E03521 Japan GAAP
前期
4,183.4億 円
前期比
116.5%
株価
2,482 (03/29)
発行済株式数
397,229,454
EPS(実績)
81.51 円
PER(実績)
30.45 倍
前期
710.6万 円
前期比
108.6%
平均年齢(勤続年数)
46.8歳(22.8年)
従業員数
399人(連結:9,745人)
当社グループは、当社及び関係会社(連結子会社37社、持分法適用関連会社7社、非連結子会社16社、持分法非適用関連会社3社(2023年3月31日現在))により構成され、百貨店業、クレジット・金融・友の会業、不動産業等を行っております。各事業における当社及び関係会社の位置付け等は次のとおりであります。
なお、当社は特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断することとなります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における国内経済の状況は、新型コロナウイルス感染症による影響が段階的に縮小し、社会経済活動の正常化に向けた流れが進んだことで、個人消費を中心に持ち直しの動きが見られました。一方で、ウクライナ情勢や、資源・エネルギー価格や原材料コストの高騰、円安の進行、大幅な物価上昇等、引き続き実体経済に与える影響について注視すべき状況が続きました。
このような事業環境のなか、中期経営計画(2022年度〜2024年度)の初年度にあたる今年度は、「百貨店の再生」の確度を高め、長期に目指す「結実」フェーズを見越して次なる「展開(まち化準備)」フェーズの準備を始める1年と位置づけ、現中期経営計画で掲げる重点戦略を推進いたしました。首都圏既存店舗計では2018年度の売上高を上回ったほか、大都市を中心とした地域店舗においても復調傾向となったことにより業績が大幅に回復し、「百貨店の再生」が前倒しで進展いたしました。
「高感度上質戦略」では、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店の両本店で進めてきた外商セールスとバイヤー、店頭スタイリストが連携した「新セールスネットワーク」の取り組みを、首都圏支店や地域店舗にも展開いたしました。また、外部企業とのアライアンス推進により、百貨店では取扱いのない商品やサービス等のコンテンツ数が2倍超に拡大し、お客さまの幅広いご要望にお応えできる基盤の整備が進みました。これらの取り組みにより、個人外商セールスによる取扱高は首都圏を中心に順調に拡大いたしました。
「百貨店の科学(収支構造改革)」の取り組みでは、首都圏店舗を中心に固定費と変動費の徹底したコントロールにより損益分岐点が下がり、売上回復局面において利益を拡大させやすい構造への転換が進んだことにより、業績の回復に大きく寄与いたしました。
当社グループが持つスキルやノウハウを組み合わせてグループの総合力を発揮させる「連邦戦略」においては、国内百貨店のリモデル施工やグループ内の広告業務において内製化を進めたほか、法人顧客基盤を活用したグループコンテンツの「BtoB外販」、提携カードの発行等、外部企業とのアライアンス推進による新たな事業機会の創出に取り組み、収益拡大につなげてまいりました。
また、「個客とつながるCRM*1戦略」においては、「つながる個客の数」と「つながる個客の利用拡大」を推進したことにより、識別顧客数、識別顧客売上高ともに大幅に拡大いたしました。特にアプリ会員数は新規獲得施策の強化により前年対比で2倍超に拡大したほか、両本店では識別顧客による売上高シェアが約70%に拡大する等、顧客とのつながりが深化いたしました。
「まち化戦略」では、「百貨店」を中核に「ホテル」「レジデンス」「オフィス」等の複合用途に、当社ならではの「提供価値」を掛け合わせることによりユニークな顧客体験の提供を目指しております。今年度は「新宿三丁目駅前西地区市街地再開発準備組合」への参画、各エリアの開発構想について経営レベルでの議論を深めるとともに景観やデザインを含む、まちづくりのコンセプトフレームの策定を進めました。
経営基盤としての「サステナビリティ」の取り組みでは、環境・社会課題の解決に継続して取り組んでおります。環境課題への取り組み事例としては、脱炭素社会実現に向けた「創エネ・省エネ・再エネ」を推進し、国際的非営利団体「CDP」の気候変動に関する調査において、最高評価となる「Aリスト企業」に認定されました。また、人権尊重や責任ある調達に向けたサプライチェーンマネジメント推進の一環として定める「三越伊勢丹グループ人権方針」「三越伊勢丹グループ調達方針」の内容について見直しを図るとともに、お取組先およびその調達先に対して当社グループの調達方針への理解と協力を働きかける「お取組先行動規範」を2023年6月に制定いたしました。
またこの度、当社グループでは2023年4月1日付で「三越伊勢丹グループ 企業理念」を新たに制定いたしました。グループ全体で1,600回を超える対話活動や全社員アンケートに加え、経営層によるワークショップ等を実施し、当社グループの存在意義に加え、ビジョンとする「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別”な百貨店を中核とした小売グループ」の実現に向けて議論を深めてまいりました。ミッションとした「こころ動かす、ひとの力で。」には、グループの多様な人財の力を最大限に活かし、ステークホルダーの皆さまとともに、ビジョンの実現に向けて取り組んでいく思いを込めております。新たな企業理念体系のもとでグループの力を結集し、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
上記の取り組みを進めた結果、当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は487,407百万円(前連結会計年度比16.5%増)、営業利益は29,606百万円(前連結会計年度比398.4%増)、経常利益は30,017百万円(前連結会計年度比215.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は32,377百万円(前連結会計年度比162.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
国内百貨店においては、行動制限の解除に伴う外出機会の増加等を背景に、入店客数、買上客数が大幅に回復し、インバウンドを除いた売上高がコロナ禍前である2018年度実績を上回りました。首都圏店舗ではラグジュアリーブランドや宝飾・時計等の高額品が売上高を大きく押し上げたほか、お得意様を対象とした特別なご招待会である「丹青会」(伊勢丹新宿本店)、「逸品会」(三越日本橋本店)では過去の売上高を更新し、地域店舗においても岩田屋本店等の大都市店舗を中心に復調傾向が続きました。中でも、伊勢丹新宿本店は、クリスマスや年末年始等の繁忙期商戦が大変な賑わいとなったほか、個人外商顧客による売上が大幅に伸びたこと等が寄与し、年間で過去最高となる売上高を記録しました。
オンラインの領域では、リアル店舗との連携強化やオンライン限定商品の拡充等に取り組んだ結果、食品定期宅配ECの「ISETAN DOOR」、化粧品ECの「meeco」、「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」等が伸び、グループ全体のオンライン事業計で増収となりました。また、仮想都市型メタバース「REV WORLDS」では、クリスマスや「サロン・デュ・ショコラ」等でリアル店舗との連動企画を実施したほか、さまざまな機能拡張を進め、専用アプリのダウンロード数が計画を大幅に上回りました。並行して、オンライン事業の早期黒字化を目指して経費コントロールの徹底による収益安定化を進めております。
海外事業では、観光需要の回復に伴い米国や東南アジアの店舗が好調に推移し、前年から売上高が大きく伸長いたしました。なお、賃貸借契約の終了に伴い、成都伊勢丹の営業を2022年12月に終了しております。
このセグメントにおける売上高は416,020百万円(前連結会計年度比11.3%増)、営業利益は20,432百万円(前連結会計年度は営業損失6,339百万円)となりました。
クレジット・金融・友の会業
株式会社エムアイカードでは、行動制限の解除に伴う外出機会の増加を受け、旅行、飲食領域などでのクレジットカード利用が大幅に伸長いたしました。グループ百貨店以外の外部取扱高が過去最高となった一方で、グループ内取引の減収等により減益となりました。今後は、金融事業を当社グループの成長事業の柱のひとつに位置づけ、百貨店事業を通じてつながった識別顧客の「人生や暮らし全般に関わるご要望」にお応えすべく、金融商品・サービスの積極的な開発・拡大に取り組んでまいります。
このセグメントにおける売上高は30,823百万円(前連結会計年度比1.1%増)、営業利益は3,791百万円(前連結会計年度比37.5%減)となりました。
不動産業
不動産業では、保有物件におけるテナント誘致が計画から遅延したことにより賃料収入が減収となった一方で、建装等を手がける株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインでは、外部クライアントからの新規受注やコロナ禍で延期となっていた工事の完工が今期に入り増加したこと等が寄与し、大幅な増収増益となりました。また、「連邦戦略」に基づき、百貨店リモデル工事のグループ内製化やグループが持つ法人顧客基盤を活用した「BtoB外販」等を推進いたしました。
このセグメントにおける売上高は20,518百万円(前連結会計年度比13.5%増)、営業利益は4,014百万円(前連結会計年度比28.1%減)となりました。
その他
クレジット・金融・友の会業、不動産業を除く関係会社においては、2022年6月の株式会社エムアイフードスタイルの再子会社化や、経費コントロールの徹底、三越伊勢丹グループの持つ顧客基盤を活用したBtoB外販の拡大などにより増収増益となりました。
株式会社三越伊勢丹ビジネス・サポートでは、売上回復に伴う取扱荷量の増加によりグループ百貨店の館内物流業務が伸長いたしました。並行して、物流展示会への参加や「連邦戦略」での新規開拓等によりグループ外からの物流業務の受託拡大に取り組んでおります。
株式会社スタジオアルタは、新宿アルタビジョンなどの屋外広告事業が好調に推移したことに加え、事業構造改革により大幅な固定費削減が進展し営業黒字に転換いたしました。グループ内の広告関連業務を同社に集約しており、グループ内外からの受託を促進することにより事業拡大を目指してまいります。
このセグメントにおける売上高は77,728百万円(前連結会計年度比56.8%増)、営業利益は1,136百万円(前年同四半期比145.9%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,217,308百万円となり、前連結会計年度末に比べ48,733百万円増加しました。これは現預金増加および売上増による売掛債権の増加、株式会社エムアイフードスタイルを連結子会社化したことなどによるものです。
負債合計では664,788百万円となり、前連結会計年度末から13,874百万円増加しました。これは主に、売上増に伴う仕入債務の増加および利益増加に伴う未払法人税等の増加などによるものです。
また、純資産は552,519百万円となり、前連結会計年度末から34,858百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことおよび為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて24,566百万円増加し、109,039百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、66,301百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が28,387百万円増加しました。これは主に、コロナ禍からの売上高の回復及び収支構造改革により、税金等調整前当期純利益が16,709百万円増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、27,026百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が9,655百万円増加しました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出10,599百万円があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、16,198百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が23,728百万円減少しました。これは主に、前連結会計年度において長期借入金の返済による支出23,300百万円があったことなどによるものです。
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 その他セグメントの販売実績の増加は主に、株式の追加取得により株式会社エムアイフードスタイルを連結の範囲に含めたこと等によるものであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の確保及び財務健全性の維持を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出と幅広い資金調達手段の確保に努めております。
運転資金及び収益基盤拡大に必要な投融資資金は、営業キャッシュ・フローに加え、銀行借入金、社債、コマーシャル・ペーパー等により賄っております。
また、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠により、充分な流動性を確保しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。