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最終更新:

E31382 Japan GAAP

売上高

2.86億 円

前期

0.0 円

前期比

0%

時価総額

295.1億 円

株価

430 (05/02)

発行済株式数

68,630,002

EPS(実績)

-38.53 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

1,596.7万 円

前期

1,189.7万 円

前期比

134.2%

平均年齢(勤続年数)

47.8歳(3.0年)

従業員数

29人

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

(1)当社の事業領域

当社グループ(以下、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、日米において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。

 

≪再生細胞薬とは≫

当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。

 

 

(2)事業の内容

当社グループは、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立しており、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。

 

大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。

なお、国内で進めているSB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、自社での販売を目指しています。

 

≪当社グループの収入形態≫

 

収入形態

内容

A

契約一時金

ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。

B

マイルストン収入

開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。

C

開発協力金

開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。

D

ロイヤルティ収入

製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。

E

製品供給収入

製品供給の対価として得られる収入。

 

当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。

※画像省略しています。

 

(3)開発の状況

①当社グループが手掛ける再生細胞薬

当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。

当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。

当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。

 

※画像省略しています。

 

≪SB623の概要≫

SB623は神経機能を再生する作用が期待される治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。

当社グループが開発を手掛ける再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品承認取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。

SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験では、投与翌日には退院している被験者もいます。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。

作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。

特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。

 

②SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況

外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。

当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月末日までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を効能、効果として、厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請(以下、「本申請」という。)を行いました。本申請については、2024年3月25日開催の薬事食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会において、審議されました。審議の結果、臨床に関する論点については、臨床現場に提供する意義はあると評価されたため、承認取得に向けては品質に関する論点に絞られたものと認識しています。今後は、当局と協議し、品質に関する追加のデータ等を提出します。

慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。

 

※画像省略しています。

 

③SB623慢性期脳梗塞プログラムの開発状況

脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。

発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。

 

当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。

 

※画像省略しています。

本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえた臨床試験デザインの検討等、次の臨床試験の開始に向けた取り組みを、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに進めていきます。

 

④その他のパイプラインの開発状況

≪SB623慢性期脳出血プログラム≫

上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2又はフェーズ3からの開始を見込んでおり、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに準備を進めていきます。

 

≪SB623網膜疾患プログラム≫

SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。

対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。

網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。

 

≪SB623その他の疾患への展開≫

パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。

その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。

 

≪SB618≫

再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。

SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。

 

≪SB308≫

再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。

筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。

 

≪MSC1・MSC2≫

2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。

炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む)における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。

 

⑤パートナー製薬会社との契約の締結状況

当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。

今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。

 

(4)事業の特徴

①収益性の確保に向けた取り組み

イ.他家移植であること

一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。

自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。

 

ロ.量産化技術が確立されていること

ドナーの骨髄液を培養して、均質な製品を大量に製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されています。

なお、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来又は中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。

 

ハ.製品供給権が確保されていること

他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。

一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。

そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。

 

②対象となる患者数の多さ

当社グループが手掛ける再生細胞薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計しています。

外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。

 

③販売に必要な知的財産を自己保有

当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。

2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。

特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。

 

≪SB623関連の特許取得地域≫

米国、日本、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、他

 

(5)今後の展開

国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、2024年3月25日開催の薬事食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会における審議結果を踏まえて、製造販売承認の早期取得に向けて、当局と協議し、品質に関する追加のデータ等を提出します。また、承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築も並行して推進していきます。

その後、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における臨床試験の開始に向けた取り組みを進めていきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムのグローバル展開についても、他社との提携等のオプションを含め、臨床試験の開始に向けた準備を進めていきます。

このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。

 

<用語解説>

 

番号

用語

意味・内容

マイルストン

医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。

ライセンスアウト

自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。

ロイヤルティ

医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。

上市

研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。

再生細胞薬

病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。

細胞調製

ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。

フェーズ

有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。

米国食品医薬品局(FDA)

U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。

分注

一定量で少量ずつに分けること。

10

免疫抑制剤

免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。

11

神経栄養因子

神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。

12

細胞外マトリクス

生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。

13

パイプライン

新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。

14

INDミーティング

Investigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。

15

先駆け審査指定制度

2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。

 

 

番号

用語

意味・内容

16

RMAT

Regenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。

17

欧州医薬品庁(EMA)

European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。

18

先端医療医薬品(ATMP)

Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、又は細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。

19

医薬品医療機器総合機構

(PMDA)

Pharmaceuticals and Medical Devices Agency。医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済を図り、医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行う、厚生労働省所管の独立行政法人。

24/04/24

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

イ.経営成績

日本の再生医療業界においては、2014年11月に施行された再生医療安全性確保法及び改正薬事法によって、再生医療の産業促進が進むなか、2023年末までに20品目が再生医療等製品としての製造販売承認を取得しました。また、米国においては、2016年12月に可決された21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもと、重篤な疾患の治療を目的とした再生医療製品の迅速承認を可能とするRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定制度が設けられ、2021年にはRMAT指定品目として初のBLA(Biologics License Application)承認取得を含むRMAT指定3品目がBLA承認を取得しました。2023年にはRMAT指定4品目がBLA承認を取得し、17品目が新たにRMAT指定を受けました。このように、2023年は日本および米国において再生医療の実用化に向けた継続的な進展が見られました。

このような環境のもと当社グループは、アンメットメディカルニーズが高い中枢神経系疾患を主な対象とし、当社グループ独自の再生細胞薬SB623の事業化を目指して、研究開発を進めました。

SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、日本を含む国際共同フェーズ2臨床試験(被験者61名)にて、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得て、2019年4月には、国内で厚生労働省より再生医療等製品として先駆け審査指定制度の対象品目の指定を受けました。当社は、当該指定以降、先駆け審査指定制度の枠組みにおいて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を進め、2022年1月に先駆け総合評価相談を終了し、2022年3月に当社初となる国内での再生医療等製品製造販売承認申請(以下、「本申請」という。)を完了しました。本申請については、2024年3月25日開催の薬事食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会において、審議されました。審議の結果、臨床に関する論点については、臨床現場に提供する意義はあると評価されたため、承認取得に向けては品質に関する論点に絞られたものと認識しています。今後は、当局と協議し、品質に関する追加のデータ等を提出します。

慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて開始した慢性期脳出血プログラムについては、国内における臨床試験の開始に向けた取り組みを、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに進めていきます。

SB623慢性期脳梗塞プログラムについては、主要評価項目未達となった米国でのフェーズ2b臨床試験(被験者163名)の追加解析結果を踏まえて、国内における臨床試験の開始に向けた取り組みを、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに進めていきます。

このような状況のなか、当連結会計年度は、SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認に向けた製造関連の費用が主なものとなり、研究開発費2,849百万円を計上した結果、営業損失は4,539百万円(前連結会計年度は営業損失7,899百万円)となりました。一方、為替相場の変動による為替差益が発生したため、営業外収益として為替差益1,746百万円を計上し、経常損失は2,824百万円(前連結会計年度は経常損失4,698百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失2,644百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失5,559百万円)となりました。

なお、当社グループは他家幹細胞を用いた再生細胞事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しています。

 

ロ.財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産の残高は、4,937百万円(前連結会計年度末は6,967百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,029百万円減少いたしました。これは、現金及び預金が2,278百万円減少したことが主な要因であります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産の残高は、109百万円(前連結会計年度末は77百万円)となり、前連結会計年度末に比べて32百万円増加いたしました。これは、無形固定資産が42百万円増加したことが主な要因であります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債の残高は、905百万円(前連結会計年度末は1,090百万円)となり、前連結会計年度末に比べて184百万円減少いたしました。これは、未払費用が171百万円増加した一方で、未払金が215百万円減少したことが主な要因であります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債の残高は、1,349百万円(前連結会計年度末は1,525百万円)となり、前連結会計年度末に比べて176百万円減少いたしました。これは、繰延税金負債が91百万円増加した一方で、長期借入金が268百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産合計は、2,792百万円(前連結会計年度末は4,428百万円)となり前連結会計年度末に比べて1,636百万円減少いたしました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,345百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失2,644百万円の計上、為替換算調整勘定が1,439百万円、新株予約権が243百万円減少したことが主な要因であります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,389百万円(前連結会計年度末は6,675百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,285百万円減少いたしました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動に使用した資金は4,765百万円(前連結会計年度は7,434百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,542百万円、為替差益1,651百万円、前渡金の増加額294百万円、未払金の減少額231百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動に使用した資金は19百万円(前連結会計年度は10百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出11百万円、有形固定資産の売却による収入35百万円、無形固定資産の取得による支出43百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動において獲得した資金は2,370百万円(前連結会計年度は9,445百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出268百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入2,651百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ロ.受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ハ.販売実績

該当事項はありません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表において、損益又は資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.財政状態の分析

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産の残高は、4,937百万円(前連結会計年度末は6,967百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,029百万円減少いたしました。これは、現金及び預金が2,278百万円減少したことが主な要因であります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産の残高は、109百万円(前連結会計年度末は77百万円)となり、前連結会計年度末に比べて32百万円増加いたしました。これは、無形固定資産が42百万円増加したことが主な要因であります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債の残高は、905百万円(前連結会計年度末は1,090百万円)となり、前連結会計年度末に比べて184百万円減少いたしました。これは、未払費用が171百万円増加した一方で、未払金が215百万円減少したことが主な要因であります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債の残高は、1,349百万円(前連結会計年度末は1,525百万円)となり、前連結会計年度末に比べて176百万円減少いたしました。これは、繰延税金負債が91百万円増加した一方で、長期借入金が268百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産合計は、2,792百万円(前連結会計年度末は4,428百万円)となり前連結会計年度末に比べて1,636百万円減少いたしました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,345百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失2,644百万円の計上、為替換算調整勘定が1,439百万円、新株予約権が243百万円減少したことが主な要因であります。

 

ロ.経営成績の分析

(営業損益)

当連結会計年度における営業損失は、研究開発費2,849百万円、その他の販売費及び一般管理費1,690百万円の計上により、4,539百万円(前連結会計年度は営業損失7,899百万円)となりました。

 

(経常損益)

当連結会計年度における経常損失は、営業外収益として為替相場の変動による為替差益1,746百万円の計上により、2,824百万円(前連結会計年度は経常損失4,698百万円)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失は2,644百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失5,559百万円)となりました。

 

 

ハ.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

ニ.経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

ホ.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、再生細胞薬SB623の製品化の実現に向けて、先行して研究開発に資金を充当しています。当連結会計年度は、SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得に向けた費用を中心として、研究開発費2,849百万円を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローは、4,765百万円の支出となりました。また、第三者割当による行使価額修正条項付第34回新株予約権(行使指定・停止指定条項付)の発行、並びに、銀行借入の返済等により、財務活動によるキャッシュ・フローは、2,370百万円の獲得となりました。これらが資金の主な動きとなり、その結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、4,389百万円となりました。