E01223 Japan GAAP
前期
437.7億 円
前期比
112.5%
株価
7,620 (04/19)
発行済株式数
20,992,588
EPS(実績)
357.55 円
PER(実績)
21.31 倍
前期
670.5万 円
前期比
108.7%
平均年齢(勤続年数)
42.9歳(17.6年)
従業員数
908人(連結:1,736人)
当企業グループは、当社、連結子会社11社(国内2社、海外9社)、非連結子会社5社(海外5社)および持分法適用の関連会社2社(国内1社、海外1社)で構成されております。当企業グループは、主に等方性黒鉛材料(注)を素材として、高機能分野におけるカーボン製品の製造、加工および販売を主たる事業としております。当企業グループのカーボン製品は様々な分野で使用されており、顧客が必要とする仕様も多岐にわたるため、多品種少量生産への対応が必要であります。
当企業グループでは、1974年に国内外の企業に先駆けて等方性黒鉛材料を量産化し、続いて大型化も実現させたことで、使用用途も拡大してまいりました。この等方性黒鉛材料を中心としたカーボン素材の製造拠点を国内に集約することで効率的に生産し、国内および米国、欧州、アジアの海外各国に展開する加工および販売拠点に供給、現地の顧客に直接販売する体制を構築しております。当企業グループでは、このような素材から製品まで一貫した生産、販売体制により、安定的かつ短納期の製品供給を確立するとともに、直販体制による顧客との協調関係の中で、顧客の多様なニーズを迅速に取り入れた開発を行っております。
また、当企業グループは、カーボン専業メーカーとして長年蓄積してきたカーボン素材の分析データと顧客ニーズを基にして、基礎研究および応用研究に取り組んでおります。その結果、当企業グループ製品の用途は、産業機械、自動車、家電等の産業用途や民生用途から、原子力、宇宙航空、医療、エネルギー等の最先端分野まで幅広い分野に拡大しております。
(注)等方性黒鉛材料
炭素材料には、高温熱処理により製造される黒鉛材料とその他の炭素材料があります。黒鉛材料の中で等方性黒鉛材料は、三次元の方向に対して同じ性質を持つという特性があります。
等方性黒鉛材料を製造するには、成形工程においてすべての方向から均等な圧力をかけることが必要でありますが、当社では静水圧成形法(水中で圧力をかける成形法)による製造法を国内外の企業に先駆けて確立いたしました。
黒鉛材料の主な特徴は次のとおりであります。
① 熱伝導(*)性および電気伝導性に優れている。
② 高温や薬品への耐性が高い。
③ 軽量で加工が容易である。
④ 摩擦、摩耗が起こりにくい。
等方性黒鉛材料には、上記に加えて次の特徴があります。
① 熱膨張(*)等の特性がどの方向にも同じである。
② 微粒子構造で高強度、材料のばらつきも非常に小さい。
それぞれの素材、分野、品目、製品例および特徴は以下のとおりであります。
素材/分野/品目 |
製品例 |
||
特殊黒鉛製品 |
エレクトロニクス分野 |
単結晶シリコン製造用 |
単結晶シリコン引上げ炉用るつぼ、ヒーター |
化合物半導体製造用 |
MOCVD装置用サセプター、LPE装置用ボート、SiC結晶成長装置炉内部材 |
||
太陽電池製造用 |
単結晶・多結晶シリコン製造炉用るつぼ、ヒーター、 反射防止膜成膜用キャリア |
||
一般産業分野 |
|
連続鋳造用ダイス、放電加工電極、 各種工業炉用ヒーター・構造材 |
|
その他 |
先端プロセス装置用 |
イオン注入装置用電極、ガラス封着用治具 |
|
原子力・宇宙航空 医療用 |
高温ガス炉用炉心材、核融合炉用炉壁材、ロケット用部品、CTスキャン用部品 |
||
一般カーボン製品 |
機械用カーボン分野 |
一般産業機械用 |
ポンプ・コンプレッサー用軸受、シール材 |
輸送機械用 |
パンタグラフ用すり板、自動車用部品 |
||
電気用カーボン分野 |
小型モーター用 |
掃除機用カーボンブラシ、電動工具用カーボンブラシ |
|
大型モーター用 |
大型モーターブラシ、風力発電機用カーボンブラシ |
||
複合材その他製品 |
|
Si-Epi装置サセプター、SiC-Epi装置サセプター、MOCVD装置用サセプター、工業炉用構造材、単結晶シリコン引上げ炉用るつぼ、太陽電池製造用部材、核融合炉用炉壁材、自動車用ガスケット |
(1) 特殊黒鉛製品
特殊黒鉛製品につきましては、主に等方性黒鉛材料を使用しております。
① エレクトロニクス分野
(a) 単結晶シリコン製造用
単結晶シリコンをスライス加工したシリコンウエハーは、高集積メモリー等の半導体基板としてエレクトロニクス産業の発展を支える基幹材料であります。この単結晶シリコン引上げ炉で使用されるヒーター、るつぼ(*)等の炉内主要消耗部品には、高純度で優れた耐熱性が求められることから、等方性黒鉛製品が用いられております。
単結晶シリコンは大径化が進み、300mmウエハーを用いた製造工程が主流となっています。当社は、世界最大の等方性黒鉛材料の生産能力を有しており、加工、高純度の設備能力を利用して、国内外からの需要に対応しております。
(b) 化合物半導体製造用
発光素子や通信素子、パワーデバイス等で使用される化合物半導体(*)は、長寿命、省電力という特性を活かして、携帯電話やDVD、液晶等のデジタル家電、その他自動車用ヘッドランプや蛍光灯の高効率発光源素子として使用されております。
これらの化合物半導体の製造工程において使用される発熱体やMOCVD装置用サセプター(*)等の主要消耗部品、SiC結晶成長装置炉内部材等には、高純度で加工精度の高さが求められることから、当社の等方性黒鉛製品が、国内外で用いられております。
(c) 太陽電池製造用
クリーンエネルギーの代表格である太陽電池は、各国で家庭用発電の買上げや設備設置に対する補助金の法制化等の国策により普及が図られており、世界的に使用の拡大が進んでおります。
太陽電池素子の主力材料である単結晶シリコンおよび多結晶シリコンの製造工程で使用されるヒーター、るつぼ、反射防止膜成膜工程で使用されるPE-CVD装置用キャリア等の主要消耗部品には、優れた耐熱性と耐久性が求められることから、当社の等方性黒鉛製品が用いられております。
② 一般産業分野
等方性黒鉛材料は、黒鉛材料の中でもより耐熱性、電気伝導性、耐薬品性に優れた材料であります。これらの特性を活かし、金属溶解るつぼや連続鋳造ダイス(*)、金型製造時の放電加工電極(*)、セラミック、粉末冶金材料の焼結や自動車部品の焼鈍等の各種工業炉向け高温発熱体や炉内構造材等の分野に使用されております。
当企業グループは、さらなる成長が見込まれる中国・東南アジア・南米等国内外のこれら幅広い産業分野へ製品供給を行っております。
③ その他
(a) 先端プロセス装置用
半導体や液晶の製造工程における微細加工に用いられるイオン注入装置用電極や、ダイオード、水晶振動子等の封着治具等、先端プロセス装置部品の製造用として様々な等方性黒鉛製品が使用されております。優れた耐熱性と熱伝導性、高純度、高強度という特性や高い加工精度が求められることから、当社製品は大手装置メーカー等に広く採用されております。
(b) 原子力・宇宙航空・医療用
高温ガス炉の炉心材や核融合炉の炉壁材等の原子力用途には、高い信頼性と品質が要求されます。優れた耐熱性や黒鉛の持つ多様な特性に加え、耐放射線性や耐プラズマ性が求められることから、当社の製品が、これらの原子力分野で使用されております。また、ロケット用部品等の宇宙航空分野、CTスキャン等の医療分野でも使用されております。
(2) 一般カーボン製品
一般カーボン製品につきましては、主に従来の成形法で製造された炭素材料を使用し、等方性黒鉛材料も一部で使用しております。
① 機械用カーボン分野
(a) 一般産業機械用
耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性(*)という特性を活かし、ポンプやコンプレッサーの軸受け等のしゅう動部品、ピストンリング(*)、メカニカルシール(*)等の気体や液体のシール材として、国内外の機械メーカーに幅広く製品を販売しております。当社では、材料の均質性の向上と素材サイズの最適化を図ることで、コスト競争力に強みを有した海外展開を行っております。
(b) 輸送機械用
カーボンに銅を高圧含浸することにより自己潤滑性、電気伝導性および耐摩耗性を向上させたパンタグラフ用すり板(*)を、鉄道会社向けに販売しております。当社のパンタグラフ用すり板は、従来の金属製すり板に比べて架線の摩耗の低減、低騒音化を実現しております。
② 電気用カーボン分野
(a) 小型モーター用
掃除機や電動工具等、民生用途の小型モーター用カーボンブラシを、家電メーカーおよび工具機メーカー等に販売しております。当社の製品は、高速回転に対する耐久性や整流特性が良く、長寿命という特性があります。また、中国に製造販売子会社をいち早く設立する等、地産地消に早くから取り組み、現地での密な顧客対応を実現しております。
(b) 大型モーター用
自己潤滑性、優れた電気伝導性、易加工性等の特性を活用し、産業用途の大型モーター用カーボンブラシとして、製鉄メーカーおよび製紙メーカー等で使用されております。カーボンブラシは回転体にしゅう動しながら安定的かつ継続的に電気を供給する部品であり、風力発電の集電設備等の環境・エネルギー分野においても使用されるようになっております。
(3) 複合材その他製品
複合材その他製品につきましては、主に等方性黒鉛材料を基材に他の材質をコーティングした複合材料(SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛(*)等)、カーボンとカーボンファイバーとの複合材料(C/Cコンポジット製品(*))、天然黒鉛材料(黒鉛シート(*))等を製造販売しております。
① SiCコーティング黒鉛製品
SiCコーティング黒鉛製品は、耐熱性、耐エッチング性(*)が高く、アウトガスの発生を抑えた高純度な特性を活かし、シリコンおよび化合物半導体製造工程の薄膜製造プロセスにおけるサセプター材料として、国内外の半導体業界向けに販売を行っております。
② C/Cコンポジット製品
C/Cコンポジット製品は、軽量、高強度およびカーボンの持つ良好な熱特性を兼ね備えた先端材料であり、工業炉部材、単結晶シリコン製造工程、太陽電池製造工程、国内外の核融合炉壁材等の特殊分野等の幅広い分野で使用されております。
③ 黒鉛シート製品
黒鉛シート製品はシート状の軽量な製品であり、高温下においても他物質と反応しにくいという特性によって、ガスケットやマフラー等の自動車部品に使用されております。合成石英の製造工程や、単結晶シリコン製造工程におけるカーボン部材の保護用としても安定した需要が見込まれます。面方向の熱伝導の良さを利用した、ヒートシンク等の熱対策分野での応用も期待されております。
④ 多孔質炭素製品
多孔質炭素製品は、メソ孔(2~50nmの細孔)を大量に有する粉末状の製品であり、従来の多孔質材料にはない機能を有しております。様々な物質の吸着材料への適用の他、燃料電池の触媒担体、蓄電デバイスの電極材、添加剤などのエネルギー貯蔵関連用途、タンパク質吸着や分離、生体センサー部材などのバイオ系用途への使用が期待されています。
当企業グループの当該事業に係る主な位置付けは、2023年12月31日現在次のとおりであります。
なお、次の4地域は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
セグメントの名称 |
主要な会社 |
主要な事業の内容 |
日本 |
当社 |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造および販売をしております。 |
|
東炭化工株式会社 |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造をしており、当社がその販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
|
大和田カーボン工業株式会社 |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造をしており、当社がその販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
米国 |
TOYO TANSO USA, INC. |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造および販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
欧州 |
TOYO TANSO EUROPE S.P.A.(イタリア) |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)の製造および販売、複合材その他の製品の販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
|
TOYO TANSO FRANCE S.A.(フランス) |
特殊黒鉛製品および一般カーボン製品(機械用カーボン分野)の製造および販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
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GTD GRAPHIT TECHNOLOGIE GMBH(ドイツ) |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他製品の製造および販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
アジア |
上海東洋炭素有限公司(中国) |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)の製造および販売の他、複合材その他の製品の販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
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上海東洋炭素工業有限公司(中国) |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造および販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に東洋炭素(浙江)有限公司より行っております。 |
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東洋炭素(浙江)有限公司(中国) |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
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精工碳素股份有限公司(台湾) |
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)の製造および販売の他、複合材その他の製品の販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。 |
|
成都東洋炭素工業有限公司(中国) |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造および販売をしております。 素材(半製品)の仕入は主に東洋炭素(浙江)有限公司より行っております。 |
(非連結子会社および関連会社)
・上海永信東洋炭素有限公司(中国)
ブラシホルダーおよびフェノール樹脂製品の製造をしており、上海東洋炭素工業有限公司がその販売をしております。
・TOYO TANSO (THAILAND) CO.,LTD.(タイ)
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。
素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。
・TOYO TANSO KOREA CO.,LTD.(韓国)
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の販売をしております。
・TOYO TANSO SINGAPORE PTE. LTD.(シンガポール)
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の販売をしております。
・TOYO TANSO MEXICO S.A. DE C.V.(メキシコ)
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。
・PT. TOYO TANSO INDONESIA(インドネシア)
特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。
・ATNグラファイト・テクノロジー株式会社(日本)
熱膨張性黒鉛の製造および販売をしております。
以上に述べました当企業グループの事業系統図は、以下のとおりであります。なお、取引関係については、主要なもののみ記載しております。
※画像省略しています。
事業系統図の略名は以下のとおりであります。
会社名 (TTU) … TOYO TANSO USA, INC.
(TTE) … TOYO TANSO EUROPE S.P.A.
(TTF) … TOYO TANSO FRANCE S.A.
(GTD) … GTD GRAPHIT TECHNOLOGIE GMBH
(STT) … 上海東洋炭素有限公司
(STI) … 上海東洋炭素工業有限公司
(ZTT) … 東洋炭素(浙江)有限公司
(CTT) … 成都東洋炭素工業有限公司
(TTT) … 精工碳素股份有限公司
(YTT) … 上海永信東洋炭素有限公司
(KTT) … TOYO TANSO KOREA CO.,LTD.
(TTTh)… TOYO TANSO (THAILAND) CO.,LTD.
(TTS) … TOYO TANSO SINGAPORE PTE. LTD.
(TTM) … TOYO TANSO MEXICO S.A. DE C.V.
(TTID)… PT. TOYO TANSO INDONESIA
(ATN) … ATNグラファイト・テクノロジー株式会社
なお、(*)表記がある用語につきましては、以下に用語解説を添付しておりますので、ご参照下さい。
ただし、この用語解説は、投資家に本項の記載内容をご理解いただくためのご参考として、当社の理解と判断に基づき、当社が作成したものであります。
[用語解説]
〔熱伝導〕
物質の持つ熱の伝えやすさ。
〔熱膨張〕
温度の上昇にともなう物質の伸び。
〔るつぼ〕
高温の液体等を入れるための鉢状の容器。
〔化合物半導体〕
複数の元素からなる物質(化合物)からなる半導体で、ガリウムヒ素、チッ化ガリウム、炭化ケイ素等がある。シリコン半導体にはない性質が利用される。
〔サセプター〕
各種ウエハーの表面に薄膜結晶を成長させるとき等に使用する台。
〔連続鋳造ダイス〕
溶融金属を連続的に冷却し鋳造する連続鋳造において、溶融金属に接して冷却し凝固させる型。この型の断面を持った金属製品が連続的に得られる。
〔放電加工電極〕
被加工物と対になる電極のことをいい、被加工物と電極との間で放電を発生させ、電極の形状を被加工物に転写させる。
〔自己潤滑性〕
層状結晶構造を有すること、また摩擦係数が低いこと等から凝着が起こりにくい性質。
〔ピストンリング〕
往復動圧縮機において、シリンダー内壁とピストンとの隙間からの漏れを防ぐシールリング。
〔メカニカルシール〕
流体機器の回転軸、往復運動による側壁または圧力容器等からの漏れを制限したり、外部からの異液等の侵入を防ぐための機械部品。
〔パンタグラフ用すり板〕
電車へ電力を供給するために、架線にしゅう動させながら接触させて集電する集電体。
〔SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛〕
等方性黒鉛表面に炭化ケイ素の緻密な薄い膜を生成させた製品で、黒鉛からの微量のガス発生や反応を抑制することができる。
〔C/Cコンポジット製品〕
炭素繊維強化黒鉛で、軽量で強度が高いことが特徴である。
〔黒鉛シート〕
特殊な製法により黒鉛を紙のようなシート状に成形したもの。曲げやすい性質を持ち、ガスケット等に使用される。
〔耐エッチング性〕
反応性の高い気体や液体による消耗の少なさの度合い。
(1)経営成績等の概要
①経営成績
当連結会計年度においては、世界景気は一部の地域において弱さが見られるものの、持ち直しの動きが見られました。しかしながら、資源価格が高止まりしているほか、金融引き締めによる欧米の景気減速や米中両国による輸出規制の影響が懸念される等、先行き不透明な状況が継続しました。
当企業グループを取り巻く事業環境は、エレクトロニクス分野では、上期好調だったシリコン半導体用途の需要が、第3四半期以降、調整色を強めたものの、SiC半導体用途の高い需要に支えられ順調に推移しました。また、モビリティ分野においては、自動車産業の稼働回復を背景に、一般産業分野においては、企業の底堅い設備投資等を背景に、それぞれ堅調に推移しました。
このような状況の中、当企業グループでは、中期経営計画における経営目標の達成に向け、外部環境の変化を機敏に捉えた事業展開を推進するとともに、生産性向上によるコスト競争力の向上、技術革新に追随しうる新製品および高付加価値製品の開発・増強に着手する等、顧客ニーズに真摯に向き合いながら、事業機会を着実に取り込むべく事業を推進してまいりました。加えて、原燃料価格高騰の影響を軽減するべく採算性の確保・維持に向けた取り組みを進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、カーボンブラシ製品の需要が減少したものの、円安の影響に加え、半導体や冶金用途における堅調な需要に支えられ、売上高は49,251百万円(前期比12.5%増)となりました。利益については、価格転嫁や販売構成差等の影響で限界利益が増加したこと等により、営業利益9,283百万円(同39.2%増)、経常利益10,182百万円(同38.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,506百万円(同44.9%増)となりました。
|
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に 帰属する当期純利益 |
予 想 |
48,500百万円 |
8,500百万円 |
9,300百万円 |
7,000百万円 |
実 績 |
49,251百万円 |
9,283百万円 |
10,182百万円 |
7,506百万円 |
予 想 比 |
751百万円 |
783百万円 |
882百万円 |
506百万円 |
増 減 率 |
1.5%増 |
9.2%増 |
9.5%増 |
7.2%増 |
セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。
日本
半導体用は強い需要に支えられ前期を大きく上回り、機械用カーボン分野や工業炉用・連続鋳造用等の冶金用が堅調に推移したこと等により、売上高は25,736百万円(前期比13.1%増)、営業利益は8,238百万円(同28.0%増)となりました。
米国
半導体用が好調に推移したほか、工業炉用を中心とした冶金用や放電加工電極が堅調に推移したこと等により、売上高は4,187百万円(同23.8%増)となり、人件費等の固定費が増加したこと等により営業利益は43百万円(同52.4%減)となりました。
欧州
カーボンブラシ製品の売上は前期並みの水準に留まったものの、主力の冶金用が好調に推移したことに加え、半導体用が大幅に伸長したこと等により、売上高は4,881百万円(同31.6%増)、営業利益は42百万円(同18.5%増)となりました。
アジア
カーボンブラシ製品は顧客の生産調整の影響等により減少したものの、冶金用や半導体用の需要は堅調に推移しました。これらの結果、売上高は14,446百万円(同3.8%増)となり、営業利益はカーボンブラシ製品の販売減による限界利益の減少や一部地域の需要減の影響等により966百万円(同10.2%減)となりました。
品目別の概況は以下のとおりであります。
品目 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減率(%) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
特殊黒鉛製品 |
20,230 |
24,052 |
18.9 |
一般カーボン製品(機械用カーボン分野) |
3,985 |
4,116 |
3.3 |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野) |
4,823 |
4,457 |
△7.6 |
複合材その他製品 |
11,765 |
14,129 |
20.1 |
商品 |
2,969 |
2,494 |
△16.0 |
合計 |
43,774 |
49,251 |
12.5 |
特殊黒鉛製品
エレクトロニクス分野におきましては、単結晶シリコン製造用は下期において小幅な販売減となったものの上期の大幅な販売増が奏功し前期比増となり、SiC半導体向けの化合物半導体製造用は大きく伸長しました。また、太陽電池製造用は高付加価値品にフォーカスした選別受注を推進する中、底堅い需要に支えられ前期比増となった結果、当分野の売上高は前期比30.6%増となりました。
一般産業分野は、連続鋳造用や工業炉用等の冶金用に加え、放電加工電極が堅調に推移したこと等により、前期比13.0%増となりました。
これらの結果、特殊黒鉛製品全体としては、前期比18.9%増となりました。
一般カーボン製品
機械用カーボン分野は、主力の軸受・シールリング等が堅調に推移したこと等により、前期比3.3%増となりました。
電気用カーボン分野は、顧客の生産調整により家電・電動工具向けの小型モーター用の需要が減少したこと等により、前期比7.6%減となりました。
これらの結果、一般カーボン製品全体としては、前期比2.7%減となりました。
複合材その他製品
SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛製品は、SiC半導体向けが大幅に伸長したほか、シリコン半導体向け等も底堅く推移したこと等により、前期を大きく上回りました。C/Cコンポジット製品は、工業炉用の需要が増加したこと等により、前期を上回りました。また、黒鉛シート製品は、主力の自動車用、半導体用および冶金用がいずれも底堅く推移したこと等により、前期並みの水準となりました。
これらの結果、主要3製品は前期比22.8%増となり、複合材その他製品全体としては、前期比20.1%増となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ1,828百万円増加し、13,601百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は6,216百万円(前期比10.5%増)となりました。これは主に為替差益385百万円(同18.8%増)、売上債権の増加額459百万円(同77.3%減)、棚卸資産の増加額2,883百万円(同47.2%増)、前渡金の増加等によるその他の減少額692百万円(前期は1,131百万円の増加)および法人税等の支払額2,879百万円(前期比70.1%増)等の資金の減少に対し、税金等調整前当期純利益10,317百万円(同41.4%増)および減価償却費3,375百万円(同7.0%増)等の資金の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は2,693百万円(同48.7%減)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入8,018百万円(同3.8%増)等の資金の増加に対し、定期預金の預入による支出5,722百万円(同31.3%減)および有形固定資産の取得による支出4,698百万円(同11.4%増)等の資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は1,970百万円(同41.9%増)となりました。これは主に短期借入金の純減額297百万円(前期は101百万円の純増額)および配当金の支払額1,467百万円(前期比16.5%増)等の資金の減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
25,974 |
114.3 |
米国 |
4,252 |
123.1 |
欧州 |
5,095 |
135.5 |
アジア |
15,885 |
111.7 |
合計 |
51,207 |
116.0 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|||
受注金額 (百万円) |
前期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前期比 (%) |
|
日本 |
23,912 |
106.1 |
8,107 |
113.7 |
米国 |
5,111 |
127.1 |
4,346 |
135.8 |
欧州 |
5,000 |
114.3 |
2,109 |
125.5 |
アジア |
11,979 |
102.1 |
2,064 |
83.2 |
合計 |
46,003 |
107.8 |
16,628 |
114.8 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.外貨建てで受注したもので、当期中の為替相場の変動による差異については、当期受注金額に含めております。
3.半製品(素材製品)は、主として見込生産であるため、上記の金額には含まれておりません。
4.当連結会計年度の受注実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|||
受注金額 (百万円) |
前期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前期比 (%) |
|
特殊黒鉛製品 |
22,526 |
109.3 |
7,084 |
105.3 |
一般カーボン製品 (機械用カーボン分野) |
3,837 |
95.1 |
804 |
83.4 |
一般カーボン製品 (電気用カーボン分野) |
4,500 |
105.3 |
813 |
101.4 |
複合材その他製品 |
15,140 |
110.2 |
7,926 |
132.2 |
合計 |
46,003 |
107.8 |
16,628 |
114.8 |
5.欧州および一般カーボン製品(機械用カーボン分野)については内示による受注を含めております。
販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
25,736 |
113.1 |
米国 |
4,187 |
123.8 |
欧州 |
4,881 |
131.6 |
アジア |
14,446 |
103.8 |
合計 |
49,251 |
112.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
3.当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
特殊黒鉛製品 |
24,052 |
118.9 |
一般カーボン製品(機械用カーボン分野) |
4,116 |
103.3 |
一般カーボン製品(電気用カーボン分野) |
4,457 |
92.4 |
複合材その他製品 |
14,129 |
120.1 |
商品 |
2,494 |
84.0 |
合計 |
49,251 |
112.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当企業グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②財政状態の分析
資産・負債および純資産の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,180百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が305百万円減少したものの、受取手形及び売掛金が888百万円増加、棚卸資産が3,390百万円増加、有形固定資産が2,104百万円増加および投資その他の資産が638百万円増加したこと等によるものであります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ143百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が389百万円増加および未払金が633百万円増加したものの、電子記録債務が172百万円減少、短期借入金が285百万円減少、前受金の減少等により流動負債のその他が461百万円減少および長期リース債務の減少等により固定負債のその他が144百万円減少したこと等によるものであります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,323百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が6,038百万円増加および為替換算調整勘定が1,109百万円増加したこと等によるものであります。
③経営成績の分析
売上高
当企業グループの当連結会計年度の売上高は、カーボンブラシ製品の需要は減少したものの、半導体や冶金用途における堅調な需要に加え、円安の影響等により、49,251百万円(前期比12.5%増)となりました。
売上原価、販売費及び一般管理費
売上高に対する売上原価の比率は64.0%となりました。また、販売費及び一般管理費につきましては、売上高に対する比率が17.1%となりました。
営業外損益
営業外収益は、受取利息90百万円(同2.5%減)、持分法による投資利益304百万円(同92.5%増)および為替差益361百万円(同28.2%増)等を計上したことにより、952百万円(同23.5%増)となりました。
営業外費用は、支払利息25百万円(同23.2%減)および減価償却費16百万円(前年同期は同額)等を計上したことにより、52百万円(同23.6%減)となりました。
特別損益
特別利益は、補助金収入382百万円(同793.2%増)および固定資産売却益87百万円(同663.6%増)を計上したことにより、470百万円(同263.3%増)となりました。
特別損失は、固定資産除却損215百万円(同91.5%増)および減損損失120百万円(前期は計上なし)等を計上したことにより、336百万円(前期比67.5%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,506百万円(同44.9%増)となりました。
④キャッシュ・フローの分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当企業グループの運転資金需要は主に、原材料等の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備であります。
当企業グループは、事業運営上必要な運転資金および設備投資資金については、自己資金で賄うことを基本方針としつつ、金融機関からの借入により調達する場合もあります。