売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01675 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期連結会計期間(2023年7月1日~2023年9月30日)のわが国は、2023年4~6月期に実質GDPがコロナ危機以前の水準を回復したものの、設備投資、住宅投資など内需の落ち込みと、前四半期の輸入増加の反動などにより、2023年7~9月期の実質GDP成長率(前期比年率)は△0.1%となった模様です(大手銀行系シンクタンク)。

こうした状況の中、当第3四半期連結累計期間における画像検査関連事業は、前年(2022年12月期)第3四半期連結累計売上額11.9億円に対し2割以上アップ、15.1億円となりました。

 

画像検査関連事業では、医薬品や化粧品向けラベル検査機が第2四半期に続き堅調でした。巻き戻し可能なスリッター搭載横軸ロール検査機「S-Lab SSR-S」や小型横軸ロール検査機「S-Lab SSV」が得意先にリピートで導入され、印刷品質検査工程の自動化に貢献しています。また、5台のカメラでジャー容器(広口瓶容器)の内外部全面の印刷品質・外観検査を行うボトル検査機「S-Bottle-HB」やチューブ容器の印刷品質検査機「S-Bottle-Tube」が、化粧品や医薬品容器印刷加工メーカーの工場ラインに組み込まれ、自動検査を高い精度で実行しています。既設の印刷機に後付けするインライン検査ユニットは、ラベル市場とともに、ボトル・容器、ビジネスフォーム、および商業印刷市場にも販売を伸ばしています。さらに、当社画像検査ソフトウエアのライブラリ製品であるPVL(プリントビジョンライブラリ)が、複数の国内印刷工場ラインに展開されてきた実績を生かし、手離れの良いこのライブラリ製品販売を海外に拡げる事業戦略を進めています。グラビア印刷や商業印刷市場から高い評価を得てきた大型検版機「S-Scan LNC」は、好調な受注を続けています。

 

当社が過去3年間(2020年~2022年)、総額10億円以上の投資をして研究開発し製作してまいりました新型画像検査機の多くは、当期の受注が好調で、当第3四半期連結会計期間の画像検査事業の総受注額は、前期の同期間と比較すると約2倍となりました。特に、研究開発とともに人的リソースにも投資を続け開発してきた画像検査用ソフトウエア「PolarlVision」を搭載した新型ブランクスパッケージ印刷品質検査機の受注や、当社にとって新市場であるグラビアフィルム検査機の受注が急増するとともに、サトー株式会社製ラベルプリンタ用検査機SALIや既設ラベルプリンタに直結連動して検査可能なラベル検査機「S-Lab-Combi」、新型枚葉ラベル検査機「S-Con-Smart」に代表されるスマートシリーズ検査機の受注も好調でした。

 

しかし、画像検査機用電子部品の長納期化のため、装置製造・納品・売上が計画より遅れており、当第3四半期連結会計期間の業績に大きな影響を与えています。さらに、電子部品や材料の仕入れ価格の高騰が粗利益を圧迫する問題を引き起こしています。そこで、事前に綿密な受注計画を策定し、長納期部品や仕入れ価格高騰が予想される材料を先行手配することにより、長納期化と仕入れ価格高騰の問題に対処しております。

 

世界の様々な産業界で急速に採用が進んでいるAI(人工知能)に対し、画像検査業界でも検査機メーカー各社が開発に凌ぎを削っています。しかし、印刷品質検査用のAIは深層学習(ディープラーニング)用の欠陥データ収集が非常に難しいため、実用化されているAIは少ない実情にあります。その状況において、当社のAI開発チームは、最新の深層学習技術とこれまで培ってきた独自の画像処理アルゴリズムを融合することで、AI推論の正解率を大幅に向上する新たな学習技術開発に成功しました。この結果、複数の大手印刷加工メーカーに当社AIが採用されるとともに、当社検査機を利用いただいている多くの既存顧客が、当社AIのトライアル運用を開始しています。さらに、既存データのパターンや関係を学習し、新しいデータを生成することができるいわゆる「生成AI」技術を適用することにより、深層学習用の欠陥データを人工的に生成する新手法の開発を進めています。AIの活用は当社の次世代画像検査技術の中核と位置付けていますが、クラウドDXサービス「UniARTS」に当社AIを組込むことにより、学習と推論を効率的に実施できる環境をご提供しています。

 

「UniARTS」は、当社製検査機だけでなく、他社製検査機のデータも取り込める仕組みを有しています。このマルチベンダー対応のプラットフォームを提供している検査機メーカーは他にないことから、「UniARTS」が、各種検査機を導入している印刷工場の検査自動化と不良発生をなくす仕組み作りに欠かせないDXツールとして注目されています。「UniARTS」は、サブスクリプションモデルで提供しているため、当社の業績向上に十分寄与するまでに時間がかかりますが、将来安定した売上が確保できる、即ち盤石な経営基盤を形成できる製品であると期待されています。

 

クラウドサービスの企画・開発・運営を行う株式会社ウェブインパクトは、Web給(給与明細サービス)、sync(スケジューラ同期サービス)、Quick Gate(スキー場チケット販売サービス)の販売が順調で、当社グループ業績に貢献しています。新規受託開発や納品済システムの運用と保守による収入も、安定的に推移しています。地方公共団体向けの受託開発や、前期から続いている「申請審査システム」の保守とカスタム開発の受注と売上も堅調に推移しています。

 

売上低迷が長期化している中国とASEAN海外市場では、長期間続いた新型コロナウイルス感染症や、中国と米国間の関係悪化などの影響により未だ厳しい状況が続いています。シリウスビジョンベトナムにおいては、2023年3月に業務移管が完了した特殊印刷機関連事業の拠点の整理を進めています。ASEAN画像検査事業の中核であるシリウスビジョンタイランドは、若手リーダーの育成と営業体制の見直し、日本国内の画像検査チームとの密連携により、積極的営業活動ができる環境を構築し、業績の早期回復を目指しています。中国市場では、新型コロナウイルス感染症による行動制限がなくなった第1四半期春節以降の積極的な営業により、複数のボトル印刷加工メーカーから数十台規模の検査機の注文を受けるなど、来期の業績回復に向けた手ごたえを感じています。

 

上述のとおり、過去3年(2020年~2022年)にわたり高額の投資を続けてまいりました新技術・新製品の研究開発、ソフトウエア新製品開発、及び国内外の新市場開拓の成果が、当期の受注額の大幅な増加という形で出てまいりました。当期はこれまでの研究開発投資を回収していく最初の年と位置付けておりますが、来期以降のさらなる受注拡大と成長のために、継続的に研究開発投資を実施していく事業計画を立てております。この状況において、当第3四半期連結累計期間(2023年1月~9月)の研究開発費投資額は、2億7百万円を計上いたしました。この投資額は、前期比56%(前期の同累計期間の投資額は3億63百万円)となっています。また、新技術・新製品の研究者・開発者の積極的増員とともに、国内営業体制の再編と海外営業担当の増員など、来期に向けた人員体制の構築のために積極的に投資を継続してまいりたいと考えています。

 

 以上の結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績につきましては、売上高は15億13百万円(前年同期比27.1%増加)となりました。また、利益面におきましては、営業損失は58百万円(前年同期は営業損失4億48百万円)、経常損失は4百万円(前年同期は経常損失3億11百万円)となり、親会社株主に帰属する四半期純損失は23百万円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失1億19百万円)となりました。

 

財政状態について、当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末と比較して1億18百万円減少し、29億94百万円となりました。これは主として、ソフトウエアが75百万円増加、流動資産その他が61百万円増加、仕掛品が40百万円増加及び電子記録債権が38百万円増加した一方で、現金及び預金が2億56百万円減少及び土地が63百万円減少したことによるものであります。

負債は、前連結会計年度末と比較して1億7百万円減少し、3億59百万円となりました。これは主として支払手形及び買掛金が1億21百万円減少したことによるものであります。

純資産は、前連結会計年度末と比較して10百万円減少し、26億34百万円となりました。これは主として、為替換算調整勘定が23百万円増加、その他有価証券評価差額金が22百万円増加及び非支配株主持分が8百万円増加した一方で、利益剰余金が71百万円減少したことによるものであります。

これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して2.6ポイント増加し、86.2%となりました。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。

 

 

(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(4)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は86百万円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。