E02275 IFRS
①経営成績の状況
当社グループは、当連結会計年度より第21次中期経営戦略をスタートしました。
当社グループの使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、中長期目標として「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを目指しております。デジタルサービスを提供するワークプレイスについて、複合機の販売を中心としたオフィス領域から現場・社会へと拡大すると同時に、それぞれのワークプレイス(オフィス・現場・社会)におけるお客様価値を拡げ、デジタルサービスの会社への変革を進めます。
当連結会計年度は、オフィスサービス事業中心の事業成長と体質強化により、従来のオフィスプリンティング事業を主とした収益構造からの変革を加速し、収益性の向上を図ってまいります。また、柔軟な生産供給体制を構築し環境変化への対応力を向上させていくとともに、現場でのデジタルサービス領域において新たな収益の柱を構築してまいります。
世界経済は緩やかな回復が続くものの、欧米を中心としたインフレの長期化や金融引き締め政策の継続、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢の深刻化など、不安定な状態が続きました。
当第3四半期連結累計期間において日本では新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行による社会経済活動の正常化やインバウンド需要の拡大の一方、物価上昇や円安の進行により先行きの不透明な状況が継続しています。米国ではインフレが継続するものの、良好な雇用環境を背景に景気は堅調に推移しました。欧州は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化やインフレの進行等により景気の持ち直しに足踏みがみられます。その他の地域では中国において経済活動が正常化する一方、不動産市況低迷と個人消費の鈍化により景気回復の遅れが懸念されます。
主要通貨の平均為替レートは、対米ドルが 143.24円(前第3四半期連結累計期間に比べ 6.75円の円安)、対ユーロが 155.26円(同 14.71円の円安)となりました。
このような状況の中、当第3四半期連結累計期間の売上高は 16,976億円となり、前第3四半期連結累計期間に比べ 11.1%増加しました。前第3四半期連結累計期間に影響を受けた商材の供給制約の解消に加え、日本でのスクラムシリーズの好調や欧米での買収効果やコミュニケーションサービスの成長等によりオフィスサービス事業を中心に売上が増加しました。また、2022年9月に実施した株式会社PFU(以下、PFU)の買収効果や円安の影響等もあり増収となりました。
地域別では、国内は、バックオフィス系DX*(デジタルトランスフォーメーション)等、顧客の関心・ニーズを捉えた販売展開で成長を図るスクラムシリーズが引き続き二桁成長し、オフィスサービス事業を中心に売上が増加しました。加えてPFUの買収効果等もあり、前第3四半期連結累計期間と比べ 10.2%の増加となりました。
海外では、米州においては、A4複合機を中心とした供給不足の解消に伴いオフィスプリンティング事業のエッジデバイスの販売が増加しました。オフィスサービス事業でも、2022年9月に買収したCenero,LLC.(以下、Cenero)の貢献によるコミュニケーションサービス領域の成長やドキュメント関連業務のアウトソーシングサービスの堅調な伸長により売上が拡大しました。加えてPFUの買収効果や円安の影響もあり、前第3四半期連結累計期間比 10.6%の増加となりました(為替影響を除くと 5.6%の増加)。欧州・中東・アフリカにおいてもA4複合機を中心とした供給不足の解消に伴いオフィスプリンティング事業でのエッジデバイスの販売が増加しました。オフィスサービス事業では買収企業を中心にアプリケーションサービスやITサービスが順調に成長し、また2023年6月に実施したPFH Technology Group(以下、PFH)の買収効果もあり売上が増加しました。加えて円安の影響もあり、前第3四半期連結累計期間比 14.7%の増加となりました(同 4.0%の増加)。その他の地域は、中国でのゼロコロナ政策解除に伴う経済活動の正常化等によりオフィスプリンティング事業でのエッジデバイスの販売やインクジェットヘッドの販売が増加しました。円安の影響もあり前第3四半期連結累計期間比 6.0%の増加となりました(同 3.3%の増加)。以上の結果、海外売上高全体では前第3四半期連結累計期間に比べ 11.6%の増加となりました。なお、為替変動による影響を除いた試算では、海外売上高は前第3四半期連結累計期間に比べ 4.6%の増加となります。
* DX(Digital Transformation):企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
売上総利益は、オフィスサービス事業の成長や継続した体質強化の効果に加えて、PFUの買収効果や円安の影響等により利益が増加しましたが、オフィスプリンティング事業の複合機の製品ミックスの変動等により売上総利益率は低下しました。結果、前第3四半期連結累計期間に比べ 10.7%増加し 5,966億円となりました。
販売費及び一般管理費は、事業成長やインフレに伴う人件費等の経費の増加、拠点再編に伴う構造改革費用に加え、PFUの買収や円安の影響等により前第3四半期連結累計期間に比べ 12.5%増加し 5,676億円となりました。
営業利益は、売上総利益の増加に対し販売費及び一般管理費の増加が上回ったため、前第3四半期連結累計期間に比べて 24億円減少し 371億円となりました。
金融収益及び金融費用は、為替差益の増加等により、前第3四半期連結累計期間に比べ金融収支が改善しました。持分法による投資損益は、持分法適用会社の利益減少により前第3四半期連結累計期間に比べ減少しました。
税引前四半期利益は、前第3四半期連結累計期間に比べて 3億円増加し 426億円となりました。
法人所得税費用は、前第3四半期連結累計期間に比べて 15億円減少し 124億円となりました。
以上の結果及び非支配持分に帰属する四半期利益の減少により、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前第3四半期連結累計期間に比べ 28億円増加し 302億円となりました。
四半期包括利益は、四半期利益や在外営業活動体の換算差額の増加等により 782億円となりました。
上述の国内・海外別売上高は以下のとおりです。
(単位:百万円)
事業の種類別セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
デジタルサービスの売上高は、前第3四半期連結累計期間に比べ 11.4%増加し 13,413億円となりました。オフィスサービス事業では、日本において、インボイス制度や2024年度法改正対応の業務パッケージの引き合いが継続し販売が増加するなど、スクラムパッケージが引き続き好調に推移しました。また、システム導入後のサービスやセキュリティ関連の需要好調により主に中堅企業向けにソリューション提案を行うスクラムアセットも高い伸び率で伸長しました。また、サイボウズ株式会社と共同開発したクラウド型の業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」の契約数も順調に伸長しております。米州においてはCeneroの買収によるコミュニケーションサービス領域の成長に加え、ドキュメント関連業務のアウトソーシングサービスの堅調な伸長もあり、売上が増加しました。欧州では買収企業を中心にアプリケーションサービスやITサービスが順調に成長し、増収となりました。2023年6月にはアイルランドのITインフラ、クラウド、マネージドワークプレイスサービスのリーディングプロバイダーであるPFHの買収を完了し、ITサービスの強化を図っています。
オフィスプリンティング事業では、主にA4複合機の供給不足の解消によるA3複合機を含めた一括商談の納入が進み、エッジデバイスの販売が前第3四半期連結累計期間に比べ増加しました。
オフィスサービスの成長やオフィスプリンティングのエッジデバイスの回復に加え、コスト上昇に対する継続的な価格転嫁や付加価値販売等のプライシングコントロールを実施したことで、事業成長等に伴う経費の増加を吸収しデジタルサービス全体の営業利益は 285億円となり、前第3四半期連結累計期間に比べ 92億円増加しました。
デジタルプロダクツの売上高は、前第3四半期連結累計期間に比べ 25.4%増加し 692億円となりました(セグメント間売上高を含む売上高では 2.8%減少の 3,584億円)。A3複合機の販売在庫の適正化に向けた生産調整等によるセグメント間売上高の減少の一方、PFUの買収効果により増収となりました。生産・開発の体質強化の継続による利益改善を進めているものの、高付加価値のA3複合機の生産調整による販売の減少で製品ミックスが変動し利益率が低下したこと等により、デジタルプロダクツ全体の営業利益は 83億円となり、前第3四半期連結累計期間に比べ 216億円減少しました。
グラフィックコミュニケーションズの売上高は、前第3四半期連結累計期間に比べ 11.2%増加し 1,884億円となりました。商用印刷事業では、米州を中心にプロダクションプリンターの販売が引き続き伸長しました。ノンハードも欧米を中心に上位機種の設置台数増加に伴うプリントボリューム増加が貢献し、堅調に推移しました。産業印刷事業では、サイングラフィック向け等の需要の増加を背景にインクジェットヘッドの販売が好調に推移し売上が増加しました。事業成長のための経費や新製品発売による開発資産償却費等の増加に加え、拠点再編に伴う一過性の支出もあり費用が増加しましたが、売上の増加や円安効果もありグラフィックコミュニケーションズ全体の営業利益は 103億円となり、前第3四半期連結累計期間に比べ 3億円増加しました。
インダストリアルソリューションズの売上高は、前第3四半期連結累計期間に比べ 5.2%減少し 794億円となりました。サーマル事業では欧米での需要の低迷や顧客の在庫調整等により売上が減少しました。産業プロダクツ事業では中国におけるプロジェクターの需要減等により産業用光学部品の売上が減少しました。プライシングコントロールやコストダウン等で利益確保に努めましたが、インダストリアルソリューションズ全体の営業損益は 10億円(損失)となりました(前第3四半期連結累計期間 営業損益 5億円(損失))。
なお、産業プロダクツ事業においては、2023年10月に車載ステレオカメラやプロジェクター用光学レンズモジュールなどの開発・製造・販売を行うオプティカル事業を譲渡する株式譲渡契約を締結しております。
その他の売上高は、前第3四半期連結累計期間に比べ 19.5%増加し 191億円となりました。カメラ事業が堅調に推移し売上が増加しました。新規事業創出のための先行投資により、その他全体の営業損益は 77億円(損失)となりましたが、前第3四半期連結累計期間に比べ 10億円改善しました。
(注1)事業セグメントとしてのデジタルサービスはオフィスサービス事業及びオフィスプリンティングの販売を主とした事業に限定した事業セグメントであり、当社グループが目指す「はたらく場をつなぎ、はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」への変革、として掲げるデジタルサービスすべてを網羅しているものではありません。当社グループが「デジタルサービスの会社」として掲げる「デジタルサービス」は、事業セグメントではデジタルサービスの他、すべてのセグメントの事業内容に含まれております。
(注2)第1四半期連結会計期間より、その他に含まれていたPFUの事業について、デジタルサービス及びデジタルプロダクツへ事業区分変更を行いました。この変更に関して、前第3四半期連結累計期間についても遡及適用した数値で表示しております。
②財政状態の状況
資産合計は、前連結会計年度末に比べ 578億円増加し 22,077億円となりました。前連結会計年度末と比較して為替レートが大幅に円安となったことから海外資産の換算差額が発生し、資産が増加しました。為替影響を除いた試算では 252億円の減少となります。主要通貨の当第3四半期末日レートは、対米ドルが 141.83円(前連結会計年度末に比べ 8.30円の円安)、対ユーロが 157.12円(同 11.40円の円安)となりました。
資産の部では、前連結会計年度末に比べ、現金及び現金同等物が 403億円減少しました。一方で、生産調整によりA3複合機の在庫は減少したものの、翌期以降の販売に向けた在庫形成、買収や円安等により棚卸資産が 121億円増加しました。加えて、欧州での買収や円安等によりのれん及び無形資産が 346億円増加しました。
なお、2023年10月にオプティカル事業を譲渡する株式譲渡契約を締結したことに伴い、対象事業の資産及び負債を、売却目的で保有する資産及び売却目的で保有する資産に直接関連する負債に組替えています。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ 22億円増加し 11,941億円となりました。負債の部では、前連結会計年度末に計上した債務の支払い等により営業債務及びその他の債務が 405億円減少した一方、流動負債と非流動負債を合わせ、社債及び借入金が 131億円、買収や円安等によりその他の負債が 229億円増加しました。
資本合計は、前連結会計年度末に比べ 555億円増加し 10,136億円となりました。資本の部では、円安により在外営業活動体の換算差額が増加しました。
結果として親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末に比べ 563億円増加し 9,879億円となりました。株主資本比率は 44.7%と引き続き安全な水準を維持しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間に比べ現金収入が 557億円増加し 622億円の収入となりました。前第3四半期連結累計期間に比べ、営業債権及びその他の債権が減少したことや、棚卸資産の増加額の減少等により現金収入が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間に比べ現金支出が 332億円減少し 708億円の支出となりました。前第3四半期連結累計期間ではPFUの買収等により現金支出が増加しておりました。
以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計となるフリー・キャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間に比べ現金支出が 890億円減少し 86億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間に比べ現金支出が 777億円増加し 392億円の支出となりました。当第3四半期連結累計期間では、前第3四半期連結累計期間に比べ自己株式の取得による現金支出が減少したものの、資金調達の減少、及び借入債務の返済の増加等により、現金支出が増加しました。
以上の結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ 395億円減少し 1,713億円となりました。
当第3四半期連結累計期間において、新たに発生した優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題はありません。
当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当第3四半期連結累計期間の研究開発投資は 81,777百万円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。