E03051 Japan GAAP
令和6年1月1日に発生した能登半島地震によりお亡くなりになった方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまに衷心よりお見舞い申し上げ、北陸地方の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
◆ 当社グループを取り巻く経営環境
2023年は、1898年の統計開始以降で最も高い気温を記録し、いわゆる「地球沸騰の時代」として温暖化の進行を体感する年となりました。高気温の一因であるCO2排出に関しては、COP28において、パリ協定の目標達成に向け、「化石燃料からの脱却」という文言がCOP史上初めて成果文書に記載され、世界全体での脱炭素社会への早急な転換の必要性が再認識されました。カーボンニュートラルへの取り組みが企業価値を左右する時代が到来したと考えています。エネルギーの分野では、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの軍事衝突、親イラン武装組織フーシによる船舶への攻撃など、サプライチェーンに大きな影響を与える地政学リスクが高まり、混乱の度合いが益々深まっています。自由貿易圏の中で、上流から下流まで安定したエネルギー供給を前提とした時代は終焉を迎えました。エネルギー危機下での安定供給、脱炭素対応、また、自然災害の激甚化や頻発化へのレジリエンス強化のために、分散型エネルギーシステムを早期に普及させることが、解決すべき重要な社会課題であると認識しています。
◆ 組織再編とエネルギー・ソリューション
当社グループは、本年1月1日に、当社および当社の完全子会社の都市ガス3社を統合したうえで、「総合エネルギー小売会社(日本瓦斯株式会社)」と「エネルギープラットフォーム会社(株式会社エナジー宇宙(読み:エナジーソラ))」および「ソフトウェア開発・運用会社(株式会社雲の宇宙船)」の3社に再編成しました。近未来のエネルギー事業の在り方からバックキャストして組織体制を構築したものであり、この組織再編により、エネルギー小売というこれまでの事業モデルから、お客さま、地域社会、そしてエネルギー業界にむけて価値を提供する新ビジネスモデル(NICIGAS3.0)に、進化させます。
NICIGAS3.0において、お客さまと地域社会には、エネルギーの最適利用サービス(エネルギー・ソリューション)を提供します。これは、エネルギーの安定調達や需給バランス、脱炭素という社会課題に対する新たな価値提供です。具体的には、太陽光や蓄電池、ハイブリッド給湯器、EV充電器などの分散型エネルギー源(DER)を利用し、お客さまがご自身でエネルギーを作り、貯め、賢く使うという、高度化するAIを活用したご家庭でのエネルギーの最適利用を提案します。エネルギー業界にむけては、DXを取り入れた高効率なオペレーションを他社と共同利用する環境を構築し、事業インフラのシェアリングサービスを提供します(プラットフォーム事業)。インフラのシェアリングによる業界全体のオペレーション最適化を通じて、CO2削減や労働力不足といった社会課題に対する価値を提供します。グループ再編において、新ビジネスモデルへの挑戦の鍵はITにあると考え、ITに関連する資産や人材を株式会社雲の宇宙船に集約しました。これにより、最先端技術を有するベンチャー企業との共創を促し、ノウハウを蓄積します。ITに特化する株式会社雲の宇宙船は、社外のテック人材を惹きつけるのみならず、社内の人材にも成長機会を提供し、グループ全体に大きな相乗効果をもたらします。
◆ 資本政策
組織再編を通じて今後の事業体制が定まったことを踏まえ、2024年3月期から2026年3月期を対象とする3ヶ年の成長プランを発表しました。このプランでは、事業拡大による利益成長だけでなく、バランスシートを積極的にコントロールして企業価値を向上させる取り組みも重視しました。具体的には、収益性の高い事業に多くのキャッシュを投じ、ROICを23/3期の9%から26/3期に13%に引き上げます。合わせて、調達サイドにおいて最適資本構成を見直し、自己資本比率を23/3期の48%から26/3期に40%まで引き下げ、利益成長と合わせて26年3月期にROE22%を達成します。
当社はこれまで、地域社会の中で、エネルギー小売自由化の市場で、お客さまからの信頼を積み上げて成長してまいりました。一見、変わらないだろう、変えられないだろうと思われる社会課題や常識に直面する場面においても、自分たちのDNAを再確認しながら変化し続け、中長期的な企業価値の成長に向けて挑戦を続けます。今後も、ラストワンマイルのお客さまとの接点を強みに、ステークホルダーの皆様からご支持頂けるよう、全力を尽くしてまいります。
◆ 連結業績
当第3四半期連結累計期間は以下の通りの決算となりました。 (単位:百万円)
当第3四半期連結累計期間は、第2四半期より続く記録的な高気温の影響によりガス販売量は減少いたしましたが、LPガスの原料価格が低く推移したことにより利幅が拡大、都市ガスでもスライドタイムラグ(*)がプラス方向に影響し、売上総利益を伸長させました。販管費は顧客獲得費や運搬費を抑え、営業利益以下の各段階利益において大幅な増益の決算となりました。
*スライドタイムラグとは、都市ガスの原料費調整制度によるもので、原料価格の変動が先に売上原価、後に遅れて売価(料金)に反映されることから発生するタイムラグのことで、当期間は原料価格が下降基調であったことから、プラスの影響を受けております。
◆ セグメント別の状況
◇ LPガス事業 (附帯事業としてLP機器・工事の他、プラットフォーム事業等を含む)
LPガス事業による売上総利益が309億52百万円(前年同期比20億84百万円増)、附帯事業による同利益が26億93百万円(同微増)となりました。
LPガス事業は、ガス販売量が高気温の影響により家庭用・業務用とも前期を下回ったものの、LPG原料価格が23年3月以降大きく低下、足元の原料価格も想定内の価格で推移したことにより利幅が拡大し、売上総利益を伸長させることができました。
営業面では、3ヶ月の訪問営業停止(行政処分)を終え、8月25日から訪問営業を再開しております。再開後の毎月の新規獲得は過去2年と同水準まで回復、既存のお客様との関係強化に努め解約数も抑えることで、お客様数を前年同期末から2万件積み重ね、98万8千件としております。
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 電気事業
電気事業セグメントの売上総利益は、27億29百万円(前年同期比6億25百万円増)となりました。
この利益の増加は、電気契約数の増加に加え、7月以降の料金改定による利幅拡大によるものです。
訪問営業再開後は、料金を割高に設定している新電力のユーザーや、注力エリアを定め営業を強化、お客様数は前年同期末より2万8千件増加の34万1千件、電気のセット率は前年同期末18.9%から当四半期末20.9%に上昇しました。暖房の需要期になる1月からは、電気とのセット契約になっていない既存顧客向けに、改めてニチガス電気の優位性を伝えるプロモーションを実施し、申込増加に繋げてまいります。
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 都市ガス事業 (附帯事業として都市ガス機器・工事等を含む)
都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が134億83百万円(前年同期比11億52百万円増)、附帯事業による同利益が7億30百万円(同84百万円減)となりました。
都市ガス事業による売上総利益の増加は、都市ガス原料の下降基調を要因としたスライドタイムラグのプラス影響によるものであります。
(2) 財政状態の状況
当社は、株主資本の収益率、すなわちROEを高めることを目的として、まずは、資産の収益性を高めるべく、投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。
・当第3四半期末の資産の部は、1,489億円と前期末より45億円減(3.0%減)となりました。
資産が減少いたしましたのは、低い原料価格が売上債権に反映され、営業債権が29億円減少したこと、手元の現預金を20億円減少させたことによるものです。
・同期末の負債の部は、787億円と前期末から11億円減(1.5%減)、純資産の部は、701億円と前期末から33億円(4.6%減)減少しております。
負債の部が減少した主な要因は、原料価格の低下に伴い仕入債務が15億円、季節的要因により未払法人税等が28億円減少したことによるもので、一方、有利子負債を32億円増加させております。純資産の部が減少した主な要因は、配当80億円、自己株式の取得24億円と株主還元を進めたためです。
・デッドエクイティレシオは0.6倍、株主資本比率は47.1%と、財務基盤の安定性を確保しながらも、最適な資本構成を心掛け、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行なっております。
(単位:百万円)
(3) キャッシュフロー状況の分析
当第3四半期末における現金及び現金同等物は、前同四半期末と比べ6億円増加し、107億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュフローは、129億円の収入(前年同期比44億円増加)となりました。
増加した主な要因は、税金等調整前四半期純利益の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュフローは、62億円の支出(前年同期比1億円増加)となりました。
主要な投資は、導管工事の他、再編後に稼働する導管システムや新保安システム等のICT投資、エネルギーソリューションビジネスの中核となる蓄電池技術を持つパワーエックス社への追加投資等です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュフローは、88億円の支出(前年同期比4億円減少)となりました。
支出が減少いたしましたのは、配当の支出が14億円増加した一方、借入の収入が18億円増加したためです。
(単位:百万円)
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。