売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

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最終更新:

E38483 

売上高

23.8億 円

前期

15.0億 円

前期比

158.7%

時価総額

24.1億 円

株価

1,143 (04/30)

発行済株式数

2,109,000

EPS(実績)

131.36 円

PER(実績)

8.70 倍

平均給与

500.3万 円

平均年齢(勤続年数)

34.6歳(10.3年)

従業員数

63人(連結:67人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社は工業炉の設計から稼働後の保守サービスまで全工程を一貫して行う、「熱技術総合エンジニアリング企業」です。エコムという社名はEcology(環境) & Combustion(燃焼)から派生する造語であります。「熱のスペシャリスト集団」として、工場の省エネルギー化を実現し「加熱技術で環境問題に取り組む企業」を企業目標に掲げております。

特に、気候変動の要因と考えられる二酸化炭素(CO₂)の排出量低減に、当社の加熱技術を活かしていきたいと考えております。2023年4月に環境省から発表されたデータ(出典:2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について 2023年4月発表)によると、この二酸化炭素(CO₂)の排出量の約35%は「工場等の産業部門」からの排出であります。これは、自動車を中心とする運輸部門を大きく上回る数字であります。さらに、その産業部門から排出される二酸化炭素(CO₂)の約40%は「工業炉」からの排出であります。(出典:日本工業炉協会文献資料「産業界の省エネルギー/環境負荷低減に大きく貢献する高性能工業炉」)これは、日本全体の排出量の約14%にも及びます。このような現状から、2050年に二酸化炭素(CO)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す我が国の社会的要請に対して、工業炉メーカー(工場の生産ラインの中でも、特に「加熱工程」を専門とした機械メーカー)に属する当社は、この脱炭素社会の中で求められる工業炉の省エネルギー化を事業活動の中心に位置付け、その事業活動と社会貢献を両立し、持続可能な成長を目指します。

事業セグメントは、①工業炉の開発・設計・製造を行う「産業システム事業」と、②工業炉の点検、監視、改造工事を行う「保守サービス事業」で構成されております。設計のみ、製造のみを請け負うメーカーが多い中、川上の設計から川下の保守までの一連の工程すべてを自社で行えることが当社の強みであります。

※画像省略しています。

セグメント別の事業内容は以下のとおりであります。

 

① 産業システム事業

 産業用の大型工業炉を、オーダーメイドで設計・製造する事業であります。

 産業システム事業は、「ファーネスプロダクツ」、「ヒートトライアル」及び「省エネ環境デバイス」の3つの分野で構成されております。

 

a.ファーネスプロダクツ

 世の中で使用されている様々な商品や製品については、強度を増したり、物性を変化させて安定させたりするために、いわゆる「熱処理」が施され、その品質が維持されています。そして、その「熱処理」を通して、商品や製品は「硬く」「強く」「精度よく」「美しく」なり、機能し始めます。当社は、これらの「熱処理」を行う工業炉をオーダーメイドで設計、製造します。工業炉には、金属を溶解する「溶解炉」、塗装を乾燥する「乾燥炉」、樹脂を硬化する「硬化炉」など、様々な種類があります。それらの工業炉を用いて、アルミ・ガラス・炭素繊維などの素材から、車やスマートフォンの部品などが作り出されています。「部品を作る機械を作る」のがファーネスプロダクツ事業であります。

 なお、当社の産業システム事業の主要顧客は自動車業界となります。自動車部品の製造には、アルミ溶解、塗装乾燥、部品の強度を高めるためのアニール処理など、様々な熱処理が必要となります。特にエンジン系やブレーキ系を始めとする重要保安部品に要求される品質基準は非常に高く、精緻な加熱コントロールが求められます。

 また、中長期的には自動車業界は「100年に一度の大変革期」にあり、自動車メーカー各社はCASE対応(Connected Autonomous Shared & Services Electric)に多額の資金を投入しております。

 駆動が「エンジン」から「EVモーター+電池」へ移行する中、当社は、Electric(電動化)から派生する新たな自動車部品(モーター、インバーター、水素タンクなど)の製造に必要な工業炉を受注するために、エコムテクニカルセンター(ETC)を積極活用し、設備開発段階からプロジェクトに参加できる体制を構築しております。

 

 

※画像省略しています。

※画像省略しています。

製品例1:エレベーター式アルミ熱処理装置

(熱処理装置)

製品例2:遠赤外線アニール装置

(硬化炉)

 

製品例1:エレベーター式アルミ熱処理装置(熱処理装置)

 熱源はガスバーナーを使用しております。炉は上下2段に分かれており、地下に焼入れ水槽があります。エレベーターにより製品を投入すると、溶体化処理(注1)→焼入れ処理(注2)→時効処理(注3)の順に自動で熱処理が行われます。

 

注1.溶体化処理とは、アルミ合金を充分に加熱して、元素を均一に溶け込ませる熱処理のことであります。

注2.焼入れ処理とは、アルミ合金を高温に加熱してから、水や油などに入れて急激に冷却する処理のことであります。

注3.時効処理とは、時間の経過に伴って、アルミ合金の硬さなどの機械的性質が変化すること(時効)を利用して行う熱処理のことであります。

 

(熱処理の目的)

 近年、自動車の軽量化の為に、アルミ部品の採用が増えております。本処理を行う事で、鋳造後のアルミ部品の硬度の向上と歪の除去を行っております。エンジンブロックなど、部品の中でも重要保安部品に必要な処理となります。

 

製品例2:遠赤外線アニール装置(硬化炉)

 熱源は遠赤外線ヒーターを使用しております。樹脂やプラスチックなどの対象物に遠赤外線を放射し、物質の元である分子が振動し振動熱を発生させることで加熱処理を行います。この振動熱を利用することで、対象物の内部まで短時間で加熱することが可能となります。

 

(熱処理の目的)

自動車や家電などに使用される樹脂系部品の硬化処理やプラスチック成形品の残留応力(歪み)を除去するために行います。

 

受注の多くは開発機(テスト機)として1台の受注から始まりますが、最終的には複数台の量産機となり、将来的なリピート受注が期待できるビジネスモデルとなっております。逆に言えば「いかに開発機を受注するか」が営業上のポイントであり、そのための具体的な取り組みが、次に述べる「ヒートトライアル」になります。

 

その他製品例

 

※画像省略しています。       ※画像省略しています。

その他製品例1:ハイブリッド熱処理炉            その他製品例2:省エネバーナー搭載焼鈍炉

        (熱処理炉)                  (焼鈍炉)

 

その他製品例1:ハイブリッド熱処理炉

昇温部はガスを利用し、均熱部は電気を利用する事でエネルギー使用量と二酸化炭素(CO)排出量の低減が可能となる新しいコンセプトの工業炉です。

 

その他製品例2:省エネバーナー搭載焼鈍炉

金属熱処理を目的とした焼鈍炉に排熱回収式熱交換器搭載型の省エネバーナー「ecoNext(エコネクスト)」を搭載する事でエネルギー使用量と二酸化炭素(CO)排出量を低減しています。

 

b.ヒートトライアル(製品加熱テスト)

「何度で何分加熱すればよいのか?」その最適解を見つけるのがヒートトライアルであります。

当社のエコムテクニカルセンター(ETC)では、顧客企業が「ワーク」を持ち込んで当社とともに加熱テストを行っております。ワークとは、エンジンブロックやホイール、モーター、フィルムなどの加熱対象物のことであります。熱処理には、熱源(ガス又は電気)、温度、圧力、風速、加熱方向、ノズル形状、及び搬送方法など様々なパラメータがあり、品質を担保しながら最短の処理時間を模索します。顧客企業が工業炉を発注するには、これらのパラメータを記した仕様書が必要となります。当社は、この仕様書を顧客企業とともにテストを重ねながら作り上げていきます。ヒートトライアルの結果、既存の炉と比較して50%の省エネに成功するケースも少なくありません。

 

※画像省略しています。

   エコムテクニカルセンター(ETC)

※画像省略しています。

      ヒートトライアルの様子

 

 

また、試験機を保有している競合他社はありますが、複数種類の試験機を常に使える状態でスタンバイさせている企業は業界内でも限られております。

当社にとってヒートトライアルは、強力な開発ツールでもあり、営業ツールでもあります。そして、テストで良好な結果を出すことで、①省エネ、②省時間(時短)、③省スペースを実現した付加価値の高い製品提案が可能となります。

※画像省略しています。

 

図:当社の引合い段階から受注までの営業フロー

 

ヒートトライアルが終了したら、次に3D-CADによる構想設計、及び「3D熱流体解析シミュレーション」(注1)に着手します。オーダーメイドの工業炉は、「実際作ってみるまで仕様どおりの温度が出せるかわからない」というのが従来からの問題でした。いったん炉ができてからの作り直しは、製造コストを増大させます。当社は、この「作り直し問題」を解決するため、「ヒートトライアル」によるアナログ試験データと「3D熱流体解析シミュレーション」によるデジタルデータを融合させ、失敗の少ない「ものづくり」を可能にしております。

 

注1.3D熱流体解析シミュレーションでは、設備内の熱の移動、空気の流れや速度、圧力の大きさ、温度の分布など、様々な状況を再現し3D図面上で立体的に可視化することで、設備製作を行うことなく最適な条件の検証・追求を行います。

 

※画像省略しています。   ※画像省略しています。

 

画像:3D熱流体解析シミュレーション           画像:3D-CAD図面

 

c.省エネ環境デバイス

工業炉は大量のエネルギーを消費するため、同時に多くの二酸化炭素(CO)を排出します。日本の産業部門のエネルギー消費量のうち、工業炉が占める割合は約40%と言われており、地球温暖化の大きな一因となっております。当社の顧客の中心である大手メーカーは、カーボンニュートラル実現に向け二酸化炭素(CO)排出削減目標を掲げており、よりエネルギー効率の高い設備の導入を求めております。当社はそのニーズに応えるべく、省エネ環境デバイスを開発しております。代表的な製品としては、高温空気燃焼技術を採用し通常のバーナーに比べ窒素酸化物(NOx)と二酸化炭素(CO₂)の排出を抑制した排熱回収式熱交換器搭載型の省エネバーナー「ecoNext(エコネクスト)」、遠赤外線効果により加熱処理時間を短縮可能とした遠赤外線パネルヒーター「EIRヒーター」が挙げられます。省エネ環境デバイス単体での販売だけでなく、自社提案のファーネスプロダクトに搭載する事で、より付加価値の高い高利益率な装置提案が可能となります。

 

※画像省略しています。

※画像省略しています。

 

 

排熱回収式熱交換器搭載型の省エネバーナー

「ecoNext(エコネクスト)」

 

遠赤外線パネルヒーター

「EIRヒーター」

② 保守サービス事業

保守サービス事業は、当社の祖業のビジネスであります。創業者が、工具箱を片手に工業炉のメンテナンスを始めたのが当社の出発点であり、そこで得たノウハウをもとに産業システム事業を立ち上げ、成長してまいりました。現在全国で500社、1,200設備を超える工業炉のメンテナンスを請け負っております。お客様が保有する工業炉を、安全にかつ省エネルギーで長い間稼働、使用し続けられるように、定期・不定期の点検や改修工事の提案などを行っております。利益率が高く、景気に左右されにくいのが特徴であります。コロナ禍により経営環境が悪化する中でも、保守サービス事業の売上高は堅調な実績を残しております。

保守サービス事業は、「ファーネスエンジニアリング」、「IoTメンテナンスサービス」及び「パーツセールス」の3つの分野で構成されております。

 

a.ファーネスエンジニアリング

ファーネスエンジニアリングは、顧客企業の工場に出向き、改造工事などを行う「オンサイトサービス」であります。

昨今、顧客企業は「カーボンニュートラルの実現」に向けた投資を加速しており、省エネ改造工事を行う「ファーネスエンジニアリング」は、成長ビジネスの一つと位置付けております。このような(顧客企業からの)要望に対し、自社製作設備に限らず、他社が製作した装置に対しても工事を行っております。

また、省エネ改造工事の前後には「省エネ診断」にて、二酸化炭素(CO)削減量などの効果を数値で測定、評価します。

そして、顧客の要望に応える事で、「IoTメンテナンスサービス」であるストック型の安定収入ビジネスに繋げていきます。

工業炉メーカーである当社にとって、現場で起きた様々な問題点を実感できることは技術的に大きなメリットがあり、そこで得た気づき、これらの対処方法やノウハウを産業システム事業の「ものづくり」に反映することができます。

 

b. IoTメンテナンスサービス

 IoTメンテナンスサービスは、「定期点検」を中心とした「ストック型のオンサイトサービス」であります。点検業務は、「自社で製作した設備しか保守はしない」のが一般的でありますが、当社は、自社製はもちろん、他社製の工業炉も積極的に点検しております。なお、当社における点検業務の約80%が他社製品を対象とするものとなっております。

 現在では500社、1,200設備を超える工業炉の定期点検をストック型ビジネスとして全国で展開しております。加えて、2020年10月に新しい定期点検の形として、IoTメンテナンスサービス「Miterune(ミテルネ)」をリリースしました。

 従来では、年に1~2回の定期点検において問題点を抽出し、設備保全に努めていましたが、顧客企業の工業炉にセンサーを設置し、クラウド上に収集した各種燃焼データを、当社が遠隔監視することで、設備の不具合や故障を事前に予知し、生産停止などの企業にとって致命的なトラブルを未然に防ぎます。

アナログの「オンサイトサービス」とデジタルの「クラウドサービス」を融合することで、付加価値の高いメンテナンスサービスを提供しております。

※画像省略しています。

 「Miterune(ミテルネ)」を使用することで、従来、現場にいないと把握できなかった工業炉の稼働状況をPCやタブレットなどの画面にグラフィカルに表示し、いつでもどこでも精度の高い運転管理が可能になります。当社のスタッフが、工業炉の稼働状況を監視し、自動で緊急アラートを上げるのはもちろん、省エネのための運用サポートもいたします。

 そして、カルテ形式の「Miterune(ミテルネ)診断レポート」を定期配信することで、炉の稼働状況を継続的かつ客観的なデータとして蓄積することが可能であります。当サービスは、関西電力株式会社と共同開発した当社オリジナルのIoTサービスとして注目されております。また、今後の更なるサービス向上を目的に、2020年7月に関西電力株式会社と資本提携契約を締結しております。

 

c. パーツセールス

 パーツセールスは、工業炉に必要な各種消耗用品、交換部品を販売するサービスであります。

 プロテクトリレー(注1)、コントロールモーター(注2)、温度調節計(注3)、温度センサーなど、工業炉を構成するパーツの大部分を取り扱っております。また、常時600以上のパーツを在庫として常備し、緊急対応できる体制を整えております。工業炉のパーツは購入できても、その取り付けには技術や調整が必要なものが多くあります。さらに、工業炉は他の工作機械と比べ比較的使用年数が長く、構成部品が古くて廃番になっていたり、型式がわからなかったりと選定が困難なケースもあります。部品を販売するだけでなく、最適な機器選定、取り付け、設定まで行うことができるのが当社のパーツセールスの特徴であります。

 

注1.プロテクトリレーとは、バーナーにトラブルが生じたときに、安全に燃料の供給を遮断する指令を出すコントローラーのことで、火炎検出器や燃焼遮断弁等と組み合わせて使用するものであります。

注2.コントロールモーターとは、工業炉では流量調整弁とダンパー等と組合せて使用する電動操作機器であります。

注3.温度調節計とは温度センサーから測定温度信号を入力し、設定温度になるよう操作機を制御する調節計であります。

 

[事業系統図]

 

※画像省略しています。

 

 

23/10/27

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、以下のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産の部)

 当事業年度末における資産合計は4,032百万円となり、前事業年度末に比べ28百万円減少いたしました。

(流動資産)

 当事業年度末における流動資産は2,713百万円となり、前事業年度末に比べ182百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が375百万円増加した一方で、流動資産のその他に含まれる未収消費税等が83百万円、受取手形が75百万円、仕掛品が67百万円減少したことによるものであります。

(固定資産)

 当事業年度末における固定資産は1,319百万円となり、前事業年度末に比べ211百万円減少いたしました。これは主に新社屋の稼働開始に伴う建設仮勘定の振替及び旧社屋の売却の結果、建物が514百万円増加した一方で、建設仮勘定が695百万円、土地が94百万円減少したことによるものであります。

(負債の部)

 当事業年度末における負債合計は1,130百万円となり、前事業年度末に比べ359百万円減少いたしました。

(流動負債)

 当事業年度末における流動負債は737百万円となり、前事業年度末に比べ324百万円減少いたしました。これは主に支払手形が204百万円、買掛金が189百万円減少した一方で、未払法人税等が54百万円増加したことによるものであります。

(固定負債)

 当事業年度末における固定負債は393百万円となり、前事業年度末に比べ35百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が42百万円減少したことによるものであります。

(純資産の部)

 当事業年度末における純資産合計は、2,902百万円となり、前事業年度末に比べ331百万円増加いたしました。これは、2023年3月31日付での名古屋証券取引所メイン市場への上場に伴い普通株式20,000株の公募増資を実施し、加えて当該公募増資に伴うオーバーアロットメントによる株式売出しに関連して普通株式21,000株の第三者割当増資を実施したことにより、資本金及び資本剰余金がそれぞれ31百万円増加したことに加え、当期純利益の計上及び配当金の支払いにより利益剰余金が268百万円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行により、社会経済活動の正常化に向けた大きな区切りを迎えました。しかしながら、ウクライナ紛争等地政学リスクの継続を原因としたエネルギー価格や原材料価格の高止まりによる消費マインドの低下や、円安の進行等の影響から、依然として景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。

製造業においては、世界的に広まるカーボンニュートラルに向けた潮流をうけ、大手メーカーを中心にCO排出量削減を実現するための生産設備の更新や改造工事への投資需要の高まりが見受けられました。また、当社の主要顧客である自動車業界ではCASE対応に向けて多額の資金投入が観測されております。

このような状況の中、当社は、主要取引先である自動車業界を中心とした製造業における設備需要の回復の影響を受け、当事業年度の経営成績は、売上高2,381百万円(前年同期比58.7%増)、営業利益243百万円(前年同期比149.1%増)、経常利益228百万円(前年同期比115.0%増)、当期純利益277百万円(前年同期比174.3%増)となりました。

 

セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

(産業システム事業)

産業システム事業におきましては、自動車業界を中心としたアフターコロナへ向けた増産体制の強化を図るための設備需要の回復が見受けられ、その影響からファーネスプロダクツが好調に推移し売上が増加いたしました。また、業務提携先から移管された新規商材のアニール炉の拡販に努めてまいりました。一方、世界的なインフレーションの進行から、半導体や鋼材不足による製造部材の仕入価格の高騰、代替品の選定などによる人的コストの増加、光熱費の上昇等の影響から製造原価が上昇いたしました。他方で、設計コストが削減できるリピート品等の生産や新規外注委託先を開拓し生産高の向上を図ることにより、売上総利益率を微減に留める結果となりました。

 この結果、当事業年度のセグメント売上高は1,687百万円(前年同期比92.7%増)となりました。また、セグメント利益は199百万円(前年同期比293.8%増)となりました。

 

(保守サービス事業)

 保守サービス事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復基調による各業界の生産再開、増産に向けた設備修繕・工事の需要拡大は落ち着きつつあるものの、依然堅調に推移いたしました。また、業務提携先の製品の点検保守や大型工事の獲得に注力してまいりました。加えて、製造業においてカーボンニュートラル達成に向けた取り組みが加速し、省エネルギー改造工事の需要が高まっていることから、その需要の獲得に努めてまいりました。

 この結果、当事業年度のセグメント売上高は694百万円(前年同期比10.9%増)となりました。また、セグメント利益は199百万円(前年同期比21.9%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末より375百万円増加し、1,783百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果により獲得した資金は179百万円(前事業年度は9百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が390百万円であり、未払又は未収消費税等の増減額156百万円があった一方、仕入債務の減少額393百万円があったためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果により獲得した資金は201百万円(前事業年度は574百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入217百万円があったためであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果により支出した資金は5百万円(前事業年度は243百万円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入63百万円があった一方、長期借入金の返済による支出42百万円及び上場関連費用の支出17百万円があったためであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年8月1日

  至 2023年7月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

産業システム事業

1,549,241

141.8

保守サービス事業

682,983

107.1

合 計

2,232,224

129.0

(注)金額は販売価格によっており、当社はセグメント間の取引についてはありません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年8月1日

  至 2023年7月31日)

受注高

(千円)

前年同期比(%)

受注残高

(千円)

前年同期比(%)

産業システム事業

1,489,946

70.3

1,447,233

88.0

保守サービス事業

657,593

101.0

162,915

81.7

合 計

2,147,540

77.5

1,610,148

87.3

(注)金額は販売価格によっており、当社はセグメント間の取引についてはありません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年8月1日

  至 2023年7月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

産業システム事業

1,687,682

192.7

保守サービス事業

694,171

110.9

合 計

2,381,854

158.7

(注)1.当社はセグメント間の取引についてはありません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2021年8月1日

  至 2022年7月31日)

当事業年度

(自 2022年8月1日

  至 2023年7月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社キャタラー

241,894

16.1

474,942

19.9

明和テクノス株式会社

50,463

3.4

278,422

11.7

草野産業株式会社

215,745

14.4

80,419

3.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(売上高)

 当事業年度における売上高は、2,381百万円(前年同期比58.7%増)となり、前事業年度に比べて880百万円増加いたしました。

 これは、産業システム事業において、アフターコロナを見据えた設備投資への反動需要が集中したことによるものであります。加えて、全世界的な需要の拡大の影響から半導体を始めとした各種部品の長納期化したため、通常6ヶ月を想定している設備製造にかかるリードタイムが長期化し、前事業年度に売上が見込まれていた多くの案件が当事業年度の売上になったことが大きく影響しております。この結果、産業システム事業の売上高は、1,687百万円(前年同期比92.7%増)となりました。

 一方、点検、メンテナンスを主とする保守サービス事業においては、業務提携先企業との協調を進め、新規顧客層の獲得に注力することで、堅調に売上を拡大することができました。また、カーボンニュートラルに向けた既存設備の省エネ改造工事の需要を取り込むことができました。この結果、保守サービス事業の売上高は、694百万円(前年同期比10.9%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 売上原価は、1,738百万円(前年同期比66.9%増)となり、前事業年度に比べ696百万円増加いたしました。これは主に産業システム事業における売上高の増加に紐づく、製造原価の増加によるものであります。また、世界的な景気回復基調を受けた半導体や鋼材を中心とした仕入価格の高騰や原油価格の高騰による物流コストの拡大の影響、短納期の代替部品の確保やそれに伴い追加される再設計などによる製造経費の増加により売上原価率が増加したことに起因しております。この結果、売上総利益は643百万円(前年同期比40.0%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 販売費及び一般管理費は、399百万円(前年同期比10.4%増)となり、前事業年度に比べ37百万円増加いたしました。これは主に新工場の稼働に伴う減価償却費及び管理諸費の増加、株式上場により資本金が増加したことによる外形標準課税が適用されたことに伴う租税公課の増加によるものであります。この結果、営業利益は243百万円(前年同期比149.1%増)となり、前事業年度に比べ145百万円増加いたしました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 営業外収益は5百万円(前年同期比45.0%減)となり、前事業年度に比べ4百万円減少いたしました。これは主に前事業年度に発生した補助金収入や為替差益が減少したことによるものであります。営業外費用は19百万円(前年同期比3,183.1%増)となり、前事業年度に比べ19百万円増加いたしました。これは主に株式上場に伴う上場関連費用が発生したことによるものであります。この結果、経常利益は228百万円(前年同期比115.0%増)となり、前事業年度に比べ122百万円増加いたしました。

 

(特別利益、特別損失及び当期純利益)

 特別利益として旧社屋の売却に伴う固定資産売却益96百万円、新工場建設に対する補助金収入57百万円等を計上した結果、税引前当期純利益は390百万円(前年同期比148.9%増)となりました。また、法人税等合計は113百万円となり、前事業年度に比べ57百万円増加いたしました。

 以上の結果、当期純利益は277百万円(前年同期比174.3%増)となり、前事業年度に比べ176百万円増加いたしました。

 

③ 目標とする経営指標の達成状況等

 当社の経営指標は変動費率55%以下、売上高総利益率29.5%以上、売上高営業利益率9%以上を目標としております。

 当事業年度においては、変動費率、売上高総利益率、売上高営業利益率はそれぞれ57.5%、27.0%、10.2%となり、売上高営業利益率は達成いたしました。これは、アフターコロナを見据えた設備投資需要の回復の影響により、産業システム事業の売上高が大きく増加したことにより、原価高の影響を多大に受けている産業システム事業の売上高に占める割合が増加したことで相対的に製造原価が増加したことにより、変動費率が増加し、売上高総利益率が減少したことによるものと分析しております。一方、売上高自体が新型コロナウイルス感染症の影響から回復したことにより、相対的に販売費及び一般管理費の割合が減少した結果、売上高営業利益率は増加いたしました。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

資金需要

 当社における資金需要は主に運転資金需要があります。運転資金需要のうち主なものは、当社の産業システム事業の設備製造にかかわる材料費、外注費、労務費及び保守サービス事業のメンテナンスにかかわる材料費、労務費があります。また、各事業に共通するものとして販売費及び一般管理費の人件費があります。その他に設備投資需要としまして、各種固定資産購入費用があります。

 

財務政策

 当社は現在、運転資金については営業キャッシュ・フローで獲得した内部資金を充当しております。不足が生じた場合は金融機関からの短期借入金で調達するために、金融機関に十分な借入枠を有しております。

 設備投資需要に係る資金につきましては、原則として自己資本により賄うこととしておりますが、必要に応じて長期借入金により資金調達を行う等、柔軟に対応することとしております。

 当事業年度末における長期借入金の残高は、1年内返済予定の長期借入金の残高を含め、235百万円の借入であります。

手元資金の流動性について

 当社は当事業年度末において、1,817百万円の現金及び預金を保有し、そのうち334百万円の定期預金を保有しておりますが、これは短期の定期預金のため、十分な手元流動性を確保しております。また、今後、必要に応じて金融機関との間で資金調達を検討するとともに、新規投資の時期を慎重に見極め、経費抑制によりキャッシュ・フロー管理を徹底し、十分な手元流動性の確保に努めてまいります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、景気変動、海外情勢等、海外業務、大規模災害、情報漏洩、品質管理等様々なリスクが存在するものと認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化や、人材の確保と育成等に力を入れ、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切な対応に努め、改善に取り組みます。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針

 当社が今後、事業を拡大し、継続的な成長を実現するためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環

境及び対処すべき課題等」に記載しておりますとおり、「カーボンニュートラル実現」に向けた加熱技術の省エネルギー・省CO2化、インフレによる材料価格の高騰に対する対応、工業炉業界での市場規模の拡大等の課題について適切に対処していく必要があると認識しております。

 それらの課題に対応するための経営者の方針として、経営者は、常に市場のニーズや内部環境並びに外部環境の変化に関する情報の入手及び分析を積極的に行い、当社経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。

 加えて、外部企業とのアライアンスを積極的に推進し、当社の強みを活かし、弱みを補う形で業務の拡大及び

事業補完を目指して取り組んでまいります。また、新規販路拡大や必要な人材を安定的に確保するため企業のブ

ランド力の強化を図ります。併せて、若い世代への技術継承をシステマティックに行う土壌を作成し、人材育

成・定着に注力し、基幹事業の継続体制の盤石化に注力してまいります。

 さらには、IoT技術(DX)を活用したリモートメンテナンスシステムの構築、省エネ環境デバイスの開発を推進し、予防メンテナンスや省エネルギーに貢献できる商材を提供することで保守サービス事業の拡充に努めてまいります。