大和証券株式会社

証券、商品先物取引業証券

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E06228 Japan GAAP


3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の中間財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる中間財務諸表の作成基準に基づき作成されております。また、当社は、中間財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として中間財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。

 

① トレーディング商品の評価

 当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって中間貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として中間損益計算書に計上しております。また、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 1.金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。

 時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。

(ⅰ)商品有価証券等

 主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。

(ⅱ)デリバティブ

 上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。

 デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。

 価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。

 価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。

 

 経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、中間財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

② 有価証券の減損

 当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち市場価格のある有価証券については、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当中間会計期間末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。また、市場価格のない有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。

③ 固定資産の減損

 当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。

 

④ 繰延税金資産の回収可能性

 当社では、会計基準に従い、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。

 

 なお、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格の高騰、米国長期金利の上昇や米国の金融機関破綻に伴う経済情勢や相場環境の悪化は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等によりこれらの市場、経済または地政学リスクが顕在化した場合には、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当中間会計期間の財政状態の分析

<資産の部>

 当中間会計期間末の総資産は前事業年度末比4兆902億円(34.3%)増加の15兆9,999億円となりました。内訳は流動資産が同4兆862億円(34.9%)増加の15兆8,049億円であり、このうち現金・預金が同3,675億円(36.7%)増加の1兆3,693億円、トレーディング商品が同1兆6,683億円(33.8%)増加の6兆6,100億円、有価証券担保貸付金が同1兆8,857億円(47.0%)増加の5兆8,965億円となっております。固定資産は同39億円(2.1%)増加の1,949億円となっております。

 

<負債の部・純資産の部>

 当中間会計期間末の負債合計は前事業年度末比4兆695億円(35.7%)増加の15兆4,615億円となりました。内訳は流動負債が同4兆2,155億円(42.6%)増加の14兆1,009億円であり、このうちトレーディング商品が同6,883億円(16.9%)増加の4兆7,575億円、有価証券担保借入金が同2兆7,704億円(97.6%)増加の5兆6,098億円となっております。固定負債は同1,459億円(9.7%)減少の1兆3,563億円であり、このうち社債が同1,276億円(19.7%)減少の5,199億円、長期借入金が同183億円(2.3%)減少の7,898億円となっております。

 純資産合計は、中間純利益を276億円計上したほか、配当金71億円の支払いを行ったこと等により、同206億円(4.0%)増加の5,383億円となりました。

 

(3)当中間会計期間の経営成績の分析

① 事業全体の状況

 当中間会計期間の営業収益は1,947億円(前年同期比53.9%増)となりました。受入手数料は委託手数料及び引受・売出しの取扱手数料などが増加し、総額で1,178億円(同38.5%増)、トレーディング損益は株券等、債券等の増加により376億円(同69.2%増)となりました。金融収支は92億円(同17.7%増)、純営業収益は1,648億円(同43.0%増)となっております。

 販売費・一般管理費は、取引関係費が209億円(同3.0%増)、人件費が508億円(同12.4%増)、事務費が272億円(同2.5%増)となったこと等から、1,257億円(同6.3%増)となりました。この結果、経常利益は403億円(前年同期は20億円の経常損失)となりました。

 これに特別損益、法人税等を加味した結果、中間純利益は276億円(同65.7倍)となりました。

 

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

 純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

純営業収益

経常利益又は経常損失(△)

 

2022年

9月期

2023年

9月期

対前年同期

増減率

構成比率

2022年

9月期

2023年

9月期

対前年同期

増減率

構成比率

リテール営業部門

79,576

96,659

21.5%

57.5%

12,117

24,844

105.0%

49.7%

国内ホールセール

部門

37,878

71,478

88.7%

42.5%

△6,194

25,157

50.3%

その他・調整等

△2,194

△3,335

△8,020

△9,617

合計

115,261

164,801

43.0%

100.0%

△2,097

40,384

100.0%

(注)純営業収益の構成比率は、当中間会計期間において純営業収益が正の値であったセグメントの純営業収益に占める、各セグメントの純営業収益の割合としております。また、経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当中間会計期間において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。

 

[リテール営業部門]

 リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。

 リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。

 当中間会計期間においては、エクイティ収益は委託手数料が増加したほか、大型のエクイティ引受案件があったことにより増収となりました。債券収益は大型の債券引受案件があった一方、外債の販売額の減少等により減収となりました。株式投資信託については、資産管理型ビジネスモデルへの移行の着実な進展と良好なマーケット環境が相まって販売額が増加したことにより、募集手数料、代理事務手数料ともに増収となりました。また、ラップ関連収益についても、契約資産残高が増加したことにより増収となりました。

 その結果、当中間会計期間のリテール営業部門における純営業収益は966億円(前年同期比21.5%増)、経常利益は248億円(同105.0%増)となりました。

 

[国内ホールセール部門]

 国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等のお客様向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールス及びトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。

 グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に顧客フローが増加したことから増収となりました。フィクスト・インカム収益は、クレジットを中心とした顧客フローが増加したことから増収となりました。

 グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、複数のエクイティ・債券に係る大型案件の取扱いが寄与し、増収となりました。また、M&Aビジネスでは多数の案件を遂行しました。

 その結果、当中間会計期間の国内ホールセール部門における純営業収益は714億円(前年同期比88.7%増)、経常利益は251億円(前年同期は61億円の経常損失)となりました。

 

③ 経営成績の前提となる当中間会計期間のマクロ経済環境

<海外の状況>

世界経済は、2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの急回復が一服し、経済活動の正常化が進むにしたがってその改善ペースは鈍化しています。IMF(国際通貨基金)が2023年10月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.3%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.5%へと低下し、2023年には+3.0%へと一段と減速する姿が見込まれています。歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気の拡大ペースを鈍化させると予想されています。また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻を契機とした地政学的緊張の高まりも、世界経済におけるリスクとなっています。

米国の2023年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率+2.2%となり、2022年10-12月期以降減速基調にありました。記録的なペースでの物価上昇が続く中、2022年3月以降、FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを進めたことなどが背景にあります。こうした影響をとりわけ強く受ける住宅投資で減少が続いたほか、設備投資も減速しました。一方、高いインフレ率が引き続き家計の重荷になったものの、雇用者報酬が増加したことなどが個人消費を下支えしました。こうした状況の中、3月に銀行の連鎖破綻が発生し、米国経済の先行きの不透明感は強まりました。4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率+2.1%となり、1-3月期に続いて減速しました。内訳を見ると、個人消費は、大幅な伸びとなった1-3月期からは減速したものの、増加を維持しています。加えて、設備投資が大幅に増加したことも米国経済をけん引しました。一方、金利上昇の影響を主因に住宅投資は減少が続きました。7-9月期の実質GDP成長率は、前期比年率+4.9%となり、4-6月期から加速しました。内訳を見ると、個人消費の大幅な増加が米国経済をけん引しました。また、減少基調にあった住宅投資も増加に転じました。他方で、設備投資は2021年7-9月期以来の減少に転じました。金利上昇によって企業の設備投資意欲が低下している可能性があります。

金融面では、FRBは歴史的な高インフレを鎮静化するため、金融引き締めを強化しています。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了し、その後も、政策金利は段階的に引き上げられました。2023年3月に入ると金融システム不安が強まったことを受け、FRBはBank Term Funding Programと呼ばれる危機対応策を打ち出しましたが、インフレ抑制の姿勢を崩さず、3月と5月のFOMCではそれぞれ0.25%ptの利上げを決定しました。その後、6月のFOMCでは政策金利の誘導目標レンジが据え置かれ、7月のFOMCでは0.25%ptの利上げを決定しましたが、9月のFOMCでは再び誘導目標レンジが据え置かれるなど、利上げのペースは鈍化しています。

欧州経済(ユーロ圏経済)は、2022年後半以降、一進一退の動きとなっています。ユーロ圏の実質GDP成長率は、2022年10-12月期にマイナス成長に転じました。その後、2023年1-3月期には小幅のプラス成長に復しました。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.6%と、小幅ながらも2四半期連続のプラス成長となりました。しかし、7-9月期には前期比年率▲0.4%と再度マイナス成長を記録しており、停滞感が強まっています。経済規模の大きいドイツがマイナス成長に転じたことに加え、アイルランドも大幅なマイナス成長となったことが全体を押し下げました。

金融面では、ECB(欧州中央銀行)はインフレを抑制するため金融引き締めを段階的に強化しています。2022年7月のECB理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入された預金ファシリティ金利のマイナス状態が8年ぶりに解除されました。その後も段階的に利上げを実施し、2022年12月の理事会では、主要リファイナンス・オペ金利の誘導目標を2.50%に引き上げることを決定しました。2023年に入ると欧州の金融システムに対する不安が一時広まったものの、2月と3月の理事会においても、それぞれ0.50%ptの利上げを決定しました。その後、9月の理事会まで連続で利上げを決定したものの、2023年5月の理事会以降の引き上げ幅はいずれも0.25%ptとなっており、景気に停滞感が見られる中、利上げのペースは抑制されています。

IMFによると、2022年の新興国の実質GDP成長率は、+4.1%の成長となりました。2023年にも+4.0%の成長率が見込まれているものの、先進国において景気後退懸念が高まる中、新興国経済でも景気減速のリスクが高まりつつあります。

新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2023年1-3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.5%となりました。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.3%となり、1-3月期の伸び率を上回るペースでの成長となりました。ただし、2022年4-6月期には上海市でロックダウンが行われた影響で経済成長が停滞していたことを考慮すると、反動増は小幅にとどまったといえます。7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.9%となりました。消費の持ち直しが景気の回復をけん引しているとみられます。

中国以外の新興国は、経済活動の正常化が進展したことなどを背景に、2022年以降は総じて見れば持ち直しの動きが続きました。2022年には高インフレや米国での金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされましたが、2023年に入り利上げを行う国は減少しています。

 

<日本の状況>

日本経済は持ち直しの基調が続いています。2023年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.2%と2四半期連続のプラス成長となりました。経済活動の正常化が進む中、個人消費の増加が経済成長をけん引しています。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.8%となり、高成長が続きました。インバウンド消費の増加などが追い風となっています。さらに、半導体不足に起因する供給制約の緩和が進んだことも、経済を下支えしています。7-9月期には、輸入の増加が成長率を下押ししたとみられるものの、個人消費や住宅投資、設備投資といった民間部門に関連する項目は堅調に増加したとみられます。

需要項目ごとに見ると、個人消費は、堅調に推移しています。2023年1-3月期は耐久財やサービスの消費の回復が顕著でした。サービスに関しては、全国旅行支援が旅行需要を喚起しました。耐久財に関しては、自動車の供給制約の緩和により新車販売台数が増加しています。4-6月期に入っても供給制約の緩和が一段と進展し、新車販売台数は増加基調を維持した一方、家電やスマートフォンの販売が落ち込んだことで、個人消費は減少しました。7-9月期には、所得環境の改善が足踏みする中、季節商材の動きが堅調であったとみられます。

企業部門の需要である設備投資は、緩やかに持ち直しています。2023年1-3月期の設備投資は、供給制約の緩和により企業の自動車購入が増加したことなどもあり、前期から増加しましたが、4-6月期は減少に転じました。欧米での金融引き締めを背景とした海外経済の先行き不透明感の強まりが、輸出企業の設備投資の重しになったとみられます。しかし、7-9月期には増加に転じたとみられます。機械設備やソフトウェア、研究開発投資などが増加に寄与したとみられます。なお、日銀短観(2023年9月調査)によれば、2023年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+13.0%と高い伸びが見込まれています。

2023年1-3月期の輸出は減少したものの、4-6月期に入り、持ち直しに向かいました。7-9月期に入っても回復基調は続いているとみられます。供給制約の緩和により自動車や同関連財の輸出が堅調であり、加えて、訪日外国人の増加によってインバウンド消費が急増していることがサービス輸出を押し上げているとみられます。

金融面では、短期金利に加えて長期金利(10年国債利回り)も操作対象とする日本銀行の金融緩和措置(イールドカーブ・コントロール)が継続しています。日本銀行による緩和的な金融政策が続くなか、米国での銀行の連鎖破綻を背景に2023年3月に入って米国長期金利が低下したことで、日本の長期金利でも低下圧力が強まりました。その後、金融不安が解消に向かったこともあり、米国の長期金利は緩やかな上昇に転じました。これにより日本の長期金利の低下圧力も緩和しましたが、2023年度に入ってからは、7月半ばまでの間、日本銀行が誘導目標とする範囲の上限である0.50%を下回る水準で推移していました。しかし、7月の金融政策決定会合で、日本銀行はイールドカーブ・コントロールの運用を柔軟化することを決定し、指値オペの買入利回りを従来の0.50%から1.00%に引き上げました。これにより長期金利は緩やかに上昇し、9月末時点で0.7%台の水準まで高まりました。

為替市場を見ると、2023年度以降、総じて円安傾向で推移しました。米国では高インフレを抑制するためにFRBが利上げを進めた結果、長期金利の上昇が続いた一方、日本ではイールドカーブ・コントロールによって長期金利の上昇が抑制された結果、日米金利差が拡大し、対ドルレートは速いペースで円安方向に動きました。年初時点で130円台だった対ドルレートは、9月末には148円台を付けました。対ユーロでも年初時点の137円台から9月末には157円台まで円安が進みました。

株式市場では、2023年に入って株価は上昇傾向にあります。2023年1-3月期には、米国や欧州で金融システム不安が顕在化したものの、政策当局の迅速な対応によって市場が落ち着きを取り戻したことで株価は上昇しました。4-6月期に入ると、円安が進行したことや、外国人投資家による買い増しを主因に上昇テンポが加速しました。7-9月期には、6月までの急上昇の反動に加え、中国経済の先行きに不透明感が広がったことなどもあり、株価は軟調に推移しました。

2023年9月末の日経平均株価は31,857円62銭(同年3月末比3,816円14銭高)、10年国債利回りは0.774%(同0.385%ptの上昇)、為替は1ドル148円77銭(同15円64銭の円安)となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物

 当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

 

2022年9月期

2023年9月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

308,551

608,093

投資活動によるキャッシュ・フロー

△21,870

△15,806

財務活動によるキャッシュ・フロー

△822,968

△224,772

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△536,288

367,514

現金及び現金同等物の期首残高

1,543,967

1,006,868

現金及び現金同等物の中間期末残高

1,007,679

1,374,382

 

 当中間会計期間において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減などにより6,080億円(前年同期は3,085億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出などにより△158億円(同△218億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減や、社債の償還による支出などにより△2,247億円(同△8,229億円)となりました。当中間会計期間末の現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ3,675億円増加し、1兆3,743億円となりました。

 

(5)資本の財源及び流動性に係る情報

① 流動性の管理

<財務の効率性と安定性の両立>

 当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。

 当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。

 財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。

 また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。

 なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、大和証券グループ本社の当第2四半期日次平均のLCRは130.7%です。また、同第2四半期末のNSFRは、当半期報告書提出日における速報値で所定の比率を上回る見込みとなっており、確定値は算出完了次第、大和証券グループ本社ホームページにて公表する予定です。

 

<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>

 当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。

 当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。

 

② 株主資本

 当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。

 当中間会計期間末の株主資本は、5,362億円(前事業年度末比205億円増)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は1,523億円であり、利益剰余金は中間純利益276億円を計上したほか、配当金71億円の支払いを行った結果、3,838億円(同205億円増)となりました。