売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E00693 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の経済活動の正常化や雇用・所得環境の改善、各種政策の効果もあり、景気の緩やかな回復が見られました。一方で、地政学リスクの長期化や世界各地域での金融政策等による景気後退懸念など、依然として先行きが不透明な状況が続いています。また、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したような気候変動や、能登半島地震をはじめとする自然災害の影響も、引き続き懸念されます。

DNPグループは、こうした環境・社会・経済の大きな変動のなかでも、長期を見据え、自らが「より良い未来」をつくり出すため、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域を拡げています。現在は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」を推進しており、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。

事業戦略では、中長期の強靭な事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心とした新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略としては、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、長期的な成長を支える経営基盤の強化を図っていきます。また、自然災害等の不測の事態に対しても、事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図り、グループを挙げてさまざまな企業活動を持続的に推進していきます。

 

当第3四半期連結累計期間のDNPグループの業績については、売上高が1兆612億円前年同期比3.7%増)、営業利益が520億円前年同期比16.6%増)、経常利益が682億円前年同期比18.4%増)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、985億円前年同期比52.9%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

なお、第1四半期連結会計期間から、部門(事業セグメント)別の名称について、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更し、「飲料事業」を「ライフ&ヘルスケア部門」に移行しています。当第3四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。

 

(スマートコミュニケーション部門)

イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧州・アジア市場を中心に好調に推移しました。

情報セキュア関連は、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件に加え、ICカードのなかでも特に、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが堅調に推移しました。

マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めたものの、紙媒体の市場縮小の影響を受け、前年を下回りました。

出版関連は、図書館運営業務が伸長したことに加え、リアル店舗とネットのハイブリッドな流通販売事業も堅調に推移したものの、雑誌等の紙媒体の市場縮小の影響などにより、当事業全体で前年並みとなりました。

コンテンツ・XRコミュニケーション関連では、リアルとバーチャルの空間の融合等によって人々の体験価値を高めるXRコミュニケーション事業の強化に努めました。その一環で、脳神経科学とITの融合等によるブレインテック事業とXR事業に強みを持つ株式会社ハコスコとの連携を進めるなど、新規事業の創出に注力しています。

教育関連では、レノボ・ジャパン合同会社とともに、東京都の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム事業に係るプラットフォーム構築・運営組織」に採択されました。今後も、国が掲げる“誰一人取り残すことのない”多様な教育機会の提供に取り組み、全国の自治体や教育現場の活動を支援していきます。

その結果、部門全体の売上高は5,321億円前年同期比0.2%減)となりました。営業利益は、情報セキュア関連の売上増加や構造改革の推進、業務効率の改善活動などがプラスに働いたものの、紙媒体を中心とした減収のほか、原材料費や物流費等の上昇の影響を受け、159億円前年同期比11.2%減)となりました。

 

(ライフ&ヘルスケア部門)

モビリティ・産業用高機能材関連は、自動車生産台数の回復もあり、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが車載向け・IT機器向けともに堅調に推移しました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりにより、封止材が好調に推移したものの、バックシートは顧客企業の生産調整によって減少しました。自動車用部材の加飾フィルムについては、内装用製品に加えて、塗装工程の短縮と環境負荷の低減を実現するデザイン性に優れた外装用製品の販売が堅調に推移しました。

包装関連は、物価高騰による生活者の食料品・日用品等の買い控えの影響を受けたものの、プラスチック成型品の増加などにより、前年を上回りました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力するとともに、製造拠点の再編を進め、体質強化を図りました。

生活空間関連は、耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテック®」が国内外で堅調に推移したものの、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少によって住宅向けの内装材が減少し、前年を下回りました。

飲料事業は、人流の回復や長引く暑さなどによって販売数量が増加したほか、価格改定が寄与し、前年を上回りました。

メディカル・ヘルスケア関連では、第1四半期連結会計期間より、シミックCMO株式会社を連結子会社とし、2023年6月からシミックグループと共同で原薬から製剤までの一貫製造や付加価値型医薬品の開発などを行っています。

その結果、部門全体の売上高は3,565億円前年同期比5.2%増)となりました。営業利益は、原材料費やエネルギー費の上昇ペースが落ち着き、価格転嫁の不足影響が緩和されたことにより、105億円前年同期比71.2%増)となりました。

 

(エレクトロニクス部門)

デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって堅調に推移しました。加えて、光学フィルムも、サプライチェーン全体の前年度の在庫調整の影響が一巡したことで増加に転じ、当事業全体で前年を上回りました。

半導体関連は、半導体製造用フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みとなったものの、半導体市場の減速によって半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、当事業全体で前年を下回りました。

その結果、部門全体の売上高は1,744億円前年同期比13.8%増)となりました。営業利益は、半導体関連の売上の減少に加え、原材料費等のコスト上昇の影響を受けたものの、デジタルインターフェース関連が好調に推移し、423億円前年同期比17.6%増)となりました。

 

2023年12月には、「新光電気工業株式会社の株式取得を目的とする特別目的会社への出資に関するお知らせ」を公表しました。

DNPグループは、次世代半導体パッケージの重要部材である「有機インターポーザ」や「TGVガラスコア基板」などの開発を進めています。また、光電融合といった次世代の技術に対応したビジネスを展開し、半導体サプライチェーンへの価値提供の拡大を目指しています。昨今、大手半導体メーカーがガラスコア基板の採用を公表したほか、チップレットなどの次世代半導体技術が注目されており、こうした市場のニーズに対して、新しい価値の提供を加速させていきます。

なお、当該特別目的会社プレスリリース「新光電気工業株式会社(証券コード:6967)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」に記載の通り、本公開買付けは、国内外の競争法並びに国外の投資規制法令等に基づく必要な手続及び対応に一定期間を要すると想定されています。そのため、本公開買付けは2024年8月下旬の開始を目指しているものの、国外の競争当局及び投資規制法令等を所管する当局における手続等に要する期間に影響されます。

 

当第3四半期連結会計期間末の資産、負債、純資産については、総資産は、有形固定資産や受取手形、売掛金及び契約資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ575億円増加し、1兆8,879億円となりました。

負債は、支払手形及び買掛金、長期借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ246億円増加し、7,067億円となりました。

純資産は、四半期純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得による減少などにより、前連結会計年度末に比べ329億円増加し、1兆1,811億円となりました。

 

(2)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間におけるDNPグループ全体の研究開発費は26,478百万円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(3)主要な設備

前連結会計年度末において実施中及び計画中であった主要な設備の新設、除却等の計画について、当第3四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。

 

鶴瀬工場の産業用高機能材関連製造設備の新設は、完成予定を2023年10月から2024年10月に変更しております。