社で構成されており、事業は食料品製造、食料卸売、不動産及びサービスほかを営んでおります。
事業内容と森永製菓㈱及び関係会社の当該事業に係る位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。
(注)1 非連結子会社に対する投資については持分法を適用しております。
2 従来、食料品製造セグメントの事業内容については、「菓子食品部門の製造販売」「冷菓部門の製造販売」「健康部門の製造販売」に区分しておりましたが、「2030経営計画」「2021中期経営計画」に沿った当社グループの経営管理の実態を明瞭に表示するため、当連結会計年度の期首より、「菓子食品事業」「冷菓事業」「in事業」「通販事業」「事業子会社等」「米国事業」「中国・台湾・輸出等」の区分に変更しております。
当社グループの状況について事業系統図を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度の期首より、食料品製造セグメントに関する顧客との契約から生じる収益を分解した情報の区分を変更したことに伴い、以下の比較分析における食料品製造セグメントの区分を変更し、区分変更後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 」に記載のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
■2023年3月期実績
(注)1 特別利益と法人税等のNET
2 EBITDAは簡易版を使用→営業利益+減価償却費
3 2023年2月10日発表値
4 在外子会社換算レートは、1米ドル=131円
■2023年3月期実績:セグメント情報
② 財政状態の状況
財政状態は次のとおりであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、1,013億7千1百万円となり、前連結会計年度末に比べ106億9千6百万円減少しております。これは主に、商品及び製品が26億8千5百万円、原材料及び貯蔵品が50億2千5百万円、未収還付法人税等が31億7千1百万円増加した一方で、現金及び預金が202億9千万円減少したこと等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、1,038億5千5百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億2千2百万円増加しております。これは主に、機械装置及び運搬具(純額)が7億5千1百万円、土地が5億8千4百万円減少した一方で、建設仮勘定が21億3千2百万円、無形固定資産のその他に含まれているソフトウエア仮勘定が4億5千2百万円増加したこと等によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、512億9千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ188億5千万円減少しております。これは主に、支払手形及び買掛金が24億6百万円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が100億円、未払法人税等が96億1千4百万円減少したこと等によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、280億7千2百万円となり、前連結会計年度末に比べ150億9千4百万円増加しております。これは主に、退職給付に係る負債が45億9千1百万円減少した一方で、社債が90億円、長期借入金が100億円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、1,258億5千6百万円で、前連結会計年度末に比べ53億1千8百万円減少しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益100億5千9百万円の計上により増加した一方で、株主還元の強化により、配当金の支払い44億9千7百万円や自己株式の取得111億7千3百万円により減少したこと等によるものであります。
以上により自己資本比率は、60.7%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、主に前連結会計年度の政策保有株式売却に伴う特別利益に係る法人税等の支払いが生じたこと及び株主還元強化等の資本効率の更なる向上を図るための財務施策を進めた結果、前連結会計年度末に比べ240億6千8百万円減少し、360億7千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は29億6千6百万円となりました。主な内容は、税金等調整前当期純利益138億8千4百万円、減価償却費100億8千7百万円といった資金増加の一方で、退職給付信託への資金拠出などに伴う退職給付に係る負債の減少額47億6千万円、棚卸資産の増加額71億3千8百万円、法人税等の支払額152億9千万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は142億9百万円となりました。主な内容は、有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は73億4千8百万円となりました。主な内容は、社債の発行による収入89億4千8百万円、及び自己株式の取得による支出112億5千万円、配当金の支払額44億9千7百万円によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格(内部取引価格を含む)によっております。
2 「食料卸売」、「不動産及びサービス」及び「その他」のセグメントについては、該当事項はありません。
3 従来、食料品製造セグメントに関する生産実績は、「菓子食品」「冷菓」「健康」に区分しておりましたが、「2030経営計画」「2021中期経営計画」に沿った当社グループの経営管理の実態を明瞭に表示するため、当連結会計年度より、「菓子食品事業」「冷菓事業」「in事業」「通販事業」「事業子会社等」「米国事業」「中国・台湾・輸出等」の区分に変更しております。なお、前期比については、区分変更後の数値で比較を行っております。
主要製品の受注生産は、行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
3 従来、食料品製造セグメントに関する販売実績は、「菓子食品」「冷菓」「健康」に区分しておりましたが、「2030経営計画」「2021中期経営計画」に沿った当社グループの経営管理の実態を明瞭に表示するため、当連結会計年度より、「菓子食品事業」「冷菓事業」「in事業」「通販事業」「事業子会社等」「米国事業」「中国・台湾・輸出等」の区分に変更しております。なお、前期比については、区分変更後の数値で比較を行っております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度のわが国経済は、原材料及びエネルギー価格高騰の影響により物価上昇が続くなど、国内景気は依然として先行き不透明な状況が続いておりますが、期末にかけては新型コロナウイルス感染者数の落ち着きや規制の緩和に伴い、アフターコロナに向けて消費行動に変化が見え始めております。欧米においては、原材料及びエネルギー価格高騰に伴う物価高や、金融引き締めの影響から、経済成長の減速が懸念され不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く食品業界におきましては、食の安全・安心の徹底やライフスタイルの変化により簡便性や健康ニーズが高まる中、購買行動の変化とその兆しを捉えた、より付加価値の高い商品作りが求められ、競争環境はいっそう厳しさを増しております。
このような経営環境のもと、当社グループは長期経営計画「2030経営計画」達成に向けた1stステージである「2021中期経営計画」の2期目として、引き続き飛躍に向けた新たな基盤づくりを実現すべく、事業活動に取り組んでまいりました。
売上高は、「2030経営計画」で定めた重点領域の各事業が大きな成長を遂げたことにより、全体では1,943億7千3百万円と前年実績に比べ131億2千2百万円(7.2%)の増収となりました。
損益は、増収効果及び価格改定効果がありましたが、原材料及びエネルギー価格の高騰や中長期の成長に向けた戦略的な広告投資などにより、営業利益は前年実績に比べ24億5千万円(13.9%)減益の152億3千5百万円、経常利益も前年実績に比べ24億9千万円(13.6%)減益の157億5千7百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に政策保有株式の売却に伴う特別利益を計上したことも影響し、前年実績に比べ177億1千4百万円(63.8%)減益の100億5千9百万円となりました。
■営業利益増減分析
(注)当連結会計年度の実績調達レートは1米ドル=128円、前連結会計年度は同109円
セグメントの業績は、次のとおりであります。
<食料品製造>
菓子食品事業
ビスケットカテゴリーでは、「森永ビスケット」は第1四半期に実施した生産ライン増設工事による一時的な商品供給制約の影響がありましたが、第3四半期以降「ムーンライト」の積極的なプロモーションと新商品の発売、「マリー」100周年の取組みも既存品の売上拡大に寄与し、前年実績を上回りました。
キャンディカテゴリーでは、「ハイチュウ」は、食感を訴求する商品及びプロモーション展開の強化により、スティック・パウチ・袋の全ての商品形態で好調を維持し、前年実績を大きく上回りました。また、「森永ラムネ」は、受験生に向けた商品及びプロモーション展開が奏功し、ブランド全体で過去最高の売上高を記録しました。
チョコレートカテゴリーでは、市場が伸び悩む中、「カレ・ド・ショコラ」は上質チョコレートブランドとして価値強化に取り組みましたが、前年実績を下回りました。「ダース」は品質リニューアルに合わせたプロモーション展開や新商品の発売により、前年実績並みとなりました。「チョコボール」は、発売55周年を記念するプロモーション展開や新商品の発売が寄与し、前年実績を上回りました。
食品カテゴリーでは、「森永甘酒」「森永ココア」ともに健康ブランドとして強化するべく、引き続き機能価値を訴求するプロモーションに取り組みましたが、前年実績を下回りました。
なお、原材料及びエネルギー価格高騰に対する収益改善策として、各カテゴリーにおいて、当連結会計年度に価格改定を実施しております。
これらの結果、菓子食品事業全体の売上高は743億8百万円と前年実績に比べ18億6千5百万円(2.6%)増となりました。
損益は、価格改定により収益性の改善に取り組みましたが、原材料及びエネルギー価格の高騰の影響が大きく、営業利益は前年実績に比べ17億2千2百万円(52.8%)減益の15億4千1百万円となりました。
冷菓事業
「ジャンボ」グループは、発売50周年を迎えた「チョコモナカジャンボ」と「バニラモナカジャンボ」において、冬季限定品の発売や品質リニューアルに取り組むとともに、パリパリ食感を訴求するプロモーション展開が奏功し、前年実績を上回りました。通年発売3年目となる「板チョコアイス」は、品質特徴を活かしたプロモーション展開により購入率拡大に取り組みましたが、前年実績を下回りました。「ザ・クレープ」は当期より通年発売へ変更しております。「アイスボックス」は、喫食シーン訴求などのターゲット別のプロモーション展開により、最需要期の購入率拡大に加えて、秋冬期の需要も獲得し、年間を通して好調に推移しました。
なお、原材料及びエネルギー価格高騰に対する収益改善策として、主力品について、当連結会計年度に価格改定を実施しております。
これらの結果、冷菓事業全体の売上高は405億3千3百万円と前年実績に比べ3億3千6百万円(0.8%)増となりました。
損益は、価格改定により収益性の改善に取り組みましたが、原材料及びエネルギー価格の高騰、減価償却費の増加により、営業利益は前年実績に比べ14億7百万円(29.0%)減益の34億4千5百万円となりました。
in事業
「inゼリー」は、コロナ禍における生活スタイルの変化に対応し、間食や仕事・勉強中などの飲用シーンの他、体調不良時の栄養補給や健康維持ニーズを引き続き獲得するなど、12月に実施した価格改定以降も好調に推移しました。「inバー」は、新商品を発売するなど商品ラインナップの見直しを行いましたが、プロテイン摂取手段の多様化による競争環境の激化が続き、前年実績を下回りました。
これらの結果、in事業全体の売上高は306億2百万円と前年実績に比べ25億6千8百万円(9.2%)増となりました。
損益は、原材料価格の高騰や、積極的な広告投資の影響もありましたが、売上高が好調に推移したことにより、営業利益は前年実績に比べ2億1千4百万円(3.1%)増益の70億2千万円となりました。
通販事業
「おいしいコラーゲンドリンク」は、2月に実施した価格改定により一時的に解約が発生しましたが、売上高は二桁成長を維持しました。通販事業の第2の柱候補の商品である「おいしい青汁」は、着実に定期顧客数を増やし売上高を拡大しております。
これらの結果、通販事業全体の売上高は102億8千5百万円と前年実績に比べ11億5千万円(12.6%)増となりました。
損益は、順調な定期顧客獲得を背景とした積極的な広告投資の継続、原材料価格高騰の影響もありましたが、売上高が好調に推移したことに加え、価格改定効果により、営業利益は前年実績に比べ3億1千8百万円(93.4%)増益の6億5千9百万円となりました。
事業子会社
㈱アントステラは、全国の直営店において催事向けのギフト商品や、品揃えを強化した量り売りの販売が好調に推移しました。また、大手量販店の銘店コーナーでの販売好調も寄与し、売上高は前年実績を上回りました。森永市場開発㈱は、新型コロナウイルス感染症に起因する行動制限の緩和により、テーマパーク及びアンテナショップにおける販売が好調に推移し、売上高は前年実績を大きく上回りました。
これらの結果、事業子会社全体の売上高は81億9千8百万円と前年実績に比べ16億6千6百万円(25.5%)増となりました。
営業利益は前年実績に比べ3億2千8百万円(109.8%)増益の6億2千6百万円となりました。
[国内における主な商品の前年同期比 (単位:%)]
※表中の数値は国内販売実績にて算出
米国事業
「HI-CHEW」は、ブランド認知及びロイヤリティ向上に向けて、サンプリングなどのマーケティング活動を積極的に展開し、2022年2月及び11月に実施した価格改定以降も店頭回転は好調に推移しました。また、全米各地において引き続き販売店率が拡大したことも寄与し、売上高は前年実績を大きく上回りました。米国事業の第2の柱として本格的な取組みをスタートしたゼリー飲料「Chargel」は、スポーツイベントでのサンプリング活動をはじめ、広告やPR活動を強化し、スポーツシーンにおけるブランド認知向上に向けてターゲットへの接点拡大の取組みを積極的に進めております。
これらの結果、米国事業全体の売上高は146億5千4百万円と前年実績に比べ41億2百万円(38.9%)増となりました。
損益は、増収及び価格改定効果がありましたが、原材料価格や海上運賃の高騰、人件費の増加や「Chargel」への先行的なマーケティング投資により、営業利益は前年実績に比べ3百万円(0.2%)減益の14億7千6百万円となりました。
中国・台湾・輸出等
中国では新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの影響もありましたが、「HI-CHEW」の販売は好調に推移しました。台湾では、前年の新型コロナウイルス感染拡大による売上苦戦の反動もあり、「HI-CHEW」、キャラメル、「inゼリー」いずれも前年実績を大きく上回りました。
これらの結果、中国・台湾・輸出等全体の売上高は68億8百万円と前年実績に比べ10億2千万円(17.6%)増となりました。
営業利益は前年実績に比べ2億3千3百万円(69.3%)増益の5億6千9百万円となりました。
これらの結果、<食料品製造>の売上高は1,854億9千1百万円と前年実績に比べ7.4%増となりました。セグメント利益は148億2千8百万円と前年実績に比べ26億1千1百万円の減益となりました。
<食料卸売>
売上高は、62億7千7百万円と前年実績に比べ5.8%増となりました。セグメント利益は2億7千4百万円と前年実績に比べ7千2百万円の減益となりました。
<不動産及びサービス>
売上高は、19億2千4百万円と前年実績に比べ0.4%増となりました。セグメント利益は8億4千7百万円と前年実績に比べ2千6百万円の減益となりました。
<その他>
売上高6億7千9百万円、セグメント利益1億3百万円であります。
② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2021年5月に発表いたしました「2021中期経営計画」では、最終年度となる2024年3月期の経営目標を売上高1,900億円、営業利益215億円としております。また、重要経営指標として売上高営業利益率11%以上、海外売上高比率9%以上、重点領域売上高比率+5ポイント以上(「2018中期経営計画」の期間平均値比)、ROE10%以上を目標としております。
「2021中期経営計画」2年目となる当連結会計年度の売上高は、コロナ禍における生活スタイルやニーズの変化に対応し需要を獲得できたこと、「2030経営計画」で定めた重点領域の各事業が大きな成長を遂げたことにより、前年実績比7.2%増の1,943億7千3百万円となりました。「2021中期経営計画」経営目標の達成に向けて、順調な進捗となっております。
売上高成長に関する重要経営指標である海外売上高比率について、米国事業の飛躍的な成長等により当連結会計年度は前年実績比2.1ポイント増の11.2%となりました。また、重点領域売上高比率は、重点領域に属する4事業全てで成長を遂げたことで、「2018中期経営計画」の期間平均値に対して当連結会計年度は7.8ポイント増の49.8%となりました。これら2つの指標は、「2021中期経営計画」の目標を前年時点で達成し、引き続き伸長しております。
営業利益は、価格改定による収益性改善や増収による増益効果がありましたが、原材料及びエネルギー価格の高騰や今後の成長に向けた戦略的な広告投資、R&Dなどの無形投資の増加等により、前年実績比13.9%減の152億3千5百万円となりました。収益性に関する重要経営指標である売上高営業利益率について、当連結会計年度は前年実績比2.0ポイント減の7.8%となりましたが、当連結会計年度に実施した無形投資は、当社の安定的な中長期成長を実現するための投資であり、将来的な収益貢献に向けて着実に経営基盤は整いつつあります。
資本収益性を示す重要経営指標であるROEについて、前連結会計年度の政策保有株式売却に伴う特別利益の影響を除くと当連結会計年度は前年実績比2.2ポイント減の7.9%となりましたが、資本コストを意識した財務戦略の実践を通じて改善を図ってまいります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から社会・経済活動が回復に向かう一方、不安定な国際情勢による地政学的なリスクへの警戒感から、原材料及びエネルギー価格高騰が続くなど、当社グループを取り巻く経営環境においては先行き不透明な状態が続くと想定されます。また、中長期的な経営環境につきましては、日本国内の構造的な人口減少と世界的な人口増加、デジタル技術の発展によるビジネスモデルの変革、世界的な健康志向の一層の高まりも予想されます。
このような経営環境を踏まえ、当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献しつつ、2030経営計画達成に向けて中長期的な成長を果たすべく、高い収益性、成長性が見込める事業へ経営資源を集中することで事業ポートフォリオの転換を図り、事業規模の拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。また、投資原資を安定的に創出するべく、一層の経営効率化と財務戦略に基づく諸施策を着実に実行することで、中期経営計画のROE目標である10%水準までの回復を目指します。
<森永製菓グループの財務課題>
企業価値を資本市場の視点で評価する指標の一つとして、「株価純資産倍率(PBR)」がありますが、当社グループのPBRの中長期的推移を見ると、2018年度以降下落傾向が継続し、直近(2022年度末)においては約1.5倍の水準となっております。当社グループの成長性について、資本市場から十分な評価をいただけていないと認識しております。
一方、資本収益性について、その指標であります「株主資本利益率(ROE)」をみると、2021年度までは10%以上で推移しておりましたが、2020年度以降は新型コロナウイルスによる影響や原材料価格等の高騰といった急激な外部環境の変化もあり、ROEは低下傾向となっております。当社グループの場合、PBRとROEの相関は比較的強く、今後、企業価値評価を高めるためには、ROEの改善が重要と考えております。
ROEの改善に向けては、①資本収益性の改善、②資本コストの最適化、の両者を推進する必要があると考えております。前者については、ROICマネジメントのもと、事業ポートフォリオの最適化、事業の収益性の改善、投下資本の効率化などが課題となります。また、後者については、財務安全性を確保した上で、有利子負債の活用拡大によって、最適資本構成に向けて、「加重平均資本コスト(WACC)」を6%程度の水準まで調整いたします。
これらの課題解決に向けた取組みを通じて、企業価値の向上を図り、継続的かつ安定的な株主還元を実現してまいります。
(注)1 政策保有株式売却に伴う特別利益の影響を除いております。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等をFY21の期首から適用しており、FY20について
は、当該会計基準等を遡って適用した後の数値となっております。
3 有利子負債残高は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、リース債務を除く利子を支払っている負債を対象として
おります。
<財務戦略骨子>
当社グループは、積極的な成長投資と安定した財務基盤を維持することにより、持続的な企業価値向上と継続的かつ安定的な株主還元を実現していくことを基本方針としております。「2030経営計画」の達成に向けて、「資本コストを意識した経営」を実践し、企業価値を最大化することですべてのステークホルダーに貢献することを目指してまいります。そのために、以下の3つの主要財務戦略を実行し、財務マネジメントを強化いたします。
・ROIC経営の実践による事業成長力と資本収益性の改善
・財務安全性の確保と最適資本構成による資本コストの適正化
・株主還元の強化
<ROIC経営の実践による事業成長力と資本収益性の改善>
当社グループは、a.コーポレートの視点、b.事業オペレーションの視点、c.個別投資案件管理の視点の3つの視点でROICマネジメントを実践する体制を強化しております。3つの視点に共通する点は、「資本コストを上回るリターンを実現できるか」であり、財務的評価を基本に非財務の要素を加えて、経営判断を行うとともに、PDCAを回して成長力と資本収益性を高めてまいります。
a. コーポレートの視点
「コーポレートの視点」としてのROICマネジメントについては、全社及び各事業のROICとその構成要素を分析するとともに、資本コスト(WACC)を上回っているかを点検いたします。その上で、各事業、各系列の「成長性」「資本収益性」の強化ポイントを確認し、事業ポートフォリオにおけるミッション、変革ポイント、経営資源の最適配分などについて検討してまいります。
2022年度においては、業務執行会議などで「2030経営計画」で重点領域と定めた4事業を中心に成長に向けた事業戦略の議論を進めました。また、投下資本の規模が相対的に大きい菓子食品事業については、投下資本効率の改善に向けた戦略、施策についての検討を進めております。
b. 事業オペレーションの視点
「事業オペレーションの視点」としてのROICマネジメントについては、事業毎にROICツリーを活用して、経営層と事業責任部門で資本収益性の改善につながる課題領域を抽出するとともに、課題解決に向けた戦略及び施策の検討を行います。2023年度予算編成より、ROICツリーに基づく予算水準の点検を開始しており、今後PDCAによる継続的な改善活動につなげてまいります。また、ROICマネジメントを現場レベルまで浸透すべく、全従業員を対象に、独自の動画教材などを用いてROICマネジメントの概念と現場活動との関連性等について理解の促進を図っております。
c. 個別投資案件管理の視点
「個別投資案件管理の視点」については、2022年度に投資マネジメント体制について、投資案件評価方法、意思決定プロセス、投資レビュープロセスなどを刷新し、「資本コストを意識した経営」の基盤強化を進めております。
<財務安全性の確保と最適資本構成による資本コストの適正化>
当社グループは、マクロ環境の変化、事業環境の不透明性及び経営リスク増大に備え、一定水準の財務安全性を確保することを基本方針としております。なお、財務安全性の基準としましては、株式会社日本格付研究所における「A」以上を維持することを原則としております。
その上で、資金需要を満たすための資金調達にあたっては財務ガイダンスを参照し、適切な手元資金の水準、資金コストの水準、調達条件などを総合的に勘案した上で、最適な資本構成を目指してまいります。
2022年度には、過大な手元流動性が資本収益性低下の要因の一つとなっていましたので、財務安全性を考慮しつつ、ネットキャッシュ残高を大幅に圧縮いたしました (前期末466億円から当期末173億円)。今後も最適資本構成に向けた調整によって資本コストを適正化してまいります。
<株主還元の強化>
当社グループは、株主の皆様への利益還元について、経営基盤の盤石化のもとに、継続的かつ安定的な株主還元を実現していくことを基本方針としております。
株主還元にあたっては、健全なバランスシートを維持することを前提に、配当性向の水準、フリーキャッシュ・フローを考慮しつつ、資本政策の指標である「純資産配当率(DOE)」の水準を中長期的に引き上げていくことを目指してまいります。また、総還元性向を意識して、必要に応じ自己株式の取得を機動的に実施することも検討してまいります。
2022年度においては、期末配当47億円に加え、自己株式の取得枠111億円の自己株式取得と合わせて、158億円の過去最高の株主還元を実施いたしました。2021中期経営計画期間 (2021-2023)では、計画を大幅に上回る318億円以上の株主還元を実現できる見通しであります。
(注)1 当該会計期間中の取得金額(FY23は2023年5月16日までの取得分)
2 当該会計期間に係る剰余金処分
3 2023年5月16日取得分まで記載
<財務戦略を踏まえたキャッシュ創出とキャッシュアロケーションの考え方>
2021中期経営計画期間(2021-2023)においては、比較的安定的にEBITDAを創出できたことに加え、サステナビリティボンドの起債、政策保有株式の大幅な縮減等多様な手段で資金を調達いたしました。
一方、退職給付信託への追加資金の拠出、重点領域及び経営基盤づくりのための投資を優先とした設備投資、無形投資の実行、計画を大幅に上回る株主還元の実行等キャッシュアロケーションを見直し、それらの結果、資本収益性の改善に向けて、ネットキャッシュポジションを大幅に調整いたしました。
今後に向けては、次期2024中期経営計画期間(2024-2026)において、ROICマネジメントと資本コストの適正化を進めるとともに、成長投資と株主還元の更なる強化を検討してまいります。
(注)1 営業キャッシュ・フローから退職給付信託拠出による影響を除いた数値
2 2022年3月期及び2023年3月期実績の合計
3 2021年4月~2024年3月における配当金支払額及び自己株式取得額(2023年5月16日までの取得分)の合計