E33957 IFRS
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。
当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日~11月30日)における我が国の経済環境は、インバウンド需要や対面型サービス業の回復、雇用環境の改善、高水準の企業収益を背景とした好調な設備投資等により、内需中心の緩やかな回復が続いております。一方、米国では急激な金融引き締めの影響で景気に減速感が出ており、さらに中国経済や中東情勢の影響で海外経済は不透明な状況となっています。
当社グループが属する企業向けIT市場は、クラウド化やサブスクリプションモデルの浸透といった外部環境の影響を受けにくい産業構造へ変化しており、これらに加え、リモートワーク、サプライチェーンの強化、業務のペーパーレス化、電子帳簿保存法やインボイス制度等の法令対応等により、企業の積極的な投資は継続する見込みとなっております。また、2023年初頭から海外の大手ベンダーを中心に生成系AIを用いたサービスリリースが行われた結果、実際にAIを業務で利用するユーザー企業も徐々に増加しており、市場構造を大きく変える可能性があります。
2023年の企業向けIT市場は、コロナ禍からの反動による国内でのサービス需要やインバウンド需要の回復等により、前年比7.0%増と堅調に成長することが見込まれております(注1)。クラウド市場は、リモートワーク需要による急拡大及び円安による成長率の底上げの反動により成長率は低下が見込まれるものの、オンプレミス型からクラウド型へのマイグレーションの流れは継続するため、2023年は前年比27.0%増と高い成長となることが見込まれております(注2)。
(注)1 IDC Japan, 2023年10月「国内IT市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測アップデート、2023年~2027年」(JPJ50705123)TABLE2 国内IT市場 産業分野別 支出額予測、2021年~2027年、企業分野小計
2 IDC Japan, 2023年5月「国内クラウド市場予測、2023年~2027年」(JPJ49209223)TABLE 1 国内クラウド市場配備モデル別 売上額予測、2022年~2027年、クラウド合計
このような状況の下、当社グループは、企業のDXを推し進めるソリューションの強化を行っており、クラウドサービスを中心に機能強化や新サービスのリリースを行いました。自社だけではなく、様々な企業とのエコシステムを構築することによって、ソリューションの価値を高めてまいります。
2023年9月 |
画像・映像解析のAI技術を持つ株式会社RUTILEAとの資本・業務提携契約を締結。「MotionBoard」及び「Dr.Sum」をRUTILEAのAIサービスと組み合わせ、映像内事象の数値データ化や、データの意味を解析し文書や画像で説明するなどの自動化と業務の高度化を目指す。 |
2023年10月 |
「MotionBoard Cloud」の操作方法等をエフォートレスに解決するAIチャットボット「AIアシスタント for MotionBoard Cloud」の試用版の提供を開始。操作方法や製品情報などを自然言語でスピーディーかつ容易に検索可能。本格提供は、来春を予定。 |
2023年10月 |
東京証券取引所が2023年10月に開設したカーボン・クレジット市場のインボイス制度対応にあたり「invoiceAgent」及び「SVF Cloud」を採用。帳票市場での豊富な実績や他システムとの柔軟な連携機能を評価。同市場の決済において、市場参加者に対し、適格請求書及び精算書の交付を行う。 |
2023年11月 |
「invoiceAgent」がUiPath株式会社の自動化プラットフォーム「UiPath Business Automation Platform」と連携し、インボイス制度に関する業務自動化ソリューションの提供を開始。適格請求書の内容確認作業や事業者番号の照合、データ連携等を自動化することにより、業務の大幅な効率化を実現。 |
また、当社グループでは、製造・物流・ヘルスケア・小売・外食・金融・公共等業界ごとのDX企画部門を組織しており、それぞれの分野での最適なソリューションの提供による顧客のDXを推進する活動を行っております。そして、これらの組織がDX推進に関する業界ごとの課題解決のノウハウを蓄積しており、それらをクラウドサービス化し、より広範な顧客に提供することを目的に活動しております。
上記のような取り組みにより、今後もクラウドを中心としたビジネスを成長の柱に企業のDXを推し進めてまいります。
当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日~11月30日)における売上収益は19,684百万円(前年同期比15.7%増)、営業費用(その他の営業収益を控除後)は、人員の採用による人件費や販売費の増加などで13,429百万円(前年同期比13.9%増)、営業利益は6,255百万円(前年同期比19.5%増)、税引前四半期利益は6,250百万円(前年同期比21.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4,499百万円(前年同期比15.1%増)となりました。
また、当社グループは、上記のIFRSにより規定された財務指標以外に、以下のEBITDAを重要な経営指標と位置付けております。なお、これまで重要な経営指標として「調整後EBITDA」及び「調整後当期利益」(以下、「調整後指標」)を開示してまいりましたが、2022年2月期以降、投資判断にあたり調整を要すると思われる費用がほぼ発生していないことから、2024年2月期以降は「調整後指標」の開示は行いません。なお、今後「調整後指標」を比較に用いる場合はその旨明記いたします。
(単位:百万円)
決算期 |
2023年2月期 第3四半期 |
2024年2月期 第3四半期 |
増減 |
増減率 |
営業利益 |
5,233 |
6,255 |
1,021 |
19.5% |
減価償却費及び償却費 (注1) |
916 |
947 |
31 |
3.4% |
EBITDA(注2) |
6,149 |
7,202 |
1,052 |
17.1% |
(注)1.2020年2月期より、IFRS第16号の適用により、オフィスの賃借契約に係る使用権を使用権資産として認識しており、当該資産に係る減価償却費も併せて計上しておりますが、EBITDA算出におきましては、「減価償却費及び償却費」からは当該使用権資産に係る減価償却費を除いております。
2.EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費
EBITDAは、営業利益、減価償却費及び償却費の増加により7,202百万円(前年同期比17.1%増)と増加しました。
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
・ソリューション区分別売上収益
(単位:百万円)
ソリューション区分 |
2023年2月期 第3四半期 |
2024年2月期 第3四半期 |
増減 |
増減率 |
|
帳票・文書管理 ソリューション |
SVF |
9,964 |
10,833 |
869 |
8.7% |
invoiceAgent |
857 |
1,602 |
744 |
86.8% |
|
その他 |
95 |
190 |
94 |
99.8% |
|
小計 |
10,916 |
12,626 |
1,709 |
15.7% |
|
データエンパワーメント |
Dr.Sum |
2,272 |
2,345 |
72 |
3.2% |
MotionBoard |
2,311 |
2,850 |
538 |
23.3% |
|
その他 |
1,518 |
1,862 |
344 |
22.7% |
|
小計 |
6,103 |
7,058 |
955 |
15.7% |
|
合計 |
17,019 |
19,684 |
2,665 |
15.7% |
(帳票・文書管理ソリューション)
当ソリューションは、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類を設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び帳票関連の電子データの保管や流通を担う「invoiceAgent」が主な構成要素となっております。
「SVF」は、大企業及び公共を中心としたDX推進のためのシステム投資が継続したことにより、ライセンス/サービスが前年同期比0.3%増と過去最高であった前年と同程度となりました。保守については、契約獲得が好調に推移したことから、前年同期比12.7%増と前年を上回りました。クラウドサービスについては、様々なアライアンスによりサービス提供範囲が拡大したことから、契約社数が順調に増加し、前年同期比32.2%増と好調な結果となりました。この結果、売上収益は10,833百万円(前年同期比8.7%増)となりました。
「invoiceAgent」は、大企業の全社的な文書管理ニーズの拡大により、ライセンス/サービスが前年同期比95.9%増と前年を大きく上回りました。保守については、契約を順調に伸ばし、前年同期比37.3%増と前年を上回りました。クラウドサービスについては、電子帳簿保存法対応の猶予期間が2023年12月に終了することや2023年10月からインボイス制度が開始したことから契約社数が増加し、前年同期比104.0%増と大幅に増加しました。今後は企業内でのペーパーレス化のさらなる促進や電子文書活用が進むとみられることから底堅い需要が続くものと想定しております。この結果、売上収益は1,602百万円(前年同期比86.8%増)と前年から大きく成長しました。
この結果、当ソリューションの売上収益は12,626百万円(前年同期比15.7%増)となりました。
(データエンパワーメントソリューション)
当ソリューションは、企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化する事により、業務の効率化や生産性の向上を実現するソフトウェア及びサービスである「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっております。
「Dr.Sum」は、コロナ禍からの回復が一服したことからライセンス/サービスが前年同期比14.6%減と減少しました。保守については、前年同期比3.9%増と堅調に推移しております。クラウドサービスについては、大企業を中心に案件獲得を進めており、契約社数の増加に伴い前年同期比69.4%増と大きく成長しました。この結果、売上収益は2,345百万円(前年同期比3.2%増)となりました。
「MotionBoard」は、大型案件の獲得により、ライセンス/サービスが前年同期比36.3%増と大きく成長しました。保守については、前年同期比10.7%増と堅調に推移しております。クラウドサービスについては、業種別ソリューションを中心に着実に契約社数を積み上げた結果、前年同期比23.1%増と大きく成長しました。この結果、売上収益は2,850百万円(前年同期比23.3%増)となりました。
この結果、当ソリューションの売上収益は7,058百万円(前年同期比15.7%増)となりました。
また、当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。
・契約区分別売上収益
(単位:百万円)
契約区分 |
2023年2月期 第3四半期 |
2024年2月期 第3四半期 |
増減 |
増減率 |
|
ライセンス/サービス |
7,141 |
7,959 |
817 |
11.5% |
|
リカーリング |
保守 |
7,060 |
7,876 |
816 |
11.6% |
クラウド |
2,291 |
3,082 |
790 |
34.5% |
|
サブスクリプション |
526 |
766 |
240 |
45.7% |
|
小計 |
9,878 |
11,725 |
1,847 |
18.7% |
|
合計 |
17,019 |
19,684 |
2,665 |
15.7% |
(注)より詳細な情報につきましては、当社IRサイト(https://ir.wingarc.com/)財務情報ページの最新の「FACT BOOK」をご参照下さい。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における資産は、66,557百万円(前期末比4,006百万円増)となりました。流動資産は15,267百万円(前期末比2,028百万円増)、非流動資産は51,289百万円(前期末比1,978百万円増)となりました。流動資産の増加の主な要因は、現金及び現金同等物1,468百万円の増加及び、売掛金の増加に伴う営業債権及びその他の債権の増加443百万円によるものです。非流動資産の増加の主な要因は、投資有価証券などその他の金融資産の増加1,961百万円があったことによるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債は、28,127百万円(前期末比151百万円増)となりました。流動負債は13,499百万円(前期末比746百万円増)、非流動負債は14,628百万円(前期末比594百万円減)となりました。流動負債の増加の主な要因は、営業債務及びその他の債務の減少280百万円があったものの、契約負債の増加1,044百万円があったことによるものです。非流動負債の減少の主な要因は、繰延税金負債の増加427百万円があったものの、長期借入金の減少985百万円があったことによるものであります。
(資本)
当第3四半期連結会計期間末における資本は、38,429百万円(前期末比3,855百万円増)となりました。資本の増加の主な要因は、配当金の支払に伴う利益剰余金の減少1,901百万円があったものの、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上に伴う利益剰余金4,499百万円の増加があったこと、その他の資本の構成要素1,108百万円の増加によるものであります。
(3)キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、12,644百万円(前期末比1,468百万円増)となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、5,982百万円(前年同期は5,019百万円の獲得)となりました。これは主に、法人所得税の支払額1,779百万円の計上があったものの、税引前四半期利益6,250百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上1,190百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,473百万円(前年同期は435百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出487百万円、基幹システム刷新や顧客管理システム改修に伴う無形資産の取得による支出517百万円、新規技術設備工事などに伴う有形固定資産の取得による支出473百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、3,077百万円(前年同期は2,685百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,000百万円及び配当金の支払額1,896百万円を計上したことによるものであります。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当社グループは、主に企業向けソフトウェア及びサービスの開発に係る研究開発を行っており、市場の拡大や技術の進歩により多様化、高度化し、広汎な範囲にわたる顧客ニーズに応える製品を研究、開発し、提供することを基本方針としております。当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の金額は、2,253百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況について重要な変更はありません。