E05309 Japan GAAP
文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における我が国経済は、設備投資の持ち直しに足踏みがみられるが、コロナ禍からの経済活動正常化の動きやインバウンド需要の回復、個人消費の持ち直し等を背景に緩やかな景気回復が継続しました。先行きにつきましては、所得環境が全体として改善することが期待される中で各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。他方で、中国経済の先行き懸念等海外景気の下振れや国内の物価上昇による実質購買力の減少が景気を下押しするリスクとなるほか、イスラエルとハマスの衝突による中東情勢緊迫化もあり、その影響に注意する必要があります。
警備分野においては政府の「世界一安全な日本」創造戦略2022においても示されているように、サイバー空間の脅威、高齢者、女性、子ども等の社会的弱者の安全・安心への懸念のほか、街中での凶悪な犯罪や事故の増加、今年1月に発生した令和6年能登半島地震等の自然災害に伴う治安情勢の変化、インフラ老朽化などを背景に、警備業界に対する社会の期待は高まっており、当社グループに対しては、警備を含むトータルでの安全・安心に関するサービス提供が求められております。加えて、2022年の刑法犯認知件数が2002年以来初めて対前年比増加に転じ、さらに2023年においても増加傾向が強まっているほか、首相襲撃事件や所謂「闇バイト」による強盗や窃盗等の発生を受けて国内の体感治安が悪化しており、安全・安心を提供する当社グループの役割は増大していると言えます。
このような情勢の中、当社グループは、持続可能な社会への貢献を目指し、社会の安全・安心に関するサービス(セキュリティ事業、綜合管理・防災事業、介護等生活支援事業)を行う事業者として、適切にサービス提供を継続してまいりました。中期経営計画「Grand Design 2025」に掲げておりますとおり、「社会の多様な安全・安心ニーズに対応する強靭な綜合安全安心サービス業」を目指して、リスクが多様化する中で拡大するお客様と社会の安全・安心ニーズに応えるべく、警備・設備・介護等の多様なサービス機能を組み合わせた新たなサービス提供に取り組んでおります。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における当社グループの連結業績は、前期と比較して大きく改善し、売上高は378,990百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益は26,987百万円(前年同期比9.3%増)、経常利益は29,298百万円(前年同期比10.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は18,442百万円(前年同期比16.8%増)となりました。
セグメント別に見ますと、以下のとおりであります。
セキュリティ事業につきましては、売上高は281,875百万円(前年同期比3.9%増)、営業利益は27,421百万円(前年同期比5.0%増)となりました。
機械警備業務につきましては、法人向けサービスとして、ライブ画像確認を標準装備し、画像蓄積や遠隔地からの設備制御等のオプションを充実させ、お客様の省人化ニーズにも貢献する「ALSOK-G7(ジーセブン)」の販売を推進してまいりました。今後、お客様のニーズに合わせて、ALSOK-G7の活用の拡大を更に図ります。個人向けサービスは、新商品「HOME ALSOK Connect」の提供を開始したこともあり、堅調に受注を伸ばしました。この商品は、体感治安が悪化する中で幅広いお客様に安全・安心を提供するものであり、異常の際にALSOKが駆けつける従来型の「オンラインセキュリティ」に加え、ご依頼に応じてALSOKが現場確認するサービスをオプションとして月額料金を抑えた「セルフセキュリティ」のプランをご用意しており、セルフセキュリティはいつでもオンラインセキュリティにアップグレードが可能です。また、高齢者向け見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート」等の販売も引き続き推進してまいりました。
常駐警備業務につきましては、広島での首脳会合をはじめとするG7関連の各種大臣会合の警備やインバウンド需要回復によって再開した空港施設の警備、生産拠点の国内回帰やアフターコロナにおける国内イベントの再開本格化に伴う警備へ対応いたしました。今後はさらにDX等による常駐警備の省人化・効率化に取り組んでまいります。
警備輸送業務につきましては、金融機関の店舗統廃合等によりATM台数は減少している一方、現金管理業務の効率化ニーズは依然根強く、入(出)金機オンラインシステム等の販売を拡大しております。併せて、2024年7月前半を目途に行われる新紙幣発行に向けた機器のリプレース等を推進しております。さらに、入出金機オンラインシステムを活用して自治体の派出窓口業務を自動化する「税公金受付システム」を提供しております。引き続き、地域金融機関等の業務効率化・コスト低減など様々なアウトソースニーズを捉え、サービス提供の拡大に努めてまいります。
綜合管理・防災事業につきましては、建設工事部門の完工高等が堅調に推移し、売上高は53,187百万円(前年同期比12.4%増)、営業利益は4,871百万円(前年同期比11.6%増)となりました。引き続き「警備と設備・工事の融合」のコンセプトのもと、ファシリティマネジメント業務の拡大に取り組むとともに、サステナビリティへの取組強化の一環としてEV充電設備の販売、設置工事や保守メンテナンス等を提供してまいります。
介護事業につきましては、新規の施設開設、既存施設の入居率向上のほか、M&Aの効果等により、売上高は38,126百万円(前年同期比8.4%増)、営業利益は1,131百万円(前年同期比100.2%増)となりました。引き続き介護支援ロボット活用等DXによる介護業務の効率化をすすめ、介護事業の統一ブランド『ALSOKの介護』のもとサービス拡充に努めてまいります。
その他の分野につきましては、2023年10月に提供を開始した「ALSOKホームページ改ざん検知・復旧サービス」のほか、従来からサービス提供している太陽光施設のパネル点検に加え、各種施設の点検・調査等ドローンを活用した事業の拡大や、パソコンをはじめとするIT機器関連の障害が発生した際に、ガードマンが応急処置を行う「ALSOK ITレスキュー」等かけつけサービスの拡大に引き続き取り組んでおります。
当社グループは、社会の安全・安心に関するサービスを行う事業者としての責務を果たしつつ、新技術の活用や生産性の向上等に引き続き取り組み、今後も拡大する社会の安全・安心ニーズに的確に応えてまいります。
当第3四半期連結会計期間末における財政状態の状況につきましては、次のとおりであります。
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前期末比で22,595百万円増加し、539,242百万円となりました。警備輸送業務用現金が8,374百万円、前払費用などのその他の流動資産が6,714百万円、建物及び構築物などの有形固定資産が3,337百万円、現金及び預金が2,494百万円増加したことが主たる要因であります。
負債の部は、前期末比で11,977百万円増加し、184,730百万円となりました。短期借入金が17,489百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が6,424百万円減少した結果であります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の営業活動の結果増加した資金は29,548百万円(前年同期比68.1%増)であります。税金等調整前四半期純利益により29,871百万円、減価償却による資金の内部留保により13,873百万円の資金が増加した一方、法人税等の支払により12,225百万円の資金が減少した結果であります。
なお、警備輸送業務に係る資産・負債の増減額には、警備輸送業務用現金及び短期借入金のうち警備輸送業務用に調達した資金等の増減が含まれております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の投資活動の結果使用した資金は12,938百万円(前年同期比35.1%減)であります。有形固定資産を10,224百万円、子会社株式を3,732百万円取得したことが主たる要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の財務活動の結果減少した資金は14,088百万円(前年同期比4.2%増)であります。短期借入金の増加により5,411百万円の資金が増加した一方、配当金の支払により8,715百万円、自己株式の取得により5,000百万円、リース債務の返済により4,059百万円の資金が減少した結果であります。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5) 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは生産活動を行っておりませんが、当第3四半期連結会計期間末日現在実施中の契約件数をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当第3四半期連結会計期間末 (2023年12月31日) |
前年同四半期比(%) |
|
セキュリティ事業 |
|
|
|
機械警備業務 |
(千件) |
1,076 |
4.8 |
常駐警備業務 |
(千件) |
5 |
8.1 |
警備輸送業務 |
(千件) |
88 |
2.1 |
合計 |
(千件) |
1,169 |
4.6 |
綜合管理・防災事業 |
(千件) |
128 |
4.9 |
介護事業 |
(千件) |
27 |
2.8 |
報告セグメント計 |
(千件) |
1,325 |
4.6 |
その他 |
(千件) |
25 |
7.5 |
合計 |
(千件) |
1,351 |
4.7 |
(注)上記件数は、当社グループがサービスを提供している対象先の数ではなく、お客様と約定している長期契約(一定期間継続的にサービスを提供する契約)の数を集計したものであります。各セグメントに含まれる代表的なサービスは、次のとおりです。
機械警備業務 |
法人向けのALSOKガードシステム各種、個人向けのホームセキュリティ各種 |
常駐警備業務 |
ご契約先施設等に警備員を配置する常駐警備 |
警備輸送業務 |
現金、有価証券等を輸送する現金輸送サービス、入(出)金機オンラインシステム、QRコード決済を中心としたキャッシュレス決済サービス |
綜合管理・防災事業 |
設備管理、清掃管理、電話対応等、施設の維持、管理、運営業務、消防用設備の点検、AEDのレンタル等 |
介護事業 |
訪問介護、デイサービス、有料老人ホーム、グループホーム等 |
その他 |
ALSOK PCマネジメントサービス、ホームページ改ざん検知サービス等 |
(販売実績)
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当第3四半期連結累計期間 (自 2023年4月1日 至 2023年12月31日) |
前年同四半期比(%) |
|
セキュリティ事業 |
|
|
|
機械警備業務 |
(百万円) |
136,505 |
6.6 |
常駐警備業務 |
(百万円) |
94,257 |
1.5 |
警備輸送業務 |
(百万円) |
51,112 |
1.6 |
合計 |
(百万円) |
281,875 |
3.9 |
綜合管理・防災事業 |
(百万円) |
53,187 |
12.4 |
介護事業 |
(百万円) |
38,126 |
8.4 |
報告セグメント計 |
(百万円) |
373,188 |
5.5 |
その他 |
(百万円) |
5,802 |
44.2 |
合計 |
(百万円) |
378,990 |
5.9 |
(注)販売実績が総販売実績の10%以上の相手はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は、総額430百万円であり、主にセキュリティ事業に係るものであります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループにおける研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(8) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける自己資金の主たる源泉は、セキュリティ事業を中心としたお客様からの月額料金の収受であり、先行きが見通しやすい安定的な収入を毎月得られております。こうした安定的な自己資金を所与として資金の支出を計画していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。また、外部からの資金調達についても、こうした安定的な自己資金の状況や最近の自己資本比率の動向、主要な金融機関との良好な関係により、安定的に実施できると考えております。
このような資金の源泉に対し、当社グループの主要な資金需要及び資金調達の方法については、以下のとおりです。
(運転資金需要)
当社グループにおける運転資金需要のうち主なものは、労務費や外注費を中心とする売上原価、人件費を中心とする販売費及び一般管理費、並びに警備輸送業務における入(出)金機オンラインシステムによる売上金の入金処理等のための現金であります。
売上原価や販売費及び一般管理費の支払資金については、年間を通して安定的に需要が生じるものが多く、自己資金を充当することを基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの短期借入を実施することとしております。
入(出)金機オンラインシステムによる売上金の入金処理等のための資金については、自己資金及び金融機関からの短期借入を併用して対応することとしております。当該短期借入は、当座貸越を通じて、資金需要に即して実行できるものとなっております。売上金の入金処理の金額は、前日にお客様が入(出)金機に売上金を投入した金額となり、日々大きく変動しますが、特に月曜日や国民の祝日の後の営業日においては、その前日までの休日に投入された売上金にも併せて対応する必要があることから、入金処理金額が増加し、金融機関からの借入への依存度も高まる傾向にあります。
(投資目的の資金需要)
当社グループにおける投資目的の資金需要のうち主なものは、M&Aが挙げられます。これについては、自己資金を充当することを基本としながら、必要に応じて金融機関からの短期借入や長期借入を実施し、対応することとしております。
このほか、機械警備に係る警報機器の経常的な取得も設備投資に含められております。警報機器の取得は、1件当たりの金額が少額で、受注に伴って生じるため、運転資本を構成する棚卸資産と類似の性格も有すると考えており、年間を通じて安定的に資金需要が生じることから、運転資金需要と同様に自己資金をもって対応することを基本としております。
なお、当第3四半期連結累計期間において、前連結会計期間末において計画中であった資本的支出を含む設備投資計画について、重要な変更はありません。
(先行きの資金需要の動向及び資金調達方法に係る経営者の認識)
当第3四半期連結累計期間における警備輸送業務を除いた資金需要については、概ね自己資金の範囲で対応いたしました。当連結会計年度末までについても、現時点ではこれまでの資金需要の傾向から大きな変化を見込んでいないことから、同様に自己資金の範囲で対応することが基本となると認識しております。
(9) 設備の状況
(設備の新設、除却等の計画)
当第3四半期連結累計期間において、前連結会計期間末において計画中であった重要な設備の新設、除却等について、重要な変更はありません。また、新たに確定した重要な設備の新設、拡充、改修、除却、売却等の計画はありません。