カバー株式会社

上場日 (2023-03-27) 
ブランドなど:ホロライブ
情報・通信業映像製作グロース

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E38478 

売上高

204.5億 円

前期

136.6億 円

前期比

149.7%

時価総額

1,068.5億 円

株価

1,748 (04/26)

発行済株式数

61,124,200

EPS(実績)

41.04 円

PER(実績)

42.60 倍

平均給与

511.8万 円

平均年齢(勤続年数)

31.6歳(1.6年)

従業員数

401人(連結:418人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

 

3 【事業の内容】

(1) 企業ミッション

当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしております。日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

総務省統計局の発表によれば、日本の総人口は2008年をピークに減少が続いています。国内市場の緩やかな縮小が予想される一方で、日本の誇るアニメ、ゲーム関連産業は海外市場が牽引する形で成長を続けており、その規模はアニメ関連市場で約2.7兆円(注1)、ゲームコンテンツ市場で約21.9兆円(注2)まで拡大しております。当社は、AR(注3)やライブストリーミング(注4)といった最新技術を使って日本発のエンターテインメント・カルチャーを世界に広めていくことにより、クリエイターの活躍や日本文化のさらなる発展を後押しすることを目指しております。

 

(注) 1.2021年のアニメ関連市場規模(出所:一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2022」)

2.2021年のゲームコンテンツ市場規模(出所:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書2022」)

3.ARとはAugmented Realityの略称であり、ありのままに知覚される情報に、デジタル合成などによって作られた情報を付加し、人間の現実認識を強化する技術のことであります。例えば、当社の提供するARアプリケーション「ホロリー」では、VTuberの3D映像を現実空間に投影して写真や動画を撮影できます。

4.ライブストリーミングとは、インターネット上で音声や動画をリアルタイムで配信することであります。

 

 

(2) サービス概要

当社はモーション・キャプチャー技術(注5)とアニメルック・アバター(注)を用いて活動するバーチャル・エンターテイナー「VTuber」のキャラクターIP開発、及びVTuberプロダクション「hololive production(以下、「ホロライブプロダクション」という)」の運営を行っております。

 

当社のVTuberは当社が開発した配信アプリケーションとアニメルック・アバターを用いて、YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームでゲーム実況や歌唱等のライブ配信を主とした活動を行います。ライブ配信においては、ユーザーのメンバーシップ(注7)加入やSuper Chat(注8)が主な収益源となります。

 

キャラクターIPの開発は国内の主要なクリエイターとの協働により行っており、クオリティの高いキャラクター・アバターモデルが多くのファンからの支持を得ています。VTuberによるアバターを用いたライブ配信は、視聴者にクリエイターの創作に対する強い親近感を与え、これまでのアニメ等では見られなかった新しいエンターテインメント体験をもたらします。

 

所属VTuberのキャラクターIP権利は当社に帰属しており、IPに基づいたマーチャンダイジングやライセンスビジネス等の多様なコマース展開を可能としています。VTuber IPの影響力の拡大に伴って、コマース展開の規模も拡大しており、2023年3月期時点では在籍VTuberあたりの収益は年間約2.7億円(注9)まで成長しております。

 

2023年3月末時点でホロライブプロダクションのVTuber在籍数は75名(言語地域別で日本が48名、インドネシアが9名、英語圏が18名)となっており、そのうち32名はYouTubeのチャンネル登録数が100万登録を超える等幅広く支持を得ていると認識しております。また、ホロライブプロダクションの所属VTuberのYouTubeチャンネル登録総数は7,500万登録(注10)を超えており、日本、北米、東南アジア地域における登録数トップのVTuberをはじめ、登録数ランキング上位のVTuberが多く所属しております(注11)。

 

ホロライブプロダクションの所属VTuberによるライブ配信コンテンツは、月間で1,500以上もの本数がYouTubeをはじめとする動画配信プラットフォームに提供されており、それらのアーカイブ(Archive:保存記録による配信)を含む動画コンテンツの累計投稿件数は2023年3月末時点で6.8万本に上ります。視聴者はライブ配信内でVTuberに向けたコメント等を通して双方向性と没入感のあるライブエンターテインメントを楽しむことができます。

 

 

VTuber IPは立上げに長い期間と多額のコストが必要なTVアニメやゲーム等のコンテンツのキャラクターIPと比較して、相対的に低コストで継続的に視聴者との接点を持つことができる優位性を持っていると考えられます。

 

また、VTuberとのコミュニケーションの一環で、日常的に数多くのファンアートや多言語翻訳コンテンツが視聴者によって作成されており、そうしたUser Generated Contents(UGC)(注12)コミュニティの存在がVTuberコンテンツに深みをもたせています。当社コンテンツの視聴者による切り抜きコンテンツ(注13)のYouTube上での再生回数は72億回を超えており(注14)、新規の視聴者の拡大にも寄与していると考えられる他、Twitterでの2023年3月期年間の当社コンテンツ関連投稿数は約1.4億件となっており、ファンコミュニティでは日々活発なやり取りが確認されております。

 

こうした高頻度かつ双方向のコミュニケーションを背景とした当社のVTuber IPコンテンツのファンエンゲージメント(注15)の高さは従来のアニメコンテンツ等と比較した際の当社コンテンツの独自性となっております。

 

エンターテインメント・コンテンツ業界において、自社によるIPの開発機能を有さない企業は、コンテンツ供給のために他社のIPライセンスを借り入れる必要があり、関連する商業展開の自由度もIP所有元の意向に制限されるため、迅速な成長とマージンの確保が難しい傾向にあります。また、IPを自社開発する企業においても、ゲームやアニメといったコンテンツのみを媒体とする場合は、コンテンツ供給のために大きな資金、人員、期間を要する傾向にあります。

 

それらの企業と比較して、当社は自社によるIP創出体制を整備すると共に、双方向性コンテンツ運用を行っており、これらを背景とした独自の強みを有していると考えております。

 

※画像省略しています。

*1所属VTuberのYouTubeチャンネル登録数の総和として算出

*2VTuberあたり四半期収益は各四半期収益を四半期末時点の所属VTuber数で除して算出

 

※画像省略しています。

 

*3現在活動休止中であるキズナアイを除いた場合、宝鐘マリンが国内No.1

 

 

(注) .モーション・キャプチャー技術とは、カメラ等を使って人やモノの動きをデジタル化する技術のことであります。

. アニメルック・アバターとは、デフォルメされた色調の2Dアニメのような3Dモデル制作技法等を使って作られたアニメのような外見のキャラクターモデルのことであります。

7.メンバーシップとは、ユーザーが一定の月額料金を支払うことによってYouTube等の動画配信プラットフォームのチャンネルのメンバーとなり、メンバーシップに加入したユーザー向けの限定動画視聴や絵文字利用等のメンバーシップ限定の特典を得られる制度のことであります。

8.Super Chatとは、YouTubeのライブ配信動画におけるライブチャットの利用時に視聴者が有料課金を行うことでチャットメッセージを目立たせることができる機能のことであります。視聴者の課金金額はプラットフォームから一定の金額が控除された後、当社及び配信者に収益として払込まれます。

9. VTuberあたり収益は当該期間の売上高を当該期末の在籍VTuber数で除して算出。

10. YouTubeチャンネル登録数の総数は所属VTuberのYouTubeチャンネル登録数の総和として算出。2023年3月31日時点。

11. 出所:ユーザーローカル。2023年4月17日時点、VTuberランキング(ファン数ランキング)、現在活動休止中のVTuberを除く順位。

12.User Generated Contents(UGC)とは、主にソーシャルメディア等のオンライン・プラットフォーム上でユーザーによって投稿されるコンテンツのことであります。

13. 切り抜きコンテンツとは、公式コンテンツとして配信された動画の一部をファンが切り抜き、字幕等の一部編集を加えた上で配信する非公式コンテンツのこと。当社では二次創作ガイドラインを公開し、一定の制限の下、こうした活動を認めております。

14. 出所:ユーザーローカル。2023年4月17日時点。YouTube上に存在する当社コンテンツの切り抜きを扱うチャンネルのうち、総再生回数が上位の200チャンネルについて実績を集計しております。

15. ファンエンゲージメントとは、ブランドやコンテンツとファンが積極的に関与し合うことで構築される愛着等の結びつきのことであります。

 

(3) 当社の事業分野別の内容

当社の事業は、VTuber事業並びにその付帯業務の単一セグメントで構成されております。

事業分野別では、①配信/コンテンツサービスと②ライブ/イベントサービスを通じて、ホロライブ等のグループ及び所属VTuberそれぞれの認知度の向上、ファンの獲得及びコミュニティの熱量上昇を図っており、その結果として醸成されたグループや個々のVTuber IPのブランドを基盤として、③マーチャンダイジングサービスと④ライセンス/タイアップサービスを展開しています。

事業分野別の詳細は以下のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

 

 

※画像省略しています。

 

① 配信/コンテンツ

YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームや各種SNS等を通じて、VTuberによるライブ配信を主とした動画コンテンツを提供している他、音楽ストリーミングサービスでの楽曲コンテンツの提供も行っております。

 

 

主な収益項目は視聴者からのメンバーシップ加入、Super Chat、動画配信プラットフォーム上での広告収益、及び音楽ストリーミングサービス上での楽曲コンテンツの販売収益等となっており、主なコスト項目はプラットフォーム手数料及びVTuberとしてアバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイター(演者)(注16)への収益分配等となっております。

 

VTuberのキャラクターIPは当社によって企画・制作されており、それぞれのVTuberの活動は当社からコンテンツ・クリエイターに対して貸与されるモーション・キャプチャーハードウェア/ソフトウェア、キャラクターアバター、及びYouTubeやTwitter等の配信プラットフォーム/SNSアカウントを用いて提供されています。

 

当社はホロライブプロダクションのブランドとコミュニティを拡大させながら、オーディションにより選抜された演者、影響力の大きい外部クリエイター等との共創を通して、付加価値の高いIPを継続的に生み出す仕組みを構築しており、その結果として新規のVTuberでもデビュー時から大規模な集客を行うことが可能となっております。

 

当社のVTuber IPは海外でも浸透が進んでおり、2023年3月期の当社のVTuberのYouTube配信における海外再生数比率は42%となっております(注17)。字幕等を通したVTuberコンテンツのローカライズやSNSを通したコミュニティ運営等により、グローバルにUGCコミュニティの拡大を推進しつつローカル言語でのVTuberをデビューさせることにより、着実な海外展開を実施しております。

 

また、当社では多様かつ安定的なサービスの提供とコミュニティの健全な拡大のために、各種ガイドラインの整備、外部エンターテインメント企業とのアライアンスの拡充、及び関連する業界団体への参画等を行っております。

 

(注)16.コンテンツ・クリエイターとはアニメルック・アバターを用いてVTuberとしてライブ配信活動やコンテンツ制作を行う演者のことであります。

  17.2023年3月期におけるチャンネル総視聴回数に占める海外アカウントの再生回数比率。

 

② ライブ/イベント

所属VTuberのライブコンサート及びファンミーティング並びに当社IPの国内外出展等のイベントをオフライン又はオンラインで提供しております。

 

主な収益項目はオフライン、オンラインでのチケット販売収益、イベントに際した物販収益及びイベントの様子を収録した映像ソフトウエアの販売収益等となっており、主なコスト項目はイベント制作費及び演者出演費等となっております。

 

当社ではイベントの企画、制作を行っており、各イベントは外部制作会社、イベント会場運営会社、オンライン配信プラットフォーム等との協働によって提供されています。ライブコンサートやファンミーティングといったイベントの実施にあたっては、大規模なモーション・キャプチャー及び配信が可能なスタジオ設備、並びにAR技術等を用いることにより、ファンが当社VTuberをより身近に感じることができるユニークな体験の提供を実現しております。

 

過去に実施したライブコンサートイベントの多くは、映像設備を導入したコンサート会場に観客を動員して実施するオフラインでの実施と、インターネット上で配信プラットフォームを通してコンサートの様子をライブ配信するオンラインでの実施を同時に行っており、現地を訪れることのできない遠方のファンもオンライン配信を通してイベントに参加することが可能となっております。イベントを通じたファン同士の交流は、ファンにとってもコミュニティ規模の成長を実感できる大きな機会となっております。

 

また、イベントは国内だけでなく、海外でも多数実施しており、2022年においては「hololive Meet」と題して、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア等、世界各地での出展やファンミーティングイベントを開催しております。

 

 

③ マーチャンダイジング

当社VTuber IPをベースにしたキャラクターグッズ及びデジタルコンテンツの販売を行っております。

主な収益項目はEC(Electronic Commerce:電子商取引)での商品販売収益となっており、主なコスト項目は材料費等の製造費用、演者収益分配及びEC販売・決済手数料等となっております。

 

従来の芸能人等と比較した際のVTuberの独自性の一つとして、アニメのキャラクターのようにIPとしての多様なコマース展開を行いやすいことが挙げられます。これにより、当社EC上でも1つのキャラクターIPについて多種多様なグッズやデジタルコンテンツの企画販売が可能となっております。

 

当社では商品の企画・デザイン、販売、プロモーション等を行っております。商品販売は自社EC「hololive production OFFICIAL SHOP」からの受注又は在庫販売が主となっており、当該ECから国内及び海外の顧客に向けた販売を行っております。加えて、自社ECからの発送や現地独自決済手段の導入が未対応の一部海外地域への販売等を目的とした外部ECサイトからの販売も行っております。

 

マーチャンダイジングの売上構成は現状、VTuberのアニバーサリー等に際した特別受注生産・販売前提の商品の構成が大きくなっておりますが、プロダクションとしてのブランド力やIP商品の企画・販売体制の拡充に伴い、より幅広い消費者層に向けて常時販売可能な収益性の高い商品の開発も進んでおります。

 

④ ライセンス/タイアップ

外部商品又はコンテンツのメーカー等に対する当社保有IPの使用権利の提供(以下、「ライセンスアウト」という)又はタイアップ広告を通じた当社所属VTuberによる他社企業のプロモーションやメディア出演を提供しております。

 

主な収益項目はライセンスアウトの対価としてのロイヤリティ収益及び広告出稿企業やメディアからのプロモーション料・出演料収益となっており、主なコスト項目は個別の案件実施に係る一部制作費負担や演者への出演料分配となっております。

 

当社では具体的なライセンスアウト案件に係る制作監修、又はVTuberによる出演・プロモーション協力等を提供しております。

 

VTuberはライブ配信等で活動するインフルエンサーであることに加えてキャラクターIPとしての性質を有しているため、当社IPが他社のゲーム等のコンテンツ内でキャラクターとして活用されるような事例もあり、そうした事例は規模の大きさから案件あたりの収益性も高くなっております。

また、タイアップ広告でもVTuberの直接の稼働無しに商品パッケージやポスター等で活用される事例があり、そうした事例は直接の演者稼働を伴う一般的なインフルエンサー広告の事例よりも効率性の観点から収益性が高くなるケースが多くなっております。

 

前述のようにVTuberのライセンス/タイアップビジネスは演者の稼働制約に縛られずに案件数を増加させられる事例もあるため、プロダクションや各VTuberの影響力と集客力の高まりに伴って本ライセンス/タイアップの収益規模も堅調に成長してきております。

 

 

[事業系統図]

※画像省略しています。

 

23/06/30

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における流動資産は11,740,862千円となり、前事業年度末に比べ4,572,415千円増加いたしました。これは主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益の増加に加え、自社ECサイトの前受金の増加による現金及び預金の増加が3,148,586千円、2023年3月に開催された大型イベントの収益発生に伴う売掛金の増加が1,246,320千円生じたことによるものであります。固定資産は4,146,146千円となり、前事業年度末に比べ3,076,472千円増加いたしました。これは主に、新スタジオ建設に伴う建設仮勘定の増加が1,687,435千円、新規事業の開発に伴うソフトウエア仮勘定の増加が804,918千円生じたことによるものであります。

この結果、総資産は、15,887,009千円となり、前事業年度末に比べ7,648,887千円増加いたしました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は8,838,207千円となり、前事業年度末に比べ4,100,028千円増加いたしました。これは主に自社ECサイトの受注販売による前受金の増加が1,875,299千円、2023年3月に開催された大型イベントの費用発生に伴う買掛金の増加が601,280千円、事業規模拡大と連動した販売費及び一般管理費の増加に伴う未払費用の増加が532,358千円生じたことによるものであります。固定負債は42,493千円となり、前事業年度末から増減はありません。

この結果、負債合計は、8,880,701千円となり、前事業年度末に比べ4,100,028千円増加いたしました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は7,006,308千円となり、前事業年度末に比べ3,548,859千円増加いたしました。これは、当期純利益2,508,234千円の計上による利益剰余金の増加、上場に伴う増資により資本金が520,312千円、資本剰余金が520,312千円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における国内外の経済環境は、国内においては年度末にかけて新型コロナウィルス感染症に関する防疫措置の緩和が推進された一方で、ウクライナを巡る地政学リスクの影響や国際的なインフレの進行等により、引き続き先行き不透明感が強くなっております。

 

このような環境のもと、当社はミッションとして「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を掲げ、日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

当事業年度につきましては、ライブ配信に加え、ショート動画や楽曲等を通じた多面的なコンテンツ供給にも注力し、結果として当社所属VTuberのYouTubeチャンネル登録総数(注1)は2023年3月末時点で7,558万人(前期比23.1%増)まで伸長致しました。新規デビューVTuberとしては、2022年7月及び2023年1月に英語圏向け男性VTuberグループ「HOLOSTARS English」より計8名をデビューさせており、所属VTuber及びそのファン層の多様化を企図しております。その結果当事業年度の配信/コンテンツ分野の売上高は通年で6,342,733千円(前期比20.8%増)となりました。ライブ/イベント分野におきましても、2023年1月に実施した、《星街すいせい2nd live「Shout in Crisis」》及び同年3月に実施した《hololive SUPER EXPO 2023 Supported By Bushiroad》、《hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad》といった大型イベントの盛況が寄与し、同分野の売上高は通年で3,429,004千円(前期比55.6%増)となりました。

 

また、当事業年度においては前述のサービス分野において高まったIPの付加価値をベースに、コマースビジネスの規模が大きく拡大しており、マーチャンダイジング分野の売上高は通年で8,003,091千円(前期比65.6%増)ライセンス/タイアップ分野の売上高は通年で2,676,183千円(前期比94.2%増)となりました。マーチャンダイジング分野においては、プロダクトミックスの改善により収益性の改善も進捗しております。

 

以上の結果、当事業年度における売上高は、20,451,013千円と前期と比べ6,787,284千円(前期比49.7%増)の増収、営業利益は、3,417,173千円と前期と比べ1,562,001千円(前期比84.2%増)の増益、経常利益は3,385,233千円と前期と比べ1,531,255千円(前期比82.6%増)の増益、当期純利益は2,508,234千円と前期と比べ1,263,768千円(前期比101.6%増)の増益となりました。

 

(注)1 YouTubeチャンネル登録総数は、2023年3月31日時点の所属VTuber及び公式のYouTubeチャンネル登録数の総和

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、7,793,282千円と前事業年度末と比べ3,148,586千円の増加となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、営業活動により獲得した資金は、4,866,720千円(前事業年度は3,537,470千円)となりました。

これは、主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益3,352,833千円の計上、自社運営ECサイトのグッズ販売受注時に受領する前受金の増加による収入1,875,299千円が発生した一方、大型イベントの収益発生に伴う売上債権の増加1,246,320千円が発生したことによるものであります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、投資活動により使用した資金は、2,759,105千円(全事業年度は793,940千円)となりました。

これは、オフィスの新スタジオ建設に伴う建設仮勘定といった有形固定資産の取得による支出1,463,229千円、新規事業開発を目的としたソフトウエア開発や、商標権を始めとした知的財産権の取得による無形固定資産支出の899,184千円、オフィス増床に伴う敷金の差入による差入保証金の差入による支出478,511千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動による獲得した資金は、1,040,625千円となりました。これは、株式の発行によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

当事業年度の仕入実績は、次のとおりであります。

サービスの名称

仕入高(千円)

(自 2022年4月1日 

    至 2023年3月31日

前期比(%)

マーチャンダイジング

2,228,230

151.3

合計

2,228,230

151.3

 

(注) 当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

c.受注実績

当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

d.販売実績

当事業年度における販売実績を主要サービスごとに示すと次のとおりであります。

サービスの名称

販売高(千円)

(自 2022年4月1日 

    至 2023年3月31日

前期比(%)

配信/コンテンツ

6,342,733

120.8

ライブ/イベント

3,429,004

155.6

マーチャンダイジング

8,003,091

165.6

ライセンス/タイアップ

2,676,183

194.2

合計

20,451,013

149.7

 

(注) 1.当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、上記ではサービス別の販売実績を記載しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2021年4月1日 

 至 2022年3月31日

当事業年度

(自 2022年4月1日 

 至 2023年3月31日

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Google LLC

4,659,360

34.1

5,327,163

26.0

ピクシブ株式会社

3,733,091

27.3

286,707

1.4

 

 (注)1. Google LLCは動画配信プラットフォーム提供会社であります。

        2. ピクシブ株式会社は当社のグッズ販売プラットフォームの提供会社であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

財務諸表の作成において適用する会計基準等につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の(重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

 

 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当事業年度の売上高は、20,451,013千円(前期比49.7%増)となりました。

主な要因は、所属VTuber数の増員及び国内外を含めたYouTubeチャンネル登録者数の増加を背景とした、配信/コンテンツサービスの売上増1,093,050千円に加え、キャラクターグッズのラインナップ強化や、ファンベースの拡大によるグッズ販売の促進に伴うマーチャンダイジングサービスの売上増3,170,780千円によるものです。

 

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は、11,054,870千円(前期比31.8%増)となりました。

主な要因は、所属するVTuberへのサポート体制の拡充や、グッズ、デジタルグッズの販売拡大への対応、ライブイベントの開催に伴う費用の増加によるものです。

この結果、売上総利益は9,396,143千円(前事業年度は5,274,772千円)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、5,978,969千円(前期比74.8%増)となりました。

主な要因は、グッズの販売に関する諸経費、オフィス移転に伴う地代家賃、事業規模拡大に伴う人件費、支払報酬等の増加によるものです。この結果、営業利益は、3,417,173千円(前事業年度は1,855,171千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当事業年度において、営業外収益は2,372千円、営業外費用は34,312千円発生しました。

主な要因は、上場関連費用22,423千円が発生したことによるものです。この結果、経常利益は、3,385,233千円(前事業年度は1,853,978千円)となりました。

 

 

(特別損益、当期純利益)

当事業年度において、減損損失が特別損失として、29,626千円発生しました。

税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を844,599千円計上した結果、当期純利益は2,508,234千円(前事業年度は1,244,465千円)となりました。

 

なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の運転資金需要のうち主要なものは、所属VTuberへの報酬やグッズ制作原価等の売上原価の他、人件費や地代家賃、グッズ販売に伴う倉庫費用や決済手数料等の販売費及び一般管理費といった営業費用であります。

投資を目的とした資金需要は、配信用スタジオの設備更新や新規事業・新規サービスの開発費用等であります。

 

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金及び設備投資資金共に自己資金での運用を基本としておりますが、資金繰りが悪化する傾向が見受けられる場合には、金融機関による借入やエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で実施する想定です

なお、第7期事業年度末(2023年3月31日)における現金及び現金同等物の残高は7,793,282千円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社の経営成績に影響を与えるおそれがあるリスクが存在していることを認識しております。

これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標としてYouTubeチャンネル登録数、売上高、サービス別売上高を経営上重要な指標として位置付けております。

当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、所属VTuberによる高頻度なライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツ等の供給を行うことに加え、二次創作ガイドラインを定めた上でファンによる二次創作活動を幅広く奨励しております。この結果、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しており、当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ7,200万登録を超えました。こうした大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としております。

 

YouTubeチャンネル登録数の推移

                                  (単位:人)

2022年3月

2023年3月

61,377,800

75,577,500

 

 

サービス別売上の推移

(単位:千円)

サービスの名称

2022年3月

2023年3月

配信/コンテンツ

5,249,683

6,342,733

ライブ/イベント

2,203,839

3,429,004

マーチャンダイジング

4,832,311

8,003,091

ライセンス/タイアップ

1,377,894

2,676,183

合計

13,663,728

20,451,013