売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E04243 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。

(1)経営成績の分析

 当第3四半期連結累計期間の世界経済は、インフレによる家計の実質購買力の低下やサービス分野におけるリバウンド需要の一服等から減速しました。米国では、金融引き締め効果によりインフレにも落ち着きが見られ、良好な雇用情勢を背景に個人消費が底堅く推移しましたが、景気は緩やかに鈍化しました。欧州では、インフレは減速しているものの、個人消費や製造業の低迷で景気の停滞が続きました。中国では、個人消費の持ち直しにより夏場に景気減速が一服したものの、輸出や不動産投資の低迷で秋以降再び減速感が強まりました。我が国の経済は、インバウンド需要の回復や輸出の増加により、景気は緩やかに回復したものの、物価上昇等により内需拡大の勢いに陰りが見られました。

 

 当社グループの海運業を取り巻く市況は、世界経済の減速等を背景に一部の船種では弱含む場面もありましたが、当社が主力とするケミカルタンカーや、大型LPG船においては高い水準で推移しました。一方、11月にイエメンのフーシ派による紅海を航行する船舶への攻撃が相次ぎ、海上物流の混乱への懸念及び市況の先行き不透明感が強まりました。このような状況の下、当社グループでは、安全管理体制に万全を期した上で、引き続き既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルが順調な稼働を継続したことから、安定した収益を確保しました。

 

 以上に加え、為替が前年同期と比較し円安(対US$)で推移した結果、当第3四半期連結累計期間においては、売上高は1,034億67百万円(前年同期比4.5%減)、営業利益は143億34百万円(前年同期比13.6%減)、経常利益は152億20百万円(前年同期比8.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は150億69百万円(前年同期比21.4%減)となりました。

 

 各セグメント別の状況は次の通りです。

 

①外航海運業
 当第3四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。

 大型原油タンカー市況は、OPECプラスの協調減産は継続されたものの、中東の地政学リスクの高まりや、冬季需要の影響により堅調に推移しました。

 ケミカルタンカー市況は、世界的な景気後退懸念や中国経済回復の遅れを背景に夏場まで軟化傾向で推移した後、アジア域での悪天候により船腹需給が引き締まったことに加え、秋以降にはパナマ運河での通航制限の強化を受け、運河での混雑や通航を回避した長距離航海が増加した影響により、高い水準で推移しました。

 大型ガス船のうち、LPG船市況は安定した荷動きにより堅調に推移しました。8月後半以降の市況は、北米から極東向け航路の輸送量増加に加え、パナマ運河の混雑や中東からインド向けの貨物の需要が増加したことにより運賃が上昇し、昨年度の過去最高水準を更新しました。LNG船市況は、例年通り9月以降は冬場に向けた船腹調達の動きが活発化し高水準で推移したものの、12月は欧州でのガスの在庫が潤沢であったことに加え、比較的温暖な気候により低迷しました。

 ドライバルク船市況は、中国経済の回復遅れにより当期前半においては軟調に推移しました。8月後半以降は、石炭や穀物輸送の増加に加え、パナマ運河での混雑を背景に市況は大西洋水域を中心に上昇に転じたものの、年末にかけては軟化基調となりました。

 なお、当第3四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥142.86/US$(前年同期は¥135.70/US$)、船舶燃料油価格については適合燃料油の平均価格はUS$617/MT(前年同期はUS$854/MT)となりました。

 

 このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。

 大型原油タンカーにおいては、一部の船舶で入渠工事を実施しましたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、業績の下支えに貢献しました。

 ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、スポット貨物を積極的に取り込んだことで、当初の予想を上回る運航採算を確保しました。また、経営資源の有効活用及び資産効率向上のため、ケミカルタンカー1隻を売却しました。

 大型ガス船においては、LPG船・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部の船舶が好市況を享受しました。

 ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益の確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船隊では、市況軟化による影響はあったものの、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、当初の予想を若干上回る運航採算を確保しました。

 

 以上の結果、外航海運業の売上高は861億92百万円(前年同期比5.0%減)、営業利益は112億43百万円(前年同期比13.1%減)となりました。

 

②内航・近海海運業

 当第3四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。

内航ガス輸送の市況は、プラントの定期修繕実施や、気温上昇に伴う早期の不需要期入り、9月以降は暖冬による需要期入りの遅れ等により荷動きが低調でしたが、内航海運業法等の改正に伴う船員労働時間の規制により、船腹需給は引き締められ、堅調に推移しました。

 近海ガス輸送においては、中国経済の回復鈍化により、プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要は依然として低調であるものの、新造船の竣工は限定的であったことから、当社の主力とするアジア域市況では引き続き堅調に推移しました。

 

 このような事業環境の下、内航・近海海運業においては、既存の中長期契約に加え、船員労働時間の規制を考慮した効率配船により、安定的な収入を確保しました。

 

 以上の結果、内航・近海海運業の売上高は76億円(前年同期比5.4%減)、営業利益は2億57百万円(前年同期比54.0%減)となりました。

 

③不動産業
 当第3四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。

 都心のオフィスビル賃貸市況は、大企業を中心とするリモートワークの浸透によるオフィス需要減少に伴う賃料の下落が続き、空室率も依然として6%台と高い水準で推移しましたが、新築大型ビルへの拡張、集約移転を要因とする市況回復の兆しも見え始めました。

 貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復が見られていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても、需要の持ち直しの動きが顕著となりました。

 不動産関連事業のスタジオ事業においては、企業の広告宣伝活動を中心に堅調に推移しました。

 英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、オフィスへの回帰を促進するため質の高いビルを求める需要は強いものの、リモートワークの浸透等によるオフィス需要減少に伴い空室率は高い水準で推移しました。

 

 このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。

 当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが順調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。

 商業フロアにおいては、一部空室を残しているものの、飲食テナントを中心に売上の回復傾向が見られました。

 当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、需要の回復に伴い稼働は改善に向かいました。

 スタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門で稼働が引き続き堅調に推移しました。

 英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。

 

 以上の結果、不動産業の売上高は97億47百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益は28億34百万円(前年同期比8.5%減)となりました。

(2)財政状態の分析

 当第3四半期連結会計期間末の総資産残高は前連結会計年度末に比べ115億75百万円増加し、2,770億28百万円となりました。これは主に現金及び預金の増加と船舶の竣工によるものです。負債残高は前連結会計年度末に比べ26億66百万円減少し、1,522億円となりました。これは主に短期借入金の返済によるものです。純資産残高は前連結会計年度末に比べ142億41百万円増加し、1,248億28百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(4)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

 当第3四半期連結累計期間において当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更はありません

 

(5)研究開発活動

 記載すべき事項はありません。