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最終更新:

E27585 Japan GAAP

売上高

29.5億 円

前期

22.3億 円

前期比

132.2%

時価総額

122.6億 円

株価

139 (04/24)

発行済株式数

88,224,691

EPS(実績)

-3.46 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

469.4万 円

前期

413.5万 円

前期比

113.5%

平均年齢(勤続年数)

34.8歳(5.0年)

従業員数

28人(連結:92人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは当社(株式会社リプロセル)、米国子会社のREPROCELL USA Inc.、英国子会社のREPROCELL Europe Ltd.、インド子会社Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltdなどの連結子会社5社及び関連会社2社により構成されております。

 

 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、iPS細胞を使った加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷等の臨床研究及び治験が進められております。

 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置付け、二つのセグメントに分け、推進しております。

 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、持続的な成長を目指します。

 

事業内容

内容

研究支援事業

 研究支援事業では、大学/公的研究機関を主要顧客とする(1)研究用製品の製造販売と、製薬企業等が中心の(2)研究受託サービス、及び(3)細胞測定機器の販売を実施しています。

 

(1) 研究用製品

 研究用製品は研究試薬と細胞に分けられます。

 研究試薬:培養液、抗体、リプログラミング試薬、成長因子など、iPS細胞の研究に使用する試薬を販売しております。当社の研究試薬はiPS細胞に特化している点が特徴です。当社の初期製品である「Primate ES Cell medium」は、京都大学の山中教授が世界で初めてヒトiPS細胞の作製に成功した際に使用されていた培養液であり、その後、日本の研究者の間でスタンダードとなりました。

 細胞:REPROCELL USAでは、がん細胞、血液、血清など60万個のヒトの生体試料のバンクを保有しており、製薬企業を中心に研究用資材として提供しております。また、顧客ごとのカスタムコレクションも行っております。

 

(2) 研究受託サービス

 研究受託サービスでは、iPS細胞関連の受託サービスと、ヒトの生体試料を用いた創薬試験受託を実施しています。

 iPS細胞サービス:顧客ごとにカスタマイズし、付加価値の高いサービスを提供しております。iPS細胞患者由来疾患モデル、iPS細胞遺伝子編集、各種分化誘導など、技術難易度が高く付加価値の高いサービスを中心に実施しています。

 創薬試験受託:手術等で得られた余剰のヒトの組織を使って新薬候補化合物の薬効薬理試験を行っております。REPROCELL EuropeはGLP(Good Laboratory Practice: 医薬品の非臨床試験の安全性に関する信頼性を確保するための基準)に準拠した施設を保有しており、信頼性の高いサービスを実施しております。

 

(3) 細胞測定機器

 Axion BioSystems社(米国)の細胞測定機器及びBlacktrace Holdings社(英国)のシングルセル解析機器の日本国内での販売をしております。Axion BioSystems社の機器では、当社のiPS神経細胞を効果的に測定できるため、創薬スクリーニング技術として総合的なソリューションを顧客に提供しております。

 

 

事業内容

内容

メディカル事業

 メディカル事業では、(1)再生医療の研究開発、(2)臨床用iPS細胞の製造販売、(3)臨床検査受託サービスを実施しております。

 

(1) 再生医療の研究開発

 再生医療では、台湾のステミネント社から導入したステムカイマルと、iPS細胞から作製するiPS神経グリア細胞の2つの再生医療製品の開発を行っております。

 ステムカイマル:ステムカイマルは脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品であり、症状の進行を抑制する効果が期待されています。ステムカイマルは、腕の血管から静脈注射(点滴)で投与するため、侵襲性が低い治療法になります。2022年5月、日本での第II相臨床試験が完了しており、現在、承認申請の準備を進めております。

 iPS神経グリア細胞:筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎を対象とした研究開発を進めております。現在、前臨床試験を実施しており、製造施設として、再生医療用の細胞加工施設「殿町・リプロセル再生医療センター」を保有しております。

 

(2) 臨床用iPS細胞の製造販売

 最先端の「RNAリプログラミング技術」を利用し、安全性が高く、臨床応用に最適な臨床用iPS細胞を作製します。

 製薬企業向けとして「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」、個人向けとして「パーソナルiPS」の2つのサービスがあります。

 

(3)臨床検査受託サービス

 日本では、2005年に衛生検査所として登録して以来、臓器移植に関連したHLAタイピング及び抗HLA抗体検査等の臨床検査受託サービスを実施しています。また、2021年3月に、新型コロナウイルスPCR検査を新たに開始し、医療機関、法人、個人に幅広く検査を提供しております。

 当社のインド子会社であるBioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.では、がんの変異を調べ患者個人に最適な治療法を提供するがんのコンパニオン診断サービスを中心に実施しています。

 

 

 

 

iPS細胞技術プラットフォームと事業セグメント

※画像省略しています。

 

(1) 研究支援事業

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品、iPS細胞作製受託などの研究サービス、及び細胞測定機器を提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができる特長があります。

 現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。

 当社グループでは、RNAリプログラミング技術及び各種細胞への分化誘導技術など、ヒトiPS細胞に関する世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、さらに、がん細胞やヒト組織を医療機関から調達する幅広いネットワークも保有しております。これら技術優位性の高い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を最大限活用することで、上記の「動物実験からヒト細胞実験」へのシフトを先取りした事業を進めております。具体的には、iPS細胞研究用の研究試薬製品、患者の組織からiPS細胞を作製する病態モデル細胞の作製、ヒト組織を用いた新薬の薬効薬理試験サービス、ヒト生体試料のバンキングなどがあります。

 iPS細胞の研究は、これまで大学や公的研究機関での基礎研究が中心でしたが、最近は、製薬企業での創薬研究が増えております。製薬企業では、研究を外注することも多いため、当社では、iPS細胞作製、遺伝子改変、各種分化誘導等の研究受託サービスを中心に展開しております。

 さらに、上記の研究用製品及び研究サービスに加え、Axion BioSystems社(米国)の細胞測定機器、及びBlacktrace Holdings社(英国)のシングルセル解析機器などの研究機器の販売を行っております。これらの機器は、当社のiPS細胞及び疾患モデル細胞を創薬スクリーニングに応用するためのものであり、細胞と機器を一元化して販売することで、総合的なソリューションを顧客に提供しております。

 抗がん剤など様々な医薬品の研究開発が世界中の製薬企業で進められておりますが、患者から採取した生体試料(血液、がん組織等)は、その重要な研究材料として使用されています。当社の米国子会社では、大規模な生体試料バンクを保有しており、これらの生体試料を世界中の製薬企業に提供しております。

 今後とも、研究支援事業を短中期事業の収益の柱として積極的に推進してまいります。
 

研究支援事業の事業系統図

 

※画像省略しています。

 

 

(2) メディカル事業

 再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んに行われており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。

 当社のメディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。さらに、2021年3月期には、GMP-iPS細胞マスターセルバンク、パーソナルiPS、新型コロナウイルスPCR検査などの新規事業を立ち上げており、今後、これら新規事業も含め重点的に強化してまいります。

(a) 体性幹細胞製品 ステムカイマル

 ヒト細胞加工製品ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまうことにより、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルの投与により、症状の進行を抑制する効果が期待されています。ステムカイマルは、腕の血管から静脈注射(点滴)で投与するため、侵襲性が低い治療法になります。

 日本国内の第II相臨床試験は、2020年2月に、第1例目の被験者への投与を開始し、2022年5月には全被験者の観察期間も含め全て完了いたしました。

 本治験では、「多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較」という非常にエビデンスレベルの高いデザインにおいて安全性と有効性について評価を行っております。現在、データ解析・評価を実施しており、今後、製造販売承認の申請を進めてまいります。

 台湾では、ステミネント社が第II相臨床試験を完了しており、これまでに重篤な安全性の問題は見られていないことが確認されています。米国でも、ステムカイマルの治験計画届(IND)がFDAの承認を得ております。

また、日本では、2018年12月に厚生労働省による大臣承認を経て、希少疾病用再生医療等製品として指定されております。これにより、開発に係る経費の助成金(最大50%)、優遇税制措置、及び優先審査等の支援措置を受けることができます。

 当社では、このような制度を活用し、病気と闘っている患者様へ少しでも早く新しい治療法が届けられるよう、本プロジェクトを積極的に推進しております。

 

(b) iPS神経グリア細胞製品

 iPS細胞から神経グリア細胞を作製し、各種神経変性疾患に対するiPS細胞再生医療製品として研究開発を行っております。現在、iPS神経グリア細胞を用いた前臨床試験(動物実験)を公益財団法人実験動物中央研究所と実施しております。また、iPS神経グリア細胞の製造のため「殿町・リプロセル再生医療センター」(神奈川県ライフイノベーションセンター内)の整備を進め、2021年3月に厚生労働省関東信越厚生局より再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき「特定細胞加工物製造許可」(施設番号:FA3200006)を取得しております。

 2022年10月には、AMED 公募事業「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」に採択されました。本事業の支援により、研究開発を加速させ一日も早い臨床試験の開始を目指します。

 

(c) 臨床用iPS細胞の製造販売

 iPS細胞による再生医療の研究開発は世界中で精力的に行われており、日本でも、加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷等の臨床研究及び治験が進められています。再生医療に用いるiPS細胞には高い安全性と品質、さらに各国の医療ガイドラインに準じることが必要とされます。

 安全性の高いiPS細胞を作製するためには、iPS細胞を作るプロセスである「リプログラミング」が重要になります。リプログラミング技術は様々報告されていますが、当社では遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクの最も低い最先端のRNAリプログラミング技術を開発・保有しております。本技術を利用することで、臨床応用に最適なiPS細胞を作製することができます。

 製薬企業向けとして、「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」、個人向けとして「パーソナルiPS」の二つを提供しております。

 「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」では、医薬品製造の規制であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準拠してiPS細胞を大量製造し、再生医療製品の出発材料として製薬企業等に提供します。当社のiPS細胞は、日米欧の3極の規制に準拠しているため、日米欧で幅広く使用できることが強みになります。

 さらに、BioBridge社(米国)及びHistocell社(スペイン)と提携を行い、臨床用iPS細胞だけでなく、その後流工程である各種目的細胞への分化誘導及び再生医療等製品の製造までを行える体制を構築しました。ドナー細胞の確保→iPS細胞の作製→分化細胞の製造までの全工程を日米欧の規制に準拠して受託製造する高付加価値な事業となります。

 「パーソナルiPS」は、将来の疾患に備え、個人のiPS細胞を作製し保管するサービスです。個人のiPS細胞をあらかじめ作製することで、治療までの期間を短縮でき、さらに免疫拒絶のリスクを最小化した移植治療を実現します。

 

(d) 臨床検査受託サービス

 2005年に衛生検査所として登録して以来、臓器移植に関わるHLAタイピング及び抗HLA抗体検査等の臨床検査を実施しており、2021年3月には、新型コロナウイルスPCR検査を開始いたしました。当社のPCR検査は、オミクロン株やデルタ株など複数の変異株を1~2時間程度の短時間で特定できることを特徴としており、医療機関、法人、調剤薬局、大手ECサイト等へ、幅広く販売しております。

 インド子会社では、がんのコンパニオン診断サービスを実施しております。

 

メディカル事業のパイプライン

※画像省略しています。

 

(参考情報)

※1:筋萎縮性側索硬化症(ALS)

体を動かすための神経系(運動神経)が変性してしまい、筋力の低下による運動障害や嚥下障害等の症状があらわれる病気です。運動神経のみが変性するため、意識や五感は正常であり、知能の低下もありません。病状の進行が極めて速い一方で、有効な治療法は確立されていません。日本では指定難病とされており、国内患者数は約1万人とされています。

※2:横断性脊髄炎

脊髄の一部分が横方向にわたって炎症を起こすことによって発生する神経障害です。通常、腰部の痛み、筋肉衰弱、つま先や脚の異常な感覚などの症状が突然発症することで始まり、その後急速に、麻痺や閉尿や排便制御の喪失などの深刻な症状がみられます。原因は特定されておらず、有効な治療法は確立されていません。国内患者数は約1.5万人とされています。

 

 

 

23/06/27

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、iPS細胞を使った加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷等の臨床研究及び治験が進められております。

 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置付け、二つのセグメントに分け、推進しております。

 

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品、iPS細胞作製受託などの研究サービス、及び細胞測定機器を提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができる特長があります。当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を保有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し、短中期の収益の柱として推進しております。

 

 一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。ステムカイマルの国内第II相臨床試験は、2020年2月に第1例目の被験者への投与を開始し、2022年5月に観察期間も含め全て完了しております。現在、データ解析及び評価を行っており、今後、製造販売承認の申請を進めてまいります。さらに、再生医療事業として、安全性の高い臨床用iPS細胞の受託作製サービスを実施しており、製薬企業向けに「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」、個人向けに「パーソナルiPS」を提供しております。

 

 再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整っていると考えられます。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供するとともに、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。

 

 また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 当社では、再生医療を中長期的な成長事業と位置付けております。

 

 さらに、メディカル事業では、臨床検査受託サービスにも力を入れており、日本では、新型コロナウイルスPCR検査及び臓器移植にかかわるHLA関連検査、インドでは、がんのコンパニオン診断サービスを中心に実施しております。今後とも新たな検査項目を追加し、事業を拡大してまいります。

 

 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、連続的な成長を目指します。

 

 2020年に感染拡大が始まった新型コロナウイルスへの対応状況が、最近大きく変わってきました。今後とも、感染拡大は定期的に起こる可能性はあるものの、ワクチン接種率が高まってきたこともあり、今後、従来のような行動制限措置が行われる可能性は低くなりました。事業環境もパンデミック以前の状態に戻ってきております。

 

 この結果、当連結会計年度の売上高は2,953百万円(前期比32.2%増)、営業損失は356百万円(前期647百万円の損失)、経常損失は119百万円(前期507百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は305百万円(前期575百万円の損失)となりました。

 

 セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。

a.研究支援事業

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等の研究所を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などの研究サービスを提供しております。最先端技術を集約した製品・サービスを上記研究機関に提供することで、画期的な新薬や治療法の開発に貢献してまいります。現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。

 

 当社グループでは、RNAリプログラミング技術及び各種細胞への分化誘導技術など、ヒトiPS細胞に関する世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、さらに、がん細胞やヒト組織を医療機関から調達する幅広いネットワークも保有しております。これら技術優位性の高い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を最大限活用することで、上記の「動物実験からヒト細胞実験」へのシフトを先取りした事業を進めております。具体的には、iPS細胞研究用の研究試薬製品、患者の組織からiPS細胞を作製する病態モデル細胞の作製、ヒト組織を用いた新薬の薬効薬理試験サービス、ヒト生体試料のバンキングなどがあります。

 さらに、上記の研究用製品及び研究サービスに加え、Axion BioSystems社(米国)の細胞測定機器、及びBlacktrace Holdings社(英国)のシングルセル解析機器などの研究機器の販売を行っております。これらの機器は、当社のiPS細胞及び疾患モデル細胞を創薬スクリーニングに応用するためのものであり、細胞と機器を一元化して販売することで、総合的なソリューションを顧客に提供しております。

 

 抗がん剤など様々な医薬品の研究開発が世界中の製薬企業で進められておりますが、患者から採取した生体試料(血液、がん組織等)は、その重要な研究材料として使用されています。当社の米国子会社では、大規模な生体試料バンクを保有しており、これらの生体試料を世界中の製薬企業に提供しております。

 

 この結果、売上高は2,017百万円(前期比46.1%増)、セグメント利益は366百万円(前期比171.7%増)となりました。

 

b.メディカル事業

 再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んに行われており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。

 特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞の臨床応用に関する技術課題は安全性の確保ですが、当社では高品質で臨床応用に最適なiPS細胞を作製するRNAリプログラミング技術を開発・保有しております。この技術優位性を活かし、iPS細胞の早期の臨床応用を実現してまいります。

 

メディカル事業では以下の事業を推進しております。

 

(a) 体性幹細胞製品ステムカイマル

 ヒト細胞加工製品ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまうことにより、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルの投与により、症状の進行を抑制する効果が期待されています。ステムカイマルは、腕の血管から静脈注射(点滴)で投与するため、侵襲性が低い治療法になります。

 日本国内の第II相臨床試験は、2020年2月に、第1例目の被験者への投与を開始し、2022年5月には全被験者の観察期間も含め全て完了いたしました。

 本治験では、「多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較」という非常にエビデンスレベルの高いデザインにおいて安全性と有効性について評価を行っております。現在、データ解析・評価を実施しており、今後、製造販売承認の申請を進めてまいります。

 台湾では、ステミネント社が第II相臨床試験を完了しており、これまでに重篤な安全性の問題は見られていないことが確認されています。米国でも、ステムカイマルの治験計画届(IND)がFDAの承認を得ております。

 また、日本では、2018年12月に厚生労働省による大臣承認を経て、希少疾病用再生医療等製品として指定されております。これにより、開発に係る経費の助成金(最大50%)、優遇税制措置、及び優先審査等の支援措置を受けることができます。

 当社では、このような制度を活用し、病気と闘っている患者様へ少しでも早く新しい治療法が届けられるよう、本プロジェクトを積極的に推進しております。

 

(b) iPS神経グリア細胞製品

 iPS細胞から神経グリア細胞を作製し、各種神経変性疾患に対するiPS細胞再生医療製品として研究開発を行っております。現在、iPS神経グリア細胞を用いた前臨床試験(動物実験)を公益財団法人実験動物中央研究所と実施しております。また、iPS神経グリア細胞の製造のため「殿町・リプロセル再生医療センター」(神奈川県ライフイノベーションセンター内)の整備を進め、2021年3月に厚生労働省関東信越厚生局より再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき「特定細胞加工物製造許可」(施設番号:FA3200006)を取得しております。

 2022年10月には、AMED 公募事業「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」に採択されました。本事業の支援により、研究開発を加速させ一日も早い臨床試験の開始を目指します。

 

(c) 臨床用iPS細胞(GMP-iPS細胞マスターセルバンク、パーソナルiPS)

 iPS細胞による再生医療の研究開発は世界中で精力的に行われており、日本でも、加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷等の臨床研究及び治験が進められています。再生医療に用いるiPS細胞には高い安全性と品質、さらに各国の医療ガイドラインに準じることが必要とされます。

 安全性の高いiPS細胞を作製するためには、iPS細胞を作るプロセスである「リプログラミング」が重要になります。リプログラミング技術は様々報告されていますが、当社では遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクの最も低い最先端のRNAリプログラミング技術を開発・保有しております。本技術を利用することで、臨床応用に最適なiPS細胞を作製することができます。

 製薬企業向けとして、「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」、個人向けとして「パーソナルiPS」の二つを提供しております。

 「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」では、医薬品製造の規制であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準拠してiPS細胞を大量製造し、再生医療製品の出発材料として製薬企業等に提供します。当社のiPS細胞は、日米欧の3極の規制に準拠しているため、日米欧で幅広く使用できることが強みになります。

 2022年10月には、世界最大規模の再生医療支援機構であるカリフォルニア州再生医療機構とIndustry AllianceProgramに関する基本合意書を締結いたしました。今後、同機構が推進している多数の再生医療プロジェクトにおいて当社の臨床用iPS細胞を提供してまいります。

 さらに、BioBridge社(米国)及びHistocell社(スペイン)と提携を行い、臨床用iPS細胞だけでなく、その後流工程である各種目的細胞への分化誘導及び再生医療等製品の製造までを行える体制を構築しました。今後、ドナー細胞の確保→iPS細胞の作製→分化細胞の製造までの全工程を日米欧の規制に準拠して受託製造する高付加価値な新規ビジネスとして立ち上げてまいります。

 「パーソナルiPS」は、将来の疾患に備え、個人のiPS細胞を作製し保管するサービスです。個人のiPS細胞をあらかじめ作製することで、治療までの期間を短縮でき、さらに免疫拒絶のリスクを最小化した移植治療を実現します。2022年2月、販路拡大のため、関西電力株式会社が運営するECモールサイト「かんでん暮らしモール」に出店いたしました。また、2022年10月、株式会社JTBと、国内及び訪日外国人を対象とした販売展開に関する業務提携を行いました。今後、新型コロナウイルスによる行動制限措置が緩和され、インバウンド需要が回復すると見込まれることから、これらの需要を取り込んでまいります。

 

(d) 臨床検査受託サービス

 2005年に衛生検査所として登録して以来、臓器移植にかかわるHLAタイピング及び抗HLA抗体検査等の臨床検査を実施しており、これまで全国300以上の医療機関との取引実績があります。

 これらの実績及びノウハウを活かし、2021年3月に、新型コロナウイルスPCR検査を新たに開始いたしました。当社のPCR検査は、陽性・陰性の判定に加え、オミクロンBA.5などの変異株を1~2時間程度の短時間で特定できることを特徴としています。通常、変異株の特定にはゲノム解析が用いられており、2日間程度を要しますが、当社の検査では変異株の特定までの時間を圧倒的に短縮できます。現在、医療機関、法人、個人を対象として本検査を実施しており、日本調剤株式会社との業務提携によって、同社が展開する全国の「健康チェックステーション」でも販売を行っております。さらに、大手ECサイトであるAmazonや楽天市場でも販売を実施しております。

 

 この結果、売上高は935百万円(前期比9.6%増)、セグメント利益は56百万円(前期62百万円の損失)となりました。

 

 なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が542百万円(前期579百万円)あります。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて722百万円減少し、1,914百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は140百万円(前期は246百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失303百万円が発生した一方、減価償却費46百万円、減損損失131百万円等の発生によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は1,087百万円(前期は2,144百万円の使用)となりました。これは主に、有価証券及び投資有価証券の売却および償還による収入2,138百万円が発生した一方で、有価証券及び投資有価証券の取得による支出3,064百万円が発生したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は482百万円(前期は2,384百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入562百万円があったことによるものであります。

 

生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

研究支援事業(千円)

1,562,634

116.9

合計(千円)

1,562,634

116.9

(注)1.金額は製造原価によっております。

2.メディカル事業に生産実績はありません。

 

(2) 受注実績

 当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

研究支援事業(千円)

2,017,763

146.1

メディカル事業(千円)

935,508

109.6

合計(千円)

2,953,272

132.2

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態の分析

(資産の部)

 当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて1,803百万円増加し、7,182百万円となりました。主な内訳は、有価証券の増加2,464百万円、売掛金の増加97百万円、現金及び預金の減少727百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて1,542百万円減少し、1,173百万円となりました。主な内訳は、投資有価証券の減少1,535百万円であります。

 

(負債の部)

 当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて77百万円減少し、749百万円となりました。主な内訳は、買掛金の減少86百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少80百万円、未払金の増加76百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて13百万円増加し、30百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の増加13百万円であります。

 

(純資産の部)

 当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて324百万円増加し、7,575百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加308百万円、利益剰余金の増加234百万円、資本剰余金の減少231百万円であります。

 

(2) 経営成績の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、継続的な研究開発費の支出があげられます。研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2023年3月期における研究開発費の総額は501百万円と、販売費及び一般管理費の約33%を占めており、今後も研究開発活動を積極的に推進する予定であります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は1,914百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が4,464百万円あり、十分な流動性を確保しています。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(5) 経営戦略の現状と見通し

 2024年3月期の業績につきましては、売上高3,048百万円(当期比3.2%増)、営業損失110百万円(当期は356百万円の損失)、経常利益148百万円(当期は119百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益148百万円(当期は305百万円の損失)を見込んでおります。

 

 連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=120円、1英ポンド=150円、1印ルピー=1.65円を前提としております。

 

 2020年に感染拡大が始まった新型コロナウイルスへの対応状況が、最近大きく変わってきました。今後とも、感染拡大は定期的に起こる可能性はあるものの、ワクチン接種率が高まってきたこともあり、今後、従来のような行動制限措置が行われる可能性は低くなりました。事業環境もパンデミック以前の状態に戻ってきております。

 

(6) 経営者の問題意識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。