E01600 IFRS
前期
7,767.6億 円
前期比
101.6%
株価
817.9 (07/12)
発行済株式数
500,000,000
EPS(実績)
19.13 円
PER(実績)
42.76 倍
前期
718.5万 円
前期比
103.2%
平均年齢(勤続年数)
41.6歳(16.2年)
従業員数
7,459人(連結:25,632人)
当社及び当社の関係会社(当社、子会社86社(うち連結子会社82社)及び関連会社30社(2024年3月31日現在)により構成)におきましては、産業機械事業、自動車事業等を行っています。
産業機械事業については、一般産業向けの軸受、精密機器関連製品及び状態監視システム等の製造・販売を行っています。自動車事業については、自動車及び自動車部品メーカー向けの軸受、自動変速機用部品等の製造・販売を行っています。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は、後記「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等][連結財務諸表注記]4.セグメント情報」に記載のとおりです。
各事業における主要製品、当社及び関係会社の位置付け等は次のとおりです。
※ 持分法適用会社であり、当社及び持分法適用会社以外は連結子会社です。
以上の事業の概略を系統図によって示すと、次のとおりです。
なお、米州、欧州、中国及びアセアン・オセアニアにおきましては、NSKアメリカズ社、NSKヨーロッパ社、NSK中国社及びNSKインターナショナル(シンガポール)社が、それぞれの地域の関係会社の統括を行っています。
※ 持分法適用会社であり、当社及び持分法適用会社以外は連結子会社です。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積り・予測を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。
なお、連結財務諸表作成にあたっての重要性がある会計方針及び見積り等については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1) [連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 2.作成の基礎 (6) 見積り及び判断の利用、3.重要性がある会計方針」に記載のとおりです。
(2) 財政状態及び経営成績の状況
当社は2023年5月12日にJISとの間で、当社及びJISが当社のステアリング事業をグローバルに統括する連結子会社であるNS&Cを共同運営すること等を内容とする契約を締結しました。これに伴い、第1四半期連結会計期間より、ステアリング事業を非継続事業に分類しています。売上高、営業利益、税引前利益は非継続事業を除いた継続事業の金額を表示し、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は、継続事業及び非継続事業の合算を表示しています。なお、当社は2023年8月1日にNS&Cに対する支配を喪失し、第2四半期連結会計期間よりNS&C及び同社の子会社は当社の持分法適用関連会社及びその子会社となりました。支配の喪失に係る損益は非継続事業に、持分法による投資損益は継続事業にそれぞれ含めています。
当社グループは、2022年度から2026年度までの5ヵ年を『中期経営計画2026』と位置づけ、「収益を伴う成長」「経営資源の強化」「ESG経営」の3つの経営課題に取り組んでいます。
当連結会計年度の世界経済を概観すると、景気は欧州と中国において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いています。一方で、インフレの高止まりや為替変動による影響、中国経済の先行き懸念、地政学リスクの高まりなど経済の先行きは未だ不透明な状況にあります。
地域別にみると、日本は足元で一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により生産活動が低下したものの、景気は緩やかに回復しています。米国では設備投資が伸び悩んだ一方、良好な雇用環境を背景に個人消費が下支えし景気は底堅く推移しました。欧州は個人消費の低迷や鉱工業生産の減少傾向が景況感の悪化につながり景気は停滞しました。中国では不動産市場の低迷が継続し、消費者心理の冷え込みで個人消費が力強さを欠くなど景気は持ち直しの動きに足踏みがみられました。
このような経済環境において当社グループの業績は、為替が円安に推移したこともあり、非継続事業を除いた継続事業の当連結会計年度の売上高は7,888億67百万円(前期比+1.6%)となりました。営業利益は273億91百万円(前期比△37.5%)、税引前利益は262億10百万円(前期比△39.4%)、継続事業及び非継続事業の合算の親会社の所有者に帰属する当期利益は85億2百万円(前期比△53.8%)となりました。
半導体市場における調整局面の継続や中国経済の停滞影響を受けて市況が低迷しました。加えて在庫調整の影響により需要が伸び悩み、当連結累計期間は対前期比で減収となりました。
地域別では、日本は工作機械、半導体製造装置及びアフターマーケット向けを中心に市況悪化の影響を受けて需要が減少しました。米州では半導体製造装置向け、欧州はアフターマーケット向けなどの販売が落ち込み減収となりました。中国はアフターマーケット、工作機械及び電機向けの需要が軟調に推移し減収となりました。
この結果、産業機械事業の売上高は3,448億46百万円(前期比△10.5%)、営業利益は80億7百万円(前期比△77.5%)となりました。
当事業では、成長が期待できる電動化、自動化、デジタル化、環境市場での需要増加を取り込むため、供給力の強化と技術サービス体制の強化を進めています。さらに、状態監視システムやアクチュエータなど新たな高付加価値商品の開発と市場投入も推進することで、産業機械事業のビジネス拡大を目指していきます。
グローバル自動車生産台数は部材の供給制約による生産調整の解消が進んだことで前年から増加し、当連結累計期間は対前期比で増収となりました。
地域別では、日本、米州及び欧州は前年同期に部品供給停滞などを受けて落ち込んだ自動車生産台数が回復に転じたことで増収となりました。中国は前年同期にゼロコロナ政策に伴う厳格な活動規制により生産活動が停滞した反動により増収となりました。
この結果、自動車事業の売上高は4,088億21百万円(前期比+13.8%)、営業利益は185億76百万円(前期比+193.6%)となりました。
当事業では、自動車の電動化に対し、低トルク・高速回転・軽量化といった当社グループの技術力を活かすことで競争力を強化し、さらには電動油圧ブレーキシステム用ボールねじなど将来に向けた新商品の拡大を図ることで事業の成長を目指していきます。
当連結会計年度において、資産合計は前連結会計年度末に比べて648億20百万円増加した1兆2,980億77百万円となり、負債合計は215億90百万円増加した6,201億23百万円となりました。
資本合計は、自己株式の消却等に伴う利益剰余金の減少等があった一方で、その他の資本の構成要素の増加により、前連結会計年度末に比べて432億30百万円増加した6,779億54百万円となりました。
なお、上記の資産と負債及び資本には、売却目的保有に分類される処分グループに係る資産116億43百万円、売却目的保有に分類される処分グループに係る負債113億70百万円、売却目的保有に分類される処分グループに係るその他の資本の構成要素△3億45百万円が含まれています。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
営業活動により得られたキャッシュ・フローは、税引前利益262億10百万円、非継続事業からの税引前損失29億86百万円、減価償却費及び償却費541億21百万円、運転資本等の加減算に加えて、退職給付信託の一部返還を受けたこと等による退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産の増減額279億55百万円により、998億18百万円の収入となりました(前連結会計年度は641億63百万円の収入)。
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは、保有株式の縮減を進めたことに伴うその他の金融資産の売却による収入179億71百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出499億33百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出109億17百万円、その他の金融資産の取得及び償還等により、908億14百万円の支出となりました(前連結会計年度は487億78百万円の支出)。
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは、短期借入金の純減額221億96百万円、ステアリング事業における持分法適用前の借入実施等に伴う長期借入れによる収入706億77百万円、長期借入金の返済による支出300億52百万円、自己株式の取得による支出217億17百万円、配当金の支払額150億37百万円等により、247億80百万円の支出となりました(前連結会計年度は44億17百万円の収入)。
上記により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて95億25百万円減少した1,505億83百万円となりました。
当連結会計年度は、『中期経営計画2026』(2023年3月期から2027年3月期)の2年目であり、当計画に基づき「収益を伴う成長」「経営資源の強化」「ESG経営」の3つの経営課題に取り組んできました。当社グループを取り巻く環境は、産業機械事業において需要の調整局面が継続しましたが、自動車事業がグローバル自動車生産台数の増加に伴い堅調に推移したことに加えて為替影響もあり、前期に比べて増収となりました。
この結果、当連結会計年度における当社が経営上の目標として掲げる指標と実績は、次のとおりです。
(注) 売上高、営業利益率、ROICの新目標及び実績は非継続事業を除いた継続事業のみで表示しています。
2025年3月期の事業環境につきましては、地政学的な緊張の高まりや為替動向の影響を注視する必要があるものの、下期からの設備投資需要の回復、グローバル自動車生産台数は前年と同水準を見込んでいます。このような環境下においても、当社グループは企業理念のもと、トライボロジーとデジタルの融合による価値創出で、持続可能な社会の発展に貢献し、社会から必要とされ、信頼され、選ばれ続ける企業を目指していきます。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
『中期経営計画2026』では、持続可能な社会への貢献と不断の企業価値の向上を目指すために、安定した財務体質のもと、収益を伴う成長を遂げてキャッシュを創出することにより、当社の持続的成長のために必要な投資と株主の皆様への安定的な利益還元に資金配分を継続することを、財務戦略の基本方針としています。
(a) 財務安定性の維持
当社グループの持続的な成長を支え、事業環境の変化にも耐え得るには、「財務安定性の維持」が前提となります。自己資本比率、ネットD/Eレシオ、手元流動性など、当社グループの財務安定性を示す指標は健全な状態を保って推移しています。『中期経営計画2026』では、ネットD/Eレシオの目標を0.4倍以下とすることで、安定的な財務基盤を確保しつつ機動的かつ効果的な有利子負債の活用を図っています。
安定した財務体質の下、当社グループは「収益を伴う成長」を持続的に遂げて、キャッシュを創出していきます。創出したキャッシュにより、設備投資や研究開発投資、ESG経営に必要な人的資本、DX、さらにはM&A等への投資を実施して経営資源の強化を図り、当社グループの持続的成長と次のキャッシュ創出に繋げていく考えです。
また、株主・投資家の皆様が期待する資本コストを上回る収益率をあげることは、株式上場会社の使命と言えます。『中期経営計画2026』の後半においては、事業環境の変化を踏まえた見直しを行い、「ROE 8%」、「ROIC 6%」を資本効率性の経営目標に設定しました。しかしながら、当社は、過去の株価動向と事業特性、及び株式市場の現況から推計した当社の株主資本コストは概ね8%~9%と認識しています。従いまして、『中期経営計画2026』を超えた先に「ROE 10%」を実現するよう、収益性の改善、DXによる効率化、資本効率の向上に取り組んでいきます。
(c) 安定的な利益還元
当社グループは株主の皆様に対する「安定的な利益還元」を重要な経営方針の一つとして、『中期経営計画2026』においては、配当性向30%~50%を目標に掲げています。また、機動的な資本政策の手法として、自己株式の取得も選択肢の一つと認識しています。自己株式の取得は、キャッシュ・ポジションや株式市場の動向等を勘案して適切かつ機動的に実施したいと考えており、これらの実行にあたっては、財務状況等を勘案して適切に決定していきます。
なお、2025年3月期より、利益還元の指標としてDOE(親会社所有者帰属持分配当率)を採用します。各期の配当は、配当性向30%~50%に加えて、DOE2.5%を下限の目安に、株主の皆様へ安定的・継続的な配当を実施する方針です。
②財務状況
当連結会計年度の財政状態は次のとおりです。
当連結会計年度では、資金調達の一環で、当社にとって初めてとなるサステナビリティ・リンク・ボンド150億円を発行しました。サステナビリティ・リンク・ボンドは、予めESG(環境・社会・ガバナンス)に関する目標を設定する社債です。当社グループは、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行を通じて環境への取り組みを加速させることで、カーボンニュートラルさらには持続可能な社会の発展への貢献をより確かなものとしていくことを目指しています。
当社グループは、経営資源を有効活用するため資産効率の向上にも取り組んでいます。当連結会計年度においては、政策保有株式の縮減を進めたことに伴うその他の金融資産の売却により179億71百万円の収入がありました。加えて、退職給付信託で保有していたみなし保有株式も当連結会計年度に全て売却しました。これら保有株式の売却により、当連結会計年度末の「連結資本合計に対する株式保有金額の比率」は5.5%まで低下しました(前連結会計年度末は15.1%(みなし保有株式を含む))。また、近年、退職給付信託を含む年金資産が退職給付債務に対して大幅な積立超過の状況にあり、今後もその状況が継続することが見込まれることから、2023年4月に退職給付信託から350億円の返還を受けました。
利益還元については、前連結会計年度に比べて減益となったものの、今後の事業環境等を総合的に勘案した結果、当連結会計年度の1株当たり配当金は前連結会計年度と同額の30円としました。また、2023年5月から6月にかけて25,000千株、217億12百万円の自己株式取得を実施しました。これらの結果、配当性向は173.8%、総還元性向は429.1%となっています。なお、取得した自己株式については、既保有の自己株式と合わせて、2023年8月に51,268千株(消却前の発行済株式総数の9.3%分)の自己株式消却を実施しました。
当社グループは現在、自己資金及び金融機関の借入れ等により資金調達を行っています。運転資金について借入れによる資金調達を行う場合、期限が一年以内の短期借入金で各連結会社がその現地通貨で調達することが一般的で、生産設備などの長期資金は、主として長期借入金及び社債で調達しています。
本報告書提出時点において、格付投資情報センターから「A」、日本格付研究所から「A+」の格付を取得しており、外部からの資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。当社グループは、その健全な財務状況、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力、金融機関とのコミットメントライン契約金額400億円や、コマーシャルペーパー発行枠500億円などにより必要資金の確保と緊急時の流動性を確保しています。
当社グループの販売・生産品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また見込み生産を行う製品もあるため、生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。このため、販売及び生産の状況については、「(2)財政状態及び経営成績の状況」に関連づけて記載しています。
当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に重要な影響を与えるリスク要因については、「3[事業等のリスク]」に記載のとおりです。