株式会社ペルセウスプロテオミクス

上場日 (2021-06-22)  医薬品バイオ創薬グロース

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

ニュース

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最終更新:

E35510 Japan GAAP

売上高

1.00億 円

前期

9,420.1万 円

前期比

106.6%

時価総額

72.0億 円

株価

542 (07/12)

発行済株式数

13,279,100

EPS(実績)

-83.17 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

729.9万 円

前期

649.0万 円

前期比

112.5%

平均年齢(勤続年数)

46.2歳(8.4年)

従業員数

25人

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社は東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された蛋白質発現・抗体(※1)作製技術を基盤として、診断・創薬標的に対する抗体の医療への活用を目指して設立されました。創業以来、医薬品シーズ(※2)抗体を創生することで、がん及びその他疾患の治療用医薬品の研究開発、及び関連業務を行っております。LSBMで開発された蛋白質発現技術により、従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、そのような標的蛋白質に対する抗体の取得がより容易になりました。これをハイブリドーマ法(動物免疫法)(※3)と組み合わせることで、親和性(※4)の高い抗体の効率的な取得を可能にしています。さらに、当社は多様性に富むファージ抗体ライブラリ(※5)と特許技術でもある独自の抗体スクリーニング(※6)技術を保有しており、対象とする疾患の細胞に適用することで、創薬標的を探索するとともに、従来のハイブリドーマ法で得られるものとは異なる特徴を持つ高機能シーズ抗体を取得することを可能にしています。また、新たな抗体取得技術として、シングルBセルスクリーニング法(※7)の活用も開始しました。当社の技術は、これらの抗体技術とシーズ探索技術を融合し、医療ニーズにマッチした医薬品シーズ抗体を取得することを特長としております。また、当社は東京大学発であることを起点として、さらにそのネットワークを広げ、多くのアカデミアとの連携により「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としております。

<当社の抗体取得技術>

 当社は以下のアプローチにより、シーズ探索を行っております。一つは、動物に免疫して取得する一般的なハイブリドーマ法です。グリピカン3やカドヘリン3に対する抗体はこの手法で取得しました。また、動物を用いずに抗体を取得するファージディスプレイ法(※8)をがん細胞に適用することで、トランスフェリン受容体1に対する抗体を取得しております。さらに、シングルBセルスクリーニング法では、特定の抗原に対してのみ反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得します。ハイブリドーマの作製が難しい動物種のモノクローナル抗体も生産することが可能です。

 

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 世界におけるバイオ医薬品市場の推移を見ると、年々バイオ医薬品の売上高は増加しており、2026年には約5,489億ドルに達するとも予測されています(出典:Evaluate®)。

 また、2023年度の世界の医薬品の売上高上位10品目のうち、抗体医薬品(※13)は6品目を占めております(出典:日経BP社 「日経バイオテクONLINE」2024年5月8日掲載https://bizboard.nikkeibp.co.jp/bp_bto/atcl/column/16/011900001/24/05/06/00386/?ST=pharma&SRV=pharma&bzb_pt=0)。

 このような事業環境の中で、当社は機能性の高い抗体を当社独自の技術で作製し治療薬として開発しているほか、抗体に放射性同位体や抗がん剤等を化学的に結合させ、がん細胞への攻撃力を高めた治療薬の研究開発も行っております。

 

(1)当社の事業モデル

 当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントでありますが、以下の各分野において製品化に向けた研究開発、ライセンス、製造方法の確立に取り組んでおります。

① 創薬

 当社は、長年の経験に基づいたハイブリドーマ法、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法、及びシングルBセルスクリーニング法により、高機能抗体を取得し、必要に応じて抗体に遺伝子工学的な改変あるいは化学的な修飾を施し、抗体医薬品候補として研究開発を進めております。

 創薬の収益モデルは、国内外の製薬企業に対して、当社が開発した医薬品候補を導出(特定の医薬品を開発、販売するために必要な知的財産権の使用を許可すること。)することによる契約一時金収入、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、上市(※14)後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入等を獲得することであります。

 

※画像省略しています。

 

 

収入の形態

内容

契約一時金

契約締結時に一時金として受け取る対価。

マイルストーン収入

製薬企業等提携先が当社と契約締結後、当社又は提携先における研究開発が進捗し、契約上規定された特定の開発目標を達成した時の対価である開発マイルストーンと、医薬品販売後に、事前に設定した年間販売額を達成した時に受け取る収益である販売マイルストーンがあります。

ロイヤリティ収入

上市後に当該製品売上高に対して契約に設定された一定割合を受け取る収入。

 

 当社は、これまでに創出したがん治療用抗体のうち、肝臓がんを標的とする抗体及び固形がんを標的とする放射性同位体標識抗体を、それぞれ製薬企業である中外製薬株式会社及び富士フイルム株式会社に導出しております。このうち富士フイルム株式会社に導出した2つの抗体(PPMX-T002及びPPMX-T004)は、同社の子会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡により、2022年3月に実施権が返還されました。現在、有効性を高めた新たな抗体医薬品としての開発をそれぞれ進めております。また、難治性血液がんを標的とした抗体(PPMX-T003)は、2014年に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された後、開発を進め、2018年より企業主体の開発に切り替えて自社で治験を推進中です。この抗体については、治験中の対象疾患とは別の疾患においても、新たな医薬品候補となる可能性が認められ、2022年3月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されております。

 なお、当社における抗体創薬の特長は、医薬品として高い薬理効果が期待できる新規抗体を効率的に取得することです。この抗体の物質特許が事業のベースになり、その抗体を医薬品として患者さんに届けるべく非臨床試験、臨床試験及び薬事承認を得るまでいかに早く進めるかが課題となります。導出は、一般的に、特許取得後すぐに大手製薬企業に導出するケース、自社で非臨床試験を完了してから導出するケース、自社単独であるいはパートナー企業と共同で臨床試験を実施し、パイプラインの価値を高めてから製薬企業に導出するケース等があります。この導出の形態は、薬剤の特性、薬剤ごとに異なる臨床試験の計画、適応疾患及び開発費用等を勘案して決定いたします。

 近年、抗体医薬品の認知度が高まる中、多数の抗体医薬品が上市され、抗体医薬品ビジネスの競争も激化しつつあります。これに伴い、非臨床段階では有利な経済条件で導出することが難しくなりつつあります。当社は、抗体医薬品を早期に患者さんに届けるため、自社でも積極的に臨床試験を実施し、製薬企業への導出を推進してまいります。

 本書提出日現在においては、適用疾患の範囲が広いと期待される抗トランスフェリン受容体1抗体の自社での臨床試験を推進するとともに、放射性同位体標識抗体及び抗体薬物複合体(ADC)の開発も進めております。さらに、新規抗体に関しては、当社の保有するファージ抗体ライブラリを探索して取得した複数の候補の評価を行っております。

 なお、各開発品の詳細については、後述「(3)当社の開発品」をご参照ください。

 

② 抗体研究支援

 当社は、これまでにがん等を対象とした抗体医薬品や研究用試薬の創出を通じて培ってきた技術や経験を活かして、抗体に関連した研究支援(研究受託)を実施しております。特にアカデミアや製薬企業に対する抗体研究支援は、当社の創薬活動におけるネットワークを広げる等のシナジー効果があります。

 

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a.抗体作製

 動物細胞を利用した組換え蛋白質の生産系を利用して、薬効を確認する試験に使用することが可能な程度に高度に調製したIgG型抗体(※16)の作製を行います。一般にマウスなどを対象とした動物試験で使用する抗体の必要量は数十mg程度ですが、一般の試薬会社では100単位で販売されるのに対し、組換え蛋白質として抗体の生産を委託会社に依頼した場合、数g単位のような過剰量であることも多く費用が高額になりがちです。それに対し、当社は生産量にフレキシブルに対応することが可能です。

 

b.研究受託

 抗体は物理的な安定性や薬理的な効果など様々な観点での試験が行われ、その用途に応じて、最適な抗体が選択される必要があります。当社ではこれまでに培った抗体解析・評価ノウハウをもとに、ある標的に対して得られる多数の抗体群の中から、診断・治療に適した抗体を選別・提供するような研究受託を行います。また前述した抗体作製技術によって作製した抗体などを利用して薬効試験を代行・コンサルティングするなど、当社の抗体開発経験をもとにした各種サービスを提供することで、大学等の研究を支援いたします。

 

c.配列解析

 抗体産生細胞(ハイブリドーマ、一般に一種類のマウス抗体を産生する)から、抗体配列(※17)を取り出しその遺伝子配列を決定します。抗体の遺伝子配列は様々な標的との結合が可能となるように多様な組み合わせの配列を生成するという特有の特殊性を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることが困難ですが、当社は独自に設計した遺伝子増幅用配列を用いることで、その抗体配列情報を解析することが可能です。そして、この解析を行うことでこの結果をもとにした特許出願を行ったり、前述した組換え蛋白質として抗体作製に用いたりすることが可能となります。

 

③ 抗体・試薬販売

 当社では、がんや生活習慣病等、各種疾患のバイオマーカー(※18)となる核内受容体抗体を全48種類取り揃えており、世界の研究者に向けて研究用試薬として販売しております。また、PTX3 ELISAキット(※19)の開発に成功し、研究用試薬として販売しております。

 

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a.核内受容体抗体

 核内受容体とは細胞内でホルモンなどと結合することで遺伝子の発現調節を行う蛋白質で、ヒトでは48種類存在します。核内受容体は生命維持の根幹に関わる遺伝子調節機能を担っており、創薬標的としても注目されている蛋白質群です。当社は、この核内受容体に対する抗体を全種類開発し、研究用抗体として世界の研究者に販売提供しております。

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b.研究用試薬 PTX3 ELISA キット

 蛋白質であるPTX3の血液中の濃度は血管炎症の程度を反映する指標と考えられています。当社はこのPTX3の濃度を高感度に測定できる測定試薬を開発し、研究用試薬として販売しております。なお、炎症の程度を鋭敏に捉えるPTX3の特徴を活かし、新型コロナ感染症等による肺炎や血管炎症を伴う各種疾患の重症化を予測するためのPTX3迅速計測キットの開発も別途進めております。

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<事業系統図>

 

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(2)当社の技術

 治療用抗体を取得するために、当社では①抗体探索、②抗体工学、③標的探索、④機能性蛋白質発現技術の各技術を保有しております。

① 抗体探索

 抗体を取得する方法として、当社ではファージディスプレイ法、ハイブリドーマ法及びシングルBセルスクリーニング法を実施しております。また、ファージディスプレイ法によって取得した抗体を効率的にスクリーニングする技術として、当社独自の手法であるICOS法(Isolation of antigen/antibody Complexes through Organic Solvent method、特許第4870348号)を開発し、活用しております。

a.ファージディスプレイ法

 動物を用いない抗体取得方法として、以下の2つの抗体ライブラリから特定の標的分子と結合する抗体配列を選別します。当社は、保有する抗体ライブラリと独自のスクリーニング技術を組み合わせることで、薬剤となりうる抗体を取得しています。優れた抗体は、狙った標的分子のみに強く結合する性質を持ち、これを特異性(※22)、高親和性と呼びます。またその性質により、標的分子の機能を制御する場合は機能性抗体と呼ばれ、抗体医薬品においては重要な性能となります。

(a)ヒト抗体ライブラリ

 当社は多種類のヒト抗体配列を揃えたヒトナイーブ抗体ライブラリ(※23)を保有しています。抗体は、それぞれ2本のH鎖(重鎖:分子量が大きい)とL鎖(軽鎖:分子量が小さい)によって構成されています。抗体の抗原認識に対する寄与度は、L鎖よりもH鎖の方がより大きいことが知られています。そこで、当社は保有するヒト抗体ライブラリのH鎖の多様性を増やして、多彩な抗原を認識できる抗体の存在比率を大幅に高めることにより、標的分子に対して多数の抗体群を取得することを可能としました。これにより、標的抗原に対して親和性の高い抗体を取得する可能性を向上させております。また、標的抗原に対して多数のエピトープ(※24)を認識する抗体群を取得することで、機能性抗体を取得する確率も高めております。

 ナイーブレパートリーと呼ばれる、体内の抗体の中でも特に未熟な抗体は、一般的に、免疫寛容(※25)を受けておらず、さまざまな標的に対する反応性を持っています。当社ではそのような素材からライブラリに格納する抗体集団を構築する手法により、様々な標的分子に対して最適な抗体を作出することを可能にしております。

 

(b)ラクダ抗体ライブラリ

 ラクダ抗体(※26)は、他の動物種の抗体とは異なりサイズが小さいため生産が容易で、熱に対しても高い安定性を示すことが特徴です。また他の蛋白質との一体化など、用途に適した抗体へ改変することが容易なため、医薬品以外にも様々な用途で活用することが期待されています。

 当社は、こうした優れた特性を持つラクダ抗体配列を多種類揃えたライブラリを保有しております。

 

(c)抗体スクリーニング技術

 抗体医薬品の標的分子となる蛋白質は、細胞膜上に発現しますが、その蛋白質は折り畳まれて複雑な立体構造を作り出しています。抗体は抗原認識の際に標的分子の持つ立体的な構造に大きく影響されますので、スクリーニングの際には細胞を用いることが効果的です。

 しかしながら生きた細胞をそのままスクリーニングに使うと、標的に特異的でない多数の抗体も含まれてしまうという問題が生じます。そのため、通常は精製された抗原がスクリーニングに使われますが、当該手法では、精製の過程で蛋白質の立体構造が失われてしまうため、標的蛋白質に対する最適な抗体を取得することは困難でした。これを解決した方法が、当社が独自に開発したICOS法です。ICOS法は有機溶剤を利用して、細胞が有機層に入る過程で、非特異的に吸着した抗体を細胞表面から除去する手法です。これにより、細胞上に存在する蛋白質の立体構造を反映した、親和性の高い抗体のみを効率的に取得することが可能となりました。

 また細胞膜上の蛋白質に限らず、通常免疫法では取得が困難な標的に対しても最適なスクリーニング技術を開発しており、蛋白質はもちろん、低分子等様々な標的に対する抗体を取得することができます。

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b.ハイブリドーマ法

 抗体作製技術の一つで、当社の抗体作製技術の出発点となっている基本的な重要技術です。蛋白質等の標的分子をマウス等の動物に免疫することで、抗体を産生する細胞(ハイブリドーマ)を作出する、古典的ですが信頼性の高い手法です。現在市販されている抗体医薬品の多くがこの手法で作られています。

 抗体医薬品の主な標的である膜蛋白質の多くは、ヒト以外の動物でも同じ形で存在することが知られています。この様な標的の場合、通常の免疫方法では免疫が自分自身を攻撃するのを防ぐ機構を持つために、ヒトを形作るのと同じ構造を持つ蛋白質に対する機能性抗体の取得は難しいことが知られています(この現象を免疫寛容といいます)。しかし当社では、東京大学との多くの共同研究を通じて得た最先端の知識と、アジュバント(※27)と呼ばれる免疫増強剤の使用・投与方法の工夫といったノウハウを組み合わせることで、高い結合力で的確に標的に結合する抗体を効率的に取得しています。

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c.シングルBセルスクリーニング法
 シングルBセルスクリーニング法は、特定の抗原に対してのみ反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得する方法です。
 この方法は極めてまれな抗体産生細胞を高精度かつ高効率で特定することができるため、極めて高い特異性を持つ抗体が取得できます。また、得られた多数のB細胞から抗体遺伝子を取得することでスループット高く多様な抗体を得ることが可能です。得られた抗体遺伝子を使って抗体産生細胞を作ることができるため、ハイブリドーマの作製が難しい動物種のモノクローナル抗体でも生産することが可能です。

② 抗体工学

a.抗体配列解析

 抗体配列を100%正確に解析することは、後述する抗体デザインを行う上で極めて重要な操作となります。

 抗体産生細胞(ハイブリドーマ)が生産する抗体のアミノ酸の並びを解読するためには、細胞から抗体の遺伝子を取り出し、その遺伝子配列を決定する必要があります。しかし抗体の遺伝子配列は、様々な標的との結合が可能となるように、多様な組み合わせの配列を生成するという特有の性質を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることは困難です。そこで当社では独自に設計した遺伝子増幅用配列(プライマー(※28))を用いて、その抗体配列情報を解析しています。即ち、ハイブリドーマから抗体に翻訳される遺伝子領域を取り出し、その部分を独自に設計したプライマーを用いて増幅することで遺伝子配列を解析します。これにより当社では非常に多様な抗体の配列情報を正確に決定します。

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b.抗体デザイン

 マウスに免疫して得られた抗体は、構造的にはマウスの特徴を備えた抗体であるため、これをそのままヒトに投与すると、ヒトの免疫機構が異物と判断して排除してしまい、安全性に問題が生じる場合があります。このような事象を回避するため、抗体が標的蛋白質と結合する部分だけを残して残りの部分をヒトの抗体構造と置き換えることで、ヒトに投与しても安全なデザインを施します。これを抗体のヒト化と呼びます。一方、ヒト抗体ライブラリを使ってファージディスプレイ法で得られた抗体は、もともと全ての部分がヒトに由来しているため、マウス由来の抗体と比べて安全性が高いと考えられます。

 こうしてデザインした抗体は、そのままの形で薬として利用する場合もありますが、例えば放射線を発する物質や強力な抗がん剤を抗体と直接連結することで、がん細胞だけを効果的に殺傷することもできます。

 このように、取得した抗体を様々にデザインすることで、より進化させ、最新の治療手法に応用することが可能です。

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③ 標的探索

a.トランスクリプトーム(※29)解析

 抗体医薬品の新薬開発において最も重要なことの1つが、その疾患の治療標的となる細胞表面に存在する蛋白質が何であるかを効率的に絞り込んでいくことです。当社では、油谷浩幸教授(LSBM)が構築したLSBMトランスクリプトームデータベースから得られた情報に基づき、治療標的となり得る有用な蛋白質を発掘し、がんの診断・治療に役立つ抗体を作製し、抗体医薬品候補として研究開発を行っております。

 

b.リバーストランスクリプトーム(※30)解析

 疾患に関連した細胞(例えばがん細胞)の表面には、正常な細胞とは異なり、その疾患に特有の構造を持つ蛋白質が往々にして存在します。これらの蛋白質は抗体の標的分子となるため、当社は、その疾患に特異的な蛋白質の構造を正確にとらえた抗体を多数取得し、ライブラリ化しております。このようにして得られた抗体ライブラリには、診断や治療に有用な抗体が多数含まれていることが期待され、ここから様々な治療効果を示す抗体を選別し、その抗体が標的としている蛋白質の調査を進めていきます。このようにして得られた有用な抗体群は、治療薬候補の抗体として研究開発が進められます。

 

④ 機能性蛋白質発現技術(BV:Budded Virus)

 高い結合力で的確に目標と結合する抗体を作製するには、標的となる蛋白質の細胞上での構造と機能を維持した状態で作製することが極めて重要です。当社はこの課題を克服する手段の一つとして、LSBMにて浜窪隆雄教授を中心に開発したBV(Budded Virus)技術を活用しています。この技術を用いると、標的蛋白質が構造と機能を保ったまま生産されるように遺伝子組換えを施したウイルスを昆虫細胞に感染させ、そこから放出されるウイルスを免疫源として直接利用することが可能です。これにより従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、これまで作製困難だった標的に対する抗体の取得が、さらに容易になりました。

 

(3)当社の開発品

 当社の開発パイプラインの進捗状況は以下のとおりです。

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※ANKL:アグレッシブNK細胞白血病

 

① PPMX-T002(新規開発コードに変更予定)

 PPMX-T002は、導出先の富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。本書提出日現在、導出先候補を絞り込み、2025年3月期の導出を目指して、開発計画を策定しております。

a.特徴

 PPMX-T002は、がん細胞表面に存在するカドヘリン3(CDH3)を標的としています。CDH3は、細胞間接着蛋白質として機能すると考えられています。トランスクリプトーム解析から、主要正常臓器において発現が低く、各種がんで多く発現している標的として見出されました。

 PPMX-T002は、放射性同位体を標識した抗体(Armed抗体(※31))を用いた抗がん剤で、通常の抗体医薬品とは異なる作用メカニズムを持ちます。一般的な抗体医薬品は、抗体ががん細胞表面に発現する特定の蛋白質に結合し、生体が持つ免疫機能を誘引することで標的細胞を攻撃しますが、免疫機能が低下した患者さんに対しては効果が弱くなります。一方PPMX-T002は、動物免疫で取得し、遺伝子改変した抗体に放射性同位体を標識したもので、抗原抗体反応によってがん細胞に集積

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させ、標識した放射性同位体から放出する放射線で直接がん細胞を攻撃することができます。このため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。また、PPMX-T002は、固形がんの細胞表面に多く発現しているCDH3を標的とし、肺がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん等の細胞に高い集積性を有する抗体を用いています。

 

b.開発状況

 富士フイルム株式会社による米国における進行性固形がん患者さんでの第Ⅰ相試験において、PPMX-T002の抗体が、投与された患者さんのがん組織に集積すること及び安全性が確認された用量で一部症例において腫瘍の縮小が確認されました。ステージ4の患者さんを対象にした臨床試験で、15例中11例でSD(病勢安定)又はCR(完全寛解)という好成績が得られています。また、CRの症例では投与後、次第に腫瘍が小さくなり26か月後には卵巣がんが消失した症例がありました。

 

 

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(出典 Subbiah et al. (2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-CT097)

 

 当社は、同社から米国における拡大第Ⅰ相試験の治験データを含むすべての成果物を譲り受け、さらに有効性の高い放射性同位体標識抗体として開発を進めております。

 

<海外におけるPPMX-T002(導出先での名称:FF-21101)の臨床試験>

治験名

A Dose Escalation Study of Radio-labeled Antibody for the Treatment of Advanced Cancer

進行がんに対する放射性同位体標識抗体の用量漸増試験

治験フェーズ

拡大第Ⅰ相試験(国内第II相試験相当)

対象

進行性固形がん患者

実施国

アメリカ

評価項目

安全性、薬物動態(主要)

有効性(副次的)

状態

実施中。現在進行中の治験終了後に開発終了

 

c.対象疾患

 CDH3陽性難治性固形がん(卵巣がん、胆道がん、頭頸部扁平上皮がん)

 

d.ライセンスの状況

 2011年1月に、当社及び富士フイルムRIファーマ株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)のPPMX-T002に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、同社の子会社である富士フイルム富山化学株式会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡に伴い、2022年3月に当該契約を解除しました。当該事業の承継先であるPDRファーマ株式会社と協議した結果、当社が今後の開発及び導出活動を主導することが決定しました。標識する放射性同位体を、より高い有効性が期待されるアクチニウム225を中心に変更を検討し、導出先候補と開発戦略を詰めております。

 

② PPMX-T003

a.特徴

 PPMX-T003は、ファージディスプレイ法により取得された抗体で、トランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とします。TfR1は、鉄を結合したトランスフェリンを細胞内に取り込むために、細胞膜上に発現しています。細胞の生存には細胞内への鉄の取り込みが必須ですが、中でも赤血球になる前の細胞である赤芽球と、増殖が盛んな全てのがん細胞は極めて多くの鉄を必要とするため、TfR1が高発現していることが広く知られています。このため、鉄の取り込みを阻害することで細胞内の鉄を枯渇させ、がん細胞を死滅させるという試みが、古くから行われてきました。これまでに数多の研究者が抗TfR1抗体の研究開発に取り組んできましたが、臨床で使用可能な抗体はいまだ見出されておりません。こうした中、当社は、当社独自のスクリーニング技術であるICOS法を取り入れたファージディスプレイ法により、極めて高い鉄取り込み阻害能を示す完全ヒト抗体を取得しました。現在、幅広い血液疾患を対象とした治療薬の開発を計画しており、まずは真性多血症(PV:Polycythemia Vera)に対する治療薬開発を目指して、2019年11月から臨床試験を実施しています。

 下の中央図は、PPMX-T003が、ブロッキング抗体としてTfR1からの鉄結合蛋白質の取り込みを阻害する様子を表しています。右のグラフは、TfR1に対する結合阻害率を評価した競合アッセイデータです。横軸は濃度で左に行くほど結合が強く(低濃度で阻害する)、下に行くほど結合阻害率が高いことを示します。体内にあるトランスフェリンと比較して、PPMX-T003は、100倍以上結合が強いこと、また、完全に結合阻害していることがわかります。A24は従来の抗体で、結合力も弱く阻害率が半分にも到達していません。

 

<がん細胞の鉄の取込みを阻害すると細胞死・増殖抑制するイメージ図、及びPPMX-T003の結合活性を従来の抗体と比較したデータ>

 

※画像省略しています。

 

 PPMX-T003は、TfR1に結合することでがん細胞への鉄の取り込みを阻害し、強力な抗腫瘍効果を示しています。これにより、化学療法剤で生じるような患者さんの大幅なQOL(※32)低下を伴わない治療効果が期待されます。

 また、東海大学(2024年4月1日からは大阪大学)との共同研究においては、PPMX-T003の優れた鉄取り込み阻害能が、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患にも有効である可能性が示されました。患者由来腫瘍細胞を移植したマウスモデルによるPPMX-T003の投与実験で、極めて高いがん細胞増殖抑制効果及び生存期間の延長が確認され、2022年3月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されております。

 PPMX-T003は、上記の他にも、試験管内で幅広い種類の血液がんに抗腫瘍効果を発揮し、各種マウスモデルでがん縮小/延命効果を発揮しました。

 以下のデータ(表)は様々な血液がん細胞に対する増殖抑制効果のデータです。一番下の正常細胞(臍帯由来細胞)に対して、最下段以外の全てが種々のがん細胞で、そのEC50(細胞増殖を50%抑制するために必要な薬剤濃度)は2桁以上少なく、がん細胞が正常細胞に比較してPPMX-T003に敏感で、強く増殖抑制されることが示されています。

 

<正常細胞に対してがん細胞に強く作用するPPMX-T003の細胞増殖抑制の比較データ(表)>

※画像省略しています。

(注) 細胞株とは、がん組織から採取し、安定的に増殖・培養できるようにした実験用細胞のこと

 

 以下のデータは担癌マウスを用いた動物実験データです。急性骨髄性白血病(AML)や悪性リンパ腫で薬剤の用量依存的にがん細胞の増殖が抑制されていることが示されています。いずれも横軸は日数、縦軸は腫瘍の大きさで、矢印は薬剤の投与を表しています。二つのグラフはいずれも、薬剤無し(Control)で日数と共に急速に腫瘍体積が大きくなっています。これに対してPPMX-T003を投与すると、投与量が増えるとともに腫瘍体積の増大が抑制されています。特に30日目以降は、その後薬剤の投与が行われていないのに腫瘍体積は増えていません。つまり、PPMX-T003は用量依存的に腫瘍体積の増加を抑制し、投与量が多い場合はがんを消失していることが確認できました。

 

※画像省略しています。

(出典 Zhang et al.(2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-5586)

 

 

b.開発状況

 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラムの採択後、2018年にサルを用いた非臨床毒性試験(GLP毒性試験)を完了し、2015年に終了した予備試験と同様の結果を得ております。また、本非臨床毒性試験完了をもって研究成果最適展開支援プログラムは終了し、現在、自社単独で治験を実施しております。

 PPMX-T003は種々の血液がんで治療効果が期待されますが、最初に真性多血症治療薬の開発に取り組んでいます。真性多血症は赤血球が通常より多い疾患で血栓生成が問題です。現在の治療法は、瀉血(しゃけつ)又は抗がん剤等の薬物療法です。瀉血は体内の鉄分が不足するため、貧血や脱力感、うつ病、手足むずむず病等の精神症状を伴い、QOLが悪いという課題があります。また、抗がん剤等の既存の薬物療法は骨髄抑制や2次がん発症リスク等の問題があります。これに対して、PPMX-T003は、既存の治療法で問題となる副作用の大幅な低減が期待されます。

 以下に真性多血症の標準的治療法と課題について図に示します。

<真性多血症と治療>

 

※画像省略しています。

 

 以下のデータは、順天堂大学における真性多血症の患者さんの瀉血検体を用いた内因性赤芽球コロニーの増殖試験の結果です。PPMX-T003を加えた細胞培養の実験で、赤芽球コロニーの形成が阻害されていることがわかります。これは、PPMX-T003の真性多血症治療薬としての可能性が、ヒトの検体を用いて検証された、重要な事例です。

 

※画像省略しています。

(出典:第81回日本血液学会学術集会「抗TfR11抗体による真性多血症内因性赤芽球コロニーの形成阻害」)

 

 2019年11月より真性多血症治療薬としての第Ⅰ相試験を開始し、2021年3月に健常人の第Ⅰ相試験が終了しました。

治験名

真性多血症患者を対象としたPPMX-T003の非盲検、多施設共同、用量漸増、単回持続静脈内投与による薬物動態及び安全性を評価する第I相試験

治験フェーズ

第Ⅰ相試験

対象

真性多血症患者

実施国

日本

評価項目

単回静脈内投与時の安全性

状態

実施中

 

 2021年3月に完了した健常人の第Ⅰ相試験では、日本人健康成人男性へのPPMX-T003の投与量0.25mg/kgまでの単回持続静脈内投与において、安全性が確認されたと考えております。また、以下のデータのようにPPMX-T003の投与により用量依存的に網状赤血球が減少し、ヘマトクリット値も低下しました。これは、PPMX-T003がTfR1を高発現している赤芽球に作用して、網状赤血球が低減したためと考えられます。赤血球低下に伴い減少したヘマトクリット値は1か月間にわたり低下し、その後回復しました。ヘマトクリット値は血液中の赤血球の割合で、真性多血症ではこの値が大きくなります。(網状赤血球とは、骨髄から末梢血に入ったばかりの幼若赤血球で、1日で成熟赤血球になります。骨髄における赤芽球造血を反映しています。)

 

※画像省略しています。

 

 現在は真性多血症患者さん6名を対象とする第Ⅰ相試験を実施しており、本書提出日現在、5名の患者さんで試験が終了しております。2023年5月には、治験責任医師によって第118回近畿血液学地方会で3名における中間報告が行われ、全員の安全性が確認されるとともに、薬効である赤芽球及び赤血球抑制に用量依存的な効果が認められたことや、副作用は一過性発熱及びリンパ球減少等で、健常人における試験結果の範囲内であったことが発表されました。さらに、2023年12月には第65回米国血液学会(ASH)年次総会においても、当該中間報告に係る発表が行われました。残る1名の患者さんの試験は2024年7月末に終了する予定であり、2025年3月期の導出を目指しております。

 また、「a.特徴」に記載のとおり、ANKLという超稀少疾患の治療薬となる可能性も示され、2023年4月より医師主導第I/Ⅱ相試験が実施されております。2023年9月には、最初の2名の患者さんに投与が行われました。稀少疾患であるため、被験者への投与が滞りなく行われるよう、全国7か所の基幹病院での治験実施体制を整備しております。ANKLの有効な治療薬の開発に向けて、今後も治験を推進してまいります。

 さらに、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんの治療薬としての作用機構を明確化するため、名古屋大学等と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。

 

c.対象疾患

 血液がん

 

d.ライセンスの状況

 本書提出日現在、グローバルでのライセンス活動を進めております。

 

③ PPMX-T004(新規開発コードに変更予定)

  PPMX-T004は、導出先である富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。

a.特徴

 PPMX-T004は、PPMX-T002と同じく、がん細胞表面に存在するカドヘリン3(CDH3)を標的としています。CDH3は、細胞間接着蛋白質として機能すると考えられています。PPMX-T004は、遺伝子改変した抗体に薬物を結合した抗体薬物複合体(ADC)で、結合した薬物によって、本抗体と結合したがん細胞を殺傷することができるため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。PPMX-T004では、固形がんの細胞表面に多く発現しているCDH3を標的とし、がん細胞に対し高い内在性を有する抗体を用いています。

 

b.開発状況

 当社において、新たな医薬品候補として開発を進めております。より有効性の高い薬剤と、薬剤と抗体とを結合させるためのリンカー(※33)の最適な組み合わせを検討しており、本書提出日現在、予備毒性試験を実施しております。

 

c.対象疾患

 CDH3を発現する固形がん

 

d.ライセンスの状況

 2015年9月に、PPMX-T004に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、PPMX-T004につきましても2022年3月に当該契約を解除しました。より高い有効性が期待される薬剤やリンカーに変更した新たな医薬品候補として開発を進めており、本書提出日現在、導出先は決まっておりません。

 

④ その他

 当社は患者組織を利用することで取得した疾患特異的な標的候補を多数保有しております。これら標的群に対する抗体取得を順次進めており、Naked抗体(※34)、Armed抗体等、多様なプラットフォームを用いた自社開発プログラムを推進中です。

 

<用語集>

 

用語

説明

※1

抗体

抗原(免疫反応を引き起こす物質)の構造に応じて1対1の関係で特異的に結合する蛋白質。この特異的な結合力を利用して、がんや感染症、疾患を診断・治療する医薬品(分子標的薬)に応用されます。

※2

シーズ

医薬品の候補となる物質。

※3

ハイブリドーマ法

抗体を産生する細胞と不死化細胞を融合して、1種類の抗体を多量に産生する技術。免疫方法や細胞の調整といった手法が確立され、ファージディスプレイ法と比較して安価で簡便であることから、広く一般的に行われています。親和性の高い抗体が取得可能ですが、取得した抗体がヒト以外の動物由来のものであるため、医薬品として使用するためには抗体をヒト化する必要があります。また、ファージディスプレイ法と比較して複雑な構造の標的分子に対する抗体の作成が困難です。

※4

親和性

ある物質が特定の物質と選択的に結合しようとする性質、傾向。

※5

ファージ

細菌に感染するウイルスの総称。ファージに様々な遺伝子を組み込むことで細菌に人為的に特定の蛋白質を作らせることができます。

 

抗体ライブラリ

ある特定の手段あるいは目的をもって構成された抗体あるいは抗体遺伝子の集合。

※6

スクリーニング

様々な指標で目的とする物質を選択する操作。

※7

シングルBセルスクリーニング法

特定の抗原に対してのみ反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得する方法。

※8

ファージディスプレイ法

細菌に感染するウイルスであるファージに抗体分子を表出する技術。標的分子と反応させることで、特異的に結合する抗体クローンを見つけ出すことができます。ハイブリドーマ法と比較してヒト抗体ライブラリから直接ヒト抗体を取得できる利点がある一方、コストが高く、抗体ライブラリ作製に熟練が必要であることに加え、一般的には親和性の高い抗体の取得が困難です。

※9

マウス抗体

マウスに免疫して得られた抗体。

※10

キメラ抗体

遺伝子工学的手法によりマウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を連結したもの。

※11

ヒト化抗体

遺伝子工学を用いてマウスで作成した抗体の抗原結合部位をヒト由来の抗体分子に移植して作製された抗体分子で、配列的にキメラ抗体より、ヒト抗体に近いものです。

※12

完全ヒト抗体

蛋白質配列が全てヒト遺伝子に由来する抗体。他の生物種由来の配列を含まないため、より安全性が高いと考えられています。

※13

抗体医薬品

抗体の様々な機能を利用した医薬品。抗体はその構造の同一性から、製造技術の確立が進み、バイオ医薬品としての開発が盛んに行われています。

※14

上市

医薬品として承認され、実際に市販されること。

※15

ADC

Antibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)の略。強力な細胞傷害活性を持つ薬物が連結されている抗体。ADCは標的を介して細胞内部に取り込まれ、連結している薬物の効果で細胞を殺傷します。

※16

IgG型抗体

血液中に最も多く存在する抗体の一種。細菌や毒素と結合する能力が高く、血中にとどまる時間が長いという性質があります。

※17

抗体配列

抗体は蛋白質の一種であり、そのアミノ酸配列の並びのこと。

※18

バイオマーカー

生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、血中蛋白質量等の生体情報を数値化・定量化した指標。疾患の有無や進行度合いの指標になります。

 

 

 

用語

説明

※19

PTX3

Pentraxin3の略。体内の炎症により産生される炎症性蛋白質の一つ。

 

ELISA

Enzyme-Linked Immunosorbent Assay(酵素免疫測定法)の略。試料溶液中に含まれる目的物(一般的には蛋白質)を、これに特異的に結合する抗体で捕捉し、酵素反応に基づく発光、発色をシグナルとして検出することで目的物の濃度を計測する方法。

※20

CRO

Contract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略。製薬企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等の臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、又は労働者派遣等で支援する機関のこと。

※21

CMO

Contract Manufacturing Organization(医薬品製造受託機関)の略。製薬企業から医薬品(治験薬・市販薬を含む)の製造を受託します。

※22

特異性

抗体が特定の抗原にのみ結合して他とは結合しない性質。

※23

ヒトナイーブ抗体ライブラリ

人のリンパ球由来抗体遺伝子をもとに構築された抗体配列の集合体。ナイーブとはいまだ特性の抗原に対して刺激を受けていない状態。刺激をうけると特定の抗原に対して特異性と親和性を向上させていきます。

※24

エピトープ

抗体が標的とする物質の結合領域。

※25

免疫寛容

体の中で作られる抗体が自分の細胞を攻撃しないように自己抗原に対する抗体をあらかじめ排除する機構。抗体が作られる初期の段階で選別が行われます。

※26

ラクダ抗体

ラクダに由来する抗体。ヒトと異なり、H鎖のみの単鎖抗体が存在しますが、単鎖抗体は、分子量が小さい、物理的に安定であるなど、ヒト抗体とは異なる利点を持ちます。

※27

アジュバント

抗原と一緒に投与して、その効果を高めるために使用する物質。

※28

プライマー

遺伝子を増幅する際の起点として使用されるDNA断片。

※29

トランスクリプトーム

特定の状況下において細胞中に存在するmRNAの総体。

mRNA:Messenger RNA(伝令RNA)の略。蛋白質に翻訳される遺伝子情報を持つRNA(遺伝子の情報を伝える物質)のこと。

※30

リバーストランスクリプトーム

特定の状況下での発現産物の総体から発現産物を同定するトランスクリプトームから逆の過程を経ることから想起した造語。

※31

Armed抗体

放射性同位体や細胞傷害剤等を連結した抗体。連結した物質の種類により、例えばがん細胞への攻撃力を高めるなどが期待できます。

※32

QOL

Quality Of Lifeの略。日本語では「生活の質」「生命の質」と訳されます。患者さんが、人間らしく満足行く生活が送れているのかという尺度として捉えられます。

※33

リンカー

ADCの構成物の一つで、抗体と薬物とを結合するものです。薬物をいつ、どのように切断するかの制御も行います。

※34

Naked抗体

何の修飾も施していない抗体。

24/06/20

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における世界経済は、長引くインフレやロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化等により、先行きが不透明な状況が継続しました。国内経済は緩やかな回復が続く中、世界的な金融引締めの影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが景気の下押しリスクとなりました。

 当社が属する医薬品業界におきましては、がんや認知症等、世界的に患者数が増えている疾患の治療法の確立が継続的な重要課題になっております。当社におきましては、創薬領域を中心に、積極的な事業展開を図りました。

 各領域における成果は次のとおりです。

a.創薬

 当事業年度における創薬事業の売上はありませんでしたが、当社の効率的な抗体取得プラットフォームを活用し、主にがん領域で抗体開発を進めております。カドヘリン3(CDH3)及びトランスフェリン受容体(TfR)を標的とする3つの抗体の開発を進めているほか、これに続く多くの候補抗体が研究開発段階にあります。当社のパイプラインの開発状況は次のとおりです。

(a)PPMX-T002

 PPMX-T002は、がん細胞で多数発現しているCDH3を標的とする抗体に、イットリウム90(90Y)という放射性同位元素(RI)を標識した抗がん剤候補です。がん細胞上の標的に抗体が集積し、90Yが放射線を照射してがん細胞を殺傷する仕組みです。導出先の富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム社」)の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。なお、富士フイルム社の子会社が米国で行った拡大第I相試験においては、本抗体が標的のがん細胞へ集積することが確認されております。当社は現在、RI医薬品開発会社への導出に向けて、90Yから、最も高い有効性が期待されるアクチニウム225(225Ac)を中心に変更を検討し、導出先候補と開発戦略を詰めております。

 

(b)PPMX-T003

 PPMX-T003は、当社独自のファージライブラリの中から、当社が特許を保有するICOS法というスクリーニング技術を活用して取得したユニークな完全ヒト抗体です。標的は、細胞内への鉄の取り込みに関与し、増殖が盛んながん細胞に極めて多く発現するTfR1です。本抗体がTfR1に結合すると、がん細胞内への鉄の取り込みを阻害し、それによってがん細胞の増殖を抑制する抗腫瘍効果が得られます。PPMX-T003は、その増殖抑制効果から様々ながんに対する治療効果が期待できると考えられ、鋭意研究開発を進めております。

 TfR1は、がん細胞のほかに、赤芽球細胞(赤血球になる前の細胞)にも極めて多く発現しています。このため、赤血球が異常に増える疾患である真性多血症(PV)において、赤血球数を正常化する効果が期待できることから、まずはPVの治療薬を目指して、国内で第I相試験(以下「本治験」)を実施しており、本資料提出日現在、6名中5名の患者さんでの試験が終了しております。本治験の終了予定時期は、2024年3月から2024年6月に変更いたしましたが、2024年5月10日にお知らせしたとおり、最後の患者さんについて、患者さん固有の背景を考慮した医師の総合的な判断によって高用量での投与が行われたことにより、2024年7月末を見込むこととなりました。

 なお、2023年5月の第118回近畿血液学地方会において本治験の中間報告が行われ、3名の治験者でのPPMX-T003の安全性及び薬理効果が報告されました。2023年12月には治験責任医師による第65回全米血液学会(ASH)年次総会での発表も行われております。

 一方、本抗体はアグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患に対する有効な治療薬となる可能性も見出されております。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択を受けて実施されている医師主導第I/Ⅱ相試験では、2023年9月に2名の患者さんに投与が行われました。広島大学病院を中心に、治験実施施設を全国7か所に設けて、被験者が見つかった際にはすぐに治験に参加いただき、治験薬を投与できる体制を整えております。また、血液内科医だけでなく、全国の一般内科や消化器内科の医師に対しても協力を呼び掛けて、被験者の方の登録が進むよう対策を講じております。

 このほか、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、名古屋大学等と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。

 

 

(c)PPMX-T004

 PPMX-T004は、CDH3を標的とし、薬剤を結合した抗体薬物複合体(ADC)です。最新の薬物と、これを結合させるためのリンカー等の最適な組み合わせを検討しており、試験管での試験で見出した有望な組み合わせについて、マウスによる実験でも高い抗腫瘍効果を認めました。これを受けて、現在はサルによる予備毒性試験を進めております。

 ADCは、抗体に結合した薬物を細胞内に取り込ませることで、対象の細胞を特異的に殺傷することができるため、患者さん自身の免疫機能の状態に関わらず高い臨床効果が期待できます。

 

b.抗体研究支援

 抗体研究支援の売上高は、従来よりも規模の大きい案件の受注や案件数の増加、また、創薬企業ならではの知見を活かしたサービスの提供等により、20,735千円(前事業年度比72.2%増)と大幅に改善しました。

 

c.抗体・試薬販売

 抗体・試薬販売の売上高は79,667千円(前事業年度比3.0%減)となり、ほぼ計画どおりに進捗しました。2023年10月には新製品も発表しており、今後もラインナップの拡充を図ってまいります。また、湧永製薬株式会社と共同で血中のPTX3濃度を簡易に測定し、血管障害や心疾患など炎症に関する疾患の重篤化を予測するためのPTX3迅速計測キットの開発も継続的に進めております。

 

 以上の結果、当事業年度の売上高は100,402千円(前事業年度比6.6%増)となり、計画を達成しました。

 損益につきましては、PPMX-T003の第I相試験が遅延したことやPPMX-T004の非臨床試験の費用を削減したことにより、研究開発費が616,004千円となり、計画よりも減少した結果、営業損失は894,729千円(前事業年度は営業損失697,769千円)となり、当初計画より損失額が減少しました。経常損失は為替差益等による営業外収益21,111千円の計上並びに新株予約権発行費等による営業外費用5,762千円の計上により、879,380千円(前事業年度は経常損失689,604千円)となり、当初計画より損失額が減少しました。また、当社が保有する固定資産につきまして「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく減損損失として153,887千円を、本社移転に関する費用として69,403千円を、それぞれ特別損失に計上した結果、当期純損失は1,104,460千円(前事業年度は当期純損失786,999千円)となり、当初計画より損失額は減少しました。

 また、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

財政状態については、次のとおりであります。

(資産)

 当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ872,840千円減少し、1,693,810千円となりました。主に、研究開発費及び本社移転関連費用の支払い等により現金及び預金903,514千円が減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ125,360千円増加し、295,465千円となりました。主に、未払費用が28,852千円、AMEDの「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択により交付された助成金である長期預り金が107,500千円それぞれ増加した一方、資産除去債務が12,800千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ998,200千円減少し、1,398,344千円となりました。主に、資本金と資本準備金がそれぞれ31,766千円増加した一方、当期純損失1,104,460千円の計上により利益剰余金が減少したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ903,514千円減少し、1,541,419千円となりました。

 

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、833,898千円の支出となりました。主に、AMEDからの助成金である長期預り金等によるキャッシュ・フローの増加があった一方、税引前当期純損失1,102,533千円の計上等による減少があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、150,343千円の支出となりました。主に、新本社設備及び研究開発用の有形固定資産の取得による支出142,998千円等による減少があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、63,943千円の収入となりました。主に新株予約権の行使による株式の発行による収入によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当社は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。当事業年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品事業

100,402

106.6

合計

100,402

106.6

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

R&D Systems, Inc.

27,033

28.7

27,812

27.7

Pierce Biotechnology, Inc.

23,894

25.4

27,433

27.3

フナコシ株式会社(※)

15,703

15.6

Abcam plc

14,316

15.2

10,403

10.4

(※)前事業年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。

 特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

(固定資産の減損処理)

 当社は、固定資産のうち営業活動から生ずる損益が継続してマイナスになっている資産について、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

 

(繰延税金資産)

 繰延税金資産の回収可能性の判断については、将来の課税所得を合理的に見積り、将来の税金負担を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上することになります。当社は、税務上の欠損金が継続しており、繰延税金資産の回収可能性を合理的に見積もることは困難と判断し、繰延税金資産を計上していません。

 

② 財政状態の分析

 財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

③ 経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度の売上高は、100,402千円(前事業年度94,201千円、前年同期比6.6%増)となりました。当事業年度における創薬の売上はありませんでしたが、抗体・試薬販売は減少したものの、抗体研究支援は売上高が前事業年度から大幅に増加し、計画を達成しました。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、12,717千円(前年同期比65.8%増)となりました。

 この結果、当事業年度の売上総利益は、87,685千円(前年同期比1.3%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、982,415千円(前年同期比25.3%増)となりました。

 販売費及び一般管理費の増加の主な要因は、PPMX-T003の第Ⅰ相試験費用の増加であります。なお、研究開発費は616,004千円(前事業年度494,494千円、前年同期比24.6%増)となりました。

 この結果、営業損失は897,729千円(前事業年度は営業損失697,769千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常損失)

 当事業年度の営業外収益は、21,111千円(前年同期比158.0%増)となりました。主なものは、為替差益16,924千円であります。

 当事業年度の営業外費用は、5,762千円(前事業年度は19千円)となりました。

 この結果、経常損失は、879,380千円(前事業年度は経常損失689,604千円)となりました。

 

(特別利益、特別損失、当期純損失)

 当事業年度の特別損失は、223,290千円(前年同期比133.9%増)となりました。当社の事業の特性上、現段階では、将来の収入の不確実性が高いことから、医薬品事業に係る資産の回収可能額をゼロとし、帳簿価額と備忘価額との差額153,887千円と、本社移転に関する費用として69,403千円を、それぞれ減損損失及び本社移転費用として特別損失に計上しました。

 これらの結果を受け、当事業年度の当期純損失は、1,104,460千円(前事業年度は当期純損失786,999千円)となりました。

 

(パイプライン)

 パイプラインの状況については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)当社の開発品」をご参照ください。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載したとおり、外部環境、事業内容、組織体制等の様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に業界の動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、内部管理体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社の主な資金需要は、PPMX-T003の開発及び創薬研究に係る研究開発費、並びに事業運営費等であります。これらの費用は、当期は自己資金で賄い、その残金は、すべて銀行預金とし、資金の流動性を確保しております。当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、833,898千円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは、150,343千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは、63,943千円の収入となり、現金及び現金同等物の期末残高は、1,541,419千円となりました。

 

⑦ 経営者の問題意識と課題について

 当社は、「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としております。この企業理念実現のために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の課題に対して取り組んでまいります。

 

⑧ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった数値的な目標となる経営指標は用いておりませんが、経営指標として、将来の売上に繋がるパイプラインの開発の進捗、パイプラインの拡充及び売上高を重要な目標と考え、事業活動を推進しております。なお、パイプラインの開発の進捗については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)当社の開発品」に記載しております。