売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E00872 Japan GAAP

売上高

1.02兆 円

前期

9,260.5億 円

前期比

110.0%

時価総額

3,000.0億 円

株価

1,515.5 (04/25)

発行済株式数

197,953,707

EPS(実績)

-89.39 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

743.9万 円

前期

739.4万 円

前期比

100.6%

平均年齢(勤続年数)

45.1歳(20.8年)

従業員数

2,874人(連結:22,484人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社グループは当社、子会社144社及び関連会社25社で構成されています。その事業は高機能材料、複合成形材料の製造・販売等を行うマテリアル事業領域と、医薬品と医療機器の製造・販売及び在宅医療サービス等を行うヘルスケア事業領域と、繊維製品等の製造・販売を行う繊維・製品事業及びシステムソフトウェア開発等の情報関連事業を行うIT事業を中心とし、その他に機器の製造・販売・メンテナンス、再生医療等製品及び埋込型医療機器等の開発・製造・販売等を展開しています。

 

当社グループでは、「マテリアル」「ヘルスケア」「繊維・製品」「IT」の4つを報告セグメントとしています。

各セグメントにおける、主要な事業内容ならびに主な会社は次のとおりであり、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のセグメントと一致しています。

 

セグメント

事業内容

構成会社

マテリアル

高機能材料事業

アラミド繊維、樹脂、炭素繊維等の製造・販売

当社

Teijin Aramid B.V.

Teijin Polycarbonate China Ltd.

Teijin Corporation (Thailand) Limited

等 子会社30社、関連会社4社

複合成形材料事業

複合成形材料の製造・販売

 

当社

Teijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.

Teijin Automotive Technologies (Tangshan) Co., Ltd.

等 子会社27社

ヘルスケア

医薬品及び医療機器の製造・販売、

 在宅医療サービス、その他ヘルスケア関連製品の製造・販売

当社

帝人ファーマ(株)

帝人ヘルスケア(株)

等 子会社13社、関連会社4社

繊維・製品

 繊維製品等の製造・販売、ポリエステル繊維及び織物の製造・販売等

帝人フロンティア(株)

南通帝人有限公司

Teijin Polyester (Thailand) Limited

J.H. Ziegler GmbH

等 子会社42社、関連会社7社

IT

 情報システムの運用・開発・メンテナンス及び電子コミック配信サービス

インフォコム(株)

等 子会社14社、関連会社2社

その他

 エンジニアリング業務及びプラント・機器の設計・販売

帝人エンジニアリング(株)

等 子会社6社

 再生医療等製品及び埋込型医療機器等の開発・製造・販売

(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリング

帝人ナカシマメディカル(株)

等 子会社4社

 その他

帝人エージェンシー(株)

等 子会社8社、関連会社8社

 

以上に述べた「事業の内容」を概要図で示すと次のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

(注)連結対象会社は、連結子会社98社と持分法適用会社が65社です。

23/06/21

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

2022年度における世界経済は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による社会・経済活動の制限による影響から正常化に向けて持ち直しの動きが見られたものの、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの長期化の懸念や原燃料価格の高騰、サプライチェーンの停滞、労働力不足、インフレの加速等によるグローバル経済の後退懸念など、厳しい外部環境が継続し、先行きの不透明感が増大しました。

 

帝人グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンのもと、2020年度から3か年の中期経営計画期間を「成長基盤の確立期」と位置づけ、各施策を推進してまいりました。最終年度である当期においては、マテリアル事業領域ではオランダでパラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資を進めたほか、2021年度に立ち上げた自動車向け複合成形材料の北米テキサス新工場や北米炭素繊維新工場の安定運転と稼働率向上を推進しました。また、ヘルスケア事業領域では2021年度に武田薬品工業(株)から販売権を取得した糖尿病治療剤の販売の維持拡大を図りました。しかしながら、外部環境激変の中、マテリアル事業領域での大幅な収益性悪化などにより、中期経営計画2020-2022で掲げた財務目標値はすべて未達となりました。このような状況を受け、帝人グループは2023年2月に「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」を公表し、将来の成長回帰に向けて、収益性改善を最優先課題として注力することを宣言しました。このような状況のもと、帝人グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高1兆188億円(前期対比10.0%増)、営業利益129億円(同70.9%減)、経常利益91億円(同81.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失177億円(前期 親会社株主に帰属する当期純利益232億円)となりました。

                                           (単位:億円)

 

156期

(2022年3月期)

157期

(2023年3月期)

増減額

増減率

売上高

9,261

10,188

927

10.0%

営業利益

442

129

△313

△70.9%

経常利益

497

91

△406

△81.7%

親会社株主に帰属する

当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

232

△177

△409

-

 

 

 

報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。                 (単位:億円)

 

156期

(2022年3月期)

157期

(2023年3月期)

増減額

増減率

マテリアル

3,851

4,560

709

18.4%

ヘルスケア

1,751

1,524

△227

△13.0%

繊維・製品

2,825

3,218

393

13.9%

IT

538

580

43

7.9%

その他

296

305

9

3.1%

合計

9,261

10,188

927

10.0%

マテリアル

△57

△204

△147

-

ヘルスケア

433

235

△198

△45.7%

繊維・製品

56

100

43

76.8%

IT

97

81

△16

△16.6%

その他

△23

△24

△1

-

消去又は全社

△64

△59

5

-

合計

442

129

△313

△70.9%

 

マテリアル事業領域

:[売上高 4,560億円(前期比18.4%増)、営業損失 204億円(前期 営業損失 57億円)]

売上高は4,560億円と前期比709億円の増収、営業損失は204億円と前期比147億円の減益となりました。

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,524億円(前期比13.0%減)、営業利益 235億円(同45.7%減)]

売上高は1,524億円と前期比227億円の減収、営業利益は235億円と前期比198億円の減益となりました。

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,218億円(前期比13.9%増)、営業利益 100億円(同76.8%増)]

売上高は3,218億円と前期比393億円の増収、営業利益は100億円と前期比43億円の増益となりました。

 

IT事業

:[売上高 580億円(前期比7.9%増)、営業利益 81億円(同16.6%減)]

売上高は580億円と前期比43億円の増収、営業利益は81億円と前期比16億円の減益となりました。

 

その他

:[売上高 305億円(前期比3.1%増)、営業損失 24億円(前期 営業損失 23億円)]

売上高は305億円と前期比9億円の増収、営業損失は24億円と前期比1億円の減益となりました。

 

2)財政状態

 

         ※画像省略しています。

当期末の総資産は、前期末に比べて349億円増加し、12,424億円となりました。流動資産は、現金及び預金や売掛債権、棚卸資産、その他流動資産等の増減により、前期末に比べて413億円増加しました。固定資産は、償却を上回る設備投資により有形固定資産が323億円増加した一方で、主にTeijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.への出資に伴い計上したのれんを全額減損したことによりのれんが159億円減少したことや、主に武田薬品工業(株)からの2型糖尿病治療剤の販売権の償却により販売権が149億円減少しており、前期末に比べて65億円減少しました。

負債は、前期末に比べて486億円増加し、7,913億円となりました。主に資金需要の増加により有利子負債が443億円増加しました。

純資産は、前期末に比べて137億円減少し、4,511億円となりました。主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加がある一方、主に親会社株主に帰属する当期純損失177億円の計上により減少しました。

これらの結果、D/Eレシオは1.2倍、自己資本比率は34.2%となりました。(前期末 D/Eレシオ1.1倍、自己資本比率36.4%)

なお、当期末のBS換算レートは、134円/米ドル、146円/ユーロ、1.09米ドル/ユーロ(前期末122円/米ドル、137円/ユーロ、1.12米ドル/ユーロ)となっています。

 

② キャッシュ・フローの状況

※画像省略しています。

 

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本の増加による支出等があった一方、非資金性費用を除いた利益により、合計で551億円の収入(前期は897億円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券及び有形固定資産の売却による収入があった一方、アラミド事業と複合成形材料事業の生産能力増強を目的とした設備投資の実施等により、524億円の支出(前期は1,984億円の支出)となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは27億円の収入(前期は1,087億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当の支払があった一方、主に短期・長期借入金の借入による収入により、72億円の収入(前期は711億円の収入)となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、当期における最終的な現金及び現金同等物の増加額は96億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

また、帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

1) 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

2) 棚卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

3) 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

4) のれんを含む固定資産の評価

帝人グループは、のれんを含む固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」、IFRS及び米国会計基準に基づき、減損処理の要否を検討しています。事業損益見込みの悪化や事業撤収の決定等があった場合には、将来キャッシュ・フローや回収可能価額を合理的に見積り、減損損失を計上しています。

5) 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当期の経営成績は、売上高が前期対比で10.0%増の1兆188億円となり、営業利益は同70.9%減の129億円となりました。経常利益は前期対比81.7%減の91億円、減損損失の計上や税効果が認識できない海外子会社の赤字幅拡大等に伴う税負担率の上昇により、親会社株主に帰属する当期純損失は177億円(前期は232億円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。営業利益に関して、マテリアル事業領域では、原燃料価格高騰を販売価格改定でオフセットしたものの、米欧拠点での生産トラブルや労働力不足、中国の経済減速等の影響により減益となりました。ヘルスケア事業領域においても、痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク」の後発品参入による販売数量の減少や、薬価改定影響等により減益となりました。繊維・製品事業は、販売が堅調に推移し増益となりましたが、IT事業は、電子コミックサービスにおける広告費増等により減益となりました。

その結果、収益性を示すROEは中期経営計画最終年度(2022年度)目標(10%以上)を下回る△4.1%、営業利益ROICについても目標(8%以上)を下回る1.6%となり、キャッシュ創出力を示すEBITDAについても目標(1,500億円)を下回る878億円となりました。

 

なお、当連結会計年度より、帝人ナカシマメディカル(株)及び帝人メディカルテクノロジー(株)を中心に展開している埋込型医療機器事業については、全社的・長期的視点で育成・強化を図る新規事業と位置づけ、「ヘルスケア」セグメントから「その他」セグメントへ変更しています。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で実施しています。

 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりです。

 

マテリアル事業領域

:[売上高 4,560億円(前期比 18.4%増)、営業損失 204億円(前期 営業損失57億円)、EBITDA 165億円(同 33.9%減)]

原燃料価格高騰を販売価格改定でオフセットし、また為替影響による収益押し上げ効果もあったものの、米国拠点での設備故障や欧州拠点での工場火災による一時的な生産への影響、米欧での慢性的な労働力不足による生産性悪化や、中国でのロックダウンとその後の経済減速による工場稼働率の低下等が利益に影響しました。

売上高は4,560億円と前期対比709億円の増収(18.4%増)、営業損失は204億円と前期対比147億円の損失の増加となりました。EBITDAは前期対比85億円減の165億円となり、営業利益ROICは△5%となりました。

 

アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、旺盛な需要が継続しましたが、第3四半期に発生した原料工場の火災による生産ラインの休止及び労働力不足に伴う生産性悪化等により販売量が減少しました。また、欧州の天然ガス価格高騰を背景とした燃料コストの上昇を受けて、販売価格の改定を進めましたが、採算性は悪化しました。なお為替影響による収益押し上げ効果は一定程度ありました。結果、前期対比増収・減益となりました。

 

樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国におけるCOVID-19の影響による顧客での稼働減少及び中国を含む世界経済減速の影響を受けて、販売量が減少しました。結果、前期対比減収・減益となりました。

 

炭素繊維事業分野では、用途全般において炭素繊維「テナックス」の需要が堅調に推移する中、航空機向けの販売量が増加したことにより、販売構成が改善しました。また、主原料の価格高騰を受けて、販売価格の改定を進めました。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

電池部材事業分野では、前期に引き続き、リチウムイオンバッテリー用セパレータ「リエルソート」がスマートフォン向けの販売量を伸ばしました。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

複合成形材料事業分野では、Teijin Automotive Technologies*(米)において、主要顧客であるOEMで半導体などの部品不足が改善したことに加え、新大型プログラムの販売が本格化したことで、販売量が増加しました。また、原材料価格の高騰に対応し、販売価格改定交渉を進め、複数のOEMとの価格改定を実現しました。一方で、米国の一部工場で発生した成形工程の設備故障により、一時的な生産性悪化や追加費用が発生したほか、米国の労働市場参加率は徐々に改善傾向にあるものの、正常化には至らず労働需給逼迫による労働力不足が継続しました。結果、前期対比増収・減益となりました。

   * 自動車向け複合成形材料事業のグローバル事業ブランド

 

マテリアル事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

ヘルスケア事業領域

: [売上高 1,524億円(前期比 13.0%減)、営業利益 235億円(同 45.7%減)、EBITDA 496億円(同 28.7%減)]

医薬品「ソマチュリン*1」や「ゼオマイン*2」は順調に販売量を拡大し、在宅医療機器のレンタルは堅調に推移しました。一方で、医薬品「フェブリク」は、後発品参入により販売量が減少し収益に影響しました。

売上高は1,524億円と前期対比227億円の減収(13.0%減)、営業利益は235億円と前期対比198億円の減益(45.7%減)となりました。EBITDAは前期対比200億円減の496億円となり、営業利益ROICは13%となりました。

 

医薬品分野では、「フェブリク」の後発品が2022年6月より参入したことにより、販売量が減少しました。さらに、長期収載品を中心とした2022年4月の薬価改定が収益に影響しました。一方で、先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン*1」や上下肢痙縮治療剤「ゼオマイン*2」が順調に販売量を拡大しました。また2023月1月には、骨粗鬆症治療剤「オスタバロ1.5mg」を上市しました。さらに2023年3月に腎疾患を対象とした自社創製低分子化合物について、Novartis AGと独占的ライセンス契約を締結し、契約一時金として30百万米ドルを取得しました。

*1 ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

*2 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH & Co, KGaA(独)の登録商標です。

 

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、医療機関におけるCOVID-19向け病床確保のための入院抑制・在宅療養へのシフトが継続したものの、COVID-19による酸素濃縮器の導入は落ち着き、レンタル台数は前期並みの水準となりました。また、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場では、COVID-19 第8波等の影響により検査数の回復はやや鈍化したものの、レンタル台数の増加が継続しました(前期末対比約5%増)。

 

ヘルスケア事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,218億円(前期比 13.9%増)、営業利益 100億円(同 76.8%増)、EBITDA 169億円(同 39.4%増)]

売上高は3,218億円と前期対比393億円の増収(13.9%増)、営業利益は100億円と前期対比43億円の増益(76.8%増)となりました。EBITDAは前期対比48億円増の169億円となり、営業利益ROICは7%となりました。

衣料繊維は、欧米や中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移しました。また、行動制限の緩和により国内でも衣料品の販売が回復傾向となりました。産業資材では、自動車関連部材、人工皮革、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維の販売が堅調に推移しました。原燃料価格や物流費の高騰、円安影響による仕入れコストの上昇が業績に影響しましたが、繊維原料・テキスタイルの販売価格改定を進めました。

 

IT事業

:[売上高 580億円(前期比 7.9%増)、営業利益 81億円(同 16.6%減)、EBITDA 88億円(同 18.6%減)]

売上高は580億円と前期対比43億円の増収(7.9%増)、営業利益は81億円と前期対比16億円の減益(16.6%減)となりました。EBITDAは前期対比20億円減の88億円となり、営業利益ROICは53%となりました。

ネットビジネス分野では、電子コミックサービスにおいて広告宣伝活動の強化を継続した結果、販売は好調に推移しました。ITサービス分野では、ヘルスケア事業にCOVID-19の影響が残りましたが、概ね堅調に推移しました。

 

その他

: [売上高 305億円(前期比 3.1%増)、営業損失 24億円(前期 営業損失23億円)]

売上高は305億円と前期対比9億円の増収(3.1%増)、営業損失は24億円と前期対比1億円の損失の増加となりました。

人工関節・吸収性骨接合材等の埋込型医療機器事業は、2022年2月のKiSCO(株)からの外傷・脊椎事業買収と人工関節の販売好調により、前期対比増収となりました。

再生医療事業の(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングにおいては、再生医療受託事業の売上が拡大した一方、再生医療製品事業と研究開発支援事業の売上が減少し、前期対比減収となりました。なお、2023年3月に、白斑の治療を目的とする新製品として、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」の製造販売承認を取得しました。

 

b) 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の投資があります。これらに必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債発行等により資金調達を行っているほか、複数の金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越枠を含む十分な借入枠を有しています。このように、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しており、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しています。

また、帝人グループではグループ内余剰資金を活用するため、日米欧中の各拠点においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。資金調達にあたっては、D/Eレシオ0.9を目安に財務体質の健全性を維持しながら、資金需要の見通しや金融情勢に応じて最適な手段を選択しています。なお、資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については長期調達するとともに、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2020年2月に公表した中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』では、前中期経営計画に引き続き、投資効率を測るための指標としてROEと営業利益ROICを重視するとともに、効率だけでは無く稼ぐ力を測るための指標としてEBITDAも重視してまいりました。中期経営計画においては、最終年度である2022年度でROEは10%以上、営業利益ROICは8%以上、またEBITDAは1,500億円という目標を掲げていました。未来の社会において重要な製品・サービスとなる事業分野、未来のキャッシュの創出源となる事業に育成・拡大させていく事業分野を「将来の収益源育成:Strategic Focus」、既にキャッシュを創出しており、さらに拡大させていく事業分野を 「利益ある成長:Profitable Growth」とし、ポートフォリオの変革としてStrategic Focus分野への積極投資を進めました。

 

しかしながら最終年度となる当期においては、ROEは△4.1%、営業利益ROICは1.6%、EBITDAは878億円と中期経営計画で掲げていた目標を全て下回る水準となりました。EBITDAの中期経営計画目標未達の主な要因として、自動車・航空機向け用途を重点市場とするマテリアル事業領域ではCOVID-19による世界経済の混乱により、航空機向けの炭素繊維需要が影響を受けたことに加え、複合成形材料事業における労働需給逼迫による労働力不足に伴う収益性改善遅れや設備故障による一時的な生産性悪化等、またアラミド事業における欧州の天然ガス価格高騰によるコスト増、さらに工場停電や工場火災等による販売可能在庫不足等の影響を大きく受けました。またヘルスケア事業領域では、武田薬品工業(株)から販売承継した糖尿病治療薬の販売が大きく貢献する一方で、M&Aの実施を含む新事業の収益化遅れ等の影響がありました。このような状況を背景とし、当社経営に対する市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio: 株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。

 

また、各種指標の推移は以下のとおりです。

 

第153期

(2019年3月期)

第154期

(2020年3月期)

第155期

(2021年3月期)

第156期

(2022年3月期)

第157期

(2023年3月期)

ROE(%)

11.2

6.3

△1.7

5.5

△4.1

営業利益ROIC(%)

9.3

8.7

8.6

5.5

1.6

EBITDA(億円)

1,076

1,072

1,068

1,130

878

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

・営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

※投下資本・・・純資産+有利子負債-現金及び預金

・EBITDA:営業利益+減価償却費(のれんを含む)

 

2023年度は、2023年2月に公表した『帝人グループ 収益性改善に向けた改革』のとおり、将来の成長回帰に向けて、収益性改善を最優先課題として取り組んでまいります。経営判断・実行の迅速化を促すために変革した新経営体制のもと、課題3事業として掲げた複合成形材料、アラミド、ヘルスケアを中心に収益性改善に向けた取り組みを進め、2024年度に、資本効率も意識した事業ポートフォリオ再構築の検討を踏まえた新中期経営計画の公表を予定しています。2023年度の経営指標の見通しは、ROE3%、営業利益ROIC4%としており、いずれも2022年度を上回る見込みです。なお、2023年度は、全社として収益性改善に注力する方針のもと、より営業利益向上の意識を高めるために、償却費増加影響を受けないEBITDAから、営業利益の目標値を重視していきます。『帝人グループ 収益性改善に向けた改革』を着実に実行することで、PBRの改善も図っていきます。

 

 

セグメント別の営業利益ROICの見通しは以下のとおりです。

 

営業利益ROIC(2023年度見通し:2023年5月11日公表)

 

2022年度

2023年度

見通し

(対2022年度)

マテリアル

△5%

 3%

+8%

ヘルスケア

13%

10%

-3%

繊維・製品

7%

 7%

-0%

IT

53%

66%

+14%

その他

-

-

-

合計

1.6%

4%

+3%

 

 

また、中期経営計画2020-2022では、持続的な成長基盤の確立やESG観点を踏まえ、役員の業績連動報酬の評価指標の一部として、ポートフォリオ変革の達成度(Stragegic Focus分野でのEBITDA割合)及び女性役員と非日本人役員の人数目標といった非財務KPIを設定し、各種施策の積極的な推進を図ってまいりましたが、いずれも目標を下回る水準となりました。

ポートフォリオ変革の達成度については、2022年度時点でEBITDAに占めるStrategic Focus分野の割合を15%とする目標値を掲げましたが、マテリアル事業におけるStrategic Focus分野である航空機向けの炭素繊維需要が影響を受けたこと、複合成形材料事業における収益性の悪化、M&Aの実施を含むヘルスケア新事業における収益化遅れを背景として未達となりました。女性役員及び非日本人役員の人数目標については、2023年4月時点でいずれも6名という人数目標を掲げていましたが、「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」における経営体制の変革により、役員数を半減したことも要因となり、人数目標が未達となりました。

2023年度は、自社グループCO2排出量、全労働災害度数率、Diversity & Inclusion、従業員満足度を役員の業績連動報酬の非財務KPIとして設定し、サステナビリティの推進を動機付けています。