売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

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最終更新:

E06228 Japan GAAP

売上高

2,775.4億 円

前期

3,260.4億 円

前期比

85.1%


3【事業の内容】

(1)当社の事業内容

 当社の主たる事業は、有価証券関連業であり、具体的な事業として有価証券及びデリバティブ商品の売買等及び売買等の委託の媒介、有価証券の引受け及び売出し、有価証券の募集及び売出しの取扱い、有価証券の私募の取扱い、その他有価証券関連業並びに投資助言業等を営んでおります。

 

(2)株式会社大和証券グループ本社との関係

 当社は、株式会社大和証券グループ本社(以下、「大和証券グループ本社」という。)の連結子会社として、大和証券グループ本社を中心とする企業集団(以下、「大和証券グループ」という。)に属しております。

 当社は、有価証券関連業を中心としたリテール営業部門及び国内ホールセール部門を担っております。

 

23/06/29

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。

 

① トレーディング商品の評価

 当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。また、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 2. 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。

 時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。

(ⅰ)商品有価証券等

 主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。

 

(ⅱ)デリバティブ

 上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。

 デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。

 価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。

 価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。

 

 経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

② 有価証券の減損

 当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち市場価格のある有価証券については、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。また、市場価格のない有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。

 

③ 固定資産の減損

 当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。

 

④ 繰延税金資産の回収可能性

 当社では、会計基準に従い、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。

 

 なお、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格の高騰、米国長期金利の上昇や米国の金融機関破綻に伴う経済情勢や相場環境の悪化は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等によりこれらの市場、経済または地政学リスクが顕在化した場合には、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当事業年度の財政状態の分析

<資産の部>

 当事業年度末の総資産は前年度末比2兆7,355億円(18.7%)減少の11兆9,097億円となりました。内訳は流動資産が同2兆7,377億円(18.9%)減少の11兆7,186億円であり、このうち現金・預金が同5,370億円(34.9%)減少の1兆18億円、トレーディング商品が同5,089億円(9.3%)減少の4兆9,417億円、有価証券担保貸付金が同1兆4,712億円(26.8%)減少の4兆107億円となっております。固定資産は同21億円(1.1%)増加の1,910億円となっております。

 

<負債の部・純資産の部>

 当事業年度末の負債合計は前年度末比2兆7,425億円(19.4%)減少の11兆3,920億円となりました。内訳は流動負債が同2兆4,655億円(20.0%)減少の9兆8,853億円であり、このうちトレーディング商品が同6,321億円(18.4%)増加の4兆691億円、有価証券担保借入金が同3兆797億円(52.0%)減少の2兆8,393億円、短期借入金が同5,857億円(34.7%)減少の1兆1,000億円となっております。固定負債は同2,775億円(15.6%)減少の1兆5,023億円であり、このうち社債が同2,184億円(25.2%)減少の6,475億円、長期借入金が同585億円(6.8%)減少の8,082億円となっております。

 純資産合計は当期純利益を71億円計上したこと等により、同69億円(1.4%)増加の5,177億円となりました。

 

(3)当事業年度の経営成績の分析

① 事業全体の状況

 当事業年度の営業収益は2,775億円(前年度比14.9%減)となりました。受入手数料は委託手数料及び募集・売出しの取扱手数料等が減少し、総額で1,773億円(同11.7%減)、トレーディング損益はエクイティ等の減少により481億円(同52.0%減)となりました。金融収支は178億円(同29.0%増)、純営業収益は2,433億円(同22.8%減)となっております。

 販売費・一般管理費は、取引関係費が403億円(同7.7%増)、事務費が535億円(同7.6%増)であったものの、人件費が920億円(同6.5%減)となったこと等から、合計で2,385億円(同0.5%減)となりました。この結果、経常利益は59億円(同92.4%減)となりました。

 これに特別損益、法人税等を加味した結果、当期純利益は71億円(同87.5%減)となりました。

 

 

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

純営業収益

経常利益又は経常損失(△)

 

2022年

3月期

2023年

3月期

対前年度

増減率

構成比率

2022年

3月期

2023年

3月期

対前年度

増減率

構成比率

リテール営業部門

184,485

160,142

△13.2%

65.7%

40,379

25,064

△37.9%

100.0%

国内ホールセール部門

128,573

83,755

△34.9%

34.3%

45,170

△5,304

その他・調整等

2,048

△539

△7,316

△13,800

合計

315,106

243,358

△22.8%

100.0%

78,234

5,959

△92.4%

100.0%

(注)純営業収益の構成比率は、当事業年度において純営業収益が正の値であったセグメントの純営業収益に占める、各セグメントの純営業収益の割合としております。また、経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当事業年度において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。

 

[リテール営業部門]

 リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。

 リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。

 当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。

1.資産管理型ビジネスモデルの実現
2.お客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
3.外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネス展開と収益化

4.マスマーケティング及びお客様対応のデジタルシフト、サステナビリティへの取組み

 

 各項目の実績は以下のとおりです。

1.ゴールベース・アプローチツールの高度化や、残高ベース収益に寄与する商品の開発など、資産管理型ビジネスモデルの実現に向けた取り組みを進めました。ファンドラップや投信フレックスプランなどのストック関連資産残高拡大による残高ベース収益の拡大に取り組みました。

2.お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に、「お客様満足度協議会」を半期毎に開催し、お客様向け書類の電子交付化等をはじめとした事務手続きの簡便化を行い、お客様の利便性向上に向け取り組みました。また、オルタナティブ資産への新たな投資機会を提供する「ダイワ・WiL3号ベンチャーキャピタル・ファンド」や、資産運用に加え相続・事業承継等富裕層のお客様の多様なニーズにお応えする「プラチナウェルスラップサービス」の取扱いを開始するなどお客様のあらゆるニーズに応える商品・サービスの提供に努めました。

3.お客様基盤の拡大や資産形成分野における商品・サービス提供を目的として、株式会社ゆうちょ銀行において「ゆうちょファンドラップ」の取扱いを開始しました。また、信金中央金庫と連携し開発した「しんきんファンドラップ」の取扱いを多摩信用金庫で開始しました。上記に加え、株式会社四国銀行との包括的業務提携において、2023年4月の業務開始に向け準備を進めました。

4.お客様の利便性の向上を目的として、オンライントレードのリニューアルの実施やお客様の多様なニーズに合わせたメールサービスコンテンツの拡充に取り組みました。

当事業年度においては、昨年度に引き続き資産管理型ビジネスモデルへの移行とコスト構造改革などに取り組みました。市場環境の不透明感により個人投資家のアクティビティが低調となり、エクイティ収益・投信募集手数料等が減少しました。一方で、ラップ口座サービスは契約額・純増額がともに増加したことにより契約資産残高は過去最高の3兆954億円となり、ラップ関連収益である投資顧問・取引等管理料も増加しました。

当事業年度のリテール営業部門における純営業収益は1,601億円(前年度比13.2%減)、経常利益は250億円(同37.9%減)となりました。リテール営業部門の当事業年度の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ65.7%及び100.0%でした。

 

 

[国内ホールセール部門]

 国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等のお客様向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。

1.お客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供

2.高く評価されたリサーチ力を活かしたブローカービジネス基盤拡大

3.SDGs関連ファイナンスの促進による企業のサステナビリティ支援

4.デジタル人材拡充とデータ駆動型ビジネスの推進

 各項目の実績は、以下のとおりです。

1.M&Aビジネスへの取組みとして、業界再編やグループ内再編などの案件獲得に努め、グローバルネットワークの拡大・強化に取り組みました。IPOビジネスへの取組みとしてはDaiwa Innovation Networkなどを介してスタートアップ企業の成長支援を推進しました。その他、大型ファイナンス案件獲得に取り組みました。

2.アナリストによる高品質なリサーチを国内外の幅広い投資家に提供し、ブローカービジネスの拡大に努めました。

3.企業に対して、市場拡大するグリーンファイナンス/トランジション・ファイナンスの促進に関して取組みの強化に努めました。

4.デジタルIT活用力育成プログラムを通じたデジタル人材の育成とともに、データ分析の高度化に取り組みました。

 グローバル・マーケッツのエクイティ収益は、市場環境の不透明感を背景に顧客フローが減少し、また、ボラティリティの高い相場展開となる中、ポジション運営にも苦戦したことから、減収となりました。フィクスト・インカム収益は、国内においてクレジットスプレッドの拡大を受けクレジットのポジション運営に苦戦したことから、減収となりました。

 グローバル・インベストメント・バンキングでは、株式会社ゆうちょ銀行の売出し及びスカイマーク株式会社の新規上場においてグローバル・コーディネーター(注1)を務めたほか、富士フイルムホールディングス株式会社によるソーシャルボンド(注2)、国立大学法人東京工業大学によるサステナビリティボンド(注3)などの発行において事務主幹事及びStructuring Agent(注4)を務めました。M&Aアドバイザリー業務では、株式会社ニトリホールディングスと株式会社エディオンの資本業務提携やJX金属株式会社によるタツタ電線株式会社の完全子会社化をはじめとする業界再編・グループ再編案件などの国内案件に加えて、様々な国・地域で多様な業種の案件に関与しました。

 以上のことから、当事業年度の国内ホールセール部門における純営業収益は837億円(同34.9%減)、経常損失は53億円となりました。国内ホールセール部門の当事業年度の純営業収益の当社全体の純営業収益に占める割合は、34.3%でした。

 

(注1)グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。

(注2)ソーシャルボンド:特定の社会的課題への対処やその軽減、あるいは、ポジティブな社会的成果の達成を目指す新規又は既存のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券。

(注3)サステナビリティボンド:企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。

(注4)Structuring Agent:SDGs債などの発行にあたって、フレームワークの策定やセカンドオピニオン取得に関する助言などを通じて、SDGs債などの発行支援を行う者。

 

③ 経営成績の前提となる2022年度のマクロ経済環境

<海外の状況>

 世界経済は、総じて2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの拡大基調が続いていますが、その改善ペースは鈍化しつつあります。IMF(国際通貨基金)が2023年4月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.3%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.4%へと低下したと見込まれています。世界的にコロナ禍で落ち込んだサービス活動の回復が継続する一方、歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気拡大ペースを抑制する要因となっています。また、2022年初に始まったロシアによるウクライナへの侵攻を契機とした地政学的リスクの高まりや、それに伴うエネルギー不足への懸念、更には米国を中心とした金融不安の拡大などが、世界経済における新たなリスクとなっています。

 米国経済は、緩やかな回復傾向が続いています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率△0.6%と2四半期連続のマイナス成長となりました。中国・上海市でのロックダウンなどを背景とした供給制約によって生産が停滞し、在庫投資が大幅に減少したことに加え、金利上昇を背景に住宅投資が減少したことでGDPが押し下げられました。他方、労働市場が改善基調を維持する中、経済正常化によるサービス消費の回復もあり、個人消費は増加が続きました。7-9月期に入ってからも労働市場の改善は続いており、個人消費の増加を主因に7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.2%と3四半期ぶりの上昇に転じました。しかし、10-12月期にはFRB(連邦準備制度理事会)による利上げの影響によって、住宅投資が減少したほか、設備投資の増加ペースが鈍化したことにより、実質GDP成長率は前期比年率+2.6%と、前四半期から減速しました。2023年1-3月期に入ってもタイトな金融環境が継続していることを背景に、設備投資や住宅投資に弱さが見られた結果、2023年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%となり、減速が続いています。高いインフレ率が引き続き家計の重荷になっていることに加え、銀行の連鎖破綻などにより、米国経済の先行きの不透明感は増しています。

 金融面では、FRBは歴史的な高インフレを鎮静化するため、金融引き締めを強化しています。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了しました。続く5月のFOMCでは、0.50%ptの利上げに加えて、6月からFRBのバランスシートの縮小を開始することが決定されました。6月のFOMCでは利上げ幅がさらに拡大され、0.75%ptの利上げが行われました。その後、7月、9月、11月のFOMCでもそれぞれ0.75%ptの利上げが実施されましたが、12月のFOMCでは利上げ幅が0.50%ptへと縮小され、2023年2月のFOMCでは0.25%ptへと更に縮小されました。3月に入ると金融システム不安が強まったことを受け、FRBはBank Term Funding Programと呼ばれる危機対応策を打ち出した一方、FOMCでは0.25%ptの利上げを決定しました。金融不安の拡大に伴ってリスクオフの動きが強まったことや、利上げペースの鈍化が織り込まれたことで、3月初には4%超まで上昇していた米国の10年債利回りは、3月末には3.5%程度へと低下しました。

 欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかな回復基調が続いたものの、2022年後半以降は停滞感が強まっています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、行動制限の緩和などによる個人消費の持ち直しなどから、前期比年率+3.4%と堅調な結果となりました。しかし、2月下旬に開始したロシアによるウクライナ侵攻の長期化やインフレ率の高進などから、個人や企業の景況感は大幅な悪化が続いています。また、インフレ率の高進を背景に、ECB(欧州中央銀行)が金融引き締めに転じたことによる借り入れコストの上昇も、投資や消費を下押しする要因となり、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.5%と減速しました。さらに、10-12月期には実質GDP成長率は前期比年率△0.5%と、マイナス成長に転じました。2023年1-3月期の実質GDP成長率は個人消費の減少などにより、前期比年率△0.4%と2四半期連続のマイナス成長となり、力強さに欠く内容となっています。

 金融面では、ECBはコロナ禍以降の金融緩和を終了し、引き締めへと転じています。インフレが加速する中、2022年3月のECB理事会では、コロナ禍以前から実施されてきた資産買入プログラムの終了を前倒しする方針が示され、6月の理事会では、7月1日付で同プログラムを終了することが決定されました。続く7月の理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入されたマイナス金利が8年ぶりに解除されました。さらに、9月と10月の理事会では0.75%ptと過去最大の利上げ幅での利上げを実施しましたが、12月の理事会では利上げ幅を0.50%ptに縮小しました。2023年に入ると、欧州の金融システムに対する不安が広まったものの、2月と3月の理事会において、それぞれ0.50%ptの利上げを決定しました。

 新興国経済は、2020年後半以降、総じて持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、2021年の新興国の実質GDP成長率は、前年の落ち込みの反動から+6.9%と高い成長となりました。また、2022年の実質GDP成長率は+4.0%となりました。

 新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、政府が掲げていたゼロコロナ政策の下、上海市などの多くの都市でロックダウンが実施されたため、2022年4-6月期の実質GDP成長率は前年比+0.4%の低成長にとどまりました。しかし、ロックダウンが順次解除されたことに加えて、財政・金融政策による下支えもあり、7-9月期の中国の実質GDP成長率は前年比+3.9%となり、前期から伸びが加速しました。10-12月期には、感染者数が急増した結果、経済活動が停滞した影響で実質GDP成長率は前年比+2.9%にとどまりました。2023年1-3月期には感染者数が急速に減少した結果、個人消費が顕著に回復したこともあり、実質GDP成長率は前年比+4.5%へと加速しました。

 中国以外の新興国は、総じて見れば持ち直しの動きが続きました。欧米を中心とした主要国経済の回復による外需の拡大が新興国経済を下支えしたことに加え、一部の資源国では、とりわけ2022年前半には資源価格の上昇が経済を押し上げる要因となりました。一方、高インフレや、欧米での金融引き締め・金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされており、新興国でも景気の減速感は強まりつつあります。

<日本の状況>

 日本経済は、2022年度に入り緩やかな回復が続いています。2022年3月21日にまん延防止等重点措置が解除され、経済活動の正常化が進んだことで、2022年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+5.6%と成長ペースが大きく加速しました。しかし、7-9月期には輸入の急増を主因に実質GDP成長率は前期比年率△1.5%のマイナス成長となりました。10-12月期には前期比年率+0.4%と2四半期ぶりのプラス成長となりましたが、回復ペースは鈍く、2022年後半において停滞感が強まりました。しかし、2023年1-3月期に入ると、個人消費や設備投資の増加を主因に実質GDP成長率は前期比年率+2.7%と増加に転じました。

 需要項目ごとに見ると、個人消費は持ち直しの動きが続いています。まん延防止等重点措置が2022年3月21日を期限に全面解除されたことで、2022年4-6月期はサービス消費を中心に個人消費は持ち直しましたが、7-9月期には再び新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、個人消費は小幅の増加にとどまりました。10-12月期以降は堅調な自動車販売などにけん引される形で個人消費は緩やかながらも増加基調を維持しています。家計による需要のうち住宅投資については、資材価格上昇を背景とした価格上昇などにより、2021年後半以降停滞感が強まっています。

 企業部門の需要である設備投資は均して見ると増加基調を維持しています。2022年4-6月期に入って新型コロナウイルスの感染者数が減少し、国内の経済活動が再開される中、設備投資にも再び増加の兆しが見られました。また、7-9月期には、それまで設備投資を抑制する要因となっていた、中国でのロックダウンなどによるサプライチェーンの混乱が解消に向かったこともあり、設備投資の回復が続きました。10-12月期には年度前半の回復の反動もあり、小幅の減少に転じていますが、2022年度を通してみれば設備投資は増加基調を維持しています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから2021年度に見送られた設備投資の一部は2022年度に先送りされているとみられ、日銀短観(2023年3月調査)によれば、2022年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+11.4%と非常に高い伸びが見込まれています。

 金融面では、短期金利に加えて長期金利も操作対象とする日本銀行の金融緩和措置が継続しています。ただし、日本経済がコロナ禍による落ち込みから持ち直す中、日本銀行は、2021年12月の金融政策決定会合で、コロナ禍への対応として導入された社債などの買い入れ増額の一部について2022年3月で終了することを決定しました。日本銀行による緩和的な金融政策が続くものの、2022年に入って米国長期金利が上昇する中、日本の10年債利回りでも上昇圧力が強まっており、2022年度に入ってからは、日本銀行が政策目標とする範囲の上限である0.25%近傍で推移していました。こうした状況の中、12月の金融政策決定会合において、日本銀行は10年債利回りの変動幅を±0.5%へと拡大することを決定し、これを受けて10年債利回りは一時0.5%を上回る水準へと上昇しました。しかし、3月に入ると、米国での金融システム不安の影響で米国長期金利が低下したことに連動して、日本の10年債利回りは3月末時点で0.389%へと低下しています。

 為替市場をみると、2022年度に入り円安が急速に進みましたが、11月以降は円高への揺り戻しがみられました。米国では高インフレを抑制するためにFRBが利上げを続ける姿勢を示し、金利の上昇が続いた一方、日本では日本銀行による低金利政策が維持されたことで、日米金利差が拡大し、対ドルレートは非常に速いペースで円安が進みました。年初時点で115円台だった対ドルレートは、10月には一時150円台とおよそ32年ぶりの円安水準となりました。しかし、その後、FRBによる利上げのペースが鈍化する公算が高まるなか、日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大もあり、12月には一時131円台まで急速に円高が進み、2023年3月末時点では1ドル133.13円となっています。

 株式市場では、海外市場の動向に大きく左右される形で、株価が一進一退の推移を続けています。4-6月期は、米国での金融引き締めや、景気減速懸念によって米国の株価が一進一退となる中、日経平均株価も上昇・下落を繰り返す不安定な相場展開となりました。7-9月期に入ると、米国での景気減速懸念が強まったことに加えてインフレ率に鈍化の兆候が見られたことで、米国長期金利の低下が進み、8月中旬まで米国株価は上昇しました。日経平均株価もそうした米国株価の動きに追随して上昇し、8月半ばには一時29,000円台を回復しました。しかし、8月後半に入ると米国のインフレ懸念が再び高まり、これに対してFRBがタカ派的な姿勢を強めたため、9月末にかけて日米ともに株価は下落基調となりました。10月以降には、FRBによる利上げペースが鈍化するとの見方が広まったことなどもあり株価は上昇したものの、12月に入ると日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大を受けて再度下落に転じました。2023年に入って金融システム不安が顕在化したものの、政策当局の迅速な対応によって市場が落ち着きを取り戻したことで株価は上昇しました。

 2023年3月末の日経平均株価は28,041円48銭(2022年3月末比220円5銭高)、10年債利回りは0.389%(同0.171%ptの上昇)、為替は1ドル133円13銭(同11円49銭の円安)となりました。

 

(4)当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析

① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

 

2022年3月期

2023年3月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

△174,107

77,547

投資活動によるキャッシュ・フロー

△48,508

△29,611

財務活動によるキャッシュ・フロー

271,901

△585,034

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

49,285

△537,099

現金及び現金同等物の期首残高

1,494,682

1,543,967

現金及び現金同等物の期末残高

1,543,967

1,006,868

 

 当事業年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減などにより775億円(前年度は△1,741億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出などにより△296億円(同△485億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減などにより△5,850億円(同2,719億円)となりました。この結果、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比5,370億円減少の1兆68億円となりました。

 

② 資本の財源及び流動性に係る情報

(ⅰ)流動性の管理

<財務の効率性と安定性の両立>

 当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。

 当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。

 財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。

 また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。

 なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、大和証券グループ本社の2023年3月期第4四半期日次平均のLCRは135.9%です。また、同第4四半期末のNSFRは有価証券報告書提出日における速報値で137.5%となっており、確定値は算出完了次第、大和証券グループ本社ホームページにて公表する予定です。

 

<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>

 当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。

 当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。

(ⅱ)株主資本

 当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。

 当事業年度末の株主資本は、5,156億円(前事業年度末比71億円増)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は1,523億円となりました。利益剰余金は当期純利益71億円を計上した結果、3,633億円(同71億円増)となりました。