E01084 Japan GAAP
前期
9.46兆 円
前期比
92.2%
株価
1,015.5 (12/10)
発行済株式数
1,392,642,290
EPS(実績)
164.09 円
PER(実績)
6.19 倍
前期
949.6万 円
前期比
103.2%
平均年齢(勤続年数)
42.0歳(18.0年)
従業員数
4,985人(連結:13,991人)
当社及び当社の関係会社(当社、子会社177社及び関連会社55社)が営む主要な事業の内容と主要な関係会社の当該事業における位置付けは、次のとおりです。
また、当連結会計年度より連結子会社又は持分法適用会社の数を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項 1.連結の範囲に関する事項 2.持分法の適用に関する事項」に記載のとおりです。
[事業系統図]
※画像省略しています。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウィルスからの経済活動の正常化や物価上昇の値上げ浸透などにより企業業績は改善に向かい、多くの企業が昨年に引き続き賃上げを進める中で、日銀がゼロ金利政策の解除に動くなど、デフレ脱却につながる重要な変化が見られました。一方で、経済成長のペースは、インフレによる実質賃金の低迷もあり、緩やかな動きにとどまりました。
国内石油製品販売量は、ガソリン等主燃料は2020年以降のコロナ禍における需要減からの回復が一服し、前年度から減少しましたが、ジェット燃料は引き続き前年度を上回って推移しました。
原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や米国の利上げ長期化観測の後退などにより、9月までは上昇基調で推移し、以降は米中の経済指標の弱さから景気減速が意識され、OPECプラスによる追加減産が見送られたことなどを背景に下落基調へ転じましたが、年末頃から中東情勢の緊迫化などにより再び上昇しました。この結果、ドバイ原油価格は前期比10.2ドル/バレル下落の82.3ドル/バレルとなりました。
円の対米ドルレートは、日米の金融政策の差を背景に円安ドル高が進行し、年明け以降もFRBによる利下げ観測の後退により、日銀のマイナス金利解除後も円安が続きました。その結果、平均レートは前期比9.2円/ドル円安の144.6円/ドルとなりました。
イ.事業構造改革の進捗
当社は企業価値の更なる向上、及びPBR1倍超の早期達成に向け、25年度のROE目標を従来の8%から10%以上へ上方修正しました。その達成に向けた事業戦略として「既存事業の更なる収益力向上と資本効率化」及び、「新規事業の拡大による事業ポートフォリオ転換とGHG削減」、また財務戦略として「資本収益性を高める財務戦略の推進」に取り組んでいます。既存のエネルギーと素材の安定供給を果たしながら高い資本収益性を確保しつつ、カーボンニュートラルに向けた社会実装を着実に進め、3つの事業領域(「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」)へポートフォリオを転換することが、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を実現する道筋と考えています。3つの事業領域における取り組み状況は以下のとおりです。
(一歩先のエネルギー)
SAF(Sustainable Aviation Fuel)、アンモニア、CO₂の回収・利用・貯留(CCUS)設備、合成燃料などの早期の社会実装を目指し、取り組みを開始しました。
SAFについては、当社は2030年に年間50万KLの国内供給体制の構築を目指し、2028年度の供給開始に向け千葉事業所及び徳山事業所における製造装置の建設に向けた検討を進めています。また海外では、豪州Jet Zero Australia社との協業を開始し、SAFのグローバルなサプライチェーン構築に向けた取り組みを進めています。
アンモニアについては、サプライチェーン構築に向けて、徳山事業所の既設インフラを活用したアンモニア輸入基地化に向けた検討を進めており、コンビナート各社を含む周辺広域の事業所向けに2030年に100万トン超のアンモニア供給を目指しています。また、2024年2月、当社は三菱商事㈱及びProman社が米国ルイジアナ州レイクチャールズで検討を進めているクリーンアンモニア製造プロジェクトへの参画を決定し、本プロジェクトで生産されるアンモニアを、日本国内へ供給することを構想しています。
CCUSについては、北海道苫小牧エリアにおいて、当社、北海道電力㈱、石油資源開発㈱で、3社の事業拠点や強みを活かし、2030年までの事業立ち上げを視野に共同検討を進めています。
合成燃料については、南米・北米・豪州などで合成燃料の製造を行うHIF Global社と、戦略的パートナーシップに関する基本合意書を締結しました。国内で回収したCO₂の国際輸送と活用、海外における合成燃料生産等の検討を進めています。また、当社グループ製油所・事業所における合成燃料の生産検討を進め、2030年までに国内での生産・供給体制の確立を目指します。
これらの早期社会実装に向け、CNX戦略本部を2023年12月付で設置し、社内体制を強化しました。グループ内のタイムリーな情報共有と迅速な意思決定を行い、社内の知見・情報・人財を結集させることで取り組みを更に加速していきます。
(多様な省資源・資源循環ソリューション)
2050年カーボンニュートラル実現に向けては、「バイオ化学品の供給」と「ケミカルリサイクルによる資源循環システム確立」の取り組みを推進しました。
「バイオ化学品の供給」については、バイオ化学品の認証システムである「ISCC Plus」を、これまでの千葉事業所・徳山事業所に加え、2023年4月にマレーシアのパシルグダン事業所でも取得しました。外部調達したバイオナフサをベースに、マスバランス方式でのバイオ化学品の供給を推進しています。
「ケミカルリサイクル」については、2023年4月に、油化ケミカルリサイクル商業生産設備(使用済みプラ処理能力2万t/年、2025年度商業運転開始予定)の投資を正式決定し、環境エネルギー㈱と「ケミカルリサイクル・ジャパン株式会社」を設立しました。幅広い業種の企業から問合せをいただいており、資源循環システムの確立に向け共同で実証実験を進めています。
次世代電池向け固体電解質の量産に向けては、2023年夏に小型実証設備 第1プラントの能力増強を決定しました(2024年度完工予定)。また、同時期に第2プラントの新規稼働も開始し、お客様へのサンプル供給及び量産技術の実証を加速しています。
更に、2023年10月にはトヨタ自動車㈱との協業を発表しました。2027-2028年の全固体電池実用化をより確実なものとするために、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築に両社で取り組みます。両社の技術を融合することで、固体電解質と全固体電池の量産実現を目指します。
(スマートよろずや)
当社は、中期経営計画において「スマートよろずや構想」を掲げ、全国に広がるapollostationを重要なインフラ網として維持・活用するため、従来の給油所のみならず、地域の生活支援基地としての役割も担うべく変革を進めています。その一つの類型として、2023年10月より、洗車、カーコーティング、カーシェア、レンタカー、車検、板金、整備、車販売・買取といったニーズに高い専門性をもって対応する新しい業態のサービスステーション(SS)「apolloONE」をスタートしました。地域に根差した特約販売店が運営するSSネットワークのもと、サービスステーションのDXの基点となるスマートフォンアプリDrive Onの施策等もあわせ、お客様のカーライフを豊かにする取り組みを展開していきます。
ウ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格の下落等により、8兆7,192億円(前期比△7.8%)となりました。
売上原価は、7兆8,721億円(前期比△9.1%)となり、販売費及び一般管理費は、5,008億円(前期比△2.1%)となりました。
営業損益は、資源セグメントにおいて石炭市況の下落等があったものの、燃料油セグメントにおけるタイムラグを主要因とした国内マージン改善や海外トレーディング事業の増益等により、3,463億円(前期比+22.6%)となりました。
営業外損益は、持分法投資利益の減少等により、389億円(前期比△0.4%)となりました。その結果、経常損益は3,852億円(前期比+19.8%)となりました。
特別損益は、前年度の遊休不動産等の固定資産売却益計上の反動や貸倒引当金繰入額の計上等により、△585億円(前期比△852億円)となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、999億円(前期比+2.5%)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は17億円(前期比△41.6%)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,285億円(前期比△9.9%)となりました。
エ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2023年1月~12月期、国内子会社は2023年4月~2024年3月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
(2023年3月期) |
(2024年3月期) |
増減額 |
増減率 |
燃料油 |
74,039 |
70,808 |
△3,231 |
△4.4% |
基礎化学品 |
6,669 |
6,016 |
△653 |
△9.8% |
高機能材 |
5,110 |
5,154 |
+44 |
+0.9% |
電力・再生可能エネルギー |
1,971 |
1,415 |
△555 |
△28.2% |
資源 |
6,721 |
3,705 |
△3,016 |
△44.9% |
その他・調整額 |
54 |
95 |
+41 |
+77.0% |
合計 |
94,563 |
87,192 |
△7,371 |
△7.8% |
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
(2023年3月期) |
(2024年3月期) |
増減額 |
増減率 |
燃料油 (在庫評価影響除き) |
730 (173) |
2,197 (1,672) |
+1,466 (+1,499) |
200.8% (+867.6%) |
基礎化学品 |
101 |
220 |
+120 |
+119.0% |
高機能材 |
170 |
276 |
+106 |
+62.6% |
電力・再生可能エネルギー |
5 |
△76 |
△81 |
- |
資源 |
2,309 |
1,169 |
△1,140 |
△49.4% |
その他 |
12 |
5 |
△7 |
△56.3% |
調整額 |
△242 |
△161 |
+81 |
- |
合計 (在庫評価影響除き) |
3,084 (2,527) |
3,630 (3,106) |
+546 (+579) |
+17.7% (+22.9%) |
(注)セグメント別利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向けた海外事業の強化と製油所・事業所のCNXセンター化に向けた取り組みを進めてきました。
国内製造供給においては、グループ供給体制の最適化、及びCNXセンター化に向けて2024年3月に山口製油所(西部石油株式会社)の精製機能を停止いたしました。また、富士石油株式会社との間で既存燃料油事業の競争力強化及び将来の脱炭素化を見据えた取り組みについての協業の深化に関する協議を進めています。更に、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みながら、燃料油の安定供給に努めました。
国内販売においては、お客様の利便性向上・ブランド顧客の拡大に向けて、2024年2月よりドコモが提供するポイントサービス「dポイント」を導入しました。また、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、2021年11月にリリースしたアプリ「Drive On」を積極展開しています。「Drive On」は、スマートよろずやのベースとなるアイテムであり、ここを起点にカーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus」、個人向けカーリース「オートフラット」、「らくらく安心車検」などに繋げていきます。また、2022年11月より決済機能「モバイルDrive Pay」を搭載し、お客様にとって「Drive On」一つで、メンテナンス予約、給油決済、クーポン利用等が可能となりました。2024年3月時点で、「Drive On」は800万ダウンロードまで利用が拡大しています。
海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めるとともに、下期に実施した定期補修工事において生産性向上等の対策を実施しました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
以上の結果、原油価格の下落等もあり、燃料油セグメントの売上高は7兆808億円(前期比△4.4%)となりました。セグメント損益は、タイムラグによる国内製品輸出マージン改善や海外トレーディング事業の増益及び自家燃コストの減少等により、2,197億円(前期比+200.8%)となりました。なお、セグメント損益に含まれる在庫評価益は525億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
競争力強化の一環としてENEOS㈱より譲受した愛知事業所のパラキシレン製造装置は、2022年12月に本格稼働を開始し、余剰ガソリン基材の活用によるケミカルシフトを更に推進しています。また、千葉地区での生産最適化及び化学品原料の低炭素化の推進を目的に、三井化学㈱との間で2027年度を目途としたエチレン装置集約の検討を開始しました。
以上の結果、基礎化学品セグメントの売上高は6,016億円(前期比△9.8%)となりました。セグメント損益は、前年度の定期修繕実施による反動及び愛知事業所のパラキシレン製造装置稼働に伴う生産数量増に加え、製品マージンの改善等により、220億円(前期比+119.0%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
物流の2024年問題解決に貢献する、業界初の無リン無灰ディーゼルエンジンオイルを2022年9月に上市しています。本製品はディーゼル車のDPF(排ガスフィルター)トラブルを解決します。既に2024年3月時点で900社以上にご使用いただいており、ドライバー・整備士の方々の労働時間の削減、精神的負担の軽減に貢献しています。また、海外においては出光ブランド製品の拡販をすすめ、収益への貢献を果たしました。
(機能化学品事業)
コロナ禍後の経済活動正常化等を受けた原燃料価格高騰に対し、徹底した採算改善活動によって収益力強化に努めました。中国での新増設により中長期的に厳しい市場環境が継続すると予想されるビスフェノールAは、事業からの撤退を決断し、更に筋肉質な体質への変革を進めました。また、機能性に優れる液状ゴム事業を行っている出光クレイバレー㈱を2023年5月に完全子会社化(10月に吸収合併)することで収益力を強化しました。一方、エンプラ・コンパウンド事業では、高付加価値分野での拡販に注力し、マレーシアでSPS2号機が2023年11月から商業運転を開始しました。
(電子材料事業)
インフレ継続やコロナによる巣ごもり需要の反動が影響し、ディスプレイ市場は低迷し、材料需要は減少しましたが、材料のコストダウン、高付加価値材料の採用拡大を進めました。
(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))
国内において、2022年度と同様にアスファルトの需要は減退傾向でしたが、社会インフラ資材として安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく製品開発や、低炭素・カーボンニュートラルに貢献する技術開発を行いました。海外事業においては、マレーシアにおいて高機能アスファルト事業の現地企業との合弁会社を設立しました。
(農薬・機能性飼料事業)
㈱エス・ディー・エス バイオテックにおいて国内農薬登録の新規取得を芝生用除草剤で1件実施し、適用拡大を殺菌剤5件、殺虫剤を1件、殺菌・殺虫剤を2件、生物農薬殺虫剤を1件、生物農薬殺菌剤を1件、緑地管理用除草剤を2件実施することで製品の更なる普及拡大を進めて参りました。また、海外事業では水稲除草剤ベンゾビシクロン剤の中国における新規混合剤の上市やベトナムでの単剤の販売を開始しました。
以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、5,154億円(前期比+0.9%)となり、セグメント損益は、潤滑油事業における前年度のマイナスのタイムラグ影響の解消や機能化学品事業における不採算事業からの撤退等が寄与し、276億円(前期比+62.6%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
安定的な収益基盤の確立に取り組むとともに、社会の電化・脱炭素ニーズへの対応として、再生可能エネルギー電源の保有促進や、蓄電池の活用等を通じたソリューション事業における実証と展開を進めています。国内においては、宮崎大学におけるPPA契約による太陽光発電システムの稼働が開始するとともに、当社製油所跡地を活用した、系統用蓄電池事業への参入を決定しました。2025年の稼働開始を予定しており、電力系統の需給バランス調整を始め、カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みを強化していきます。海外においては、米国での太陽光発電所の開発・運用等の事業や、経済成長に伴い需要が伸長する東南アジアにおける、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置に取り組んでいます。また、ソーラーフロンティアにおいては、EPC事業を始めとする太陽光発電所の開発、長期安定利用、並びにリサイクルまでのライフサイクル全体を通じたソリューション提供を行っています。
以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,415億円(前期比△28.2%)となりました。セグメント損益は、ソーラー事業は、構造改革に伴うコスト低減や自家消費型太陽光発電販売の進展により前期比で改善となった一方、電力事業おける販売価格の低下及び装置トラブルに伴う調達の増加等の影響が上回り△76億円(前期比△81億円)となりました。
(オ)資源セグメント
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、安定生産を継続しました。欧州では持分法適用会社である㈱INPEXノルウェー及び現地法人を通じて、ノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱を行いました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域における新規発電所の建設を進め、その他国内での新規案件の調査を進めました。
石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は383億円(前期比△11.7%)となりました。セグメント損益は、原油価格の下落や操業費用の増加等により、191億円(前期比△41.7%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
石炭事業では、事業構造改革の一環としてエンシャム鉱山権益を売却しました。競争力の高いボガブライ鉱山からの安定供給を継続していきます。
その他事業については、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラントをベトナムで竣工するとともに、ボイラー排ガス中のCO₂を固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)を用いたCO₂再資源化(カーボンリサイクル)の事業化検討を進めました。また、石炭鉱山の運営で培った事業基盤を活かし、豪州でリチウム事業を推進するDelta Lithium Limitedへの出資を行うなど、レアメタル鉱山事業への参入を推進するとともに、鉱山資産を活用した再生可能エネルギーやグリーン水素・アンモニアプロジェクトの事業化検討など、カーボンニュートラル・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
石炭事業・その他事業の売上高は、鉱山規模縮小による生産数量の減少や石炭市況の下落等により、3,321億円(前期比△47.2%)となりました。セグメント損益は978億円(前期比△50.6%)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は3,705億円(前期比△44.9%)、セグメント損益は1,169億円(前期比△49.4%)となりました。
(カ)その他セグメント
その他セグメントの売上高は、95億円(前期比+77.0%)となり、セグメント損益は5億円(前期比△56.3%)となりました。
(キ)研究開発
石油・石油化学の基幹製造拠点である千葉事業所(千葉県市原市)内に、新たな統合研究所「イノベーションセンター(仮称)」(2027年度完工予定)を新設することを決定しました。現在は複数拠点にまたがる生産技術、開発技術等の研究所をイノベーションセンターに集約し、事業を横断した研究開発体制の構築と社外連携の強化を図ることで、研究開発から分析・解析、実証、プロセスエンジニアリング、商業生産までの一気通貫体制の構築と、中期経営計画で掲げる事業構造改革に向けた技術開発の加速を実現します。
②財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
|
前連結会計年度 (2023年3月期) |
当連結会計年度 (2024年3月期) |
増減 |
流動資産 |
27,321 |
29,168 |
+1,848 |
固定資産 |
21,333 |
20,955 |
△378 |
資産合計 |
48,654 |
50,123 |
+1,469 |
流動負債 |
21,640 |
21,925 |
+285 |
固定負債 |
10,721 |
10,073 |
△648 |
負債合計 |
32,361 |
31,998 |
△363 |
純資産合計 |
16,293 |
18,125 |
+1,832 |
負債純資産合計 |
48,654 |
50,123 |
+1,469 |
ア.資産の部
当期末における資産合計は、円安影響などによる棚卸資産の増加や当期末の休日影響による売掛金の増加等により、5兆123億円(前期末比+1,469億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、円安影響などによる買掛金の増加や当期末の休日影響による未払金の増加があった一方、有利子負債の減少等により、3兆1,998億円(前期末比△363億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、自己株式の取得や配当金の支払いがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や円安による為替換算調整勘定の増加等により、1兆8,125億円(前期末比+1,832億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の33.2%から当期末は35.9%(前期末比2.7ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.7(前期末:0.9)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
|
前連結会計年度 (2023年3月期) |
当連結会計年度 (2024年3月期) |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
△328 |
3,774 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
701 |
△658 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△904 |
△2,805 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
172 |
27 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△360 |
338 |
現金及び現金同等物の期首残高 |
1,390 |
1,031 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
1,031 |
1,369 |
当期末の現金及び現金同等物は、1,369億円となり、前期末に比べ、338億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
税金等調整前当期純利益や減価償却費等の資金増加要因が、円安影響に伴う運転資本の増加等の資金減少要因を上回ったことにより、3,774億円の収入となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
製油所設備の維持更新投資等による有形固定資産の取得等により、658億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
自己株式の取得や配当金の支払い、長期借入金の返済等により、2,805億円の支出となりました。
④生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
燃料油 |
4,000,269 |
90.9 |
基礎化学品 |
523,181 |
89.2 |
高機能材 |
303,727 |
97.8 |
電力・再生可能エネルギー |
- |
- |
資源 |
249,714 |
54.8 |
その他 |
- |
- |
合計 |
5,076,893 |
88.2 |
(注)上記の金額は、資源セグメントは販売金額、その他のセグメントは製品生産額によって記載をしています。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
燃料油 |
7,080,754 |
95.6 |
基礎化学品 |
601,574 |
90.2 |
高機能材 |
515,377 |
100.9 |
電力・再生可能エネルギー |
141,521 |
71.8 |
資源 |
370,458 |
55.1 |
その他 |
9,514 |
177.0 |
合計 |
8,719,201 |
92.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績の分析
経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「ウ.業績」及び「エ.事業の経過及び成果」に記載しています。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。
設備投資資金については、エネルギー安定供給のための操業維持投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、一歩先のエネルギーや多様な省資源・資源循環ソリューション及びスマートよろずや等の事業ポートフォリオ転換推進投資、石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために資本効率と財務健全性のバランスを勘案しつつ、必要な運転資金及び設備投資資金を、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、社債・コマーシャルペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様なリソースから効果的に組み合わせて調達しています。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、2030年ビジョン「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めるため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標としています。
中期経営計画(2023~2025年度)の最終年度である2025年度の経営指標目標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期経営計画(2023~2025年度)の取組み」に記載のとおり、自己資本利益率(ROE)が10%、実態投下資本利益率(ROIC)が7%(既存事業)です。
2024年3月期の自己資本利益率(ROE)が前期対比で減少している主な要因は、特別損失の増加等による親会社株主に帰属する当期純利益の減少、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う当期末自己資本の増加によるものです。また、同様に実態投下資本利益率(ROIC)の主な増加要因は、燃料油セグメントにおけるタイムラグを主要因とした国内マージンの改善等による在庫影響除き営業利益の増加、借入返済に伴う投下資本の減少によるものです。
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
|
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
自己資本利益率(ROE)(%) |
- |
2.6 |
9.2 |
14.2 |
11.3 |
投下資本利益率(ROIC)(%) (全社計) |
- |
2.8 |
6.8 |
6.2 |
8.4 |
実態投下資本利益率(ROIC)(%) (既存事業計) |
- |
- |
- |
3.4 |
4.8 |
ネットD/Eレシオ(倍) |
1.0 |
1.0 |
0.9 |
0.9 |
0.7 |
自己資本比率(%) |
29.6 |
29.1 |
30.7 |
33.2 |
35.9 |
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):在庫影響除き親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
※2024年3月期より算定方法を変更しています。その結果、2021年3月期、2022年3月期及び2023年3月期の指標も変更しています。
投下資本利益率(ROIC):(在庫影響除き税後営業利益+持分法投資損益)/(株主資本+有利子負債)
※2024年3月期より算定方法を変更しています。その結果、2023年3月期の指標も変更しています。
実態投下資本利益率(ROIC):計算式は投下資本利益率(ROIC)と同様。ただし、大きな外部環境影響を除いて比較するため、燃料油セグメントのタイムラグ影響、資源セグメントの石炭価格(実績を2026年3月期計画前提である120USD/tへ)等を補正
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。
4.2020年3月期の投下資本利益率(ROIC)、2020年3月期と2021年3月期及び2022年3月期の実態投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。