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最終更新:

E33880 Japan GAAP

売上高

29.8億 円

前期

14.8億 円

前期比

201.0%

時価総額

206.9億 円

株価

1,375 (05/02)

発行済株式数

15,045,737

EPS(実績)

-38.17 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

671.6万 円

前期

662.6万 円

前期比

101.4%

平均年齢(勤続年数)

36.6歳(3.4年)

従業員数

65人(連結:160人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社は「驚きを心に」をコンセプトとして、人々の生活が便利に楽しくなるように、AIを活用したサービスをBtoCおよびBtoB領域で展開してまいりました。そして、第2四半期連結会計期間において、「より安定的な収益基盤の構築」「社内に蓄積されたAI技術・データの利活用」「様々な業界へのAI・SaaSの更なる展開」等を目的とし、バリオセキュア株式会社(以下、「バリオセキュア」という。)及び株式会社ストラテジット(以下、「ストラテジット」という。)の株式を取得し連結子会社化いたしました。

AI市場は、ディープラーニング等の機械学習(注1)関連アルゴリズムの高度化に加えて、機械学習に利用可能な計算機の能力向上やデータの増加により更なる成長が続いております。また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大も見込まれると認識しております。

特にAI市場においては、OpenAI社(以下、「OpenAI」という。)が2022年11月に大規模言語モデル「ChatGPT-3.5」を、2023年3月には「ChatGPT-4.0」を発表し、新技術への対応は急激なスピードで重要性を増しております。現状、各産業において上記モデルを含む「AIトランスフォーメーション」(以下、「AIX」という。)に関する投資の動きが高まっており、今後も更なる技術革新に伴いAIXに関する需要が拡大していくことが見込まれます。なお当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。

 

図:当社グループが考えるAIトランスフォーメーション(AIX)

※画像省略しています。

 

このように、国内外においてより急激に技術革新やAIXを含むIT関連投資が進む中で、当社グループとしては、グループ内に蓄積されたAI関連技術をフルに利活用することにより、各産業に革新的なソリューションを提供し世界を驚かせるAI革命を目指したいと考えております。具体的には、「AI/DX事業」「AI Security事業」の各セグメントにおいて各企業・業界のAI/DX化推進やグループシナジーの強化に努めていきたいと考えているほか、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAI・SaaS・セキュリティ関連分野において積極的に研究開発を進め、よりスピード感をもって「AI SaaS」戦略としてグループ全体の事業拡大を目指してまいります。その取り組みの一環として、2023年4月に、企業の実業務に適した形で活用できるCustomized ChatGPTをSaaS型で提供する「HEROZ Knowledge System built with ChatGPT」をリリースしたほか、2023年5月にGenerative AIの応用を目的とした専門チーム「LLM Group」を発足し、「AI SaaS」戦略の中核を担うGenerative AI技術の追求に注力しております。

 

 

図:当社が考えるAI SaaSのあるべき姿

※画像省略しています。

 

図:2023年5月にLLM Groupを発足、Generative AIに関する研究を強化

※画像省略しています。

 

なお、当社グループはAI/DX事業、AI Security事業の2セグメントから構成されており、セグメント情報はこれらの区分により開示されています。(当連結会計期間にバリオセキュア・ストラテジットを連結子会社化したことに伴い、セグメントが変更となっております)

 

図:当社グループのセグメントについて

※画像省略しています。

 

(1)AI/DX事業

AI/DX事業は、当社グループに蓄積されたAI・SaaS関連技術・ノウハウ・データ等を活用し、AI関連ソリューションの提供やSaaS導入支援・SaaS間連携開発等を提供することにより各企業・業界のAI/DX化推進を目指すセグメントとなります。当セグメントは、「BtoCサービス」と「BtoBサービス」に分類されます。

 

① BtoCサービス

BtoCサービスは、主に当社の将棋アプリ「将棋ウォーズ」を個人ユーザに提供するサービスとなります。

当社のAI技術は、将棋のような頭脳ゲームAIの開発過程で蓄積されました。具体的には、ビッグデータと呼ばれる、従来のデータ処理技術では処理することが困難であると考えられる膨大なデータ群から、機械学習等の技術に基づいて重要な示唆を導き出す技法になります。例えば、将棋AIの開発においては、過去のプロ棋士の棋譜を活用した機械学習の導入以降、評価関数と呼ばれる局面の優劣を判断する関数の精度が大幅に向上し、コンピューター将棋の棋力の向上が見られました。

 

図:将棋AI開発について

※画像省略しています。

 

上図のとおり、機械学習導入以前の将棋AI開発においては、エンジニアによる手作業、つまり最善と考えられる指し手を規定するためのプログラムを一行ずつ記述することによって、AIを開発することが一般的でした。しかしながら、手作業によるプログラミングでは将棋AIの棋力向上には限界がありました。そこで、より精度が高い将棋AIを高効率に開発するために機械学習が導入されることになりました。機械学習を用いることにより、コンピューターが過去のプロ棋士の棋譜データを自ら反復学習し、パラメーター調整等を自動で行いながら、手作業では記述しきれない精緻なプログラムを構築することが可能となりました。その結果、当社エンジニアが開発した将棋AIが2013年に現役プロ棋士に勝利するなど、AIが日進月歩で進化していることが示されております。また、2015年10月には、情報処理学会から「コンピューター将棋プロジェクトの終了宣言」が出されております。

 

図:将棋AI分野での機械学習の適用とその進歩

※画像省略しています。

 

現在は、このような手法に加えて、深層学習(ディープラーニング)(注2)や強化学習(注3)といった手法を実施しながら、日々AIの精度を向上させております。

当社ではこのAIを活用したアプリケーションを、主に、Google Inc.が運営するGoogle PlayやApple Inc.が提供するApp Store等世界標準のプラットフォーム(注4)を通じてBtoCサービスとして展開しており、主な収益はそれらの有料課金収入となります。またアプリケーションの運営効率化のためにもAIを活用しております。現在提供しているアプリケーションの特徴としては、当社の戦略的な重点分野であるAIの活用に加えて、リアルタイムオンライン対戦技術を活用したサービスとしていることが挙げられます。当社では、同時対戦型アプリケーションの豊富な開発経験をもとに、高品質なリアルタイムオンライン対戦をユーザに提供することが可能となっております。主力アプリケーションである将棋ウォーズは、会員数600万人以上を誇る世界最大のスマートフォン将棋ゲームアプリ(日本将棋連盟公認)で、現代特有のAIとグラフィックや音楽により、ユーザは新しい将棋の世界観の中で全世界のプレイヤーとオンライン同時対戦が可能です。本アプリにおいては、ユニークな課金を行っております。これは、ユーザがオンライン対戦しているときに、アプリ内で「棋神」と呼ばれる、当社エンジニアが開発したAIが、ユーザに代わって指し手を進めてくれる機能であり、5手160円でユーザに販売されております。また、終局後にはAIが算出する評価関数に基づいてプレイ中の分析結果を振り返ることもでき、棋力向上に役立てることができます。日本将棋連盟公認の免状・認定状(六段~5級)申請も可能となっており、将棋の全国大会の予選において使われることもあるほか、民放キー局のAIをテーマにしたテレビドラマで使用される等、各種メディアとの連携を強化しています。なお、将棋ウォーズは2023年4月に通算対局数が8億局を突破するなど、利用拡大が続いているほか、将棋人口最大化の達成に寄与すべく、藤井聡太竜王の名人獲得・七冠達成を受けたキャンペーンにも力を入れております。

また、BtoCサービスにおいては、2022年5月より、当社の将棋AIを活用したプロ仕様の将棋AI研究をサポートするプラットフォーム「棋神アナリティクス」の提供を開始し、2022年12月には同サービスのライト版もリリースいたしました。「棋神アナリティクス」は、ブラウザで手軽に最新の将棋AI解析が出来るサービスであり、高額な初期投資をせずに、誰でも簡単に操作できるUI/UX環境を用意したところに特徴があります。現状、主にプロ棋士・アマチュア強豪を対象にサービス提供を拡大しておりますが、将来的に将棋人口の最大化に寄与できるよう、より多くの将棋ファンに利用されるサービスとなるべくサービス充実に努めてまいります。

そのほか、2023年5月には、世界コンピュータ将棋選手権で当社エンジニアが開発した「dlshogi with HEROZ」が2連覇を果たしました。当社が提供する「棋神アナリティクス」にもこの「dlshogi with HEROZ」を活用・反映し、ユーザがより楽しめるサービスを提供するよう努めております。

 

② BtoBサービス

BtoBサービスは、当社が提供するBtoB向けのAI関連ソリューションサービスに加え、ストラテジットが提供するSaaS導入支援サービス、および、API連携開発サービスが主な内容となります。当社のAI SaaS戦略の中核を担う事業のひとつとして、各産業においてAI革命を巻き起こすべく成長に向けた取り組みを行っております。

当社が提供するBtoB向けのAI開発を支援するソリューションビジネスにおいては、金融、建設、エンターテインメント等の各業界に当社のAI技術を活用してBtoB向けAIを提供しておりますが、精度の高いAIサービスを提供するためには、各業界に蓄積されたデータを継続的に機械学習する必要があります。そのため、当社では積極的にパートナーシップ戦略を実行しております。すなわち、各産業を代表する事業会社と資本を含む提携を実施することで、長期的な視点に立ち、継続的にデータを活用した学習を行うことが可能となっております。

当社では、下記表に掲げた「金融」「建設」「エンターテインメント」を重点領域として設定し、AIシステムの初期設定構築から運用・継続フェーズにおいてAIサービスを提供しております。

 

領域

提供しているAIの内容

金融

株価等の市場予測を行うAIや、ユーザの投資行動を分析し投資パフォーマンス向上に資するフィードバックを行うAI等

建設

物件の構造や類似物件の設計情報等を活用して最適な構造設計を行うAI等

エンターテインメント

機械学習により頭脳ゲームにおいてユーザの対戦相手となるAI、ユーザの行動分析を行いその精度やユーザの継続率を向上させるAI等

 

収益構造については、AIシステムの構築時に、顧客から初期設定フィーを受領し、その後、AIシステムを運用して継続利用する顧客から月次で継続フィーを受領する収益構造を基本としております。すなわち、当社のビジネスモデルはフロー収入となる初期設定フィーに加えて継続フィーを受領しているストック型ビジネスとなります。また、AIの性質上、機械学習を継続するほどその精度が向上することから、顧客にとっては当社のAIサービスを継続使用するインセンティブが働くため、当社は安定した収益基盤を確保することが可能となります。

 

図:当社のAIソリューションの仕組み

※画像省略しています。

 

図:AI SaaSの収益性

※画像省略しています。

 

また、OpenAIによるChatGPTのリリースを受けた大規模言語モデル・Generative AIに関する注目度の高まりを受け、当社のBtoBサービスにおいても、ChatGPTを含むGenerative AIに関する取り組みを強化しております。その一環として、先にも述べましたが、2023年4月に、企業の実業務に適した形で活用できるCustomized ChatGPTをSaaS型で提供する「HEROZ Knowledge System built with ChatGPT」をリリースしました。今後も、新設されたLLM Groupとも連携しつつ、各産業におけるAIX拡大の中心となっていけるようスピード感をもって各種取り組みを進めてまいります。

 

また、ストラテジットが提供するSaaS導入支援サービスでは、Oracle社が提供するクラウドERP「NetSuite」等の導入に関して、様々な企業に支援を行っております。ERPとは、「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略で、統合基幹業務システム、基幹システムと言われております。ERPは、企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図るためのシステムであり、企業全体の業務を効率化し、敏速に適切な経営判断をくだすために重要な基幹となるシステムです。従前はオンプレミス型ERPの導入が主流でしたが、近年ではクラウド環境で使用できる「クラウドERP」の普及が進んでおり、オンプレミス型よりも短期間かつ低コストで導入でき、メンテナンスが不要であるなどメリットが多く、大企業のみならず中小企業の需要も急速に拡大しております。

 

図:SaaS市場の外観と当社グループが考える大きなトレンド

※画像省略しています。

 

また、同様にストラテジットが提供するAPI連携開発サービスに関しては、近年大企業のみならず中小企業においても、急速に、会計・人事だけでなく様々なSaaSプロダクトを活用する状況となっております。一方で、企業においては会計・人事等の各SaaSプロダクトを単独で利用する場合は、各SaaSでのデータ管理が必要となり、重複したデータ登録等が発生し、業務効率の向上が困難となる事象が発生しており、SaaS間のデータ連携が重要になってきております。ストラテジットにおいては、これらのSaaS間のデータ連携において、API(Application Programming Interface)を活用したAPI連携開発サービスを提供しております。APIを活用することで、互いのSaaSのデータ連携を行うことが可能となり、各SaaSプロダクトが保有する機能を拡張させ、双方のSaaSプロダクトを更に便利に利用することが可能となります。

特にストラテジットにおいては、SaaS連携開発に必要なノウハウを結集した開発プラットフォームに関した特許を保有しており、一般的な受託開発に比べ、高品質なシステム連携を低コストで提供し、安定的に運用することが可能となっております。

また2023年5月には、SaaSの市場拡大を加速するべく、SaaSを提供する企業のビジネスパートナーとして、企業の成長フェーズごとに必要なサポートを提供するプラットフォームである「JOINT」をリリースしました。今後も、SaaS市場拡大のトレンドにおける中心的な存在となれるよう、JOINTを通じてSaaS企業の成長を支援してまいります。

 

図:「JOINT」が提供するソリューション

※画像省略しています。

 

 (注)1.機械学習とは、人間が有する学習能力に類似した機能をAIに持たせることにより、AIが自動的に

学習し進化するための手法を指します。具体的には、教師データ(学習の元になるデータ)に基

づいて機械学習することで、未知の状況においても、学習により構築したパターンに基づいて、

AIが精度の高い判断を行うことが可能になります。

 (注)2.深層学習(ディープラーニング)とは、入力に対して出力を決める処理の層を深く(ディープ

に)したニューラルネットワーク(人間の脳機能を模すことで効率の良い学習を施すことができ

る数学モデル)を用いることで、教師データが持つ特徴を手作業ではなくコンピュータープログ

ラムが抽出し、精度向上を目指す機械学習の一手法のことを指します。

 (注)3.強化学習とは、明確な教師データが与えられない環境において、コンピュータープログラムが試

行錯誤によってその価値を最大化するように振る舞う、機械学習の一手法を指します。

 (注)4.プラットフォームとは、ソフトウエアやハードウエアを動作させるために必要な、基盤となるハ

ードウエアやOS、ミドルウエア等のことをいいます。また、それらの組み合わせや設定、環境の

ことで、Google Inc.が運営するGoogle Play及びApple Inc.が提供するApp Store等が含まれま

す。

 

 

[事業系統図]

AI/DX事業の事業系統図は、以下のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

(2)AI Security事業

AI Security事業は、バリオセキュアが提供するインターネットセキュリティ関連の事業となります。同社は、「インターネットを利用する全ての企業が安心で快適にビジネスを遂行できるよう、日本そして世界へ全力でサービスを提供する。」という経営理念のもと、インターネットに関するセキュリティサービスを提供する企業として、インターネットからの攻撃や内部ネットワークへの侵入行為、またウィルスの感染やデータの盗用といった各種の脅威から企業のネットワークを守り、安全にインターネットを利用することができるようにする総合的なネットワークセキュリティサービスを提供しております。

 

① 事業の特徴

a.独自のビジネスモデル

バリオセキュアは、セキュリティサービスで利用する機器の調達、機器にインストールする基幹ソフトウエアの開発、機器の設置/設定、機器設置後の監視/運用までをワンストップで行っております。

エンドユーザは、機器の選定や運用サービスを個別に検討する必要がなく、手間がかからずにサービスを利用することが可能となります。また、バリオセキュアがワンストップでサービスを提供しているため、問題が発生した際に原因の究明と対応が行い易く、エンドユーザは、問い合わせやトラブルに対するサポートを迅速に受けることができます。

 

b.リカーリングレベニューの構造

バリオセキュアは、監視/運用サービスを基本に各種セキュリティサービスを月額費用により提供しております。導入企業が増加すれば、年々収益が積み上がる「リカーリングビジネス」と呼ばれるモデルであり、収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。2023年2月末で、全国47都道府県に7,450拠点(VSR設置場所数)のマネージドセキュリティサービスを提供しており、継続的な収益の安定化を実現しております。バリオセキュアの第8期事業年度の、「リカーリングビジネス」であるマネージドセキュリティサービスによる売上収益の売上収益全体に占める比率は、85.0%です。

 

[リカーリングレベニューモデル]

※画像省略しています。

 

c.ビジネスパートナー(販売代理店)モデル

バリオセキュアの販売モデルは、販売代理店を介した間接販売及びバリオセキュアによる直接販売に分類できますが、間接販売が中心となっております。通信事業者やインターネットサービス事業者、データセンター事業者など、バリオセキュアのサービスを付帯することでお客様へ付加価値を提供することを期待する販売代理店と契約しております。これら販売代理店と日本全国をカバーする販売網を構築し、継続的な営業案件の創出が可能となっております。

販売代理店は、「相手先ブランド提供パートナー(以下、「OEMパートナー」という。)」及び「再販売パートナー」に大別されます。「OEMパートナー」とは、販売代理店自らのブランドでセキュリティサービスを提供し、顧客(エンドユーザ)と直接、契約を締結するパートナーを指します。「再販売パートナー」とは、バリオセキュアの代理店として顧客(エンドユーザ)の開拓、営業活動を行い、顧客(エンドユーザ)との契約主体はバリオセキュアとなるパートナーを指します。

バリオセキュアでは、さらに営業活動を推進するためにセキュリティの専門家であるバリオセキュアが、販売代理店の代わりにお客様に対して直接技術面の説明をする営業同行や、サービスの導入から設置までワンストップで支援することも実施しております。

② サービスの概要

バリオセキュアが提供しているサービスは次のとおりであります。

a.マネージドセキュリティサービス

マネージドセキュリティサービスで提供している商品は、VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービス、データのバックアップサービス(VDaP)及びエンドポイントセキュリティサービス(Vario EDR)の3種類があります。

 

(a)VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービス

インターネットからの攻撃や内部ネットワークへの侵入行為、またウィルスの感染やデータの盗用といった各種の脅威から企業のネットワークを守り、安全にインターネットの利用を行えるようにする総合的なネットワークセキュリティを提供するものです。

バリオセキュアの統合型インターネットセキュリティサービスでは、ファイアウォール、IDS(不正侵入検知システム)、ADS(自動防御システム)などの多様なセキュリティ機能を1台に統合した自社開発のネットワークセキュリティ機器VSRをインターネットとユーザの社内ネットワークとの間に設置し、攻撃や侵入行為、ウィルスといった脅威を取り除くいわばフィルタとして作動します。VSRは、バリオセキュアデータセンターで稼働する独自の運用監視システムにより自動的に管理・監視され、運用情報の統計情報や各種アラートが人手を介することなくリアルタイムに処理されます。統計情報やアラートはコントロールパネルと呼ぶレポーティング機能により、インターネットを介してユーザ企業の管理者にリアルタイムに提供されます。また、バリオセキュアでは24時間365日のサポートセンターを構築しており、国内全都道府県に対応した保守網並びに機器の設定変更等の運用支援体制を構築しております。

従来は、前述のようなセキュリティシステムを導入するには、各種のセキュリティ機器を購入し、これらを自社で導入、メンテナンスする必要がありました。そのためには高度な技術を有する技術者や、高額な投資を要求されることから多くの企業では十分なネットワークセキュリティ対策を導入することが困難な状況でした。また、セキュリティシステム導入後も監視やアラートへの迅速な対応、ソフトウエアのアップデートなどの運用面での負担は非常に大きい状況でした。

バリオセキュアのサービスではVSRが1台で多様なセキュリティ機能を提供します。機器の購入は不要でレンタル機器にてセキュリティシステムを導入することができます。また、セキュリティ機能ごとに月額費用が設定されており、ユーザ企業は多様なセキュリティ機能の中から必要なオプションを選択することができ、VSRは様々なニーズに対応可能です。ユーザは、契約の開始時点のみ発生する初期費用及び月額費用を払うだけで、コントロールパネルの利用や設定変更、ソフトウエアのアップデート、監視や出張対応による現地での保守など、ネットワークセキュリティの運用に際して必要となる殆どの工数をバリオセキュアに委託することができ、業務負担を低減することができます。

このように、バリオセキュアの統合型インターネットセキュリティサービスは、ネットワークセキュリティの導入から管理、運用・保守までをサービスとしてワンストップで提供し、ユーザから初期費用及び定額の月額費用を徴収する積み上げ型のビジネスモデルとなっております。

ユーザは、自社で専門技術を持つIT責任者を設置することが困難な中堅、中小企業がメインです。2023年2月末で2,837社に導入され、7,450拠点(VSR設置場所数)の日本全国で稼働しております。

 

※画像省略しています。

 

バリオセキュアのVSRは自社開発品です。自社の技術者やシステムインテグレーター(SIer)(*1)を通じてセキュリティ機器を導入・運用する企業は、海外の仕様書を見ながら初期設定やカスタマイズを施し、自社で定期的なソフトウエアのアップデートを行い、トラブル発生の際には海外メーカーに数日間かけて問い合わせるなど、一般的には多大な労力と時間を必要とします。バリオセキュアは自社開発品を初期導入から運用・保守までワンストップで提供しているため、迅速な対応が可能となっております。不具合やトラブルは、顧客(エンドユーザ)からバリオセキュア又は販売代理店への問い合わせのほか、バリオセキュアがリモート監視により能動的に検知してサポートを行っております。運用・保守は、バリオセキュアのエンジニアが可能な限り、遠隔操作により対処します。ハードウエア等の故障については、業務委託先の倉庫等全国69か所(2023年2月末)に在庫を配備し、4時間以内の駆け付け目標により機器交換に迅速に対応しております。

(*1)システムインテグレーター(SIer)とは、情報システムの設計、構築、運用等の業務を顧客より請け負う情報通信企業を言います。

 

(b)データのバックアップサービス(VDaP)

一般的に企業の大切なデジタルデータが、インターネットの脅威から隔離され、障害が発生した場合でもそれまでの事業の継続性を担保することが、企業の大きな課題となっております。

バリオセキュアのバックアップサービスは、ハードウエアの機器にバックアップデータが保存されるVDaPとデータセンターへの保存を組み合わせたバックアップサービスとなっております。一時的に企業のデジタルデータをVDaPにバックアップした後に、自動的にデータセンターへもデータを転送することで、より一層の耐障害性を高めております。バックアップデータの保持は、最新及び過去のデータがバージョン管理されたデータとして保持されております。データの復旧を行う際にも、お客様が利用しやすいインターフェースを提供することで、必要なデジタルデータを簡単に選択して、復旧することができます。

VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスの監視/運用サービスにおける経験を活かし、機器の設置、障害時の対応に関しても、その仕組みを活かすことで効率的に全国をカバーしたサービス提供を実施しております。

 

(c)エンドポイントセキュリティサービス(Vario EDR)

サイバー攻撃が巧妙になり、従来のウィルス対策ソフトでは検知できないウィルスやマルウェアによる企業のセキュリティ被害の拡大が懸念されます。

バリオセキュアのマネージド型EDRサービス「Vario EDR」では、社内やテレワーク利用PCのセキュリティリスクを検知し安全な業務環境を実現します。EDR(Endpoint Detection & Response)は、ウィルス対策ソフトが検知できずに侵入したウィルスやマルウェアの行動を監視し、サイバー攻撃の実行を阻止する仕組みです。サイバー攻撃対策に有効なEDRですが、リスク判定や判断後の対応が難しいことから運用負担が大きくなる傾向にありますが、Vario EDRサービスでは、リスクレベルのスコア化と、サイバー攻撃の発見と対応を支援する仕組みにより、セキュリティ対策を少ない運用負担で実現します。

 

b.インテグレーションサービス

バリオセキュアのインテグレーションサービスには、中小企業向け統合セキュリティ機器(UTM)であるVCR(Vario Communicate Router)の販売とネットワーク機器の調達や構築を行うネットワークインテグレーションサービス(以下、IS)があります。

 

(a)VCR

サイバーセキュリティ基本法の改定といった法規制の影響もあり、より小規模(従業員数50名未満)の事業者やクリニックなどでセキュリティ意識が高まっていることを受け、セキュリティアプライアンス機器であるVCRの販売も行っております。VCRは、マネージドセキュリティサービスと異なり、UTM製造の世界有数の企業であるSOPHOS Ltd.の製品を自社ブランドとして輸入し、中小企業を専門とする販売代理店を通じてエンドユーザに販売する事業として実施しております。なお、販売した機器、ハードウエア障害などについては、バリオセキュア又は販売代理店のサポート窓口経由で、メーカーが保証期間に亘りサポートしております。

 

(b)ネットワークインテグレーションサービス(IS)

統合型インターネットセキュリティサービスでは、外部へのアクセスを可能にするインターネットと社内のネットワークの境界を監視するゲートウェイとしてバリオセキュア機器を設置することから、企業よりゲートウェイ周辺で利用するネットワーク機器の調達や設定、インターネットへの接続全般の設計や構築のニーズがあります。そのため、通信ネットワーク及び機器等の導入のための設計、調達、構築を専門に行う人員を配置し、ネットワークの設計/調達/構築全般を実施し、企業ネットワーク領域全般への業容拡大を図っております。なお、販売した機器、ハードウエア障害などについては、バリオセキュア又は販売代理店のサポート窓口経由で、メーカーが保証期間に亘りサポートしております。

 

[事業系統図]

 AI Security事業(バリオセキュア)の事業系統図は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

注:販売代理店との間の契約では、一部、顧客(エンドユーザ)とバリオセキュアが直接代金の授受及びサポートを行う契約があります。また、Vario EDRについては定額の月額利用料のみ発生いたします。

 

※画像省略しています。

23/07/28

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度より、連結財務諸表を作成しております。このため、前連結会計年度との比較分析は行っておりません。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

Ⅰ 経営成績等の状況の概要

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済状況は、新型コロナウイルスの収束に向けた動きが加速され景気が緩やかに持ち直しの動きを見せた一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、国内外におけるインフレや世界的な金融引締めの傾向が見られる等、先行きが不透明な状況が続きました。

 このような環境の中で、当社は「驚きを心に」をコンセプトとして、人々の生活が便利に楽しくなるように、AIを活用したサービスをBtoCおよびBtoB領域で展開してまいりました。そして、第2四半期連結会計期間において、「より安定的な収益基盤の構築」「社内に蓄積されたAI技術・データの利活用」「様々な業界へのAI・SaaSの更なる展開」等を目的とし、バリオセキュア株式会社(以下、「バリオセキュア」という。)及び株式会社ストラテジット(以下、「ストラテジット」という。)の株式を取得し連結子会社化いたしました。

 AI市場は、ディープラーニング等の機械学習関連アルゴリズムの高度化に加えて、機械学習に利用可能な計算機の能力向上やデータの増加により更なる成長が続いております。また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大も見込まれると認識しております。特にAI市場においては、OpenAI社(以下、「OpenAI」という。)が「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」をリリースし、各産業において同モデルを含むAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の動きが急速に高まるなど、新技術への対応は急激なスピードで重要性を増しております。なお当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。

 このように、国内外においてより急激に技術革新やAIXを含むIT関連投資が進む中で、当社グループとしては、グループ内に蓄積されたAI関連技術をフルに利活用することにより、各産業に革新的なソリューションを提供し世界を驚かせるAI革命を目指したいと考えております。具体的には、「AI/DX事業」「AI Security事業」の各セグメントにおいて、各企業・業界のAI/DX化推進やグループシナジーの強化に努めていきたいと考えているほか、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAI・SaaS・セキュリティ関連分野において積極的に研究開発を進め、よりスピード感をもって「AI SaaS」戦略としてグループ全体の事業拡大を目指してまいります。その取り組みの一環として、2023年4月に、企業の実業務に適した形で活用できるCustomized ChatGPTをSaaS型で提供する「HEROZ Knowledge System built with ChatGPT」をリリースしたほか、2023年5月にGenerative AIの応用を目的とした専門チーム「LLM Group」を発足し、「AI SaaS」戦略の中核を担うGenerative AI技術の追求に注力しております。

 なお、セグメント別の経営成績の概況は以下のとおりです。

(ⅰ)AI/DX事業

 当連結会計年度において、当社グループのAI/DX事業については、BtoC領域におけるイベント開催やBtoB領域における大型案件の受注等の効果により安定した収益を上げました。

 BtoC領域については、主力である「将棋ウォーズ」の安定成長に加え、「棋神アナリティクス」について、2022年5月のリリースに続いて2022年12月にライトプランをリリースしており、プロ棋士・アマチュア強豪を中心にサービスの提供を拡大しております。そのほか、2023年5月に開催された「第33回世界コンピュータ将棋選手権」にて、当社AIエンジニアメンバーで構成されたチーム「dlshogi with HEROZ」が2年連続となる優勝を果たしました。また、BtoB領域についても、2022年5月にセールスマーケティング組織の立ち上げを行い、顧客獲得活動を強化した結果、当連結会計年度の後半にかけてAI/DX支援に関する大型案件が発生するなど、収益が拡大しております。

 

(ⅱ)AI Security事業

 当社グループのAI Security事業については、サイバーセキュリティの脅威が高度化・巧妙化し企業におけるセキュリティ対策が必要不可欠となっていく中で、エンドポイントセキュリティ対策としてサイバー攻撃の兆候を検知するVarioマネージドEDRの売上が堅調に推移しました。増加するランサムウェア被害(身代金要求型ウイルス)から企業・各種機関の情報資産を守るデータバックアップサービス(VDaP)については、医療機関へサービスの訴求を行い、増大する脅威に対して安心、安全な環境の構築を支援して参りました。また、自社開発のネットワークセキュリティ機器VSR(Vario Secure Router)の後継機として、他社サービスとの連携を視野に入れた拡張性のあるモデル「VSR nシリーズ」をリリースしました。

 当事業では、部材の調達に関連して、世界的な半導体供給不足の影響を受ける可能性があります。現時点において、当期における影響については軽微であるものと見込んでいるものの、来期以降の業績に与える影響については、合理的に算定することは困難であり、引き続き状況を注視してまいります。

 このような環境のもと、当事業においては、マネージドセキュリティサービスによるストック型の収益と、その低解約率(0.70%)(注)により、マネージドセキュリティサービスに係る売上収益が安定的に推移した一方、インテグレーションサービスにおける中小企業向け統合セキュリティ機器(UTM)であるVCR(Vario Communicate Router)の販売が想定外の競合環境の激化により低迷し、新たなサービスを付加した新モデルを投入して対策を講じてまいりましたが、当連結会計年度末時点において、販売の回復に至っておりません。これらの状況を受けて、連結決算上、VCRの棚卸資産評価損64,963千円を売上原価として、仕入先との契約に関する最低購入保証に係る引当金の繰入額101,395千円を特別損失として、それぞれ計上いたしました。

(注)解約率(金額ベース)=年間解約金額÷(各年度の期初ベース月次売上収益×12)

 

 そのほか、採用方法の見直し等に伴う採用教育費の減少等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、上記に記載したVCRの棚卸資産評価損や、新株予約権に関する株式報酬費用を新たに計上したこと等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。また、グループ会社における第三者割当増資の実施による株式交付費21,013千円の発生等により、営業外費用が増加しております。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,980,673千円となり、EBITDA(営業利益+減価償却費+敷金償却+のれん償却額+株式報酬費用+棚卸資産評価損)609,689千円、営業利益257,894千円、経常利益216,186千円となりましたが、特別損失として段階取得に係る差損541,091千円及びグループ会社における契約損失引当金繰入額101,395千円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は574,334千円となりました。また、上述のAI Security事業における契約損失引当金繰入額101,395千円及び棚卸資産評価損64,963千円に関して、繰延税金資産を計上したこと等により、法人税等調整額が第3四半期連結累計期間の金額より48,095千円減少し△59,690千円となっております。

 なお、当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の損益状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

 

 当連結会計年度末の資産につきましては、8,673,048千円となりました。主な内訳は、現金及び預金が3,798,391千円、売掛金が634,171千円、のれんが2,311,872千円であります。なお、のれんはバリオセキュア及びストラテジットの株式を取得し連結子会社化したことに伴い発生したものであります。

 負債につきましては、2,592,719千円となりました。主な内訳は、1年内返済予定の長期借入金が200,780千円、流動負債の契約負債が252,665千円、長期借入金が1,301,560千円であります。なお、1年内返済予定の長期借入金及び長期借入金は、主にバリオセキュアに係るものとなります。

 純資産につきましては、6,080,329千円となりました。主な内訳は、資本剰余金が5,303,446千円、利益剰余金が516,421千円であります。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、期首より138,121千円増加し、3,798,391千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、483,382千円であります。

 この主な要因は、税金等調整前当期純損失426,300千円、減価償却費163,984千円、のれん償却費88,033千円、段階取得に係る差損541,091千円、契約損失引当金の増加額101,395千円、法人税等の支払額82,170千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、144,475千円であります。

 この主な要因は、有形固定資産の取得による支出22,970千円、無形固定資産の取得による支出73,299千円、投資有価証券の取得による支出58,010千円があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、200,785千円であります。

 この主な要因は、短期借入金の返済による支出100,325千円、長期借入金の返済による支出100,000千円があったこと等によります。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

② 受注実績

 提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

AI/DX事業

1,683,993

AI Security事業

1,296,679

合計

2,980,673

(注)1、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度より、連結財務諸表を作成しているため、前年同期比は記載しておりません。

3.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

金額(千円)

割合(%)

Apple Inc.

556,238

18.7

株式会社USEN ICT Solutions

373,153

12.5

Google Inc.

331,523

11.1

 

Ⅱ 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1)重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

① のれん

 のれんについては、2022年8月にストラテジットを、2022年9月にバリオセキュアを連結子会社化した際に発生したものであり、いずれも取得時点での対象会社の将来の事業計画等に基づいて超過収益力を検討し、計上しております。

 のれんの減損判定については、グループ会社における継続した営業損失の発生、経営環境の著しい悪化、事業計画からの大幅な乖離等の有無をもとに減損の兆候の有無を検討しています。減損の兆候を識別した場合には、のれんの残存償却期間に対応する期間における割引前将来キャッシュ・フローを事業計画に基づいて算定し、帳簿価額と比較して減損損失の認識の要否を判定しています。減損損失の認識が必要と判定された場合、当該のれんについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識しています。

 当連結会計年度においては、のれんについて減損の兆候は識別されていません。

 減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、グループ会社の事業計画や経営環境の変化等によって影響を受ける可能性があり、実際の業績が見積りと異なる場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。

 

② 繰延税金資産

 繰延税金資産については、将来事業年度の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。今後の経営環境の変化等によっては、翌事業年度において、当該将来事業年度の課税所得の見積り及び繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。

 

③ グループ会社における契約損失引当金の評価

 当社のグループ会社であるバリオセキュアにおきまして、仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込みに基づき契約損失引当金を計上しております。

 当該引当金は、バリオセキュアが仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込額を計上しております。将来発生する損失見込額は、合理的な仕入計画に基づき、将来に発生が見込まれる金額を見積もっております。また、合理的な仕入計画の策定にあたっては、予測販売数量を主要な仮定として用いており、予測販売数量については、過去の実績等を基礎として見積りを行っております。

 上記見積りの予測販売数量及び当該数量に基づく合理的な仕入計画には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により結果として、契約損失引当金の追加計上または戻入が必要となる可能性があります。

 

④ 関係会社株式

 市場価格のある株式等は、その時価が著しく下落した時は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。

 また非上場の関係会社に対する投資等、市場価格のない株式等は取得価額をもって貸借対照表価額としていますが、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した時には、回復可能性が十分な論拠によって裏付けられている場合を除いて、相当の減額を行い、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。

 株式の評価については慎重に検討を行っておりますが、今後の経営環境の変化等によって発行体の業績・事業状況が悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。

 

⑤ 固定資産の減損について

 固定資産の減損については、減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たって慎重に検討しております。将来の市況や業績等が悪化した場合には、減損損失が発生する可能性があります。

 

 そのほか、貸倒引当金、賞与引当金の計上基準については、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおり計上を行っております。いずれも過去の実績に基づき算定しており、会計上の見積りの重要性は低く、当社の経営成績等に与える影響は軽微であると判断しております。

 

(2)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 ①財政状態の分析

 財政状態に関する分析は、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

 ②経営成績の分析

a 売上高

 当連結会計年度の売上高は、2,980,673千円となりました。セグメント別の分析は以下のとおりです。

・AI/DX事業

 AI/DX事業については、BtoC領域におけるイベント開催やBtoB領域における大型案件の受注等の効果により安定した収益を上げ、売上高は1,683,993千円となりました。

 BtoC領域については、まず主力である「将棋ウォーズ」において、藤井聡太七冠の活躍に伴う将棋への注目度向上や機能追加などの効果により、引き続き安定成長を達成しました。また、将棋AIを用いた解析サービスである「棋神アナリティクス」について、2022年5月のリリースに続いて2022年12月にライトプランをリリースしており、プロ棋士・アマチュア強豪を中心にサービスの提供を拡大しております。そのほか、2023年5月に開催された「第33回世界コンピュータ将棋選手権」にて、当社AIエンジニアメンバーで構成されたチーム「dlshogi with HEROZ」が2年連続となる優勝を果たしました。

 また、BtoB領域についても、2022年5月にセールスマーケティング組織の立ち上げを行い、顧客獲得活動を強化した結果、当連結会計年度の後半にかけてAI/DX支援に関する大型案件が発生するなど、収益が拡大しております。同領域に関しては、ChatGPTのリリースに端を発する大規模言語モデルに関する注目度向上に伴い、専門チームとも連携し大規模言語モデルに関する営業活動も強化しております。

 

・AI Security事業

 AI Security事業については、主にマネージドセキュリティサービスでの堅調な成長達成により、売上高は1,296,679千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。

 マネージドセキュリティサービスでは、VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスにおいて、主に上位機種へのアップセルや大型案件に係る一時金等により売上高が増加し、またVDaPも、前期及び当期の新規契約に係る上位機種の月額課金の積み上がりにより成長を達成しました。Vario EDRについても、前期より主要代理店でのエンドポイントセキュリティサービスの協業を開始し、大型案件の獲得等によるラインセス数が増加したことにより、売上高が増加しております。

 また、インテグレーションサービスについては、ネットワーク構築も含めたセキュリティ導入を行うネットワークインテグレーションサービス(以下、IS)においては、半導体の供給不足も緩和し顧客への納品件数が増加したことにより成長を達成しましたが、VCRにおいては、競合環境の激化により販売数が低迷したことで売上高は減少となりました。

 

b 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益

 当社グループの売上原価、販売費及び一般管理費については、人材関連費用、機械学習用サーバ等設備の減価償却費・通信費、BtoCサービスに係る課金決済手数料、支払手数料及び技術研究・自社プロダクト開発のための研究開発費が主な内容となります。

 当連結会計年度は、採用方法の見直し等に伴う採用教育費の減少等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、VCRの棚卸資産評価損を計上したことや、新株予約権に関する株式報酬費用を新たに計上したこと等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。

 これらの結果、当連結会計年度における売上原価は1,634,282千円となり、当連結会計年度の売上総利益は1,346,390千円となりました。また、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,088,496千円となり、当連結会計年度の営業利益は257,894千円となりました。

 

c 営業外収益、営業外費用、経常利益、特別損益

 営業外収益及び費用については、当社が出資する投資事業組合に関する運用損益や、グループ会社における支払利息等が主な内容となります。そのほか、当連結会計年度はグループ会社における第三者割当増資の実施による株式交付費21,013千円の発生があり、営業外費用が増加しているほか、特別損失として段階取得に係る差損541,091千円及びグループ会社における契約損失引当金繰入額101,395千円を計上しております。

 これらの結果、当連結会計年度の経常利益は216,186千円、税金等調整前当期純損失は426,300千円となりました。

 

 上記a~cの結果を受け、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は574,334千円となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は91,375千円であり、上述のAI Security事業における契約損失引当金繰入額101,395千円及び棚卸資産評価損64,963千円に関して、繰延税金資産を計上したこと等により、法人税等調整額は第3四半期連結累計期間の金額より48,095千円減少し△59,690千円となっております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 キャッシュ・フローの分析・検討内容については、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載した通り、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

(5)経営戦略の現状と見通し

 当連結会計年度における我が国の経済状況は、新型コロナウイルスの収束に向けた動きが加速され景気が緩やかに持ち直しの動きを見せた一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、国内外におけるインフレや世界的な金融引締めの傾向が見られる等、先行きが不透明な状況が続きました。

 その一方で情報サービス業界においては、経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するシステム投資がより一層重要性を増しており、特にAI市場においては、OpenAIにより発表された大規模言語モデル「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」が大きな注目を集めるなど、各産業においてAIX投資の動きが急速に拡大しております。

 このような環境の中で、当社は第2四半期連結会計期間にバリオセキュア及びストラテジットの株式を取得し、連結子会社化したことに伴い、新たな戦略として「AI SaaS」戦略を掲げております。急速に技術革新が進みAIXに関する投資が加速する中で、当社グループとしましては、AI・SaaS関連技術に関する最先端の知見を有するメンバーのもと、AI市場・SaaS市場拡大のトレンドにおける中心的な存在となれるよう努めてまいりたいと考えており、今後もよりスピード感をもって積極的に研究開発や事業拡大に向けた投資等を進めてまいります。

 具体的には、下記の点に注力することで競争優位性を保ち、持続的な成長を目指します。

①AIを活用したBtoC領域で引き続き安定的な収益を伸ばす

②AI・SaaS・セキュリティ関連サービスをBtoB領域で伸ばす

③大規模言語モデルを含む、最新技術に関する積極的な研究開発投資

④M&A・パートナーシップ戦略

⑤知財戦略

⑥人材採用

 

(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や自社サーバ購入等を目的とした資金需要は自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討してまいります。このような方針の元、当社が2019年12月24日に公募増資により調達した資金について、新規人材の採用関連費用、機械学習用サーバ等への設備投資、同サーバ費用等の通信費、オフィス増床の為の敷金及び費用、当社事業に応用可能な周辺技術を有する企業等への投融資、運転資金等にその一部を充当しております。その一環として、2023年8月にストラテジット株式を、2023年9月にバリオセキュア株式を取得しいずれも連結子会社化いたしました。

 残額については、2022年6月10日に開示しております「資金使途の変更に関するお知らせ」にて記載の通り、引き続き当社グループの事業に応用可能な周辺技術を有する企業等への投融資資金に充当し、当社グループの中長期的な成長戦略の実現を目指してまいります。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,798,391千円、有利子負債の残高は1,502,340千円となっております。