E05231 Japan GAAP
前期
204.7億 円
前期比
96.3%
株価
185 (04/19)
発行済株式数
18,504,000
EPS(実績)
11.61 円
PER(実績)
15.94 倍
前期
505.9万 円
前期比
102.1%
平均年齢(勤続年数)
43.9歳(14.1年)
従業員数
527人(連結:568人)
当社グループは、以下のとおり、当社、連結子会社8社、持分法適用関連会社1社並びに非連結・持分法非適用子会社1社より構成されております。
当社は、「プロフェッションの養成」を経営理念として社会人、大学生を対象に資格教育、実務教育を核とした人材育成事業を展開しております。個人教育事業に属する(株)TAC総合管理は、当社が賃借する教室用ビルの契約・メンテナンス業務等を一括管理することにより効率的な運営管理を行います。大連オペレーションセンターは、当社の個人教育事業に係る事務・教材視聴チェックやホームページ作成更新作業等を行います。(株)オンラインスクールは、スマートフォン・タブレット等を用いて資格の学習ができる新しいWeb講座を提供するとともにTACグループにおいて使用するシステムの内部開発業務を行っております。法人研修事業に属する(株)LUACは、保険関係の企業研修事業に特化して展開するために設立されました。(株)早稲田経営出版は、2009年9月に(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から「Wセミナー」ブランドの資格取得支援事業及び出版事業を譲り受けるに際して、「Wセミナー」ブランドの出版事業を行うために吸収分割によって設立されました。(株)TACプロフェッションバンクは、主に会計系人材の人材紹介・派遣・求人広告事業を行っております。(株)医療事務スタッフ関西及び(株)クボ医療は、2014年6月に買収した関西に本社を置く子会社であり、主に医療系人材の人材紹介・派遣・求人広告事業を行っております。また、持分法適用会社である(株)プロフェッションネットワークは、(株)清文社と合弁で設立しており、当社資格講座の合格者・学習経験者等の実務家向けに実務情報誌を発行する事業を行っております。泰克現代教育(大連)有限公司は中国資本との合弁会社であり、中国の人材が進出した日本企業で働く場合の日本式の簿記・情報処理教育を企業研修の形で提供する事業を行っております。
当社グループの事業内容を種類別セグメントで示すと「個人教育事業」、「法人研修事業」、「出版事業」及び「人材事業」となっております。当社グループの事業内容及び当社と子会社の当該事業に係わる位置付けは次のとおりであります。
当社は、公認会計士、税理士をはじめとして不動産鑑定士、社会保険労務士、証券アナリスト、情報処理技術者、米国公認会計士等の資格試験に対する受験指導を行っており、数多くの試験合格者を世に輩出してまいりました。そして、上記各資格講座の合格実績を背景に、「資格の学校TAC」として個人教育事業を行っております。資格講座は「教室・ビデオブース講座」、「DVD通信講座」、「Web通信講座」及び「資料通信講座」にて実施しており、講師が作成する独自のテキストを使用しております。そして、長年の受験指導により蓄積された社会科学の分野を網羅する教育コンテンツは、当社の貴重な財産となっております。また、当社の販売ネットワークの構築にも力を入れており、全国の大学・書店と販売提携をしております(2023年3月末現在提携大学生協314大学468店舗、提携書店38書店122店舗)。
当社は、法人研修事業として、企業、大学、専門学校、会計事務所等に対して資格取得研修や実務研修等の社員研修の実施や自己啓発講座の提供、専門学校等への教材提供とコンサルティング、提携校の展開、ビジネススクールや大学内セミナー、国・自治体等からの委託訓練を実施しております。また、情報処理・IT関連の資格試験の取得指導(マイクロソフトオフィス スペシャリスト試験、オラクル認定Java等)及びIT関連の国際資格の導入と普及に努めております。現在、米国CompTIA(コンピューティング技術産業協会)主催のA+(エープラス)試験、Network+(ネットワークプラス)試験、Server+(サーバープラス)試験及びSecurity+(セキュリティプラス)試験等の普及に努め、日米の情報技術格差の溝を埋める役割を果たしております。
当社及びW出版は、個人教育事業及び法人研修事業で展開している資格講座・実務研修の教育コンテンツを活かし、「啓蒙書」、「入門書」、「受験用書籍」、「実務書」等のさまざまなラインナップを取り揃えて出版事業を行っております。具体的には、合格の秘訣シリーズ、過去試験問題シリーズ等のシリーズ物として、出版物を通してその指導ノウハウを広く普及することを目的としております。2023年3月末現在の稼働点数は「TAC出版」ブランドで1,019点、「Wセミナー」ブランドで180点、合わせて1,199点にのぼります。
当社の100%子会社である(株)TACプロフェッションバンクにおいて、人材紹介・派遣事業及びインターネットによる求職・求人Webサイトの運営を展開しており、当社でスキルアップした優秀な人材に対して多くのキャリアアップの機会を提供し、より有利な就職環境の支援を行っております。当社の人材ビジネスの強みは、資格取得を目指す20万人超の受講者が存在することであります。また、(株)医療事務スタッフ関西及び(株)クボ医療では、医療系人材の人材紹介・人材派遣事業等を行っております。
当社グループの事業内容は社会科学全般に及んでおり、これを分野別に分類すると次のとおりであります。
当連結会計年度の現金ベース売上高は192億9千5百万円(前年同期比8億5千万円減、同4.2%減)、前受金調整後の発生ベース売上高は、前受金調整額が4億1千6百万円の戻入(前年同期は3億2千5百万円の戻入)となったことで、197億1千1百万円(同7億6千万円減、同3.7%減)となりました。
売上原価は119億7千9百万円(同6億7千8百万円減、同5.4%減)、販売費及び一般管理費は74億1千3百万円(同1千2百万円増、同0.2%増)となりました。これらの結果、営業利益は3億1千9百万円(同9千4百万円減、同22.8%減)となりました。
営業外収益に、受取利息8百万円、受取保険金2千5百万円等、合計4千9百万円、営業外費用に、支払利息3千4百万円、支払手数料7百万円等、合計4千3百万円を計上した結果、経常利益は3億2千4百万円(同1億1千7百万円減、同26.7%減)となりました。
特別損益は、特別損失として減損損失1千5百万円、関係会社出資金評価損6百万円等を計上しました。これらの結果、当期純利益は2億1千6百万円(同2億3千万円減、同51.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2億1千4百万円(同2億3千万円減、同51.7%減)となりました。
当連結会計年度における当社グループの各セグメントの業績(現金ベース売上高)及び概況は、次のとおりであります。なお、当社ではセグメント情報に関して「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用し、下記の数表における売上高を、当社グループの経営意思決定に即した“現金ベース”(前受金調整前)売上高で表示しております。
現金ベース売上高は、連結損益計算書の売上高とは異なりますので、ご注意ください。詳細につきましては、注記事項「セグメント情報等」をご覧ください。
(注) 各セグメントの売上高にはセグメント間の内部売上高を含めて記載しております。
個人教育事業は、コロナ禍が長く続いたことによる社会活動全般への影響や民間企業における人材不足による採用意欲の高まり等もあり、特に学生を主な受講生とする講座への申し込みが年間を通して低調に推移し、全体として年間を通じた現金ベース売上高は前年を下回りました。講座別では、主力講座の一つである税理士講座は次回試験から受験資格が緩和される等の試験制度改革等もあり年間を通して好調に推移し、前年の売上を上回りました。また、情報処理講座も近年のIT関連需要の増加等により好調だった他、司法書士講座、マンション管理士講座、建築士講座、電気関連講座等も前年の売上を上回りました。一方、学生が主な受講生層である公務員講座及び公認会計士講座は年間を通じて低調に推移した他、簿記検定講座、社会保険労務士講座、宅地建物取引士講座等も前年の売上を下回りました。コスト面では、講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は、110億4千8百万円(前年同期比5.5%減)となりました。これらの結果、個人教育事業の現金ベース売上高は99億7千4百万円(同7.6%減)、現金ベースの営業損失は10億7千4百万円(前年同期は8億9千7百万円の営業損失)となりました。
企業向けの研修は、IT関連の研修需要が好調なこともあり引き続き堅調に推移いたしております。分野別では、企業がDX推進に注力している傾向等もあり情報・国際分野は好調に推移していますが、金融・不動産分野は前年をやや下回りました。大学内セミナーは、大学での対面授業が再開されたことで好調に推移し前年を上回った他、地方の個人が主な顧客となる提携校事業は前年同期比16.3%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同12.9%減、自治体からの委託訓練は同7.3%増となりました。コスト面では、研修に関する講師料や営業に係る人件費等を中心に営業費用が増加し、全体で34億5千7百万円(同3.9%増)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は44億2千3百万円(同1.2%増)、現金ベースの営業利益は9億6千6百万円(同7.4%減)となりました。
当社グループの出版事業は、当社が展開する「TAC出版」及び子会社の(株)早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」(以下、「W出版」)の2つのブランドで進めております。
出版事業は、巣ごもり需要の減少に伴い第2四半期までは低調に推移しておりましたが、第3四半期以降は書店からの注文等が徐々に回復したことで概ね前年並みとなりました。資格試験対策書籍では、TAC出版の税理士、情報処理、社会保険労務士、中小企業診断士等が好調に推移いたしましたが、簿記検定、宅地建物取引士、FP等は低調となりました。その他、行動規制の緩和等によりレジャー需要が回復したこととも相まって、旅行ガイドが好調に推移いたしました。また、W出版では、行政書士、司法書士等の売上が好調に推移いたしました。コスト面では、営業費用全体として32億9百万円(前年同期比5.5%減)となりました。これらの結果、出版事業の売上高は44億2千6百万円(同1.9%減)、営業利益は12億1千6百万円(同9.0%増)となりました。
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、引き続き税理士法人や監査法人、一般企業等における会計系人材の需要が大きく、広告売上及び人材紹介売上が好調に推移したことで、前年の売上を上回りました。(株)医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、2年に1度行われる診療報酬改定による業務量の増加等もありましたが、コロナ関連の業務が減少したことで売上は前年をやや下回る結果となりました。これらの結果、人材事業の売上高は5億1千7百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は7千万円(同6.5%増)となりました。
当社グループの各事業分野の業績及び概況は、次のとおりであります。なお、当社は「収益認識に関する会計基準」等の適用に際し、出版事業における返品の可能性のある取引については予想される返品相当額を売上高から直接控除しております。当該返品相当額は過去の売上高に対する返品実績等に基づいた全体的な見積計算を行っており分野ごとの控除額は把握しておりません。そのため、下表における四半期毎の各分野の売上高を合計した額(下表の「合計」欄に記載の数値)は連結損益計算書における売上高とは一致しませんのでご注意ください。
(注) 主要な相手先別の販売実績等については、当該割合が10%以下のため記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期比3億8千7百万円増加し、61億3百万円となりました。なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは△2億2千4百万円(同6億5千1百万円減少)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(注) フリー・キャッシュ・フローは、以下の計算式を使っております。
フリー・キャッシュ・フロー=親会社株主に帰属する当期純利益+減価償却費(のれん償却費含む)-設備投資額-運転資本増加額-配当金の支払額
なお、運転資本は、売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形で算出しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは同5億1千3百万円減少し、2千8百万円の支出となりました。増加要因の主なものは、その他債権の増減額の減少、移転補償金の受取額の増加等であります。減少要因の主なものは、売上債権の増減額の増加、その他債務の増減額の減少、棚卸資産の増減額の増加等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは同8億5千万円増加し、4億3千6百万円の収入となりました。増加要因の主なものは、差入保証金の回収による収入の増加、差入保証金の差入による支出の減少等であります。減少要因の主なものは、定期預金の預入による支出の増加、有価証券の売却及び償還による収入の減少等であります。
財務活動よるキャッシュ・フローは同5億3千万円減少し、2千1百万円の支出となりました。減少要因の主なものは、長期借入金の借入れによる収入の減少、自己株式の取得による支出の増加等であります。
当連結会計年度末の財政状態は、純資産が62億3百万円(前連結会計年度末比2千8百万円増)、総資産が207億9千5百万円(同5億8千9百万円減)となりました。連結上、増加した主なものは、現金及び預金が同3億8千7百万円増、売掛金が同2億5千3百万円増、返品資産が同2億7千9百万円増、長期預金が同1億円増、長短借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が同2億2百万円増等であります。また、減少した主なものは、未収入金が同7億7千4百万円減、有形固定資産が同1億4千万円減、差入保証金が同5億2千万円減、前受金が同4億6千万円減等であります。
当社グループの個人教育事業及び法人研修事業に関する通学講座の開講地区は、下記のとおり2023年3月末現在、22拠点で展開しております。また、教室数及び座席数はそれぞれ下表に記載の通りとなっております。
また受講者数については次のとおりであります。
当連結会計年度における受講者数は196,706名(前連結会計年度比4.1%減)、そのうち個人受講者数は112,628名(同4.7%減、5,610名減)、法人受講者数は84,078名(同3.3%減、2,895名減)となりました。個人・法人を合わせた講座別ではマンション管理士講座が同13.4%増、建築士講座が同4.3%増、公務員講座(国家総合職・外務専門職)が同7.9%増、情報処理講座が同27.8%増、CompTIA講座が同6.3%増等と受講生が増加した一方、簿記検定講座が同17.6%減、公認会計士講座が同8.2%減、中小企業診断士講座が同7.3%減、宅地建物取引士講座が同10.9%減等と受講者数が減少しました。法人受講者は、通信型研修が同0.3%増、大学内セミナーが同7.0%減、提携校が同8.0%減、委託訓練は前年並みとなりました。
該当事項はありません。
販売実績については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要)」に記載のとおりであります。
当社の提供する資格試験講座においては、原則として受講者の申込時点で講座受講料を全額前納していただいており、受け取った受講料をいったん全額負債としての前受金に計上し、受講期間に応じて受講者にサービスを提供していく都度、月割りで前受金を取崩し売上計上しております。当社の主力である公認会計士・税理士等の難関国家資格講座は、受講期間が1年を超えるものも多く、したがって前受金は1年以上にわたり各月の売上に振り替えられていくことになります。
当社は、資格取得スクールを展開するため多くのビルを賃借しております。貸主からフリーレントを受ける場合、フリーレント期間が長期化し金額的な重要性が増しているため、賃借料の要支払額を賃借期間で按分して会計上の費用として計上しております。
当社は、棚卸資産の評価方法として原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。収益性の低下による簿価切下げ額は、決算日時点におけるテキストや問題集等の教材及び出版物のうち、その後において使用又は販売されることなく最終的に廃棄されることとなる金額の見込額及び出版物の過剰在庫の額であります。最終的に廃棄されることとなる金額の見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の教材及び出版物の制作費用の額に、過去における教材及び出版物の制作費用並びにそれらの廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。また、出版物の過剰在庫の額については、当社が刊行する出版物の性質を考慮し、刊行後1年以上経過した出版物のうち今後の販売見込みを超えて保有している部分を過剰在庫とし簿価の切下げを行っております。
当社では、出版物の返品による廃棄損失に備えるため、返品廃棄損失引当金を計上しております。この返品廃棄損失引当金は、取次店等に対して納品し売上計上した出版物が、その後書店等における売れ残りや汚れ等の理由によって当社に返品され、最終的に当社において廃棄することとなる金額の見込額であります。当該見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の制作費用の額に、過去における出版物の制作費用及び廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。
資産除去債務は本社及び各拠点の建物の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務等であり、当社では、利用実態に応じて賃借物件をグループ化しており、本社グループの賃借期間は23年、各拠点のうち基幹拠点は10年、その他の各拠点については6年等と見積もっております。割引率は、各平均賃借期間に合わせて、それぞれ0.000%~2.280%を使用して資産除去債務の金額を計算しております。
当連結会計年度は、コロナ禍が長く続いたことによる社会経済活動全般への影響や民間企業における人材不足による採用意欲の高まり等もあり、いわゆる巣ごもり需要の反動減や大学生等を主な受講生層とする講座において大きな影響が生じました。資格取得関連事業における外部環境は、資格試験実施団体による試験の中止や延期等もなくなりコロナ禍以前の状況に戻りつつあるものの、コロナ禍の影響による生活環境の変化やライフスタイルの変化等により、落ち着いた環境で資格試験受験のための学習に取り組むことが難しく戸惑う方々や民間企業の採用意欲の高まりを背景に学生の資格取得に費やす学習時間の短期化等、当社の主力事業である個人教育事業は年間を通じて不安定な状況が続きました。
講座別では、主力講座の一つである税理士講座は次回試験から受験資格が緩和される等の試験制度改革等もあり年間を通じて好調に推移し、前年の売上を上回りました。また、情報処理講座も近年のIT関連需要の増加等により好調だった他、司法書士講座、建築士講座、電気関連講座等も前年の売上を上回りました。一方、大学生が主な受講生層となる公認会計士講座や公務員講座においては前年を大きく下回る売上となったことで、個人教育事業における全体的な売上は減少いたしました。
TAC及び早稲田経営出版(W出版)のブランドで行う出版事業は、いわゆる巣ごもり需要の減少に伴い、第2四半期までは低調に推移しておりましたが、第3四半期以降は書店からの注文等が徐々に回復したことで概ね前年並みとなりました。資格試験対策書籍では、TAC出版の税理士、情報処理、社会保険労務士、中小企業診断士等が好調に推移しましたが、簿記検定、宅地建物取引士、FP等は低調となりました。その他、行動規制の緩和等によりレジャー需要が回復したこととも相まって、旅行ガイドが好調に推移いたしました。
法人研修事業及び人材事業の業績については、③及び④に記載の通りです。これらの結果、当社グループの当連結会計年度における現金ベース売上高は192億9千5百万円(前連結会計年度比4.2%減)、前受金調整後の発生ベース売上高は197億1千1百万円(同3.7%減)となりました。
コストについては、売上原価で6億7千8百万円減(同5.4%減)、販売費及び一般管理費で1千2百万円増(同0.2%増)となりました。前連結会計年度は出版事業の売上の増加に伴う売上原価の増加等がありましたが、当連結会計年度は、数年前より取り組んでいる拠点の床面積の減床効果による賃借料の減少等もあって、営業費用全体としては減少したしました。一方で資源価格高騰の影響等で教材・出版物に必要となる紙代、製作費、運送費等の多くの費目での値上がりもあり、全体として利益を押し下げることとなりました。
法人研修事業に係る受講者数、売上高及び営業利益の推移は以下のとおりであります。なお、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用しており、下表では現金ベース(前受金調整前)の売上高及び営業利益で表示しております。
企業向けの研修は、IT関連の研修需要が好調なこともあり引き続き堅調に推移いたしております。分野別では、企業がDX推進に注力している傾向等もあり情報・国際分野は好調に推移していますが、金融・不動産分野は前年をやや下回りました。大学内セミナーは、大学での対面授業が再開されたことで好調に推移し前年を上回った他、地方の個人が主な顧客となる提携校事業は前年同期比16.3%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同12.9%減、自治体からの委託訓練は同7.3%増となりました。コスト面では、研修に関する講師料や営業に係る人件費等を中心に営業費用が増加し、全体で34億5千7百万円(同3.9%増)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は44億2千3百万円(同1.2%増)、現金ベースの営業利益は9億6千6百万円(同7.4%減)となりました。
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、引き続き税理士法人や監査法人、一般企業等における会計系人材の需要が大きく、広告売上及び人材紹介売上が好調に推移したことで、前年の売上を上回りました。(株)医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、2年に1度行われる診療報酬改定による業務量の増加等もありましたが、コロナ関連の業務が減少したことで売上は前年をやや下回る結果となりました。これらの結果、人材事業の売上高は5億1千7百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は7千万円(同6.5%増)となりました。
当社の取扱う資格試験の受験者数は、2010年には310万人にまで増加しましたが、翌年以降急激に減少し、2014年には253万人と5年間で50万人以上受験者数が減少しました。これは簿記検定試験が73万人から53万人にまで減少したほか、情報処理関連の受験者数が約15万人減少したこと等が主な要因です。2015年以降の受験者数は比較的安定的に推移しております。一般的には、不景気時に資格試験受験者は増加する傾向がありますが、2011年3月に発生した東日本大震災や消費税増税、公認会計士試験合格者の未就職者問題など、当社の取扱う各資格試験の受験者数は社会情勢や個々の資格ごとの状況などを反映しながらそれぞれ固有の動きをしており、当社の各講座の売上高及び営業利益も各資格試験の受験者の動向に影響を受けてまいります。
2006年の公認会計士試験制度の改正の前後で、新試験制度に向けた申込み控えや新試験2年目から始まった大量合格傾向、さらには監査法人の採用数減少による未就職者問題などで受験者数が大きく減少し、当社主力の公認会計士講座の売上高は大きく影響を受けました。また、2016年度より段階的に行われた日商簿記検定試験の試験出題区分の改定により、当社の簿記検定講座も教材やカリキュラムの見直しを行い、売上及び費用に影響が生じました。その他の資格においても、合格者数がこれまでと大きく増減するなど試験制度面における大きな状況変化が起こると、当社講座への申し込み状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。このように当社の取り扱う資格試験制度の改正内容、新試験の合格率や難易度等の結果によって、当社の経営成績は大きな影響を受けることがあります。
(4) 財政状態に関する分析
① 全体的な財政状態
当連結会計年度末における全体的な財政状態の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (3) 財政状態」をご参照ください。なお、セグメントごとの財政状態については、資産を事業セグメントに配分していないため記載を省略いたします。
② 前受金について
当社の行う資格取得支援事業は、受講申込者に全額受講料をお支払いいただき(現金ベースの売上)、当社はこれをいったん前受金として貸借対照表・負債の部に計上しておきます。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金を月ごとに売上に振り替えます(発生ベースの売上)。一般的に、現金ベースの売上が拡大していく局面では前受金残高が増大していき、当該会計期間以降、前受金戻入が多額になることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が強まりますが、現金ベースの売上が減少していく局面では前受金残高が減少していき、当該会計期間以降、前受金戻入が少なくなることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が弱まる傾向があります。さらに、現金ベースの売上が減少局面から増加局面に変わる期においては、発生ベースの売上に対する減少効果が増幅される場合があり、発生ベースで計算される当社の業績に影響を与えることになります。前受金及びその他の財政状態の指標の推移は以下のとおりであります。
(注) 自己資本は、純資産の額から非支配株主持分の額を控除して算出しております。
当連結会計年度においては、コロナ禍が長く続いたことによる社会活動全般への影響や民間企業における人材不足による採用意欲の高まり等もあり、特に学生を主な受講生層とする講座へのお申し込みが年間を通じて低調に推移し、全体として年間を通じた現金ベースの売上高は前年を下回り、前受金比率は前連結会計年度比1.4ポイント減少いたしました。自己資本比率は、前受金に見合う資金が徐々に取り崩されて使用され事業活動に必要な自己資本は相対的に低い水準で済むため、相対的に過小である傾向があります。当連結会計年度は2億1千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、自己資本比率は1.0ポイント上昇いたしました。
当社グループの事業所は原則として賃借によっております。したがって、当社は、教育サービスを提供する教室確保のための直営校各拠点を賃借するために、資産の部・固定資産の「投資その他の資産」の区分に差入保証金を多額に計上しております。
賃借契約は原則として2年であり、受講者数の増加に伴い教室スペースの確保のため各拠点の増床や新規拠点の開設を行うと、差入保証金は増加することになります。当連結会計年度においては、一部拠点の床面積の削減等を行いましたが、前受金残高の減少もあり保証金比率は5.8ポイント減少しました。
当社グループの事業所は賃借ビルが多いため、「資産除去債務に関する会計基準」に基づいて、各賃借ビルの原状回復義務等を資産除去債務として負債の部に多額に計上しております。また、同時に資産の部に計上された資産除去債務相当額からは、その関連する有形固定資産の減価償却方法に準じて減価償却費が発生し、毎期計上されます。これにより、将来、原状回復義務を履行した場合の費用又は損失が一時に計上されずに、使用する各期間に費用配分されることになりますが、結果として、各期の減価償却費が押し上げられ固定費負担が重くなっております。なお、当連結会計年度において資産除去債務の見積りの変更を行い、9,986千円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。
前受金が増加していくことは、受講者からの預り資金が増加することを意味します。そのうちの一部は、教室スペース確保のための差入保証金に充当されております。残額は、順次サービスを提供していくため、講師料、賃借料等のほか、教材の印刷費・DVDのダビング費・広告費等に消費されます。そうした消費のタイミングまでは、前受金の一部の資金は現金及び預金又は有価証券等の金融商品で保有されます。当社の有価証券投資の方針は運用規程に定められており、元本確保型の安全性を重視した金融商品であって、かつ、利回りを追求した金融商品を中心に運用しております。過去3期間の運用有価証券の推移は、以下のとおりであります。
「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において説明しておりますとおり、売上高の増加が喫緊の課題であります。そのため、①コロナ後の社会状況の見極め及び個人教育事業の早期回復、②新たな事業領域への挑戦、③株価純資産倍率の改善を中心とした施策に取り組んでまいります。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループの資本の源泉及び資金の流動性については、事業運営上必要となる資金は、手許資金及び金融機関からの借入により調達することを基本としております。
2023年3月末時点における短期及び長期借入金の合計52億9千8百万円のうち17億6千2百万円は本社ビル取得に係る借入金であり、その他は事業運営上必要な設備等の導入や入れ替え、経費の支払いなどの経常的な支払等に必要となる資金に係る借入金であります。
有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末において入手可能な情報に基づき当社グループが合理的であると判断したものであります。したがって、将来や想定に関する事項には不確実性を内在しており、将来における実際の業績は様々な要因により大きく異なる結果となる可能性があります。