株式会社朝日新聞社

その他製品出版

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E00718 Japan GAAP


 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当中間連結会計期間における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

日本経済は、新型コロナの規制緩和で訪日外国人と国内客の需要がともに戻ってきたことから回復が進み、日本銀行が発表した2023年9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・非製造業の景況感がバブル景気直後の1991年以来、約32年ぶりの高水準に達した。しかし、新聞業界においては新聞発行部数の減少がさらに進み、新聞資材など原材料価格高騰も影響して、一層厳しい経営環境が続いている。このため、当社では、新聞を安定発行するために本紙購読料を2023年5月より改定した。一方、新型コロナの規制緩和に伴い、ホテルの宿泊客は増加し、ホールの稼働率も上昇しており、当社と当社グループの不動産事業は増収増益となった。また、イベント事業では当社主催の大型の展覧会で好調な集客が続いている。

このような状況の中、当社と当社グループの持続可能な成長軌道への道筋をつけるべく21年度にスタートした「中期経営計画2023」が最終年度を迎えた。プリントメディア事業を効率化し、事業構造戦略をさらに進めていく。

当社グループの当中間連結会計期間の経営成績は、売上高が132,182百万円で前年同期比1,257百万円(1.0%)の増収となった。損益については、営業利益が611百万円で同1,455百万円(△70.4%)の減益、経常利益が3,559百万円で同2,294百万円(△39.2%)の減益、税金等調整前中間純利益は5,842百万円で同4,551百万円(352.6%)の増益、親会社株主に帰属する中間純利益は5,123百万円で同4,112百万円(406.8%)の増益だった。

セグメントの経営成績は、次のとおりである。

[メディア・コンテンツ事業]

「ともに考え、ともにつくる~みなさまの豊かな暮らしに役立つ総合メディア企業へ」の企業理念のもと、当社は社会に必要とされるジャーナリズムの担い手であり続けるため、多角的で充実した紙面を展開した。旧統一教会問題や国土交通省OBによる人事介入問題、誤登録や個人情報漏れなどトラブルが相次ぐマイナンバー問題などで、読者の高い期待に応えられる報道姿勢に徹してきた。また、新聞製作技術の革新にも取り組んだ。23年9月に日本新聞協会が発表した新聞技術賞に、当社と子会社の㈱朝日プリンテックが共同開発した「ブランケット復活装置の開発」が選ばれた。新聞印刷の過程で用いるゴム「ブランケット」の再利用を可能にする装置の開発に成功し、新聞印刷コスト削減や環境負荷の軽減という業界全体の課題への解決策を示したことが高く評価された。一方で、当中間連結会計期間における朝日新聞朝刊部数は366万2千部で、前年同期比48万部の減少となった。

デジタルでは、今夏のバーチャル高校野球で、スポーツブル、スポーツナビに加え、新たに本大会でABEMAでの配信を実施した。総再生回数は3億5,667万回と昨年から2倍近く伸びて過去最高になった。地方大会では初めて49地区での全試合配信を実現した。事業協力金収入も過去最高となり、大幅増益となった。また、関東大震災から100年の節目となる9月1日に展開した広告特設サイト「もしも今日が、100年前の今日だったら」が、9月4日時点で30万PV超えを達成した。サイトを読み進めると画面が突然揺れる仕掛けで、SNSでも注目を集めた。紙面広告との連動や、朝デジスペシャル「関東大震災100年」との相互リンク設置も行い、防災減災への関心が高まるタイミングに合わせて朝日新聞社のコンテンツ力をアピールすることができた。

展覧会では、東京都美術館で開催したマティス展が約45万人の観客を集め好評を得た。出版物では、大型企画の「ゲッターズ飯田の五星三心占い2024全12冊」が好調だったほか、文庫「傲慢と善良」もヒットした。

当中間連結会計期間の「メディア・コンテンツ事業」に係る売上高は111,210百万円で前年同期比2,086百万円(△1.8%)の減収、セグメント損失は3,073百万円(前年同期のセグメント損失は1,052百万円)となった。

 

[不動産事業]

中之島フェスティバルタワー・ウエストと東京銀座朝日ビルに入る両ホテルは、インバウンド客の増加等により客室単価や稼働率がコロナ禍前を超えるなど好調だった。オフィス賃貸では、㈱朝日ビルディングと連携したテナントの館内増床や新規誘致などリーシング活動の強化で、入居率の維持向上に取り組んでいる。

当中間連結会計期間の「不動産事業」に係る売上高は19,740百万円で前年同期比3,373百万円(20.6%)の増収、セグメント利益は3,729百万円で同629百万円(20.3%)の増益となった。

[その他の事業]

その他の事業には、文化事業、人材ビジネス、保険代理業などを含んでおり、当中間連結会計期間の「その他の事業」に係る売上高は1,232百万円で前年同期比30百万円(△2.4%)の減収、セグメント損失は46百万円(前年同期のセグメント損失は3百万円)となった。

 

当中間連結会計期間末の総資産は572,276百万円で、前連結会計年度末比で10,205百万円(1.8%)の増加となった。これは、投資有価証券が229,120百万円と同8,711百万円(4.0%)増加し、現金及び預金が102,222百万円と同6,583百万円(6.9%)増加したことなどの要因による。負債合計は197,162百万円で、同535百万円(△0.3%)減少した。これは、繰延税金負債が16,196百万円と同1,472百万円(10.0%)増加した一方、退職給付に係る負債が95,228百万円と同2,951百万円(△3.0%)減少したことなどの要因による。純資産合計は375,113百万円で、同10,741百万円(2.9%)増加した。その結果、当中間連結会計期間末の自己資本比率は64.1%となり、前連結会計年度末に比べて0.8ポイント増加した。

 

② キャッシュ・フローの状況

連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)の当中間連結会計期間末の残高は81,895百万円となり、前連結会計年度末に比べて18,840百万円(29.9%)増加し、前中間連結会計期間末に比べて11,382百万円(16.1%)増加した。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における営業活動により得られた資金は6,109百万円となり、前年同期に得られた資金から2,597百万円(74.0%)増加した。これは、税金等調整前中間純利益が前年同期比4,551百万円増加したことなどの要因による。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における投資活動により得られた資金は13,630百万円となり、前年同期比6,988百万円(105.2%)の増加となった。これは、有形固定資産の売却による収入が同5,246百万円増加したことなどの要因による。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における財務活動により支出した資金は1,042百万円となり、前年同期比104百万円(9.1%)の減少となった。これは配当金の支払が同64百万円減少したことなどの要因による。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

   当中間連結会計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

 

[メディア・コンテンツ事業]

主力商品

部数(千部)

前年同期比(%)

発行回数(回)

朝日新聞朝刊

3,662

△11.6

177

朝日新聞夕刊

1,100

△12.6

149

 

(注)  部数は発行回数1回当たりの部数である。朝日新聞名古屋本社版夕刊は4月28日で休止した。週刊朝日は5月末で休刊した。

 
[不動産事業]

不動産事業は受注生産形態をとらないため、生産規模及び受注規模を金額、あるいは数量で示すことはしていない。

 

[その他の事業]

その他の事業は、文化事業・電波事業・その他事業であり、広範囲かつ多種多様であるため、生産規模及び受注規模を金額、あるいは数量で示すことはしていない。

 

b. 受注実績

[メディア・コンテンツ事業]

  新聞については、主に新聞販売店を経由した読者からの受注部数と、即売スタンドでの販売見込部数を生産・販売している。出版物については、主に書店または即売スタンドでの販売見込部数を生産している。

 

c. 販売実績

   当中間連結会計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

メディア・コンテンツ事業

111,210

△1.8

不動産事業

19,740

20.6

その他の事業

1,232

△2.4

合計

132,182

1.0

 

(注)  セグメント間取引については相殺消去している。

 

 

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものである。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当中間連結会計期間の経営成績等は、「財政状態及び経営成績の状況」で触れたとおり増収となり、営業利益と経常利益は減益だったが、親会社株主に帰属する中間純利益で増益を確保した。前事業年度の有価証券報告書の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」、「事業等のリスク」に記載したように、既存メディア離れ、新聞広告市場の縮小など経営環境の変化への対応を重要課題として認識している。「中期経営計画2023」では、21年度からの3年間を構造改革に集中的に取り組む期間とし、持続可能な成長軌道への道筋をつけることを目指す。23年8月には朝日新聞グループとしての「パーパス・ビジョン」を定め、24年度~26年度の「中期経営計画2026」の策定にも着手している。

 

主なセグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。

[メディア・コンテンツ事業]

主力事業である朝日新聞を中心としたメディア・コンテンツ事業は、新聞販売部数の減少に加え、読者層の高齢化や広告媒体の多様化などにより、新聞広告市場や折込広告市場の縮小が続き、売上高の減少傾向が続く。ウクライナ情勢に端を発した原燃料費の高騰により、新聞用紙などの諸資材が大幅に値上がりした。当社では、経費削減に取り組みつつも、新聞を安定発行するために本紙購読料を23年5月より改定した。また、4月末で愛知、岐阜、三重の3県での夕刊発行を休止した。引き続き、プリントメディア事業の徹底した合理化と長期的な部数減を見据えた体制整備を進めていく。

 

[不動産事業]

大阪市北区のツインタワー「中之島フェスティバルシティ」や東京都中央区の「東京銀座朝日ビルディング」、同千代田区の「有楽町センタービル(有楽町マリオン)」など、主要な賃貸物件は、順調に稼働している。安定収益の柱として不動産事業の重要性はますます高まっており、広島の基町相生通地区再開発事業や札幌の北5西1・西2地区再開発事業への参画など新たな収益源となる計画の推進や保有物件の価値最大化などに積極的に取り組む。また、不動産系グループ企業と緊密に連携しつつ、それぞれの役割に沿って、さらに業務の高度化、効率化を推進していく。

なお、旧広島朝日ビル跡地を含む広島の基町相生通地区再開発事業は、広島市より2023年10月30日付で権利変換計画の認可が下りた。事業はUR都市機構や当社グループを施行者とする体制で取り組んでいる。高層棟、変電所棟、市営駐輪場棟の3棟を建設する計画で、当社は地権者に与えられる権利床及び事業費に充当するために購入する保留床として高層棟のオフィスなどを取得する。2023年12月に既存建物の解体工事に着手し、2024年10月に新築着工、高層棟の竣工は2027年度、事業全体の終了は2029年度の予定。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

資本の財源については、独立しかつ安定した経営基盤のもとで企業活動を継続していくことを基本としており、主として営業活動からのキャッシュ・フローを源泉にしている。

また、資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要金融機関と提携しており、現在必要とされる資金水準を十分満たす流動性を保持していると考えている。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について変更は行っていない。