売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E24050 IFRS

売上高

13.9兆 円

前期

15.0兆 円

前期比

92.3%

時価総額

2.45兆 円

株価

808.7 (06/18)

発行済株式数

3,032,850,649

EPS(実績)

95.00 円

PER(実績)

8.51 倍

平均給与

992.9万 円

前期

1,007.0万 円

前期比

98.6%

平均年齢(勤続年数)

44.0歳(19.0年)

従業員数

873人(連結:44,617人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社を持株会社とする企業集団(当社、子会社592社、持分法適用会社等168社)が営む主要な事業の内容と主要な関係会社の当該事業における位置づけは、次のとおりです。主要な会社の詳細は、「4 関係会社の状況」に記載しています。

※画像省略しています。

なお当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準は連結ベースの数値に基づき判断することとなります。

23/06/28

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

<当社グループを取り巻く環境>

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和したものの、世界的な物価上昇を背景とした米欧の金融引き締め等を受け、総じて世界経済の回復の動きには弱さが見られました。また、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学的リスクも、引き続き世界経済に影響を及ぼしました。

わが国経済については、物価上昇による家計や企業への影響や世界経済の下振れリスク等の下押し懸念はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響緩和から経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復が続きました。

ドバイ原油の価格は、期初は1バーレル当たり102ドルから始まり、期末には78ドル、期平均では前期比15ドル高の93ドルとなりました。EUのロシア産原油禁輸措置の導入による供給不足感等を受け6月には119ドルまで上昇しましたが、各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念や中国の新型コロナウイルス感染拡大等の影響を受けて、12月には70ドル台前半まで下落し、その後は80ドル前後で推移しました。

銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり465セントから始まり、期末には405セント、期平均では前期比52セント安の388セントとなりました。中国の経済減速や世界的な景気後退懸念の高まりを受け7月にかけて310セント台まで大きく下落しましたが、中国のゼロコロナ政策撤廃や米国利上げペース緩和期待等により上昇に転じ、1月以降は概ね400セントを超える水準で推移しました。

円の対米ドル相場は、期初は1ドル122円から始まり、期末には134円、期平均では前期比23円円安の135円となりました。米国の金融引き締めによる日米の金利差拡大を背景に10月には150円台まで円安が進行しましたが、12月に日銀の政策修正により130円台前半まで急速に円高が進行、2月には、日銀総裁の後任人事が決定し、政策変更の憶測から一時120円台後半まで円高が進行しました。

 

<連結業績の概要>

こうした状況のもと、当連結会計年度における売上高は、原油価格の上昇に伴う石油製品販売価格の上昇や円安の進行等により、前年同期比37.5%増の15兆166億円となりました。また、営業利益は、前年同期比5,046億円減益の2,813億円となりました。在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、前年同期比1,691億円減益の2,465億円となりました。

金融収益と金融費用の純額239億円を差し引いた結果、税引前利益は、前年同期比5,144億円減益の2,574億円となり、法人所得税費用544億円を差し引いた当期利益は、前年同期比3,761億円減益の2,030億円となりました。

なお、当期利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する当期利益が1,438億円、非支配持分に帰属する当期利益が592億円となりました。

 

※画像省略しています。

(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

[エネルギーセグメント]

国内の石油製品需要は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和により回復の動きが見られるものの、構造的な需要減少により同感染症のまん延前を下回る水準で推移しています。他方、アジアの石油化学製品需要は、中国を中心に堅調に伸長した結果、前連結会計年度を上回る水準で推移しました。

 

<基盤事業>

国内需要の減少が続く中にあっても、国民生活に不可欠な石油製品の安定供給の使命を果たし、サプライチェーンの最適化・効率化・強靭化によりキャッシュ・フローを創出すべく、次の諸施策に取り組みました。

 

●SSネットワークの強化

国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるために様々なサービスを展開しました。

具体的には、QRコードを使った決済やクーポン利用、給油履歴の確認等ができる新ツール「ENEOS SSアプリ」の展開に加え、SSにおいて「Tポイント」・「楽天ポイント」・「dポイント」の3つのポイントが利用可能となるマルチポイントサービスを開始しました。

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

 

●製油所の信頼性向上に向けた取り組み

製油所の信頼性向上のため、検査プログラムの強化・前倒し、保全計画の改善、工事品質の向上、運転トラブルの削減の4本柱を軸として活動しています。

検査プログラムの強化・前倒しについては、検査範囲を拡大し、潜在リスクの網羅的な洗い出しを行って、操業影響の大きい箇所から順次検査を実施しています。

保全計画の改善については、これまでのトラブルから得られた知見及び操業に与える影響を踏まえて優先順位を改めて評価し、点検・補修の強化を行っています。

工事品質の向上については、施工事業者との意見交換やお互いの知見を共有し、具体的な施工内容に応じて社外のスペシャリストの知見も取り入れ、施工品質に起因するトラブルの撲滅に取り組んでいます。

運転トラブルの削減については、ベテランの勘所の手順化、若手運転員の体感型教育等を通じ、非定常操作の確実性向上に取り組んでいます。

 

●デジタル技術の積極導入

株式会社Preferred Networksとともに、熟練運転員のノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントのオペレーションを自動化するAIシステムを開発し、国内初となるAI技術による石油化学プラントの連続自動運転を実施しています。また、同社と合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryを設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を開始しています。同サービスは2022年9月1日時点で、41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。

また株式会社イクシスと、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について協業検討を開始しました。

 

<成長事業>

「脱炭素・循環型社会」「デジタル革命」及び「ライフスタイルの変化」は、これまで以上のスピード感で進展することを見据え、成長事業の育成・強化に向けた諸施策に取り組みました。

 

(石油化学事業)

将来的な競争力・収益力の強化を図るべく、付加価値の高い誘導品事業の拡大に取り組みました。その一環として、約120億円を投じ、超高圧・高圧電線の絶縁用ポリエチレンの生産能力を約3万トン増強することを決定し、建設を進めています。また、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売を目指し、株式会社日本触媒及び三菱商事株式会社(以下、三菱商事)と共同で、バイオ原料に関わる市場調査、バイオ誘導品の製造・販売の実現性を評価し、バイオ誘導品のサプライチェーン構築検討を行っています。

 

(素材事業)

2022年4月にJSR株式会社のエラストマー事業を買収し、株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)として事業を開始しました。ENSが有する販売ネットワークを活用した石油樹脂の拡販や、ブタジエン・DCPD(ジシクロペンタジエン)等の原料の相互融通、ENSの研究開発技術との組み合わせ等により、統合シナジーの最大化を進めています。

潤滑油事業においては、電気自動車(EV)の更なる普及を見据え、EVの駆動システムの特性に合わせたEV専用油の開発及び国内外での顧客獲得に取り組みました。

 

(バイオ燃料・SAF)

航空業界における脱炭素化の進展を見据え、持続可能な航空燃料(SAF)の量産体制の確立に向け、TotalEnergies社(以下、トタルエナジーズ)と、和歌山製油所におけるSAF製造に関する事業化調査を開始しました。本検討においては、主に廃食油・獣脂といった廃棄物を原料とし、2026年までにSAF製造を開始することを想定しています。(年間SAF製造能力:約30万トン(40万kl))。主な原料である廃食油については、株式会社野村事務所と連携し、日本各地から安定的に調達する仕組みの構築を目指します。さらに、三菱商事と、SAFを含む次世代燃料の社会実装に向けた共同検討を実施することに合意しました。ENEOSが有する製造技術及び販売網と三菱商事が有する国内外の原料調達及びマーケティングに関する知見を活用し、次世代燃料のサプライチェーン構築の早期実現に貢献します。

また、AMPOL Australia Petroleum社と、同社のリットン製油所(豪クイーンズランド州)におけるバイオ燃料製造を検討するための覚書を締結しました。加えて、両社と豪クイーンズランド州政府は、同州政府が公式に本検討への支援を検討する覚書を締結しました。

 

(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)

●エネルギーサービス

・再生可能エネルギー事業

次世代型エネルギー事業の柱とすべく、日本を代表する事業者への飛躍を目指しています。2022年度においては、国内外で電源の新規開発・獲得に引き続き注力し、具体的には、長崎県五島市沖で浮体式洋上風力発電所の風車組立作業を推進するとともに、兵庫県赤穂郡では播州メガソーラー発電所(総発電容量約77MW)が、米国テキサス州ではCutlassソーラー(総発電容量約140MW)が運転を開始しました。さらに、日本を含むアジア各国においては、トタルエナジーズと法人向け太陽光発電自家消費支援事業会社を設立し、今後5年間での2GWの発電容量開発を目指して営業を開始しました。

このような事業活動の結果、総発電容量は約125万kW(建設中含む)を獲得し、「2022年度末までに再生可能エネルギーによる国内外の総発電容量100万kW」目標を達成しました。

また、2023年4月にENEOSが国内に有する太陽光・陸上風力・洋上風力の各発電事業及び関連する事業をジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE)に移管し、両社の事業を統合しました。これにより、ENEOSが保有する事業・資産と、JREが有する専門性・豊富なノウハウ・スピード・開発力・運営力・人材を結集し、更なる効率的な開発・運営体制を強化しました。今後も同社の開発力及び運営力を活用することで新規電源開発を強力に推進していきます。

 

・水素事業

安価で安定的なCO2フリー水素の国際的サプライチェーンの構築に向けて、国内外の広範囲なアライアンスを活用するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金事業)等の支援も受け、実証実験や独自技術の開発等に取り組みました。

具体的には、アラブ首長国連邦と日本間のクリーン水素サプライチェーン構築に向けた協業検討を開始するとともに、水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を安価に製造する独自技術「Direct MCH®」の実証について、電極面積を工業化サイズまで拡大した中型電解槽(150kW級、水素30Nm3/h相当)を開発し、豪クイーンズランド州において実証プラントを建設し、運転を開始しました。また、国内最大規模の国産水素サプライチェーン構築に向けて「北海道大規模グリーン水素サプライチェーン構築調査事業」を開始しました。

さらに、鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素の利用拡大について共同検討を行うため、東日本旅客鉄道株式会社と連携協定を締結するとともに、東京国際空港及びその周辺地域における2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて、官民6者において連携による「CO2フリー水素利活用モデル調査」を開始しました。

このほか、水素ステーション3か所を新たに建設し、国内のENEOS水素ステーションは合計45か所(2023年3月末時点)になりました。

 

・合成燃料

再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素とCO2を原料とする合成燃料の技術開発がGI基金事業に採択されました。早期の技術確立を目指し、合成燃料の製造に係る小規模プラント検証を開始しています。

 

・VPP事業

2022年10月から実証で設置した産業用蓄電池を制御対象として、VPPシステムの運用を開始しました。また、2023年度には根岸製油所及び室蘭事業所に大型蓄電池を設置、制御を開始する予定に加え、家庭用蓄電池等を制御する実証も開始する予定です。

 

・地域コミュニティとの連携

次世代型エネルギーの推進と地域づくりを実現すべく、静岡県及び静岡市と締結した基本合意書に基づき、清水製油所跡地(清水油槽所内遊休地)を中心とした次世代型エネルギー供給プラットフォームを構築することを決定しました。エネルギーマネジメントシステムを活用し、地産の再生可能エネルギーの有効活用を図るとともに、災害時(停電時)には自立的にエネルギー供給を行うことにより、地域防災・減災にも貢献していきます。

 

●モビリティサービス・ライフサポート

・モビリティサービス事業

個人向けカーリース「ENEOS新車のサブスク」に加え、新たに「ENEOSカーリース法人プラン」を開始しました。本プランは、「ENEOS法人カーリース」、「ENEOS運行管理サービス」、「ENEOS車両管理サービス」の3つのサービスを提供しており、社有車管理に係る工数、経費の削減に寄与します。

また、EVの普及を見据え、日本電気株式会社との「充電ネットワーク拡充」の協業の一環として、普通充電器約6,100基の運営権を承継しました。また、経路充電ネットワークの拡充に向け、新たに「ENEOS Charge Plus」のEV充電サービスを開始しました。

さらに、北米のスタートアップ企業であるAmple社とEVの蓄電池交換サービス提供に向けて、2023年度上半期中に実証試験の開始を予定しています。併せて、東京都世田谷区に出資先のスタートアップ企業であるOpenStreet株式会社と株式会社Luupの電動モビリティ、また株式会社Gachaco(以下、Gachaco)の電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを一堂に集めて提供する「ENEOSマルチモビリティステーション」を開設し、モビリティ事業の推進を図っています。

 

・ライフサポート事業

SSを物流拠点として活用する「配送効率化事業」の推進に向けて、三菱商事と合弁会社を設立することに合意しました。全国各地のSSを荷物の一時保管かつ最終配送拠点とすることで、配送先までの走行距離を短縮し、ドライバーの負荷軽減及び配送の効率化を目指します。

 

(環境対応型事業)

バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」の構築を目指し、2022年4月、電動モビリティの普及を目的に国内大手二輪メーカー4社と共同で設立したGachacoが補助金交付事業として東京都内、及び大阪市内を中心にバッテリー交換機の設置を促進するとともにサービス展開を開始しました。

また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術を確立すべく、GI基金事業の支援のもと、株式会社ブリヂストンと共同プロジェクトを進めています。加えて、古紙を原料とするバイオエタノール事業の立上げについて、凸版印刷株式会社と協業検討を進めています。

このほか、三菱ケミカル株式会社と共同でプラスティック油化事業を開始することを決定し、鹿島製油所に隣接する同社茨城事業所に商業ベースで国内最大規模の処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中です。

 

(エネルギーセグメントの業績)

エネルギーセグメントの売上高は、原油価格の上昇等により、前年同期比42.3%増の12兆7,110億円となりました。営業利益は前年同期比4,265億円減益の510億円となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、前連結会計年度のプラスタイムラグの反転を主因とする「石油製品他」の減益に加え、市況低迷による「石油化学製品」、減損による「電力」の悪化等により 、前年同期比910億円減益の162億円となりました。

 

※画像省略しています。

 

 

[石油・天然ガス開発セグメント]

石油・天然ガス開発セグメントにおいては、環境に優しい事業ポートフォリオへの転換を目指し、環境への負荷が相対的に低い天然ガス資産の拡大に向けた取組みを行う一方で、CCS/CCUS(*1、2)事業の推進、特に2030年の国内CCS事業化に向けて、必要な諸施策を実施しました。

* 1 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):CO2回収・貯留

* 2 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):CO2回収・有効利用・貯留

 

<基盤事業>

新型コロナウイルス感染症の流行下においても安全・安定操業を継続した結果、販売数量は日量8.6万バーレルとなりました。

 

●ベトナム

ランドン油田・フンドン油田の生産を継続し、2022年10月には洋上15-2鉱区取得から30周年を迎えることができました。

 

●ミャンマー

JXミャンマー石油開発株式会社が保有するミャンマーM12/M13/M14鉱区からの撤退を他の共同操業者に対し2022年4月に正式通知し、2023年4月に撤退手続を完了しました。

 

●マレーシア

引き続きヘランガス田、ベリルガス田及びラヤン油ガス田においてガス及び原油生産を継続しました。

 

●インドネシア

タングーLNGプロジェクトでは、第3トレインの増設作業を引き続き着実に進めています。また、2022年12月には同プロジェクトの開発鉱区であるベラウ、ムツリ及びウィリアガール鉱区の生産分与契約を20年間延長することについて、同国政府の承認を取得しました。

 

<環境対応型事業>

●推進体制

JX石油開発株式会社(以下、JX石油開発)は、国内でのCCS事業化に向けて、サステナブル事業推進部所管の国内CCS準備室を2022年7月に国内CCS事業推進部に格上げし、具体的な事業化を促進するとともに、海外でのCCS事業を見据え、2023年4月に海外CCS事業推進室をサステナブル事業推進部に設置しました。

 

●CCS/CCUS事業の推進とバリューチェーンの強化

脱炭素・循環型社会の実現及びカーボンニュートラル計画の達成に向けた取組みとして、当連結会計年度もCCS/CCUS事業を中心とした環境対応型事業を国内外で推進しました。

海外では、米国NRG Energy社がその子会社を通じて保有するPetra Nova Parish Holdings社(以下、PNPH)の持分50%を2022年9月に取得し、JX石油開発がその子会社を通じて既に保有する同社の50%持分と合わせ、PNPHを連結子会社として、米国におけるCCUS事業の更なる促進を図りました。

また、2022年11月には米国の8 Rivers Capital社とメキシコ湾岸における共同事業開発に関する覚書を締結しています。

さらに、マレーシアにおいては、2022年12月にPetroliam Nasional Berhad社(以下、ペトロナス)の100%子会社との間で、マレー半島沖合の高濃度CO2を含む既発見未開発5ガス田(Bujang、Inas、Guiling、Sepat 及び Tujoh)について、CCSを含む開発技術提案をペトロナスに行うこと及び本ガス田群の権益取得の検討を進める覚書を締結しました。

国内では、2030年度のCCS実装に向けて、JX石油開発は、電源開発株式会社及びENEOSと共同で、合弁会社西日本カーボン貯留調査株式会社を2023年2月に設立しました。

また、2023年3月には、国内で唯一、海洋掘削事業を営む日本海洋掘削株式会社の株式譲受けを決定し、4月に譲受けの手続きが完了しました。同社の高度な専門知識を有する人材、技術力を取り入れることで、CCS/CCUSのバリューチェーンを一層強化していきます。

 

(石油・天然ガス開発セグメントの業績)

石油・天然ガス開発セグメントの売上高は、前年同期比17.3%減の2,010億円となりました。営業利益は、英国事業の売却(2022年3月完了)に伴う販売数量の減少等による減益要因はあったものの、原油及び天然ガスの販売価格の上昇や円安の進行等による増益要因もあり、前年同期比170億円増益の1,140億円となりました。

 

※画像省略しています。

 

[金属セグメント]

機能材料事業及び薄膜材料事業を主力とするフォーカス事業については、半導体市場における各種民生用電子デバイスの需要減退や、中国のゼロコロナ政策等による景気減速と、それらに伴う各サプライチェーンにおける在庫調整を主因に、各製品の販売量は概ね前連結会計年度を下回り、減益となりました。

ベース事業については、資源事業におけるチリのカセロネス銅鉱山での生産量の増加や、金属・リサイクル事業における硫酸国際市況の当連結会計年度前半の改善及び為替が円安に推移したことが収益に寄与したものの、銅価の下落や下記のSCM Minera Lumina Copper Chile社(以下、MLCC)株式譲渡決定による損失計上のため、減益となりました。

 

<フォーカス事業>

●機能材料事業

将来のIoT・AI社会の進展により、それを支える圧延銅箔・高機能銅合金条の一層の需要拡大が今後見込まれます。その要求に対応すべく、開発体制強化のため主要事業拠点である倉見工場に新たにR&D棟を建設しました。既存製品の特性改善や新合金・合金箔の開発の更なる加速に加え、保有技術と親和性の高い新用途探索や材料開発の更なる強化等にも取り組んでいます。

 

●薄膜材料事業

5Gの本格化、車両の電装化、脱炭素化の加速等を見据え、台湾における半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を現行から約80%増強することの決定や、米国で新工場建設に向けた工事を開始する等、供給体制の強化に資する施策を実行しました。また、ESGへの取り組みを強化するなか、磯原工場では、RBA(Responsible Business Alliance)行動規範の遵守状況を評価するVAP(Validated Assessment Program)監査において200点満点を獲得し、RBA認証プログラムにおける最上位のプラチナ・ステータスを取得しました。

 

●タンタル・ニオブ事業

Mibra鉱山(ブラジル)のタンタル精鉱生産事業に参画したこと、また、タンタルを含む高融点金属の溶解・精製において優れた技術と生産能力を有する東京電解株式会社を完全子会社化したことにより、半導体用スパッタリングターゲットに至る垂直統合的なサプライチェーンをより強化し、製品の安定供給体制を一層強固なものにするとともに、今後レアメタル領域全般にわたるシナジーの創出を加速していきます。

 

●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)

東邦チタニウム株式会社では、茅ヶ崎工場内における触媒事業の新工場が2022年11月に竣工し、生産を開始しました。

 

●ひたちなか新工場の建設工事開始

急速に進展する社会のデジタル化に不可欠な先端素材の安定供給のニーズに応えるべく、茨城県内の複数箇所や北米において新工場の建設や設備能力の増強に取り組んでいます。

当連結会計年度においては、茨城県ひたちなか市で取得した約24万㎡の大規模用地において、新工場建設に向けた造成工事を2023年1月に開始しました。当該新工場は、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔・高機能銅合金条等の世界トップシェア製品をはじめとする先端素材の製造・開発を担う中核拠点となる予定です。

 

●タツタ電線株式会社へのTOB実施を決定

経営資源の効率的活用、重要技術における更なる連携、タツタ電線株式会社(以下、タツタ電線)の電子材料分野における事業競争力の更なる強化、タツタ電線の電線・ケーブル事業及びJX金属株式会社(以下、JX金属)の金属・リサイクル事業の事業基盤の強化等を目的として、タツタ電線を完全子会社とすべく、同社の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議しました。

 

<ベース事業>

●資源事業

チリのカセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCCの株式51%をカナダのLundin Mining社に譲渡することを決定しました。これにより高い鉱山運営能力を持つパートナーが得られ、生産性向上やコスト競争力強化のみならず、Lundinグループが近隣に持つ探鉱プロジェクトとの一体開発により山命延長等の長期的事業運営が可能となります。

本施策によって先端素材事業を中心とした注力分野へ経営資源を更に集中していくとともに、資源事業におけるボラティリティの抑制と長期的な収益基盤の強化を図ります。

 

●金属・リサイクル事業

リサイクル事業への取組み強化のため、カナダ国内に複数の拠点を持ち、強固な集荷ネットワークを有するE-waste(廃家電・廃電子機器)の回収・処理事業者である、eCycle Solutions社(以下、eCycle)へ、JX金属が66%、双日株式会社が34%出資し、共同で経営権を取得しました。また、今後使用済み電子機器は廃棄量が増加するのみならず、それらの適正処理への要求も更に見込まれる中で、eCycleは、ますます成長が期待されるITAD事業(使用済み電子機器や廃電子基板等のIT資産のデータ消去後の有効活用、特に再利用・再資源化に関する事業)も手掛けており、幅広く資源の有効活用を進めています。

 

<研究開発>

欧州での使用済車載用リチウムイオン電池のリサイクル事業化を推進しており、ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が支援するコンソーシアム"HVBatCycle"にTANIOBIS GmbHを通じて参画しています。本コンソーシアムはVolkswagen AG(フォルクスワーゲングループ)の主導で、使用済車載用リチウムイオン電池のクローズドループ・リサイクルを実証するもので、その活動の一環として、これまで培ってきた湿式プロセスの技術を基に高純度金属塩を回収するベンチスケールプラントが2023年3月から稼働を開始しています。

また、技術立脚型の新規事業を創出するために、国内外問わず、様々な先端素材系スタートアップ企業との協業を推進しています。具体的には、ドイツのダルムシュタット工科大学発スタートアップで優れた接合技術を有するNanoWired GmbHへの出資や、先端素材の分野において20年以上の投資実績がある世界的に有力なベンチャーキャピタルファンドが運営するPangaea Ventures Impact Fund, LPにも出資を行いました。

 

 

(金属セグメントの業績)

金属セグメントの売上高は、前年同期比26.7%増の16,378億円となりました。営業利益は、MLCC株式譲渡決定に伴う資産の公正価値評価の実施により、753億円の損失を計上した結果、前年同期比895億円減益の687億円となりました。

 

※画像省略しています。

 

 

[その他]

その他の事業における売上高は前年同期比2.9%増の5,128億円、営業利益は前年同期比29億円減益の465億円となりました。

 

●株式会社NIPPO

株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資は底堅く、民間設備投資についてもコロナ禍前の水準に戻りつつあるものの、急激な原材料価格の上昇、金融引き締めによる為替変動、労働需給のひっ迫等依然として不透明な状況が継続しました。

このような事業環境下、NIPPOが有する技術の優位性を活かした受注活動、原材料価格の上昇に対応したアスファルト合材の適正価格での販売、生産性の向上及びコスト削減の推進により、競争力の強化に努めました。また、カーボンニュートラル社会の実現に向け、CO2フリー電力の導入を図り、CO2排出削減に効果がある中温化合材製造装置の設置等CO2の削減に向けた取り組みを推進します。

このほか、当社グループの事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化の一環として、2022年にNIPPO株式を非公開化し、親子上場を解消しました。今後、当該非公開化を共同で進めたゴールドマン・サックス・グループが有するグローバルネットワーク等を活用して、NIPPOの更なる企業価値向上を実現したうえで再上場を目指します。

 

上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高が合計460億円(前年同期は477億円)含まれています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

8,128,866

161.9

石油・天然ガス開発

201,890

82.6

金属

1,270,190

131.5

その他

95,203

106.2

合計

9,696,149

153.4

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。

 

イ.受注実績

当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

12,706,468

142.3

石油・天然ガス開発

200,716

82.6

金属

1,635,428

126.7

その他

473,942

103.6

合計

15,016,554

137.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。

 

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況

①流動性と資金の源泉

当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取り組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。

当社は、安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資等も活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持しています。また、トランジション・リンク・ボンドやグリーンボンド、グリーンローンといったサステナブル・ファイナンスによる資金調達を実施する等、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。

また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,550億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。

連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。

当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2023年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。

 

②連結財政状態計算書

ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比3,063億円増加の9兆9,545億円となりました。

イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、棚卸資産の増加に伴う運転資金の増加等により、前連結会計年度末比2,528億円増加の6兆6,669億円となりました。

有利子負債残高は、前連結会計年度末比3,739億円増加の3兆1,094億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比5,751億円増加の2兆7,601億円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めていません。

ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払や自己株式の取得といった株主還元に係る減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比535億円増加の3兆2,876億円となりました。

なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比1.0ポイント減少し28.7%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比57.79円増加の948.67円、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は前連結会計年度末比0.16ポイント悪化し、0.84倍(ハイブリッド債資本性調整前)となりました。

 

③連結キャッシュ・フロー

当社は、第2次中期経営計画において、「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を基本方針の一つとして取り組みました。3ヵ年累計のフリー・キャッシュ・フローは、追加の資産売却や設備投融資の圧縮等のキャッシュ・フロー改善策を実行したものの、資源価格の高騰や円安、一時的な税金の支払いを主要因に、目標未達(目標:1,500億円、実績:マイナス2,317億円)となりました。

第3次中期経営計画では、「確かな収益の礎の確立」を基本方針の柱の一つとして掲げ、基盤事業から安定的なキャッシュ・フローを創出していきます。また、そのキャッシュを、現在の財務体質を堅持しながら、再生可能エネルギー事業の育成やSAF・水素等への取り組みに再配分することで、もう一つの柱である「エネルギートランジションの実現に向けた取り組み」を加速させていきます。

なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。

ア.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、資金は1,102億円減少しました(前期は2,095億円の増加)。これは、税引前利益や減価償却費等の資金増加要因があったものの、運転資金の増加や法人所得税・消費税の支払等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

イ.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、資金は1,159億円減少しました(前期は3,499億円の減少)。これは、資産売却収入等の資金増加要因があったものの、再生可能エネルギー事業への投資やJSR株式会社からのエラストマー事業の買収等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、資金は133億円減少しました(前期は2,260億円の増加)。これは、借入金の増加や社債(トランジション・リンク・ボンド)の発行等の資金増加要因があったものの、配当金の支払や自己株式の取得といった株主還元施策等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

 

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,115億円となり、期首に比べ2,125億円減少しました。

 

※画像省略しています。

 

(4)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。

重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。