売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E01317 IFRS

売上高

1.50兆 円

前期

1.43兆 円

前期比

104.7%

時価総額

4,878.3億 円

株価

1,698.5 (04/25)

発行済株式数

287,211,790

EPS(実績)

55.68 円

PER(実績)

30.51 倍

平均給与

694.5万 円

前期

697.9万 円

前期比

99.5%

平均年齢(勤続年数)

45.4歳(20.6年)

従業員数

14,848人(連結:51,501人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当連結会計年度末時点において子会社159社及び関連会社41社で構成され、事業活動を通じて、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」という企業としての存在意義を追求し、「ウォーターテクノロジー事業」及び「ハウジングテクノロジー事業」を主要な事業内容とし、関連するサービス等の事業活動を展開しています。

当社グループが営んでいる主要な事業内容と、当該事業に関わる各社の位置付け並びに報告セグメントの関連は次のとおりであり、複数事業を営んでいる会社については、各事業にそれぞれ含めています。

なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.事業セグメント」に記載のとおりです。

 

事業区分

主要製品及び商品

主要な会社

ウォーター

テクノロジー

事業

[水回り設備]

衛生機器、シャワートイレ、

水栓金具、手洗器、浴槽、

ユニットバス、スマート製品、

シャワー、洗面器、洗面カウンター、

システムキッチン等

[その他]

住宅・ビル外装タイル、内装タイル等

㈱LIXIL、㈱LIXILトータルサービス、

㈱テムズ、㈱ダイナワン、

LIXIL Europe S.à r.l.、Grohe AG、及び同社子会社49社、

ASD Holding Corp.及び同社子会社15社、

A-S (China) Co., Ltd.、LIXIL Vietnam Corporation、

LIXIL (Thailand) Public Co., Ltd.、

LIXIL AFRICA HOLDINGS (Pty) Ltd.、

驪住(中国)投資有限公司、台灣驪住設備股分有限公司、

驪住科技(蘇州)有限公司、

驪住衛生潔具(蘇州)有限公司、

LIXIL India Sanitaryware Private Limited、

LIXIL GLOBAL MANUFACTURING VIETNAM Co., Ltd.

 

ハウジング

テクノロジー

事業

[金属製建材]

住宅・ビル・店舗用サッシ、

玄関ドア、各種シャッター、門扉、

カーポート、手摺、高欄、

カーテンウォール等

[木質内装建材類]

窓枠、造作材、インテリア建材等

[その他建材類]

サイディング、屋根材等

[住宅・サービス関連]

工務店のフランチャイズチェーンの展開、建築請負、不動産管理、

不動産事業のフランチャイズチェーンの展開支援、住宅ローン等

[その他]

太陽光発電システム等

 

㈱LIXIL、㈱LIXILトータルサービス、

㈱LIXILトータル販売、Gテリア㈱、㈱LIXIL住宅研究所、

旭トステム外装㈱、㈱LIXILリニューアル、

㈱LIXIL TEPCOスマートパートナーズ、ソニテック㈱、

㈱LIXILトーヨーサッシ商事、㈱クワタ、

㈱LIXILリアルティ、大分トステム㈱、西九州トステム㈱、

㈱ジーエイチエス、㈱LIXIL住生活ソリューション、

㈱LIXILホームファイナンス、

サンヨーホームズ㈱、

LIXIL INTERNATIONAL Pte. Ltd.、TOSTEM THAI Co., Ltd.、

LIXIL GLOBAL MANUFACTURING VIETNAM Co., Ltd.、

驪住通世泰建材(大連)有限公司、

LIXIL WINDOW SYSTEMS PRIVATE LIMITED、

PT. LIXIL ALUMINIUM INDONESIA

 

 

 

  事業の系統図は次のとおりです。

※画像省略しています。

 

23/06/22

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は、次のとおりです。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、資材・エネルギー価格の高騰に加え、日米金利差の拡大等に起因する円安の進行及び世界的な金融引締めが国内景気を押し下げるリスクとなっており、ひいてはインフレーションの進行による消費マインドの低下が懸念されています。また、住宅投資に関しては、貸家及び分譲は底堅い動きをみせているものの、持家は住宅ローン金利上昇の懸念や建築資材価格の高止まりの影響等から減退傾向が続いていることもあり、新設住宅着工戸数は軟調に推移し、先行きは不透明な状況となっています。一方で、政府主導で「先進的窓リノベ事業」に対する補助金制度が創設される等、過去に例のない大規模な住宅省エネ化支援策による需要喚起が期待されています。

世界経済に関しては、引き続きロシア・ウクライナ紛争の長期化に伴う資材・エネルギー価格の高騰の影響が続いています。加えて、欧米各国のインフレーションの抑制に向けた急速な金融引締めの動きや、中国のゼロコロナ政策の反動による経済成長の鈍化及び不動産市況の低迷等、地政学的リスクによる景気回復の下振れの懸念が拭えず、状況を注視していく必要があります。

しかしながら、国内・海外とも、新型コロナウイルス感染症の影響が薄れる中、ウィズコロナ/アフターコロナに適応した社会づくりを目指し、大幅な行動制限の緩和とともに経済活動の正常化に向けた動きが加速しており、今後は景気の持ち直しが期待されています。

このような環境のもと、当社グループにおける当連結会計年度の業績は、海外事業においてサプライチェーンの寸断や米国及び中国地域での需要減退の影響等を受けたものの、円安に伴う為替換算の影響に加え、国内事業における価格改定の浸透による増収効果やリフォーム向け製品の売上伸長等もあり、売上収益は1兆4,959億87百万円(前年同期比4.7%増)と増収となりました。一方で、利益面においては、国内・海外とも引き続き構造改革や価格の適正化、収益性改善の施策等の実行に努めたものの、資材・エネルギー及び部品価格のさらなる上昇、欧州地域における物流体制の制約に伴うコスト増加に加え、米国地域における大幅な金利上昇を背景とした需要の軟化、中国地域の市況低迷等による悪化影響をカバーしきれず、事業利益は257億45百万円(前年同期比60.3%減)、営業利益は249億3百万円(前年同期比64.2%減)、継続事業からの税引前利益は197億59百万円(前年同期比70.6%減)とそれぞれ大幅な減益となりました。

 

(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。

また、当社グループは、当連結会計年度より事業の管理体系を見直したことに伴いセグメント区分を変更し、従来のセグメント区分における「ハウジングテクノロジー事業」、「ビルディングテクノロジー事業」及び「住宅・サービス事業等」を、変更後の区分において「ハウジングテクノロジー事業」としています。このため、前年同期との比較は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に基づき組み替えて行っています。(以下、「④  生産、受注及び販売の実績」においても同様です。)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

増減額

増減率

ウォーター
テクノロジー

事業

売上収益

862,157

915,285

53,128

6.2%

事業利益

76,615

47,259

△ 29,356

△ 38.3%

利益率

8.9%

5.2%

 

 

ハウジング
テクノロジー

事業

売上収益

584,209

598,211

14,002

2.4%

事業利益

31,661

19,360

△ 12,301

△ 38.9%

利益率

5.4%

3.2%

 

 

消去又は全社

売上収益

△ 17,788

△ 17,509

279

△ 1.6%

事業利益

△ 43,401

△ 40,874

2,527

△ 5.8%

利益率

 

 

合     計

売上収益

1,428,578

1,495,987

67,409

4.7%

事業利益

64,875

25,745

△ 39,130

△ 60.3%

利益率

4.5%

1.7%

 

 

 

[ウォーターテクノロジー事業]

主に水回り製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は新設住宅着工戸数が弱含みに推移しているものの、価格改定効果の発現に加え、リフォーム関連商品の売上が堅調であったこと等から、前年同期を若干上回る売上収益を確保しました。また、海外事業は米国地域における金利上昇を背景とした需要の軟化や中国地域におけるゼロコロナ政策後の経済活動の回復の遅れの影響等外部環境によるマイナス要因があったものの、円安の進行による為替換算影響に加え、これまでコロナ禍で低迷していたアジア太平洋地域における経済活動の回復等もあり、前年同期比で増収となりました。その結果、同事業の売上収益は9,152億85百万円(前年同期比6.2%増)と増収となりました。

一方で、事業利益は国内・海外とも価格改定効果による粗利の増加、国内におけるリフォーム商品や中高級価格帯商品の売上構成比率の上昇等があったものの、前連結会計年度から続いている資材・エネルギー及び部品価格の高騰に加えて、海外においては欧州地域におけるサプライチェーンの混乱や米国地域における顧客の在庫調整の影響を受けたこと等もあり、472億59百万円(前年同期比38.3%減)と減益となりました。

 

[ハウジングテクノロジー事業]

主に国内にて住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、これまで取り組んできた価格改定効果の発現に加え、住宅性能・快適性の向上を目的としたリフォーム需要が堅調に推移したこと等により、売上収益は5,982億11百万円(前年同期比2.4%増)と増収となりました。

一方で、事業利益は価格改定による適正な粗利の確保とともに、高性能窓製品の販売伸長や、アセットライト化が軌道に乗ってきたことによる収益性の改善が着実に進んでいるものの、新築住宅の需要低迷による販売数量の減少の影響に加え、想定以上の資材価格の高騰及び海外からの部品調達価格のさらなる上昇による大幅なコスト増加等もあり、193億60百万円(前年同期比38.9%減)と減益となりました。

 

(注)1.事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業及びハウジングテクノロジー事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。

 

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて706億52百万円増加の1兆8,535億34百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度に計上した売却目的で保有する資産が旧本社ビル(WINGビル)の売却完了に伴い減少したものの、主にサプライチェーンの寸断への対応に伴う在庫水準の引き上げ等の影響による棚卸資産の増加があったこと等から、前連結会計年度末に比べて299億26百万円増加の7,445億33百万円となりました。一方、非流動資産は、上場株式の売却によるその他の金融資産の減少等があったものの、主にのれん及びその他の無形資産において円安の進行に伴う為替換算影響に加え子会社の取得による増加があったこと等から、前連結会計年度末に比べて407億26百万円増加の1兆1,090億1百万円となりました。

また、資本は6,277億20百万円、親会社所有者帰属持分比率は33.7%(前連結会計年度末比0.6ポイント減少)です。

 

※画像省略しています。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、150億5百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて1,032億91百万円の大幅な減少となり、この主な要因は、継続事業からの税引前利益の減少に加えて、営業債務及びその他の債務、営業債権及びその他の債権、棚卸資産等の運転資本の変動に伴う減少があったこと等によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の処分による収入や上場株式の売却による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得に加え、子会社の取得による支出があったこと等から293億19百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて45億14百万円の資金減少です。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金やリース負債の支払のほか、資本効率の向上と株主還元の強化を目的として自己株式の取得を実施した一方で、社債の新規発行を含む有利子負債の調達と返済を機動的に行ったこと等から198億39百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて1,279億33百万円の大幅な資金増加です。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響等を含めると、前連結会計年度末に比べて62億73百万円増加の1,066億77百万円です。

 

※画像省略しています。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

487,324

107.3

ハウジングテクノロジー事業

281,062

101.9

合計

768,386

105.2

 

商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

109,542

122.4

ハウジングテクノロジー事業

145,682

116.4

合計

255,224

118.9

 

受注実績

 ハウジングテクノロジー事業の工事物件については、受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高(百万円)

前年同期比

(%)

ハウジングテクノロジー事業

69,097

83.8

107,586

95.2

 

販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

915,285

106.2

ハウジングテクノロジー事業

598,211

102.4

報告セグメント計

1,513,496

104.6

セグメント間取引

△17,509

98.4

合計

1,495,987

104.7

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。また、分析に記載した実績値は1億円未満を四捨五入して記載しています。

 

① 重要な会計上の見積り及び判断、重要な会計方針

重要な見積りを伴う会計方針とは、不確実性があり、かつ翌連結会計年度以降に変更する可能性がある事項、又は当連結会計年度において合理的に用いることができる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。また、当社グループを取り巻く市場の動向や為替変動等の経済情勢により、これらの見積りの不確実性は増大します。

 

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって利用する重要な会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5)重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況に対して、事業全体及びセグメントごとに重要な影響を与えた要因について経営者の視点から見た認識及び分析・評価は、次のとおりです。

 

[当連結会計年度の業績に対する評価]

当連結会計年度は、急激な円安や資材・部品価格の高騰、欧州におけるサプライチェーンの制約が第3四半期会計期間まで継続するなど、従来以上に厳しい事業環境に対峙した1年でした。

売上収益は、円安の進行や価格改定などにより前年同期比674億円増の1兆4,960億円となった一方で、事業利益はコストの上昇と価格改定の間のタイムラグにより通期ではコスト高の全てを期中に賄うことができず、前年同期比391億円減の257億円と増収減益となりました。

こうした業績は、とりわけ日本国内における急激な円安の進行を背景とした原材料・資材価格の上昇を期中において製品価格へと転嫁しきれなかったこと、及び、世界各地での物価上昇を背景とした需要の軟化に起因した販売面・生産面での影響が主な要因です。

 

これら収益性回復に向けた課題については、変動費の上昇と固定費の上昇という二つの側面において各別の対応が必要となるものと考えています。

まず、原材料・資材高などの変動費の上昇に対しては、販売価格面での対応が不可欠と考えています。そこで当社では、従来、これを可能な限り機動的に実施することに努めており、第4四半期会計期間には、ようやくコスト上昇に対する価格への転嫁が追いつく兆しが見え始めました。今後もさらなる変動費の上昇が想定される場合には、コストの上昇に即した機動的な販売価格面での対応を通じて収益性の回復と向上を図ってまいります。

一方で、かかる対応により、物価の上昇に起因した需要の軟化が世界各地で顕在化していることも事実です。販売数量の減少は、コストの上昇への対応速度を鈍化させ、生産面においても製品一つあたりの固定費負担を増加させます。こうした固定費負担の増加については、変動費とは異なり、企業におけるさらなる固定費削減努力、そして高付加価値品の拡販努力が求められます。

それゆえ、とりわけ次期においては、財務面での最優先課題として、従来からのROIC経営・管理による資本効率の改善活動を通じた固定費のさらなる削減(アセットライト化)と、高付加価値製品の開発・生産・販売の実現に向けたフリー・キャッシュ・フローの増強策としての在庫水準の適正化に取り組んでまいります。

 

[ROIC経営による資本効率改善]

財務体質の強化や収益性の向上を通じた資本効率の改善について、当社では2019年よりグローバルでROIC経営を導入しており、ROICの業績評価指標への組み入れを通じたインセンティブの向上と、ROICツリー展開による部門単位での目標設定、月次での改善度合いの管理・報告を実施しています。

 

・粗利率改善:販売価格と原価低減の両面において事業環境の変化を勝ち抜く取り組みを推進し、利益率の改善を図っています。販売価格については、環境配慮型製品の拡充などによる高付加価値化や差別化製品へのシフトを図るとともに、柔軟な価格設定とこれを可能とする体制の整備に努めています。一方、製造原価については、製造コストの低減につながるアセットライト化を推進しています。

・販管費削減:デジタル化の推進による生産性の向上、ショールームや営業所の集約・最適化、人員配置の最適化に加え、従業員への在宅勤務の浸透・ライフスタイルに合わせた自律的な働き方のさらなる推進を目的に、本社を縮小移転しました。今後もデジタルツールのさらなる活用推進による生産性の向上、間接業務に係るシェアード・サービスの活用などにより、固定費の削減と資本効率の向上に努めていきます。

・税務マネジメント:公正で適切な納税と税務マネジメントを推進していきます。

・CCC改善:サプライチェーンの寸断に対応するため、製品供給の安定化を目的とした在庫の戦略的な積み増しなどにより、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は、前連結会計年度末比17.7日増の99.2日となり、在庫回転日数の伸長を主因として長期化しました。次期においては、昨今のサプライチェーン問題の解消を踏まえ、在庫水準を前連結会計年度末時点の水準まで引き下げることによる在庫回転日数の改善に注力します。

・ROI・ROIC管理:投資効率の向上を図るため、投資評価ガイドラインを導入しています。投資判断に採用しているハードルレートは、投資先国のカントリーリスクやインフレーション率の差をベース(例:日本でのハードルレートは10%)に、投資目的区分・案件ごとに算出し判断しています。

・固定資産の維持最適化:アセットライト化を推進し、資本効率の向上を図る方針のもと、当連結会計年度は、前橋工場・横浜工場の閉鎖に加え、本社を縮小移転しました。次期においても、引き続き昨今のサプライチェーンの課題の解消を目的としたサプライチェーンの再編によりアセットライト化を図ってまいります。

・手元資金と有利子負債の圧縮:当連結会計年度は、パートナーシップ構築宣言に基づくサプライヤーへの支払期日短縮、及び、今後の金利上昇を見据えた運転資本の早期確保を目的とした社債の発行等により、純有利子負債は増加しました。次期においては、下半期以降のフリー・キャッシュ・フローの改善を通じて有利子負債の圧縮と財務体質の健全化を図ります。

 

[財務の安定性確保]

現在は、イノベーションによる将来成長の基盤を築くフェーズにあることから、大型のM&Aや設備投資は検討していません。そのため、当面、大型の借入れや増資計画はありませんが、長期的かつ持続的な成長につながるITや人材、デザイン・ブランドなどの無形資産を主とした成長投資により営業キャッシュ・フローの増加を図るとともに、保有資産の最適化を通じて成長投資に必要な資金の創出を図ります。

次期は、円安の影響、さらなる生産性向上を目指したIT投資の増加により資本的支出の金額が増加しますが、こうした影響を除いたベースでは、概ね650億円程度を目安として、資本効率が高く、将来成長に資する投資目的・案件により多くの資本を投下する方針を継続します。

中長期的かつ持続的な成長のためには、安定的な財務基盤を固める必要があります。

当社では、収益性の向上と財務体質の強化を共に図る上で、ネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下に、また親会社所有者帰属持分比率を35%以上に改善することを中期目標の指標として、アセットライト化の推進に基づく資本効率の向上と有利子負債の削減に取り組んでいきます。

 

 

[キャピタルアロケーション・株主還元に対する考え方]

株主還元については、連結配当性向30%以上を配当方針とするとともに、財務状況や利益水準を総合的に勘案した上で、安定的に利益の還元を行うことを基本方針としています。この方針に基づき、当連結会計年度においては1株当たり年間90円を還元するとともに、約100億円の自己株式を取得し、すでに保有していた分と併せて消却を実施しました。なお、次期についても、収益性の改善の継続を前提として1株当たり年間90円を予想しています。

 

※画像省略しています。

(注)1.ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷{(親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+

親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2}

2.ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +

固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)

 

 

[次期の見通しと通期業績予想値]

次期の見通しについては、国内・海外とも新型コロナウイルス感染症の影響が薄れる中で経済環境は持ち直しの動きが続くことが期待されますが、一方でロシア・ウクライナ紛争等の地政学的リスクに起因する世界的な情勢不安に加え、さらなる物価及び金利の上昇や、資材・エネルギー価格の高止まり等の業績圧迫要因が継続することも懸念され、依然として先行きが不透明な状況が続くと見込まれます。

このような事業環境のもと、当社グループにおいては引き続き販売価格の適正化、素材の変更によるコストダウン等を進めているほか、域内での調達及び生産体制への移行、製造工程の現地化等を推進しています。また、国内事業ではリフォーム需要のさらなる獲得強化やビジネスモデルの最適化に取り組んでおり、今後も成長が見込まれる水回り製品の海外市場の需要を取り込むため、高付加価値製品の販売を拡大させます。

一方で、昨今の気候変動に関する消費者や社会の関心の高まりに対しては、これまでも環境配慮型製品の拡充等で対応していましたが、さらに持続的な成長及び企業価値創造を達成する手段として、当社グループの事業戦略に環境戦略を統合させるとともに、より魅力的で付加価値の高い製品を開発・販売していきたいと考えています。

これまで取り組んできた事業基盤の強化による成果は現れ始めており、長期的な成長への道筋は変わっていません。ステークホルダーの皆さまに提供する価値をさらに高め、ひいては、当社グループの存在意義である「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」に向けて前進していく所存です。

 

このような中、次期の通期業績予想値につきましては、上記のような事業環境・経営戦略を反映させた結果、売上収益は1兆5,300億円(前年同期比2.3%増)、事業利益は400億円(前年同期比55.4%増)、営業利益は280億円(前年同期比12.4%増)、継続事業からの税引前利益は210億円(前年同期比6.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は110億円(前年同期比31.2%減)を見込んでいます。

 

なお、上記の次期見通しは現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。実際の業績は、様々な要因によりこれらの見通しとは異なる結果となることがあります。

※画像省略しています。

 

(注)1.EPS(基本的1株当たり当期利益)の2024年3月期予想値の算定上の基礎となる期中平均株式数については、2023年3月31日現在の発行済株式数(自己株式数を除く)を使用しています。

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。また、各指標は、以下により算出しています。

ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+

親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2)

ROA :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((総資産額(前期末)+ 総資産額(当期末))÷2)

ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +

固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)

ネット有利子負債:有利子負債 - 現金及び現金同等物

3.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。

 

資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。

当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。

なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。

当連結会計年度においては、パートナーシップ構築宣言に基づくサプライヤーへの支払期日短縮、及び、今後の金利上昇を見据えた運転資本の早期確保を目的とした社債の発行等により、当連結会計年度末におけるネット有利子負債は前連結会計年度末に比べて874億円増加し5,117億円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,067億円となりました。

 

※画像省略しています。

 

 

なお、財務状況に関する主要指標の推移は、次のとおりです。

 

 

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

売上収益事業利益率(%)

3.5

4.2

4.5

1.7

親会社所有者帰属持分比率(%)

24.0

31.7

34.3

33.7

ネット有利子負債/EBITDA(倍)

5.5

3.5

2.9

4.8

(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。なお、各指標は、以下により算出しています。

ネット有利子負債:有利子負債-現金及び現金同等物

EBITDA     :事業利益+減価償却費及び償却費

2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債及び転換社債型新株予約権付社債を対象としています。また、EBITDAの算出に用いた減価償却費及び償却費には、非継続事業に分類したPermasteelisa S.p.A.及び同社子会社並びに株式会社LIXILビバに係る金額を含めていません。