E00878 Japan GAAP
前期
4,033.4億 円
前期比
99.1%
株価
3,256 (07/12)
発行済株式数
103,768,142
EPS(実績)
221.43 円
PER(実績)
14.70 倍
前期
722.1万 円
前期比
99.6%
平均年齢(勤続年数)
39.9歳(16.8年)
従業員数
1,815人(連結:5,512人)
当社及び当社の関係会社(当社、子会社60社及び関連会社21社(2024年3月31日現在)により構成)においては、化学品、食品、ライフサイエンス及びその他の4事業を主として行っており、その製品はあらゆる種類にわたっています。各事業における当社及び関係会社の位置付け等は以下のとおりです。
当事業は、大きく3種類の製品に分類しています。
(4) その他
当事業においては、設備プラントの設計、工事及び工事管理、設備メンテナンス、物流業、倉庫業、車輌等リース、不動産業、保険代理業等を行っています。
以上の結果、主な事業の系統図は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1) 業績等の概要
当期における世界経済は、先進国を中心に低い成長率に留まりました。世界的な金融引き締めやウクライナ・中東情勢の影響、さらには中国経済の減速が不安視され、先行き不透明な状況で推移しました。
当社グループ事業の主要対象分野である自動車関連分野は、緩やかながらも着実に生産回復が進みました。ICT・家電分野は、個人消費の減退や買い替えサイクルの長期化により、スマートフォンやパソコンの販売低迷が続きました。食品分野は、インバウンドの急増を追い風に土産物や外食の需要回復が続きましたが、消費者の節約・低価格志向を背景に菓子等の嗜好品は厳しい状況となりました。農業分野は、天候不順や過年度の流通在庫の影響から、国内外ともに農薬需要は総じて弱含みで推移しました。
このようななか、当期は中期経営計画『ADX 2023』の最終年度となり、次の成長ステージを見据えながら、各事業において施策を遂行しました。樹脂添加剤では、循環型社会の実現に貢献する「アデカシクロエイド」シリーズにおいて、新たにリサイクル樹脂向けの光安定剤ワンパックタイプを市場投入しました。情報・電子化学品では、日本、韓国、台湾において半導体材料の投資を積極的に実行しました。韓国では全州第三工場内に先端半導体向け材料の新製造棟建設を、日本では久喜地区開発研究所内に情報・電子化学品の研究開発力強化を目的として新研究棟建設を決定しました。食品事業では、収益基盤をさらに強化するべく国内販売体制を見直し、連結子会社を再編しました。また、プラントベースフード「デリプランツ」シリーズのおいしさを実感していただく企画として、原宿に「アデカフェ~Delicious & Sustainable~」を期間限定でオープンし、本製品を使用したオリジナルメニューを展開しました。ライフサイエンス事業では、アジュバント等の添加剤やバイオスティミュラントの製造・販売会社であるInteragro (UK) Ltd.の全発行株式を、Nichino Europe Co., Ltd.が取得しました。また、インドにおいて、新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサン等、複数の農薬原体を製造できるマルチパーパスプラントが竣工しました。グループシナジーの創出では、当社と日本農薬の技術を結集した共同研究において、抗寄生虫剤として期待される化合物群を見出し、2023年7月に本件特許出願4報が世界知的財産機構より国際公開されました。サステナビリティの取り組みでは、「2030年:GHG排出量46%削減(2013年比)、2050 年:カーボンニュートラル」の実現に向けて、インターナルカーボンプライシング制度と再生可能エネルギー由来電力の導入を開始しました。
売上高は前連結会計年度に比べ、35億72百万円(前連結会計年度比△0.9%)減収の3,997億70百万円となりました。
売上原価は前連結会計年度に比べ、100億45百万円(同比△3.3%)減少し、2,950億79百万円となりました。
販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ、34億14百万円(同比+5.2%)増加し、692億62百万円となりました。
営業利益は前連結会計年度に比べ、30億58百万円(同比+9.4%)増益の354億28百万円となりました。
営業外収益から営業外費用を控除した営業外損益は、前連結会計年度の利益(純額)2億9百万円に比べ、1億26百万円利益額が増加し、3億35百万円の利益(純額)となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ、31億84百万円(同比+9.8%)増益の357億63百万円となりました。
特別利益から特別損失を控除した特別損益は前連結会計年度の損失(純額)33億86百万円に比べ、33億5百万円損失額が減少し、81百万円の損失(純額)となりました。
これは、主に前連結会計年度に食品事業に係る減損損失を計上したことによるものです。
この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ、64億90百万円(同比+22.2%)増益の356億82百万円となりました。
法人税等は前連結会計年度に比べ、11億39百万円(同比+13.8%)増加し、93億71百万円となりました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ、8億49百万円(同比△20.3%)減少し、33億33百万円となりました。
上記要因の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ、61億99百万円(同比+37.0%)増益の229億77百万円となりました。
セグメントの状況は、以下のとおりです。
自動車向けでは、自動車生産の回復が続き、光安定剤の販売が好調に推移し、核剤、高機能可塑剤の販売も堅調でした。
建材向けでは、世界的にコスト高騰や工期の長期化を受け、床材をはじめ住宅内装材の需要が停滞し、塩ビ用安定剤の販売が低調に推移しました。
食品包装向けでは、上期にかけてサプライチェーンにおける在庫調整が続いたことや、安価な海外製品の流入が続いたことにより透明化剤の販売が低調でした。
ポリオレフィン樹脂に使用されるワンパック顆粒添加剤や酸化防止剤は、景気減速の影響から中東・欧州での樹脂生産が低迷し、競争環境も激化したことから販売に苦戦しました。
難燃剤は、一昨年来低調が続いていた家電筐体等に使用されるエンジニアリングプラスチック向けの販売が2023年末以降回復基調に転じたほか、ポリオレフィン樹脂向けもEVでの販売が拡大しました。
樹脂添加剤全体では、販売数量の減少と固定費の増加により、前期に比べ減収減益となりました。
半導体向けでは、先端フォトレジスト向け光酸発生剤の販売が拡大し、先端DRAM向け高誘電材料の販売も好調に推移しました。一方で、旧世代製品向け高誘電材料の販売が世代交代の影響と顧客の減産影響を受けて低調に推移しました。
ディスプレイ等のエレクトロニクス関連向けでは、パネル市況が回復し、カラーフィルター向け光重合開始剤の販売が好調に、ブラックマトリクス樹脂とエッチング薬液の販売も堅調に推移しました。一方で、パネル生産の中国シフトが進み、光学フィルム向け光硬化樹脂の販売が低調でした。また、プリント基板に使用される電子部品用エッチング薬液の販売も低調でした。
情報・電子化学品全体では、先端半導体向け製品の販売好調とディスプレイ関連材料の持ち直しにより増収となりました。利益は原材料価格の高騰、一部製品の販売価格下落に加え、設備投資に伴う固定費の増加もあり、前期に比べ減益となりました。
自動車向けでは、エンジンオイル用潤滑油添加剤の販売が、米国での採用拡大や世界的な自動車生産の回復を背景に好調に推移しました。また、自動車の構造用接着剤向けエポキシ樹脂や車載用電子部品向けエポキシ樹脂接着剤の販売も堅調でした。
建築塗料向けでは、反応性乳化剤の販売が、中国、インドでのシェア拡大を背景に好調に推移しました。化粧品向け特殊界面活性剤は、欧州を中心に需要低迷が続き、販売が低調でした。
工業用途で使用されるプロピレングリコール類は海外市況の軟化により需給バランスが悪化し販売が低調でした。過酸化製品は下期以降に市況が持ち直し、販売が堅調でした。
機能化学品全体では、工業用薬品等の落ち込みを自動車向け材料や反応性乳化剤の販売拡大でカバーし、前期に比べ増収、僅かに減益となりました。
以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ75億90百万円(前連結会計年度比△3.6%)減収の2,041億30百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ25億61百万円(同△9.8%)減益の236億99百万円となりました。
国内の製パン、製菓用マーガリン、ショートニング類は、食料品高騰による消費支出減や最終商品のダウンサイジングの影響もあり、汎用品を中心に販売数量が減少しました。一方で、インバウンドの回復を背景に土産菓子向けのマーガリン類やフィリング類の販売は好調に推移しました。食品ロス削減に貢献する機能性マーガリン「マーベラス」シリーズでは、少量の配合でパン等のおいしさ持続に寄与する新製品の販売が好調でした。食の多様性や環境に配慮したプラントベースフード「デリプランツ」シリーズは、おいしさと使いやすさを追求するとともに、普及浸透に向けた提案強化により国内外での販売が伸長しました。
海外では、東南アジアや中国での販売が堅調に推移し、また価格改定が進捗したこともあり、売上、利益ともに回復が進みました。
食品事業全体では、品種統合や生産の効率化・コスト削減による収益性改善と販売価格の改定に取り組んだことに加え、2022年度の減損処理による減価償却費の削減効果もあり、前期に比べ増収増益となりました。
以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ14億87百万円(同比+1.8%)増収の840億12百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ65億15百万円増益の41億11百万円(前年同期は24億3百万円の営業損失)となりました。
(ライフサイエンス事業)
農薬は、海外では、世界最大の農薬市場であるブラジルで、競争激化に伴う一部ジェネリック品目の価格下落の影響等から、販売に苦戦しました。北米では、殺虫剤の販売が上期に低迷しましたが、下期は春先のシーズンに向けた需要が高まり、総じて堅調に推移しました。欧州では、南欧地域でダニが多発生した影響により殺ダニ剤の需要が増加したこと等から、販売が堅調に推移しました。アジアでは、インドで天候不順の影響があったものの、棉や野菜分野向け園芸用殺虫剤等の自社開発品目の普及拡販に努めたことにより、販売が堅調に推移しました。
国内では、天候不順や過年度流通在庫の影響を受けたものの、前期に実行した価格改定の効果が通年寄与したほか、ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)をはじめとする主力自社開発品目の普及拡販に努めた結果、販売が堅調に推移しました。
医薬品は、外用抗真菌剤「ルリコナゾール」の中国での終売の影響により、販売が低調に推移しました。
ライフサイエンス事業全体では、為替の影響もあり農薬販売が増加したものの、ブラジルにおける収益性悪化の影響が大きく、前期に比べ増収減益となりました。
以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ9億38百万円(同比+0.9%)増収の1,030億21百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ18億86百万円(同比△24.2%)減益の59億7百万円となりました。
③ 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ、429億88百万円(前連結会計年度末比+8.6%)増加の5,430億57百万円となりました。
主な要因は、以下のとおりです。
流動資産は前連結会計年度末に比べ、311億97百万円(同比+9.9%)増加の3,465億98百万円となりました。
これは、主に受取手形、売掛金及び契約資産並びに現金及び預金の増加によるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ、117億91百万円(同比+6.4%)増加の1,964億58百万円となりました。
有形固定資産は前連結会計年度末に比べ、73億51百万円(同比+6.2%)増加の1,268億40百万円となりました。
これは、主に建物及び構築物の増加によるものです。
無形固定資産は前連結会計年度末に比べ、15億46百万円(同比△8.6%)減少の164億97百万円となりました。
これは、主に技術資産の減少によるものです。
投資その他の資産は前連結会計年度末に比べ、59億86百万円(同比+12.7%)増加の531億19百万円となりました。
これは、主に投資有価証券の増加によるものです。
当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べ、150億15百万円(同比+8.0%)増加の2,033億74百万円となりました。
主な要因は、以下のとおりです。
流動負債は前連結会計年度末に比べ、49億39百万円(同比+3.8%)増加の1,344億27百万円となりました。
これは、主に短期借入金の増加によるものです。
固定負債は前連結会計年度末に比べ、100億76百万円(同比+17.1%)増加の689億47百万円となりました。
これは、主に社債の増加によるものです。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表」に記載しています。
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べ、279億73百万円(同比+9.0%)増加の3,396億82百万円となりました。
これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の増加による利益剰余金の増加によるものです。
その結果、自己資本比率は前連結会計年度末52.2%に比べ、0.3ポイント増加の52.5%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末の資金残高に比べ173億63百万円(前連結会計年度末比+21.8%)増加し、969億1百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
営業活動による資金収入は、前連結会計年度に比べ247億1百万円(前連結会計年度比+143.2%)増加し、419億54百万円となりました。
これは、主に棚卸資産の減少によるものです。
投資活動による資金支出は、前連結会計年度に比べ35億49百万円(同比+18.2%)増加し、230億69百万円となりました。
これは、主に有価証券の取得による支出の増加によるものです。
財務活動による資金支出は、前連結会計年度に比べ19億40百万円(同比+74.1%)増加し、45億59百万円となりました。
これは、主に社債の償還による支出の増加によるものです。
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により算出しています。
営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
4.2023年3月期より、一部の在外子会社等の収益及び費用は、在外子会社等の決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更し、2022年3月期のキャッシュ・フロー関連指標について、遡及処理後の数値を記載しています。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.その他については、生産は行っていません。
その他の一部で受注生産を行っていますが、金額僅少のため省略しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2.販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上である販売先はありません。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。また、この連結財務諸表を作成するにあたっては、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積りを用いています。これら繰延税金資産の回収可能性や固定資産の減損等の見積りは、過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果と異なる可能性があります。
なお、繰延税金資産の回収可能性に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当連結グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。当連結グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入及び社債により調達しています。
当連結会計年度末現在において、当連結グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の総額は969億1百万円となっています。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。