E00707 Japan GAAP
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
①市況に関する説明
厚生労働省の統計速報値によると、2023年の出生数は前年比5.8%減の72.6万人となる見通しであり、政府も出産育児一時金の引き上げや不妊治療の保険適応をはじめ、様々な対策を講じてきました。さらに多子世帯の大学無償化、児童手当の抜本的拡充などを織り込んだ「こども未来戦略」を閣議決定し、対応を強化しています。一方、総務省によると、65歳以上の高齢者人口の割合は29.1%と過去最高を更新し、80歳以上の割合は10%を突破しました。高齢化に加えて長寿化も加速的に進行しており、社会保障費の増加や医療・介護現場の逼迫などが懸念されています。
国内経済においては、総務省の発表した2023年の消費者物価指数は前年比3.1%の上昇となり、伸び率は第2次オイルショック下の1982年以来、41年ぶりの高さとなりました。世界的な物価上昇に伴う原材料価格高騰や食料品などの値上げが相次ぎ、可処分所得の格差拡大につながっています。
そうした社会情勢を受け、家計における教育費が減少するなかでも、教育業界では新たな需要が広がっています。
1つ目は、全国的な預かりニーズの拡大です。2023年の学童登録児童数は過去最多の144万人となりましたが、待機児童数も約1.7万人で高止まりしています。受け皿となる学童施設の整備が遅れていることから、昨年12月、政府は人材確保策などを盛り込んだ新対策パッケージを発表しました。
2つ目は、教育投資に積極的な高所得家庭に向けた小学校・中学校受験対策市場の加熱です。物価高騰下においても首都圏を中心に高価格帯の私費学童サービスや、低学齢向けの進学塾需要が伸長しています。
3つ目は、学校教育におけるDXの浸透です。小学校の教科書改訂が行われる2024年度には英語のデジタル教科書が導入され、紙の教科書との併用が開始されます。GIGAスクール構想で配布されたタブレット端末の更新費用も政府により予算化され、端末内コンテンツも充実化が進んでいることから、教育DXの勢いが加速することが予測されます。
4つ目は、リカレント・リスキリング市場の進展です。多くの業界が人手不足に苦しんでいるのに加え、個人のポータブルスキル需要増加も追い風となり、企業向け・個人向けの社会人教育ニーズが高まっています。「骨太の方針」にもリスキリング促進が織り込まれていることから、教育市場を牽引する原動力になると期待されています。
他方、介護業界では、高齢者人口の増加に伴い、さらなる市場拡大が見込まれています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、サービス業を中心に様々な業界で採用活動が活発化したことから、医療福祉従事者の確保は一層厳しさを増しており、業界全体における最重要課題となっています。
また、足もとでは食材費・建設費をはじめとした各種コストが高止まりし、引き続き経営環境に大きな影響を及ぼしています。介護事業者の2023年度の休廃業・倒産件数は過去最多と予想されるなか、大手事業者への集約が加速しつつあり、投資ファンドによる買収や異業種からの新規参入など、業界再編が急速に進んでいます。
こうした状況のなか、今年4月に実施される介護報酬改定は、全体でプラス1.59%の改定率となることが公表されました。介護職員の処遇改善を目的とした加算が新たに一本化され、人材の確保・定着と合わせて事務作業の軽減が図られています。また、人員配置基準の緩和やロボット・センサーなどのデジタル活用に関する加算が新たに創設されるなど、介護の効率化を推し進める改定内容となりました。
②経営成績に関する説明
上述のような市況において、当第1四半期連結累計期間の連結業績は、売上高42,749百万円(前年同期比11.9%増)、営業利益836百万円(前年同期より231百万円増)、経常利益1,029百万円(前年同期より453百万円増)、親会社株主に帰属する四半期純損失38百万円(前年同期より270百万円減)となりました。
教育分野は増収減益となりました。教室・塾事業は前期に(株)市進ホールディングスを連結化した影響もあり増収となりましたが、教室事業の回復遅れやDX投資の継続などにより減益となりました。出版コンテンツ事業は減収増益となりました。出版事業は、児童書を中心に店舗販売の減少が続いたことや、前期に送品した書籍の返品が増加したことから減収減益となりました。しかし「地球の歩き方」や「大人の科学」でヒット作が出るなど、児童書以外のジャンルでは回復の兆しも見え始めています。語学・社会人教育事業は(株)学研ステイフルを前第4四半期に持分法適用関連会社に変更した影響により減収となりましたが、eラーニング事業が好調を継続していることから増益となりました。園・学校事業は、少子化を背景とした新設園の減少により幼児事業の低調が続き、減収減益となりました。
医療福祉分野は、食材費などの高騰による影響を受けながらも、新規拠点の積極的な開設と好調な入居が寄与し、高齢者住宅事業、認知症グループホーム事業ともに増収増益となりました。子育て支援事業も、保育所の定員充足率が高位で安定していることから、新規事業開発への先行投資を進めながらも増収増益となりました。
③教育分野に紐づく事業の組み換え・移管について
2023年11月に発表した新中期経営計画「Gakken2025」の遂行にあたり、経営資源の最適配分を図り、事業分野単位で機動的・効率的な運営を進めます。それに伴い、当第1四半期より教育分野の各事業(大分類)に紐づく事業(中分類)の整理・名称変更と、個別事業(小分類)の組み換え・移管を行っております。主な変更点は以下の通りです。
Ⅰ.事業(中分類)の名称変更と削除
1)旧)出版コンテンツ>医学看護事業 は個別事業の組み換えに伴い区分を削除しました。
2)旧)出版コンテンツ>出版以外の事業 は 新)同>語学・社会人教育事業に改称しました。
3)旧)園・学校>社会人事業 は個別事業組み換えに伴い区分を削除しました。
Ⅱ. 個別事業(小分類)の組み換え・移管
1)塾向け教材等の出版・販売事業:旧)出版コンテンツ>出版事業⇒新)教室・塾事業>塾事業
2)医書・看護書の出版・販売事業:旧)出版コンテンツ>医学看護事業⇒新)同>出版事業
3)看護師eラーニング事業 :旧)出版コンテンツ>医学看護事業⇒新)同>語学・社会人教育事業
4)企業向け研修事業 :旧)園・学校事業>社会人事業⇒新)出版コンテンツ>語学・社会人教育事業
5)(株)市進ホールディングスの介護サービス事業
:旧)医療福祉分野>認知症GH事業⇒新)教育分野>教室・塾事業>塾事業
上記の変更を反映した、当社グループの商品サービスの分類は次の通りです。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
〔教育分野〕
売上高:20,671百万円(前年同期比16.7%増)営業利益:89百万円(前年同期より215百万円減)
(単位:百万円)
※事業組み換えに伴い、前期の数値を遡及して修正しています。
(教室・塾事業)
教室事業は、自宅開放型のフランチャイズ教室と、ショッピングモールで展開している幼児教室で会員獲得や教室開設が伸び悩んでいることから減収減益となりました。オンラインで国語指導を行う「ことばパーク」など、デジタルサービスの需要は拡大基調にあります。
塾事業は増収減益となりました。家計における教育費抑制傾向の影響もあり、多くのグループ塾事業会社が前期並みの実績に留まったものの、前第4四半期に(株)市進ホールディングスと(株)エヌイーホールディングスを連結化した影響により、売上高は大幅な増収となりました。利益面は、積極的なDX投資を継続していることなどから減益となりました。
(出版コンテンツ事業)
出版事業は減収減益となりました。売上高は、児童書ジャンルの販売減と返品増加により減収となりました。しかし「地球の歩き方」や「大人の科学」でヒット作が出るなど、店頭販売では回復の兆しも見え始めています。利益面では用紙代高騰が続いていることや、既刊の送品減により原価率が高止まりし、減益となりました。
語学・社会人教育事業(旧:出版以外の事業)は、看護師向けeラーニング、オンライン英会話、体験型英語学習施設運営、企業向け研修の4事業で構成されています。前期に知育玩具の販売を行う㈱学研ステイフルを持分法適用関連会社としたことから売上高は減収となりました。看護師向けeラーニングは契約病院数が前年同期比で10%以上増加しました。オンライン英会話「Kimini」は円安影響を受けながらも個人向け販売が伸長しています。好調な2事業が全体を牽引し、利益面は増益となりました。
(園・学校事業)
幼児事業は減収減益となりました。新設園の減少に伴い大型遊具や備品の販売が伸び悩んでいることに加え、先生向けのエプロンなどアパレル商材の不調が収益を押し下げました。
学校事業は原価高影響により減益となったものの、教科書事業および小論文添削事業などが堅調に推移し増収となりました。
〔医療福祉分野〕
売上高:20,457百万円(前年同期比7.6%増)営業利益:991百万円(前年同期より353百万円増)
(単位:百万円)
(高齢者住宅事業)
サービス付き高齢者向け住宅は、引き続き積極的な新規開設を進めています。当第1四半期連結累計期間には、新たに5拠点を開設し累計で208拠点(FC含む)、10,683居室となりました。入居率も高水準を維持しており96.9%(前年同期比2.4%ポイント増)となりました。食材費の高騰など収益圧迫要素はあるものの、効率的な施設運営や補助金等の活用により増収増益となりました。
(認知症グループホーム事業)
認知症グループホームは、当第1四半期連結累計期間に3棟を新規開設し、累計で310棟、5,903居室となりました。建設費が高止まりするなか、既存展開地域を中心とした事業所承継を積極的に行い、ドミナントエリアでのシェア拡大を進めています。入居率も97%程度で引き続き高位を維持しており、物価の高騰影響を受けながらも増収増益となりました。
(子育て支援事業)
子育て支援事業は、12月末時点の保育園定員充足率が95.9%(前年同期比3.7%ポイント増)まで上昇し、好調な稼働が続いています。自治体からの受託による学童施設事業も順調に運営施設数を伸ばしており、児童発達支援施設などの新規開発投資を進めながらも増収増益となりました。
〔その他〕
売上高:1,620百万円(前年同期比9.2%増)営業利益:143百万円(前年同期より10百万円減)
その他の事業は増収となりましたが、グローバル・デジタル領域への戦略投資を継続していることから、利益面は概ね前期並みに留まりました。グローバル事業では、新興国向けODAや民間企業の海外進出支援事業が好調に推移しています。また、ベトナムなど戦略地域におけるパートナーとの協業も順調に進展しています。デジタル領域においては(株)Gakken LEAPが提供するリスキリング学習用ウェブサービス「Shikaku Pass」の積極的なプロモーションが奏功し、利用者数が増加基調です。
(単位:百万円)
※1 有利子負債=借入金+社債+リース債務
※2 自己資本比率=自己資本÷総資産
※3 DEレシオ=有利子負債÷自己資本
当第1四半期連結会計期間の総資産は、前連結会計年度末に比べ2,597百万円減少し、133,730百万円となりました。主な増減は、現金及び預金の増加760百万円、受取手形及び売掛金の増加514百万円、商品及び製品の増加607百万円、無形固定資産の増加2,937百万円、投資有価証券の減少9,410百万円などによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ765百万円減少し、80,528百万円となりました。主な増減は、支払手形及び買掛金の増加708百万円、短期借入金の減少2,759百万円、未払法人税等の減少1,096百万円、賞与引当金の減少1,032百万円、長期借入金の増加3,250百万円などによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,832百万円減少し、53,202百万円となりました。主な増減は、利益剰余金の減少589百万円、自己株式の増加1,192百万円などによるものです。