株式会社モンスターラボホールディングス

上場日 (2023-03-28) 
ブランドなど:モンスター・チャンネルRAX
情報・通信業ITコンサルグロース

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E38477 

売上高

133.5億 円

前期

142.7億 円

前期比

93.5%

時価総額

124.3億 円

株価

362 (04/24)

発行済株式数

34,326,950

EPS(実績)

-67.58 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

784.5万 円

前期

858.8万 円

前期比

91.3%

平均年齢(勤続年数)

39.0歳(3.7年)

従業員数

40人(連結:1,401人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社は、持株会社として当社グループの経営方針策定及び経営管理を行っています。当社グループは、当社、国内子会社5社、海外子会社25社、関連会社4社で構成され、19の国と地域に展開しています。

 なお、当社は有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断することとなります。

 

(1)ミッション

 当社グループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとしております。世界の課題を解決するようなプロダクトやサービス、エコシステムをデジタルパートナーとしてクライアントと共に作り上げると同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を越えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」などの「機会」を提供することで、より良い世界を実現したいと考えております。

 

(2)事業セグメント

 当社グループは、メイン事業として主に大企業や自治体に対して、事業課題や新規事業のニーズに合わせてデジタルトランスフォーメーション(注1)を支援する「デジタルコンサルティング事業」を展開しております。また、「その他事業」として、RPA(ロボットによる業務自動化)ツール、音楽配信事業等のプロダクト事業を展開しております。デジタルコンサルティング事業はクライアント毎にカスタマイズされたサービスですが、市場の共通課題に対しては、「プロダクト事業」として複数のSaaS型サービス(注2)を提供しており、「その他事業」の大半を占めております。

① デジタルコンサルティング事業

 デジタルコンサルティング事業では、クライアントのデジタル戦略立案から始まり、デザイン、システム開発、さらにデータ解析、プロセス最適化までワンストップでクライアントのデジタルトランスフォーメーションの包括的なサポートを行っております。

 これらの活動を通して、多数のクライアントに対し、AIやAR等(注3、注4)の先端技術を駆使しながら、新規事業、ビジネス変革、業務改善などクライアントの経営課題解決及びビジネスに大きなインパクトのあるデジタルトランスフォーメーションの実現を目指しております。

 デジタルコンサルティング事業の売上は、大多数は準委任契約(クライアントにサービスを提供する人材の時間あたり単価と稼働時間をベースに請求)となっており、プロダクトリリース後も継続的に改善や新規機能の開発を行うことが多いため、継続性の高い事業になっております。

 世界19の国と地域で事業を展開しており、クライアントの所在地である日本やアメリカ、イギリス、UAEなどはレベニューセンター(注5)として営業やコンサルティング、デザインなど上流工程の人材を配置し、一方でエンジニア人口が多く、コスト水準が低い国にデリバリーセンター(注5)として多くのエンジニアを配置することで、コスト競争力を持ちながらスケーラブルにエンジニアの採用、教育及び開発を行っております。デリバリーセンターは各レベニューセンターの時差に対応できるようベトナム、フィリピン、チェコ、ウクライナ、コロンビアなど各地域に分散して構えております。

※画像省略しています。

注:2023年12月末時点。拠点数は子会社のものも含む。

注:APAC=Asia Pacific

注:Palestineの1名はMonstarlab Bangladesh Ltd.に所属しております。

 

② その他事業

 デジタルコンサルティング事業では、個々のクライアントと伴走するパートナーとしてデジタルトランスフォーメーションを推進しておりますが、その他事業の大半を占めるプロダクト事業では、当社グループが事業主体として、市場の共通課題を解決する複数のSaaS型サービスを展開しております。プロダクトとしては、店舗向けBGMサービスの「モンスター・チャンネル」、中小企業・自治体向けRPAソフトウェアの「RAX」などを展開しております。

 「モンスター・チャンネル」は、パソコン・スマートフォン・タブレットで簡単に始められる店舗向けBGMサービスです。お店などの商用空間に適した音楽チャンネルが1,000以上あり、業種・業態に合った音楽を探すことができます。著作権管理団体と契約しているため面倒な著作権処理も不要で、従来の有線放送の半額以下の料金で利用できることが強みとなっており、飲食店、美容室、小売店、医療施設を中心にシェアを拡大しております。

 「RAX」は主に大規模なシステム導入のハードルが高い中小企業を対象とした、自社開発のRPAソフトウェアです。労働力が不足しがちな小規模企業及び個人事業者に対して、ソフトウェアの提供に加えて、専門のコンサルタントによる業務の見える化や業務効率改善といった包括的なサービスを、導入しやすい価格帯で提供しております。2023年12月末時点の累計アカウント数は、100以上となっております。

 デジタルコンサルティング事業が予算を確保できる大企業向けオーダーメイド型であるのに対して、プロダクト事業はコンサルティング事業の経験を元に、市場の共通課題に対して市場規模や競争環境から成功可能性が高いと判断したものをSaaSプロダクト化しております。その結果、大企業だけでなく中小企業向けにもデジタルサービスの提供が可能となっております。

 デジタルコンサルティング事業及びプロダクト事業の事業系統図は次の通りであります。

※画像省略しています。

 

 

 

 

(3)事業の特徴

(a)成長市場であるデジタルトランスフォーメーション市場におけるユニークなポジショニング

 昨今、多くの領域でスタートアップ企業やテック企業が大企業のビジネス領域まで浸食してきており、大企業はデジタルの力で新規事業やビジネスモデルの変革を行うことを余儀なくされておりました。そこに、新型コロナウイルス感染症の流行によるニューノーマルの定着などを背景としてデジタルトランスフォーメーション市場の成長が加速された結果、市場規模は2023年時点で世界で約132兆円、2030年まで年率26.7%で成長し、世界で約692兆円になると見込まれております。(注6)

 

デジタルトランスフォーメーション市場における当社グループのポジショニング(当社グループによる分析)

※画像省略しています。

 

 広大なDX市場の中で当社が得意とする領域は「新規サービス開発」や「既存ビジネスの変革」「既存ビジネスの顧客体験変革」といった「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションとなっております。一方、SIer(システムインテグレーションを行う事業者)や総合コンサルティングファームは「コスト削減」や「業務効率化」を主とする業務システムの導入、開発、運用を得意領域としてきました。

 当社グループが得意とする「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションの領域は「業務システム」領域と大きく異なる、「アジャイル開発」「UXデザイン」と呼ばれる手法が必要なため、SIerや総合コンサルティングファームにとっては市場参入が難しい領域となっていました。そのため、当社グループとSIerや総合コンサルティングファームとで領域の棲み分けが起こることとなり、当社グループはデジタルトランスフォーメーションにおいて「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションに強いというユニークなポジョニングを獲得していると当社グループは考えております。実際、ビジネス変革や新規サービス開発と業務システムが関連した案件などは、これまで総合コンサルティングファームやSIerと協業をしてきた実績があります。

 

DX市場における当社グループの競争優位性(当社グループによる分析)

※画像省略しています。

注:Business & Strategy = 全社DX戦略策定、ビジネス変革戦略、新規事業戦略。Experience Design = ビジネス&サービスデザイン、UX/UIデザイン。Technology & Development = AI、AR/VR、IoT等。Data Analytics =データプラットフォーム構築、ビジネスインテリジェンス、事業データ分析

 

 新規事業やビジネス変革、顧客体験変革は、戦略→デザイン→開発→データ分析といった必要プロセスを、個別に、かつ順番に推進していくのではなく、これらの一連のプロセスを連携させ、迅速かつ包括的にPDCAサイクルを回しながら推進するアジャイル型アプローチが適しており、従来の総合コンサルティングファームやSIerに比べて当該アプローチに強みがある点が当社グループの競争優位性となっていると考えております。

 

当社グループの具体的競争優位性(当社グループ分析)

 

※画像省略しています。

注:当社グループの視点からの傾向

 

 また、「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションには、アジャイル型プロセスの他に、イノベーションの共創という点が重要になっております。それは新規ビジネスの共創であり、AI、ARなどの最先端のテクノロジーが重要であると当社グループは考えており、これらのスキルセットは、スタートアップ企業やテック企業で求められてきたものになっております。そのため、売上向上型デジタルトランスフォーメーションサービスは、これまで大手コンサルティングファームやSIerではなく、世界各国の比較的小規模のファームが主なサービス提供者となっていました。これに対して、当社グループは、スタートアップやテック企業と同じようなスキルセットやプロセスを持ちながら、大規模プロジェクトへの対応が可能な大企業が必要とする規模、セキュリティ、品質を担保している稀有な企業となっていると考えております。

 さらに、当社は、世界の主要都市に拠点を有することで、グローバルで最先端のケーススタディを蓄積することが可能になっており、競合他社と対比するとインターナショナル企業の顧客課題により深く接点を持つという点で優位性を保持していると考えております。

 なお、グローバル展開は、当社グループのケイパビリティ強化の観点からも大きな意味合いを持っております。世界のDXの進行状況は、地域及び業界によって大きく異なっており、ある地域の先進的なDX事例の知見を別の地域に展開することによって、グループ全体としての顧客提供価値の底上げが可能となります。特に、多くの世界的デジタルコンサルティングファームのホームマーケットである欧米市場では、競争激化により、業界特化型DXソリューションが多く生まれております。それらの知見を、当社グループのホームマーケットであるAPAC及び中東市場に展開することでそれら市場において大きな成長を目指すと共に、APAC及び中東での大規模プロジェクトの知見を欧米市場に還流することで、欧米市場でのプレゼンス強化を目指しております。特に中東では、サウジアラビアやUAE等で、現地政府と強いコネクションを持つコンサルティングファームやデザインファームを戦略的に買収することで、大規模な政府系案件の受注に成功しており、今後の成長に向けた基盤構築を着実に進めております。

 

※画像省略しています。

 

(b)売上が継続拡大するビジネスモデル

 当社グループの行うデジタルトランスフォーメーションは、コンサルタント、デザイナー、エンジニア、そしてクライアントが一つのチームとなり、リサーチ及び事業戦略策定、MVP(注7)の作成、本開発、サービスや事業の改善及び拡大と、必要な人員が時間と共に増員していく仕組みとなっております。デジタルトランスフォーメーションはコア事業をサポートすることが多く、コア事業となると継続的に改善及び拡大が必要となる上、当社チームにナレッジがたまっていくためスイッチングコストが高く、ストック性の高いビジネスとなっております。実際に、デジタルコンサルティング事業の当年度売上のうち、前年度以前に獲得した顧客(既存顧客)と当年度に獲得した新規顧客からの売上の内訳は下図の通りとなっております。

※画像省略しています。

 

注:既存顧客は、2019年以降から当該年度の期初までにプロジェクトを獲得した顧客を既存顧客と定義。

 

 当社グループは、プロジェクトに従事する人員に対して月額で請求するモデルとなっており、人員が増加する毎に売上が上がっていくため、売上が拡大するビジネスとなっております。

 

※画像省略しています。

注:上のモデルは一例であり、実際には多くのケースが存在。

 

(c)顧客単価の高い顧客数の拡大余地

 デジタルトランスフォーメーションは、あらゆる産業の多くの企業にとっての重要経営テーマであり、企業内での予算も拡大する傾向があることから、世界市場は2030年まで年平均26.7%で成長すると言われております(注6)。

 その流れから、コア事業のデジタルトランスフォーメーション案件が増加しており、実際当社グループにおいて、2020年から2023年にかけてデジタルコンサルティング事業の年間売上5,000万円以上の顧客数は増加傾向にあり、これらの顧客群からの売上が売上成長のドライバーになっております。そのため、クライアントのコア事業の売上を向上させるイノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションに注力することで顧客単価の高い顧客数を増加させることを目指しています。

※画像省略しています。

 

 

(d)M&Aによる成長実績と成長余地

 デジタルコンサルティング事業において、大きなポテンシャルがあり、オーガニックでの成長や採用よりもM&Aの方が時間、コスト効率が良い場合は、次の3つの目的で10社を超えるM&Aを行ってきました。具体的には1.北米や欧州などの新たなマーケットへの進出、2.コンサルティングやデザイン等付加価値の高いケイパビリティの強化、3.ベトナムやフィリピンなどエンジニアを配置するデリバリーセンターの拡大、となります。

 2014年~2016年においては、アジアのデリバリーセンター拡大を目的としておりましたが、2017年~2019年においては、欧米市場への進出目的に変化し、2019年以降は進出済み拠点の事業プラットフォームを活かすことができることからより投資リスクが低い、ケイパビリティ強化を目的としたM&Aに移行してきております。

 

※画像省略しています。

     注:円の大きさは買収額のイメージを表す

 

 また、これまで10社以上のM&Aを社内チームを中心に実行してきたため、案件のソーシングから買収交渉までの一連のプロセスと、M&A後の統合(PMI)及び成長を成功させるグローバル・オペレーションが確立されており、今後もM&Aを成長ドライバーとして活用できる基盤を構築しております。

 

M&A実施時のプロセスイメージ

※画像省略しています。

注:Nodes(現Monstarlab Denmark ApS)買収時の一例を示しており、全ての買収案件において同様のプロセスや検討社数となっているとは限りません。

 

(注)

1.デジタルトランスフォーメーション:2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念。2018年12月に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」にて、デジタルトランスフォーメーションとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だと定義しております。デジタルトランスフォーメーションの呼称が「DX」となります。

2.SaaS:Software as a serviceの略称。2008年1月21日に経済産業省が「SaaS向けSLAガイドライン」において「SaaSとは、インターネットを通して必要なアプリケーション(機能)をユーザが利用できる仕組みであり、利用者は自社でシステムを構築、あるいはアプリケーションソフトを購入・インストールしなくても、インターネットに接続された必要条件を満たすPCがあれば、ブラウザ経由で財務会計や顧客管理等の業務アプリケーションを利用することができる。つまり、自社の財務や顧客データ等も含めて情報システムはすべて“ネットの向こう側”にあり、SaaSサービスの提供者が維持管理を行っている。」と定義しております。

3.AI:Artificial Intelligence(人工知能)。人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指します。AIという言葉が初めて用いられたのは1956年にアメリカのダートマス大学で開催されたダートマス会議で、計算機科学者・認知科学者のジョン・マッカーシー教授によって提案され、一般社団法人 人工知能学会では、AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授の言葉を「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と翻訳して紹介しております。

4.AR:Augmented Reality(拡張現実)。VR(Virtual Reality、仮想現実)としばしば併用されます。2020年2月に経済産業省近畿経済産業局が発表した「ビジネスに効果的なVR/AR/MR活用の手引書・事例集」では、次のように定義されております。「VRとはCGで作られた世界や360度動画等の実写映像を、あたかもその場所に居るかのような没入感で味わうことができる技術を指す。ARは、現実世界に、コンピューターで作った文字や映像等などのデジタル情報を重ね合わせて表示することができる技術を指す。」

5.レベニューセンター、デリバリーセンター:当社グループでは、主にクライアントと対面して営業及びサービス提供をする拠点を、文字通り売上を上げる拠点ということでレベニューセンターという呼称を使用しており、日本、イギリス、アメリカ等がレベニューセンターにあたります。この拠点には主に営業、コンサルタント、デザイナーなどクライアントとコミュニケーションをとる人員が主な構成員となっており、反対に、サービスのデリバリーに特化した拠点、主にプログラミングなどクライアントとコミュニケーションをとる必要のない人員が配置されている拠点に対してデリバリーセンターという呼称を使用しております。当社グループでは、ベトナム、チェコ、コロンビア等がデリバリーセンターにあたります。

6.データソース:

Digital Transformation Market Size, Share & Trends Analysis Report By Solution (Analytics, Cloud Computing, Social Media, Mobility), By Service, By Deployment, By Enterprise, By End Use, By Region, And Segment Forecasts, 2022 2030

USD=150JPYとして算出。

7.MVP:Minimum Viable Product(必要最低限の機能を備えたプロダクト)の呼称。必要最低限の機能を持ったプロダクトを短い期間で素早く作成し、実際にユーザーに使用してもらうことでユーザーからフィードバックを早い段階で得ることができるため、プロダクトを早い段階から改善することができ、スタートアップ企業やテック企業で広く一般に使われております。

 

24/03/28

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という))の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済及びわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染法上の5類に移行され、社会経済活動の正常化が進んでいるものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレの進行に伴う金融引き締めの加速等、先行き不透明な状況が続いております。 一方で、IT業界におきましては、経営戦略に直結するデジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が増加しており、企業のDXに対する投資意欲は引き続き旺盛な状況が続いております。

 こうした経営環境の中、当社グループは世界19の国と地域において、主に企業や自治体に対して事業課題や新規事業のニーズに合わせてDXを支援するメイン事業「デジタルコンサルティング事業」およびプロダクト事業等の「その他事業」を展開しております(2023年12月31日時点)。なお、当社グループではデジタルコンサルティング事業を展開するエリアを、日本国内及びアジア・パシフィック地域を指すAPAC、ヨーロッパ、中東及びアフリカ地域を指すEMEA、北米、中米及び南米地域を指すAMERの3つのリージョンに分類しております。

 当連結会計年度につきましては、上半期においてAPACの開発フェーズプロジェクト数が想定水準を下回ったことや、EMEAにおける季節性を起因としたプロジェクトの進行と営業活動の停滞が成長率の低下を招きました。売上収益は下半期から実施した戦略が奏功し、回復基調となったものの、前年同期比で6.5%減となりました。営業利益は上半期の売上減少と下半期に実施した収益改善を目的とした構造改革の費用が大きく影響し、2,056,729千円の営業損失(構造改革費用を除いた営業損失は1,179,475千円)となりました。一方で、下半期に実施した構造改革の効果は一定程度寄与し、第2四半期連結会計期間を底として構造改革費用を除いた営業損失は緩やかな回復傾向となっております。

 以上の結果、当連結会計年度の当社グループの売上収益は13,346,962千円(前年同期比6.5%減)、営業損失は2,056,729千円(前年同期は389,677千円の営業損失)、税引前損失は2,156,279千円(前年同期は447,069千円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は2,355,328千円(前年同期は674,767千円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

② 当期の財政状態の概況

 当連結会計年度末の資産合計は14,461,055千円(前連結会計年度末は12,983,798千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)、営業債権及びその他の債権2,600,114千円(前連結会計年度末は3,073,532千円)、のれん3,964,762千円(前連結会計年度末は3,298,633千円)等であります。

 当連結会計年度末における各項目の状況は、次のとおりです。

 

(流動資産)

 流動資産の残高は5,836,139千円(前連結会計年度末は7,818,219千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)、営業債権及びその他の債権2,600,114千円(前連結会計年度末は3,073,532千円)等であります。

 

(非流動資産)

 非流動資産の残高は8,624,916千円(前連結会計年度末は5,165,579千円)となりました。主な内訳は、のれん3,964,762千円(前連結会計年度末は3,298,633千円)、無形資産651,053千円(前連結会計年度末は579,171千円)、使用権資産356,249千円(前連結会計年度末は350,821千円)等であります。

 

(流動負債)

 流動負債の残高は7,932,462千円(前連結会計年度末は5,560,860千円)となりました。主な内訳は、営業債務及びその他の債務1,132,648千円(前連結会計年度末は1,327,415千円)、社債及び借入金4,739,564千円(前連結会計年度末は1,924,423千円)等であります。

 

(非流動負債)

 非流動負債の残高は2,822,565千円(前連結会計年度末は3,330,513千円)となりました。主な内訳は、社債及び借入金1,493,246千円(前連結会計年度末は1,924,425千円)、リース負債549,435千円(前連結会計年度末は712,155千円)等であります。

 

(資本合計)

 資本合計は3,706,027千円(前連結会計年度末は4,092,424千円)となりました。主な内訳は、資本金1,922,586千円(前連結会計年度末は1,065,754千円)、資本剰余金10,499,729千円(前連結会計年度末は9,708,785千円)、利益剰余金△8,558,362千円(前連結会計年度末は△6,203,033千円)等であります。

 

③ 当期のキャッシュ・フローの概況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金は3,518,947千円の支出(前年同期は1,544,453千円の支出)となりました。これは主に、税引前損失(△2,156,279千円(前年同期は△447,069千円))による資金の減少、営業債権及びその他の債権の増減(532,379千円(前年同期は△1,469,468千円))、契約資産の増減(△252,512千円(前年同期は△159,423千円))、子会社株式売却損益(△938,663千円(前年同期はゼロ))、営業債務及びその他の債務の増減(△397,042千円(前年同期は△505,770千円))等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金は1,238,854千円の支出(前年同期は2,288,757千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(△121,144千円(前年同期は△291,226千円))、無形資産の取得による支出(△340,452千円(前年同期は△557,355千円))、投資有価証券の取得による支出(△428,119千円(前年同期はゼロ))、子会社株式の取得による支出(△134,528千円(前年同期は△619,575千円))、子会社株式の売却による支出(△183,772千円(前年同期はゼロ))等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金は3,725,517千円の収入(前年同期は2,241,103千円の収入)となりました。これは主に、長期借入による収入(680,000千円(前年同期は1,310,709千円))、長期借入金の返済による支出(△758,656千円(前年同期は△824,251千円))、社債の償還による支出(△114,500千円(前年同期は△137,000千円))、リース負債の返済による支出(△365,316千円(前年同期は△398,918千円))、増資による収入(1,713,663千円(前年同期は1,351,335千円))等によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、デジタルコンサルティング事業、その他事業の2つのセグメントから構成されております。当社グループの提供するサービスは、受注から販売までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ一致するため、生産、受注の状況の記載を省略しています。

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前期比

デジタルコンサルティング事業

13,559,922

12,914,858

4.8%減

その他事業

691,188

411,734

40.4%減

合計

14,251,110

13,326,593

6.5%減

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 総販売実績に対する割合が10%を超える相手先はありません。

 

⑤ 経営方針・経営戦略等

 当連結会計年度において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。

 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。

(のれん)

 のれんを含む非金融資産の減損にかかる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (10)非金融資産の減損」に記載しております。非金融資産の減損損失の測定に際しては、回収可能価額を見積り計算しており、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、のれんを含む非金融資産の減損損失が増減する可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容等

(売上収益)

 当連結会計年度の売上収益は、13,346,962千円(前年同期比6.5%減)となりました。

 売上収益の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、10,006,764千円(前年同期比7.3%増)となりました。

 主な要因は、当社グループ全体での売上高増加に伴う人件費等の売上原価の増加、当連結会計年度に新規取得した子会社(GENIEOLOGY DESIGN DMCC)や事業(Pioneers Consulting)から生じた売上原価の増加が生じた一方、原価人員の成熟化や継続的な原価低減活動、加えて売上増加に伴う固定費の回収が進み、売上収益の増加率と比べ売上原価の増加率は相対的に低い水準に留まったことが要因です。

 この結果、売上総利益は3,340,197千円(前年同期比32.4%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、6,196,064千円(前年同期比10.1%増)となりました。

 主な要因は、企業成長に伴う販管費人員増による給料手当の増加、上場するに足る内部管理体制構築のための管理部門増員から生じた採用費と役員報酬の増加に加え、組織構造のスリム化やグループレベルでの全体最適化の一環で実施した主にEMEAグループ人員のリストラ費用の発生です。

 また、その他の収益は、1,007,049千円(前年同期は306,240千円)となりました。主な要因は、米国子会社(Monstarlab LLC及びKoala Labs, Inc.)が政府から受けたPPPローンにかかる免除益合計155,973千円(前年同期は223,739千円)及びデンマーク当局より当期に認可を受けた税金等の免除益78,072千円です。

 これらの結果、営業損失は、△2,056,729千円(前年同期は△389,677千円)となりました。

 

(税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、当期利益)

 上述の事象に加え、主に金融商品の公正価値測定(FVTPL)を含む金融収益が3,320千円(前年同期は72,878千円)、主に社債及び借入金とリース負債から生じる支払利息を含む金融費用が101,933千円(前年同期は130,270千円)計上された結果、税引前損失は△2,156,279千円(前年同期は△447,069千円)となりました。また、法人所得税費用が163,640千円(前年同期は276,594千円の税金費用)が計上された結果、当期損失は△2,319,919千円(前年同期は△723,664千円)となりました。なお、第3四半期連結累計期間に生じた加速的な円安傾向は、第4四半期連結会計期間に生じた急激な円高傾向によりオフセット(相殺)され、結果的に当連結会計年度における為替変動による影響は僅少となりました。

 

 なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 当期の財政状態の概況」に、キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ 当期のキャッシュ・フローの概況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費や外注費、人員獲得のための採用費、M&A資金等であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。必要な資金は自己資金及び金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本としております。

 なお、当連結会計年度末(2023年12月31日)における社債及び借入金の残高は1,493,246千円(前連結会計年度末は1,924,425千円)となっており、現金及び現金同等物の残高は1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。

 これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上が5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。当連結会計年度における年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数は64社、これらのクライアント群からの売上の増加率は0.96%減となりました。

 なお、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標」をご参照ください。