売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E04473 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の状況

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

当社は、1996年の創業時から、MVNO事業モデルという新たな通信事業の在り方を提唱・実践し、安全・安心・便利にデータを運ぶ(通信する)ことを自らの使命(ミッション)として事業を展開しています。具体的には、携帯通信(SIM)事業、ローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業、及び、スマートフォンで利用するデジタルID(FPoS(Fintech Platform over SIM、エフポス))事業の3つの事業に取り組んでいます。

当社は、SIM事業の進化を継続することで安定的な収益基盤を確保し、ローカル4G/5G事業及びFPoS事業に投資することで、ローカル4G/5G事業及びFPoS事業を将来の収益の柱に育てる計画です。

 

① 携帯通信(SIM)事業について

当社は、2020年6月の総務大臣裁定を受け、2020年7月に大手携帯電話事業者と同等の音声定額プランを提供する「日本通信SIM」を発売して以来、契約回線数及び四半期売上ともに成長を続けています。

当社は、「日本通信SIM」の商品力を強化するため、仕様の拡充を継続しており、2022年4月には、他のMVNOに先駆けて、スマートフォン等に内蔵されているeSIMへの対応を開始(2022年4月6日公表)したほか、2023年3月までに、携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認において、マイナンバーカードに格納された電子証明書による方法を導入しました。

2023年4月には、「日本通信SIM」の主力プランである「合理的みんなのプラン」の月額基本料を据え置いたままデータ容量を6GBから10GBに増量し、2023年5月には、MVNO業界ではいち早く、MNPワンストップ方式(注)に対応しました。

また、2023年11月には、「日本通信SIM」の20GBプランを、月額基本料を据え置いたままデータ容量を30GBに増量し、かつ、音声通話において従来通りの70分無料通話に加えて、5分かけ放題オプションを選択することができる30GBプランにアップグレードしました。

これにより、「日本通信SIM」のラインアップは、データ利用量が少ない方向けの「合理的シンプル290プラン(1GB・月額290円)」、データ利用量が平均的な方向けの「合理的みんなのプラン(10GB+5分かけ放題(または70分無料通話)・月額1,390円)」およびデータ利用量がやや多い方向けの「合理的30GBプラン(30GB+5分かけ放題(または70分無料通話)・月額2,178円)」となり、お客様がご自身にとって合理的な携帯料金プランを選んでいただけるようになりました

このような商品性を評価していただき、「日本通信SIM」の売上は個人・法人ともに契約回線数が順調に伸長しています。また、パートナーブランドでの音声通信サービスの契約回線数も順調に伸長しており、結果として、SIM事業は、MVNO事業、イネイブラー事業ともに成長を継続しています。

 

(注)MNPワンストップ方式は、お客様が携帯電話番号を変更せずに他の通信事業者に乗り換える(これを「MNP」といいます)場合、契約中の通信事業者でMNP予約番号を取得する必要がなく、乗換え先の通信事業者のWebサイトで申し込むだけでMNP手続きを進めることができるものです。

 

② ローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業について

ローカル4G/5G事業は、先進的な事例の多い米国で実績を作り、その経験を生かして日本で展開することを目指しており、当社米国子会社は、米国市場で、ローカル携帯網との接続に使用するSIMを提供する事業を進めています。

2023年12月に公表したとおり、当社の米国子会社のJCI US,Inc. (以下、「JCIUS」という)は、米国ユタ州と CBRS(ローカル 4/5G)の教育及び遠隔医療ネットワークへの導入をユタ州全体で実現するための契約を締結しました。これは、JCIUSが、当社のセキュアLTEネットワークゲートウェイプラットフォーム(NGP)サービスを主要なサービスとして商業提供する契約を、米国ユタ大学、および、ユタ教育及び遠隔医療ネットワーク(Utah Education and Telehealth Network、以下「UETN」という)を通じて米国ユタ州と締結したものです。この契約で構想されているローカル4/5Gネットワークは、WIFIのサービス要件を置き換えて拡張し、ユタ大学とUETNが実装する高速ブロードバンドサービスの現在および将来のユーザーに安全な(プライベート/クローズド)ネットワークを提供するものです。JCIUSは、ユタ州の人々のネットワークへの接続性を高めるために必要なすべてのSIM及び/または他のハードウエアセキュリティモジュール(HSM)を提供します。

当社は、米国子会社を通じてローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業に関する技術及びノウハウを蓄積し、これらを活用することで、パートナー企業や顧客企業が設置するローカル携帯網に接続することのできるSIMを提供しています。当社は、引き続き、日本及び米国で知見を蓄積し、これらを活用して、ローカル4G/5G事業の導入事例を積み上げてまいります。

 

③ スマートフォンで利用するデジタルID(FPoS)事業について

社会・経済の多くの分野でデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進められる中、デジタルIDの重要性があらためて認識されていますが、当社は、当社の特許技術であるFPoSを利用してスマートフォンで利用できるデジタルIDを構築し提供する事業を推進しています。FPoSは、電子署名法による認定を受けた電子認証局がお客様のスマートフォン(iPhone及びAndroid)に公開鍵の入った電子証明書を発行し、お客様のスマートフォン内で生成する秘密鍵との組み合わせで、お客様の本人性(本人に間違いないこと)と真正性(本人の意思が改ざんされていないこと)を担保するものです。

現在、スマートフォンのアプリで様々な事業者のサービスを利用することができますが、アプリの利用におけるお客様のデータ(個人情報を含む)について、i)なりすましまたは改ざんされるおそれがあり、ii)サービスを提供する事業者以外の連携先に提供されるためお客様自身で管理することができない、という問題が広く認識されるようになっています。そのため、お客様の利便性を損なわずに個人情報を含むデータの安全性及びプライバシーを確保できる仕組みが強く求められています。

i)について、そもそも、インターネットの世界は現実の世界よりなりすましや改ざんが容易であり、相手が

本人に間違いないのか、また、相手から届いた情報が間違いなく本人が送った情報であるのかを確認することが

できません。そのため、インターネットでの意思表示や取引は、必ずしも信頼できるものとは言えません。

FPoSは、公開鍵が入った電子証明書とスマートフォン内で生成する秘密鍵を正しく組み合わせなければアクセスできない仕組みにより、お客様のデータ(個人情報を含む)の安全を確保しています。例えば、携帯電話を利用する場合は、IDとパスワード、またはワンタイムパスワードではなく、SIMというICチップが必要ですが、これは、携帯電話事業者が契約者を識別する際、ハッキングのおそれのあるパスワード等ではなく、SIMというICチップによるという技術的な制約を設けているためです。FPoSも同様の考え方によるものであり、お客様のデータ(個人情報を含む)へのアクセスについて、携帯通信網へのアクセスと同様に、強固な技術的制約としての役割を担っています。

FPoSは、インターネットを経由する通信に本人性と真正性を担保することができる仕組みであり、FPoSの実装によりインターネットでの意思表示や取引を信頼できるものとすることで、銀行(インターネットバンキング)のほか、医療、行政、教育、交通等、多くの領域における課題を解決する手段となります。

また、ii)について、現在、スマートフォンのアプリをダウンロードして使用する際は、利用規約等が表示され、同意しなければ使用できない(使用した場合は同意したものとみなされる)方式(オプトイン)が採られています。オプトインは利用者に主導権があるとされていますが、実際には、アプリを使用する前に利用規約を熟読し、理解して同意する利用者は多くはないと思われます。そのため、当社は、オプトイン方式の不完全性を補充するため、FPoSに「ダイナミック・オプトイン」機能を搭載しました。これは、お客様の個人情報の提供先がスマートフォンに一覧で表示され、お客様自身で個人情報の提供を許諾しまたは許諾を取り消すことができる機能で、自分の個人情報を自分で管理することができる仕組みです。

当社は、このようなFPoSの可能性を実証するため、前橋市並びに民間企業及び大学による官民連携会社であるめぶくグラウンド株式会社に協力しており、めぶくグラウンド株式会社は、2022年10月から、FPoSの技術を利用したデジタルIDである「めぶくID」を発行する「めぶくアプリ」を運営しています。

「めぶくID」はセキュリティの高さが最大の強みですが、それに加え、セキュリティの高さにより、複数の事業者が保有する個人情報を安全確実にデータ連携できることが最大の差別化要素と言えます。人々の活動には、行政による公共的な領域、医療や教育等の準公共的な領域、さらにそれ以外の民間の領域がありますが、これらの領域をまたいで個人情報を安全確実にデータ連携することができれば、利用者に個別最適化されたサービスを提供することができるとともに、新たな価値を生み出すデータが示されることで、様々な社会課題が可視化され、解決に向けた糸口となります。また、「めぶくID」は「ダイナミック・オプトイン」機能を実装しているため、このようなデータ連携も利用者の実質的な同意に基づいて実施することができます。

「めぶくID」は、他のID等に比べて圧倒的に高度なセキュリティを備えているだけでなく、事業者をまたいでデータ連携ができ、かつどの事業者にどのようなサービスにおいてデータ連携できるかをダイナミック・オプトイン機能で提供していることが、多くの自治体、企業、組織等に高く評価していただいております。

さらに、2023年12月には、「めぶくID」及び「めぶくアプリ」により、前橋市の電子地域通貨である「めぶくPay」のサービスが開始しました(前橋市及びめぶくグラウンド株式会社により2023年9月発表)。「めぶくPay」は、決済データが地域に残り、地域で活用されることで地域社会に還元されることを最優先して設計開発されています。「めぶくID」及び「めぶくPay」は、社会及び経済のデジタル化による恩恵を地域が享受することのできる取組みであり、社会課題を解決することのできる有効な手段になりうると考えています。

安全・安心・便利にデータを運ぶことを会社の使命(ミッション)として取り組んでいる当社にとって、まさにFPoSはその中核を担う役割を持つ技術であり、オペレーションなのです。

 

以上のことから、当社グループの当第3四半期連結累計期間(以下、「当四半期」という)の売上高は5,387百万円となり、前第3四半期連結累計期間(以下、「前年同四半期」という)と比較し、1,065百万円(24.7%増)の増収となりました。これは、MVNO事業における「日本通信SIM」を主とした音声定額・準定額サービスの成長(前年同四半期対比20.1%増)、及びイネイブラー事業におけるパートナーブランドの音声サービスの成長(前年同四半期対比29.7%増)によるものです。

売上原価は2,998百万円となり、前年同四半期と比較して610百万円の増加(25.6%増)となりました。これは、主に、「日本通信SIM」の成長に伴う携帯網の調達コストの増加によるものです。当社がNTTドコモから調達する携帯網は、データ通信及び音声通話のいずれも、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた額を超えない額で設定するものとされているため、売上原価の増加を抑えることができるようになっています。

その結果、売上総利益は2,389百万円(前年同四半期は1,933百万円)、販売費及び一般管理費は1,578百万円(前年同四半期は1,390百万円)、営業利益は810百万円(前年同四半期は542百万円)となりました。

なお、第1四半期において、Quanta Computer Inc.との訴訟の判決が確定し、これに伴い、363百万円の特別利益を計上したことから、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,062百万円(前年同四半期は511百万円)となりました。

 

各事業の状況は以下のとおりです。

(単位:百万円)

売上高

前年同四半期

当四半期

対前年同四半期

増減額

対前年同四半期

増減率(%)

MVNO事業

2,258

2,711

453

20.1

イネイブラー事業

2,063

2,676

612

29.7

4,321

5,387

1,065

24.7

セグメント情報における海外事業の売上高80百万円(前年同四半期は97百万円)は、イネイブラー事業に

含まれます。

 

 

(2)資産、負債及び純資産の状況

(資産)

当第3四半期連結会計期間末における流動資産は3,310百万円となり、前連結会計年度末に比べ997百万円増加しました。これは主に現金及び預金が783百万円、未収入金が115百万円増加したことによるものです。固定資産は871百万円となり、前連結会計年度末に比べ143百万円増加しました。これは主に有形固定資産が90百万円、無形固定資産が59百万円増加したことによるものです。

この結果、総資産は4,181百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,140百万円増加しました。

 

(負債)

当第3四半期連結会計期間末における流動負債は1,368百万円となり、前連結会計年度末に比べ57百万円減少しました。これは主に未払金が114百万円、未払法人税等が24百万円、預り金が94百万円増加した一方、買付契約評価引当金が287百万円減少したことによるものです。固定負債は129百万円となり、前連結会計年度末に比べ49百万円増加しました。これは主にリース債務が40百万円増加したことによるものです。

この結果、負債は1,498百万円となり、前連結会計年度末に比べ7百万円減少しました。

 

(純資産)

当第3四半期連結会計期間末における純資産は2,682百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,148百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純利益1,062百万円を計上したことによるものです。

この結果、自己資本比率は59.2%(前連結会計年度末は46.1%)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物の期末残高は2,364百万円となり、前連結会計年度末に比べ783百万円増加しました。

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは851百万円の収入(前年同四半期は534百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純利益1,203百万円を計上した一方、買付契約評価引当金戻入額の計上287百万円、売上債権の増加が27百万円、棚卸資産の増加が26百万円、前受収益の減少が14百万円あったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは147百万円の支出(前年同四半期は166百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出74百万円、無形固定資産の取得による支出77百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは78百万円の収入(前年同四半期はありませんでした)となりました。これは主に非支配株主からの払込みによる収入93百万円によるものです。

 

(4)経営方針・経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当第3四半期連結累計期間において当社グループが定めている経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について重要な変更はありません

 

(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません

 

(7)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発活動の金額は157百万円です。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。