売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E31741 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 (経営成績の状況)

当第3四半期連結累計期間(2023年9月1日~2024年5月31日)におけるわが国経済は、建設分野における人材不足、原材料価格の高騰や為替動向の懸念があるものの、社会経済活動の正常化やインバウンド需要の増加等により、景気は緩やかな回復基調で推移しました。

 

当社グループは、国内及びベトナムを中心とするアセアンにおいて、カーボンニュートラルやSociety5.0等、持続可能で豊かな社会の実現に向けて、ダイナミックにChallenge&Innovationする企業集団を目指しています。当社グループが長年培ってきた電気設備・電気通信設備工事の技術や経験を活かし、再生可能エネルギーや無線通信インフラ設備等様々な社会インフラの構築及び保守メンテナンス、老朽化したインフラ設備の更新工事等のEPC(Engineering、Procurement、Construction)事業に取り組んでおります。さらに現中期経営計画の実現に向けて、EPC事業に加え、2022年に新たに立ち上げたCRE(Corporate Real Estate/不動産)事業を両輪とする「両利きの経営」により、事業の多角化を図るとともに、事業を通じてサステナブルな社会構築を目指しております。

また、2024年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表いたしましたが、中長期的な企業価値向上に向けて、中核であるEPC事業の収益力向上と不動産事業収益の平準化、政策保有株式売却による資本効率向上、株主還元の充実等により株主資本コストを上回るROE10%以上を継続的に確保し、PBRの向上を図ってまいります。

 

a サステナブル経営を目指して

-1. 太陽光パネルのライフサイクルサポートへ

当社グループでは、太陽光発電所の建設やO&M(オペレーション&メンテナンス)に20年以上取り組んでおり、2023年2月には、太陽光パネルのライフサイクルにわたりサポートするため、J&T環境株式会社(JFEグループ及び、東京電力・中部電力のグループ会社である株式会社JERAが出資するリサイクル企業)と業務提携いたしました。今後太陽光パネルの大量廃棄が予想されており、リサイクルまでサポートすることにより循環型社会の構築に貢献してまいります。

-2. 人材育成への取り組み

建設工事の需要が高まる一方、日本国内においては人口減少が続き、電気工事を含む建設業の高度技術者の不足が大きな課題となっています。

当社グループでは、前年度に行ったJESCO AKUZAWA株式会社及びマグナ通信工業株式会社のM&Aにより、資格保有者が大幅に増加しました(1級電気工事施工管理技士104名、1級電気通信工事施工管理技士53名(監理技術者含))。引き続き、Webを活用した自社教育システム「JESCOアカデミー」による技術者教育を幅広く推進してまいります。また、グループ会社の人材紹介企業JESCOエキスパートエージェント株式会社を通じて、ベトナム国を中心にアセアン地域から高度技術者の採用も進めてまいります。

-3. 安全・品質への取り組み

当社グループでは、安全に最大限配慮し、高品質な製品・サービスの提供に努めております。

JESCOネットワークシステム株式会社では、K&Nシステムインテグレーションズ株式会社より、安全・品質・工事進捗のレベルが高いことを評価いただき、安全品質貢献賞を受賞いたしました。引き続き安全第一に努めるとともに、品質向上への取り組みを継続してまいります。

 

-4. BCP対策/防災拠点新設工事の推進

首都直下地震災害時のグループ全体のBCP(Business Continuity Plan)対策として、群馬県高崎市に防災拠点を新設いたします。事業の継続性を高めるとともに、一次エネルギー消費量が正味ゼロとなる建物として、建築物等のZEB(Net Zero Energy Building)化・省CO2化普及加速事業に採択されました。完成は2025年3月を予定しており、JESCO AKUZAWA株式会社の新社屋としても活用してまいります。

-5. 環境保全への取り組み

当社グループではサステナブル経営のもと、森林保有や使用電力の再エネ化等脱炭素や環境保全への取り組みを行ってまいりました。当社が現在保有する森林は合計31haとなり、この内、那智勝浦の保安林(16.7ha)は、都市に立地する企業による社会貢献として高い評価を受け、2022年9月にSEGES*1よりExcellent Stage2の認定を取得し、改めて2024年3月に維持審査に合格しました。また新たに、2023年11月に日本自然保護協会、2024年6月には環境省が主導する30by30アライアンス*2に加盟する等、生物多様性の保全に向けた取り組みを強化し、ネイチャーポジティブの実現に努めてまいります。

 

b  当期業績について

国内EPCにおいては、国土交通省による建設投資額見通しは2020年より増加傾向が続いており、当社においても、今後拡大が期待される再生可能エネルギーや無線通信インフラ設備を注力分野とし、さらなる事業拡大に努めております。

再生可能エネルギー分野では、エネルギー高騰や企業の脱炭素化により需要が高まる工場の屋根やゴルフ場のカーポート等に設置する自家消費型太陽光発電設備の受注が拡大しております。

一方、再生可能エネルギー設備の増加に伴う出力抑制の拡大の影響で系統用蓄電所*3の需要が高まっており、2023年12月内閣府GX実行会議の投資戦略によると、2030年には累計約14~24GWhの導入が見込まれております。当社においても、九州地区において8MWhの系統用蓄電所設置工事を受注いたしました。引き続き、系統用蓄電所のさらなる受注拡大および建設に注力してまいります。また、2040年度を目標年度とする第7次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が進められる中、脱炭素に向けての重要な鍵として風力発電も注目されています。当社においては、今後の発展が期待される洋上風力へも寄与すべく、取り組んでまいります。

無線通信インフラ関連分野では、2050年を展望した国土強靭化計画に基づき、河川監視システムや防災無線システム等防災減災関連設備工事に取り組んでまいりました。さらに、総務省の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の2030年末5G人口カバー率99%実現に向けて、移動体通信設備工事の全国展開を行ってまいりました。

アセアンEPCにおいては、ベトナムを中心に事業を展開しております。注力分野であるエンジニアリング事業では、設計拠点を5拠点体制とし、設計人員も2023年8月期末の220名から30名増員し、現在約250名となりました。さらに300名体制の早期構築に向けて増員を進めるとともに、専門教育により技術力強化やBIM*4要員拡大に取り組んでおります。

JESCO ASIA社では、2022年12月にベトナム政府より、国際空港の入札参加資格となる35,000V以下の電気事業ライセンスを取得し、国際空港の電気設備設計にも注力しております。これにより、ホーチミン市東部にハブ空港として建設されるロンタイン国際空港の電気設備詳細設計、ハノイ市のノイバイ国際空港第2ターミナルビル拡張工事の電気設備詳細設計を元請グループとして受注したのに続き、2024年3月にはロンタイン国際空港ターミナルビルの電気設備及びICT*5施工監理業務を受注いたしました。また、JESCO PEICO ENGINEERING社においては、2024年1月にベトナム宇宙センター電気通信工事(LOTUSat-1)を受注いたしました。本事業は地球観測衛星関連施設の整備等を行うもので、これによりベトナムにおける減災にも貢献してまいります。

一方、建設部門においては、ベトナムにおける不動産開発会社の融資及び社債発行への規制強化等により、依然として一部の工事で工事代金の入金遅延が発生しており、貸倒引当金157百万円を計上しております。今後もベトナムの不動産市場環境について注視してまいります。

2024年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表いたしましたが、資本効率向上に向け、政策保有株式を売却いたしました。

このような状況のもと、当第3四半期連結累計期間の受注高は、117億88百万円(前年同四半期比69.9%増)、経営成績は、売上高93億67百万円(同10.5%増)、営業利益3億65百万円(同26.6%減)、経常利益3億77百万円(同32.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益6億91百万円(同48.2%減)となりました。

 

 

セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。

 

a 国内EPC事業

注力分野である再生可能エネルギー関連設備事業において自家消費型太陽光発電設備工事を中心に太陽光発電設備工事の受注が拡大した他、系統用蓄電所を受注するとともに引合いも増加してまいりました。また、無線通信インフラ関連設備工事においても監視カメラ・監視システムや移動体通信工事が順調に推移したことにより、増収増益となりました。

当第3四半期連結累計期間における当セグメントの受注高は、103億63百万円(前年同四半期比87.8%増)、経営成績は、売上高82億53百万円(同25.5%増)、セグメント利益6億95百万円(同4.1%増)となりました。

 

b アセアンEPC事業 

エンジニアリング部門においては、DXの活用により国内設計部門との一体化のもと、現在注力している技術力強化及び技術員の増員等が新規顧客の獲得に寄与し、順調に推移いたしました。

一方、建設部門においては、ベトナムにおける規制強化等が引き続き建設業に影響を与えており、中断している工事の再開時期の遅れにつながったことに加え、貸倒引当金を計上したことにより減収減益となりました。

当第3四半期連結累計期間における当セグメントの受注高は、11億78百万円(前年同四半期比2.0%減)、経営成績は、売上高8億67百万円(同48.3%減)、セグメント損失2億70百万円(前年同期はセグメント損失25百万円)となりました。

 

c 不動産事業

両利きの経営の柱の一つとして、2022年1月に設立いたしましたJESCO CRE株式会社においては、不動産の賃貸借事業をベースに、リニューアルによるバリューアップ等幅広く事業に取り組んでおります。保有ビルの賃貸管理収入等が順調に推移したことにより、増収となったものの、前期に取得いたしました販売用不動産2件の減価償却費を計上したことにより、減益となりました。

当第3四半期連結累計期間における当セグメントの受注高は、2億46百万円(前年同四半期比12.9%増)、経営成績は、売上高2億46百万円(同12.9%増)、セグメント利益17百万円(同86.6%減)となりました。

 

<受注高、売上高及び繰越受注残高>

                                  (単位:百万円)

期間

セグメント

期首繰越

受注残高

当期受注高

当期売上高

次期繰越

受注残高

前第3四半期連結累計期間
(自 2022年9月1日
 至 2023年5月31日)

国内EPC事業

3,520

5,517

6,578

2,458

アセアンEPC事業

1,572

1,202

1,677

1,098

不動産事業

218

218

合計

5,092

6,938

8,474

3,557

当第3四半期連結累計期間
(自 2023年9月1日
 至 2024年5月31日)

国内EPC事業

6,234

10,363

8,253

8,343

アセアンEPC事業

1,061

1,178

867

1,371

不動産事業

246

246

合計

7,295

11,788

9,367

9,715

 

 

 

*1 SEGES:公益財団法人都市緑化機構が、企業等によって創出された良好な緑地や取り組みを評価し、社会・

  環境に貢献している、良好に維持されている緑地であることを認定する制度。

  SEGES…Social and Environmental Green Evaluation System

*2 30by30:2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴール

  に向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標

*3 系統用蓄電所:電力ネットワーク(系統)や再生可能エネルギー発電所等に大規模な蓄電池を接続し、

  電力の充放電を行う設備。

*4 BIM:ICTを活用し、3次元の建設デジタルモデルに建築物のデータベースを含めた建築の新しいワークフロー

  を提供する設計ソフト。

  BIM…Building Information Modeling

*5 ICT:デジタル化された情報やデータを交換・共有する技術。

  ICT…Information and Communication Technology(情報通信技術)

 

(財政状態の状況)

当第3四半期連結会計期間末における流動資産は、111億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億12百万円の増加となりました。これは、販売用不動産が17億29百万円増加したこと等によるものであります。当第3四半期連結会計期間末における固定資産は、62億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億68百万円の減少となりました。これは、資産の売却等により有形固定資産が10億89百万円減少したこと等によるものであります。この結果、当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、174億10百万円となり、6億39百万円の増加となりました。

当第3四半期連結会計期間末における流動負債は、59億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億94百万円の増加となりました。これは短期借入金が9億80百万円増加したこと等によるものであります。当第3四半期連結会計期間末における固定負債は、45億20百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億18百万円の減少となりました。これは、長期借入金が4億20百万円、社債が1億85百万円減少したこと等によるものであります。この結果、当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、105億19百万円となり、2億76百万円の増加となりました。

当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、68億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億63百万円の増加となりました。

なお、自己資本比率は前連結会計年度末の33.4%から当第3四半期連結会計期間末は34.9%になりました。

 

(2) 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について重要な変更はありません。