E34712 Japan GAAP
前期
45.0億 円
前期比
133.2%
株価
1,452 (05/02)
発行済株式数
11,595,200
EPS(実績)
21.25 円
PER(実績)
68.33 倍
前期
610.2万 円
前期比
102.7%
平均年齢(勤続年数)
33.5歳(2.3年)
従業員数
283人
(1)パーパス
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、労働生産性の低迷、多様な働き方への対応、テクノロジーの飛躍的進化など、日本の社会は大きく変容しています。当社は、こうした変化を適切に捉えながら、人や社会に必要とされる存在であり続けることを目指しており、職歴・学歴や年収など目に見える事項だけでひとを判断するのではなく、さまざまな情報を集めて人物像に奥行きをもたせることで、ひとの可能性を正しく理解できる世界をつくりたいと考えております。このような考えに基づき、当社が長期的に目指す姿や持続的に社会へ提供していく価値を明らかにするため、社会的な存在意義を明文化したパーパスを策定しております。
パーパス:“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える
このパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指してまいります。
(2)当社のサービス
当社は、企業の人材情報をクラウド(注1)上で一元管理し、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム『カオナビ』を提供しております。『カオナビ』は、社員の顔や名前、経験、評価、スキル、才能などの人材情報を一元管理して可視化することができ、最適な人材配置や育成といった企業の人材戦略をサポートするシステムです。タレントマネジメントに役立つさまざまな機能を提供することで、次のような戦略的人事の実現に貢献します。
① 人材情報の一元化・見える化
② 人事業務の効率化
③ 経営の意思決定支援
④ 評価運用の効率化
⑤ 採用のミスマッチ・ハイパフォーマー(注2)分析
⑥ 人材配置・要員シミュレーション
⑦ スキル管理・人材育成
⑧ モチベーション分析・離職分析
⑨ 従業員満足度調査・エンゲージメント(注3)向上
なお、当社の事業はタレントマネジメントシステム『カオナビ』の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(3)当社の強み
正解のないタレントマネジメントへの取り組みに対して、「システム」と「サポート」の両輪を顧客に提供できることが当社の強みです。
① 柔軟性とユーザビリティを徹底的に追求したシステム設計
『カオナビ』のシンプルなユーザー・インターフェースは、社員の誰もがマニュアル不要で直感的に操作することが可能であり、また、人材データベースを自由にカスタマイズすることができます。人材情報のなかで必要とされる項目は企業や業界によって大きく異なります。そのため、データベースに入力・保存できる項目が固定化されている場合、一部の情報がシステム化されず、紙やエクセルなどで別に管理する必要が生じてしまいます。『カオナビ』の技術的特徴として、ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作でデータベースの設定やレイアウトをカスタマイズできるため、工数と費用をかけずに顧客自身で自由自在にデータベースを構築し、人材情報の一元管理を実現します。
また、機微性の高い人材情報を一元管理すると同時に、全社員での活用ができるよう、セキュアなアクセス管理が可能となっております。
② タレントマネジメントの成功確率を高めるサポート体制
3,000社以上の顧客を支援する当社に蓄積されたタレントマネジメントの活用ノウハウを、顧客に対して存分に提供しております。経験豊富な専任スタッフによるサポートは勿論のこと、カスタマーサクセスの取り組みとして、他社と交流し活きた事例を学び合えるコミュニティ「カオナビキャンパス」を設立し、自社の課題に合わせた学習プログラムや豊富な活用事例を検索できるライブラリなどを体系的に提供しております。さらに2023年3月に、顧客と人事分野の専門家をつなぐオンラインプラットフォーム「カオナビキャンパスLab」をスタートしました。人事コンサルタントや社会保険労務士などの専門知識や知見を活用する機会を提供することで、タレントマネジメントの支援体制をさらに強化してまいります。
(4)当社のビジネスモデル
『カオナビ』は、企業を主な顧客としてクラウドサービス型でのサービス提供を行っております。クラウドサービスとは、インターネットなどのコンピュータネットワークを経由してソフトウエアをサービスとして提供する形態のことで、SaaS(Software as a Service)と呼ばれております。
当社は、自社のマーケティング活動と紹介パートナーからの紹介による新規顧客の獲得に加えて、セールスパートナー経由での販売も行っております。
当社の主要サービスである『カオナビ』の収益構造は、クラウド上で提供するサービスの利用料金を使用期間に応じて受領するサブスクリプション(月額課金)モデルとなっており、これをストック収益として計上しております。『カオナビ』の利用料金は従業員の登録人数に応じた料金体系となっており、さらに利用プランに応じて料金が異なります。各プランの概要は以下のとおりです。
※画像省略しています。
*1:オプションサービスとしては、「パルスサーベイ」や「申請ワークフロー」などがあります。
2012年4月に事業を開始して以来、『カオナビ』は継続的に成長し、2023年3月期におけるストック収益は5,156,219千円、売上高ストック比率(注4)は86.1%となっております。また、マーケティングから受注に至る一連のプロセスにおいてモニタリング体制の強化と営業アプローチの改善を重ねることで、『カオナビ』を利用する企業や団体等のユーザー数も成長を続けており、2023年3月末の利用企業数は3,059社となっております。なお、直近5事業年度における各指標の推移は以下のとおりです。
|
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
ストック収益 (千円) |
1,283,602 |
2,102,134 |
2,991,485 |
3,930,959 |
5,156,219 |
売上高ストック比率(%) |
75.9 |
80.1 |
87.9 |
87.4 |
86.1 |
利用企業数(社) |
1,293 |
1,791 |
2,061 |
2,497 |
3,059 |
※当社は2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しております。
サービスの継続利用が前提となるビジネスモデルのため、当社では顧客のサービス活用推進を図るためのカスタマーサクセスやプロダクト開発・機能強化に注力しております。この取り組みにより、当社の解約率(注5)の直近12ヶ月平均は、2023年3月において0.51%と低い水準を維持しております。今後も顧客体験価値を高めることで、低い解約率を維持できるよう努めてまいります。
(注)1.クラウド
クラウドコンピューティングの略語で、インターネット経由で必要な時に必要なだけITシステムを利用する仕組みの総称をいいます。サーバーやソフトウエアなどのITシステムの設備を自社で保有することに比べ、ITシステムに関する開発や保守・運用の負担が軽減され、コスト削減に寄与します。
2.ハイパフォーマー
スキルや経験、ノウハウを生かして高い成果を生み出せる優れたパフォーマンスを持つ人材のことをいいます。ハイパフォーマーの特徴や行動パターンを分析することで、人材育成のためのデータや、採用時に用いる採用基準への活用も期待できます。
3.エンゲージメント
企業と従業員が相互に影響し合い、共に必要な存在として絆を深めながら成長できるような関係を築いていくことをいいます。
4.売上高ストック比率
売上高全体に占めるストック収益の比率をいいます。
5.解約率
MRRの解約率を示しています。MRRとはMonthly Recurring Revenueの略語で、月額利用料金の合計額をいいます。MRRの解約率は、当月の解約により減少したMRRを、前月末のMRRで除して算出しております。
[事業系統図]
※画像省略しています。
当社は、『カオナビ』のサービス提供に加えて、導入顧客に対する設定支援等の有償のユーザー支援サービスを提供しております。さらに、『カオナビ』から外部のサービスを利用する外部連携サービスも提供しており、当社は外部連携サービスの提供事業者(コラボレーションパートナー)から『カオナビ』のプラットフォーム提供の対価として、プラットフォーム利用料を受領しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
a.資産
当事業年度末における資産合計は4,622,912千円となり、前事業年度末に比べ629,952千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が564,506千円増加したことによるものです。
b.負債
当事業年度末における負債合計は3,131,602千円となり、前事業年度末に比べ346,521千円増加いたしました。これは主に、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が127,164千円、未払金が111,184千円減少したものの、前受収益が563,194千円増加したことによるものです。
c.純資産
当事業年度末における純資産合計は1,491,310千円となり、前事業年度末に比べ283,431千円増加いたしました。これは、資本金が18,517千円、資本準備金が18,517千円増加し、また、当期純利益の計上246,397千円があったことによるものであります。
② 経営成績の状況
当社は、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指しております。その実現のため、「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンを掲げ、企業の人材情報をクラウド上で一元管理し、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム『カオナビ』を提供しております。
生産年齢人口の減少を背景に、生産性の向上、多様な働き方への対応、人材の定着や離職防止、採用の強化など、企業はさまざまな人事課題を抱えております。その解決に向けて、タレントマネジメントシステムの導入ニーズは高まっており、その市場は今後さらなる拡大が見込まれております。
このような環境の中、当社は中長期における持続的な成長の実現に向け、積極的な人材採用や育成をはじめとした組織体制の強化、サービス認知度向上を加速するためのマーケティング活動、既存顧客に対するカスタマーサクセスなどに取り組んでまいりました。また、顧客ニーズに対応するプロダクトの開発・アップデートにも注力し、新機能として、人的資本データを簡単かつ柔軟に可視化できる「カスタムガジェット」をリリースいたしました。
この結果、当事業年度末におけるARR(注1)は前事業年度末比29.7%増の6,369百万円、『カオナビ』の利用企業数は同22.5%増の3,059社、ARPU(注2)は同5.8%増の174千円となりました。また、解約率(注3)の直近12ヶ月平均は0.51%(同0.05ポイント減)となり、低い水準を維持しております。
以上の結果、当事業年度の経営成績は売上高5,990,097千円(前事業年度比33.2%増)、営業利益322,301千円(前事業年度比85.1%増)、経常利益317,053千円(前事業年度比93.9%増)、当期純利益246,397千円(前事業年度比17.3%増)となりました。
また、当社の事業はタレントマネジメントシステム『カオナビ』の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(注)1.ARR
Annual Recurring Revenueの略で、四半期末のMRR(Monthly Recurring Revenueの略で月額利用料の合計)を12倍して算出しています。なお、MRRは管理会計上の数値です。
2.ARPU
Average Revenue Per Userの略で、四半期末のMRRを利用企業数で除して計算しています。
3.解約率
MRRの解約率を示しており、当月の解約により減少したMRRを前月末のMRRで除して計算しています。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ564,506千円増加し、3,399,662千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は816,276千円となりました。これは主に、未払金の減少額109,904千円等による資金の減少があったものの、前受収益の増加額563,194千円、税引前当期純利益の計上289,197千円、減価償却費の計上129,662千円等の資金の増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は134,476千円となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出61,951千円、敷金の差入による支出48,888千円等の資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は117,295千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出127,164千円の資金の減少があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
販売実績は、次のとおりであります。
当事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
5,990,097 |
133.2 |
(注)1.当社の事業はタレントマネジメントシステム『カオナビ』の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。特に、繰延税金資産の回収可能性については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 経営成績の分析
a.売上高
当事業年度における売上高は5,990,097千円(前事業年度比1,493,753千円の増加)となりました。これは主に、マーケティングから受注に至る一連のプロセスにおいてモニタリング体制の強化と営業アプローチの改善を重ねて新規顧客を獲得していく一方で、既存顧客のサービス活用推進を図るためのカスタマーサクセスやプロダクト開発・機能強化とに注力して解約率を低水準に抑えた結果、タレントマネジメントシステム事業が順調に成長したことによるものであります。なお、当事業年度末の『カオナビ』の利用企業社数は3,059社であり、前事業年度末比で562社増加しております。
b.売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は1,569,883千円(前事業年度比368,542千円の増加)となりました。これは主に、労務費、外注費及びサーバー費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は4,420,214千円(前事業年度比1,125,211千円の増加)となりました。なお、当事業年度の売上総利益率は73.8%(前事業年度は73.3%)となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業損益
当事業年度における販売費及び一般管理費は4,097,913千円(前事業年度比976,998千円の増加)となりました。これは主に、人員拡大に伴う給与の支払いとサービスの認知度向上のための広告宣伝等マーケティング費用が増加したことによるものであります。この結果、営業利益は322,301千円(前事業年度比148,213千円の増加)となりました。なお、当事業年度末の従業員数は283名であり、前事業年度末比で54名増加しております。
d.経常損益
当事業年度において営業外収益が81千円、営業外費用が5,329千円発生しております。この結果、経常利益は317,053千円(前事業年度比153,523千円の増加)となりました。
e.当期純損益
当事業年度において、法人税、住民税及び事業税が77,347千円、法人税等調整額が△34,547千円発生しております。この結果、当期純利益は246,397千円(前事業年度比36,331千円の増加)となりました。
③ 財政状態の分析
当事業年度における財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、外注費、広告宣伝費等の営業費用であります。
運転資金は自己資金を基本としており、投資資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当事業年度末における借入金残高は327,381千円となっております。また、当事業年度末の現金及び現金同等物は3,399,662千円であり、流動性を確保しております。
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針
今後、当社が長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に事業環境の変化に関する情報を入手して分析を行い、『カオナビ』が企業の抱える人事課題の解決や戦略的人事の実現に繋がるためのサービス改善や機能拡充を継続的に行うことで企業に貢献し、合わせてESGへの様々な取り組みも行うことで持続可能な社会の実現にも寄与していきたいと考えております。
その結果、企業の働き方やマネジメントのあり方をより良いものに変え、個人一人ひとりの個性や才能が理解されることによるキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指し、事業を展開していく方針であります。