売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E02123 Japan GAAP

売上高

2,623.0億 円

前期

5,793.6億 円

前期比

45.3%

時価総額

1,608.3億 円

株価

1,560 (04/25)

発行済株式数

103,098,717

EPS(実績)

150.87 円

PER(実績)

10.34 倍

平均給与

841.0万 円

前期

805.9万 円

前期比

104.4%

平均年齢(勤続年数)

47.3歳(20.6年)

従業員数

40人(連結:5,747人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、当社及び当社の関係会社(連結子会社47社及び持分法適用関連会社71社)により構成されており、船舶、海洋開発、機械、エンジニアリングの4つの事業を主として行っております。これら事業は、セグメント情報の報告セグメントの区分と同一です。

 各事業の主な事業内容及び主要なグループ会社は以下のとおりであります。

 

 なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

(2023年3月31日現在)

 

事業区分

主な事業内容

主要グループ会社

船舶

船舶等の製造、販売、設計、エンジニアリング、修理ほか

海洋開発

浮体式海洋石油・ガス生産設備の設計、建造、据付、販売、リース、チャーター及びオペレーションほか

三井海洋開発㈱※

機械

舶用ディーゼル機関、産業機械、港湾関連構造物の製造・販売・設計ほか

㈱三井E&Sマシナリー

㈱三井E&Sパワーシステムズ

三井ミーハナイト・メタル㈱

㈱加地テック

PACECO CORP.

Mitsui E&S Asia Pte. Ltd.

上海三造機電有限公司

㈱三井三池製作所※

上海中船三井造船柴油机有限公司※

エンジニアリング

発電事業、海外土木・建築工事全般ほか

㈱三井E&Sエンジニアリング

市原バイオマス発電㈱※

その他

情報・通信、販売、サービス、エンジニアリングほか

三井造船特機エンジニアリング㈱

三井E&Sシステム技研㈱

㈱三井E&Sビジネスサービス

Burmeister & Wain Scandinavian Contractor A/S

TGE Marine Gas Engineering GmbH

三井E&S(中国)有限公司

三井E&S造船㈱※

江蘇揚子三井造船有限公司※

(注)無印:連結子会社   ※:持分法適用関連会社

 

23/06/28

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績等の状況

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立により回復の動きがみられました。しかしながら、世界的なインフレ高進とそれを抑制するための急速な金融引き締めにより回復ペースは減速傾向にあります。また、米欧の急速な利上げが金融システム不安を引き起こすことへの懸念も高まっており、先行きは不透明な状況にあります。

米国経済は、貯蓄取崩しによる個人消費や良好な雇用情勢などに底堅い動きがみられるものの、高インフレや政策金利の引き上げが景気を下押しし、減速する見通しです。欧州経済も、緊迫するウクライナ情勢に加え、米国発の金融システム不安の高まりなどにより消費マインドの回復は鈍く、景気は低迷する見込みです。中国経済は、ゼロコロナ政策の解除を機に経済活動が正常化し、サービス消費の拡大により回復傾向にありますが、自動車販売の不振、不動産市況や輸出の低迷など、サービス以外の需要には脆弱さが残り、回復は緩やかなペースに留まる見通しです。一方、国内経済は堅調な個人消費や総じて高水準を維持する企業収益により回復基調にありますが、世界経済の減速懸念や物価上昇、今後の金利動向など不確実性は高く予断を許さない状況にあります。

このような状況下、当社グループは2019年5月に策定した「三井E&Sグループ 事業再生計画」(同年11月に一部見直し、以下、事業再生計画)に沿って、不採算事業の整理・撤退等を進め、祖業である船舶の建造事業からも事実上撤退する等、2022年度までに、子会社・不動産等、約20件、総額1,200億円超の事業・資産売却を断行しました。

さらに、財務体質の健全化及び成長投資のための資本対策として、2022年3月31日には「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」によって、合計約170億円の資金調達を行うことを公表し、2022年6月30日に「A種優先株式」90億円の払込手続が完了した他、「第1回行使価額修正条項付新株予約権」は2023年3月末時点で約33%、約23億円が行使され、財務健全性も向上しております。

インドネシア共和国向け火力発電所土木建築工事についても、残工事を除き、顧客への引き渡しが完了し、顧客による発電プラントの商業運転が開始されています。残工事は商業運転に直接の影響がない一部のものに限られ、顧客による商業運転の操業の都合に合わせて粛々と進められている状況であり、関係各社との費用精算や為替予約の締結等により未確定費用の確定を進めた結果、不確実性は解消されたと判断できる状況となりました。当社グループはこれら一連の施策を計画通り全て実行し、この度、事業再生計画を完遂することができました。

一方で、当社を取り巻く事業環境が大きく変化していることを踏まえ、「2023年度中期経営計画」(以下、「2023中計」)を1年前倒しで2022年度からスタートすることを2022年5月13日に公表し、その成長戦略の一環として、中核事業である舶用推進エンジン事業における開発・生産・アフターサービスの強化を目的に、2022年9月27日付で、「株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン及びその付随事業の承継に関する株式譲渡契約」を締結し、2023年4月に「株式会社三井E&S DU」が発足しました。また、岡山県の当社グループ玉野機械工場敷地内で、舶用エンジンの次世代燃料対応に向けた生産設備の増強工事にも着手しております。(2022年11月9日公表)

さらに、当社は、今後の成長と収益力向上のため、事業と経営との距離を縮め、一体となることで戦略の立案・実行スピードを上げることを目的に、2023年4月1日付で、株式会社三井E&Sマシナリー及び株式会社三井E&Sビジネスサービスを吸収合併し、商号を「株式会社三井E&S」に変更いたしました。また、2023年6月28日開催の定時株主総会における定款変更決議により、当社は監査等委員会設置会社へ移行いたしました。

当社グループでは、2023中計に掲げた成長戦略の遂行に向けた土台固めと、更なる成長戦略の実行・加速により、新生三井E&Sグループの企業価値向上に取り組んでまいります。

 

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて308億9百万円増加の4,399億59百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて169億27百万円減少の3,292億73百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて477億37百万円増加の1,106億86百万円となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、受注高は3,223億51百万円(前期比△36.9%)、売上高は2,623億1百万円(前期比△54.7%)、営業利益は93億76百万円(前期は100億29百万円の営業損失)、経常利益は125億32百万円(前期は257億42百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は155億54百万円(前期は218億25百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 

〔経営成績の推移:連結ベース〕

 

 

 

 

 

受注高

(百万円)

売上高

(百万円)

営業利益又は

営業損失(△)

(百万円)

経常利益又は

経常損失(△)

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(百万円)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失

(△)

(円)

2023年3月期

322,351

262,301

9,376

12,532

15,554

177.47

2022年3月期

511,089

579,363

△10,029

△25,742

△21,825

△269.94

2021年3月期

576,668

644,686

△12,243

△8,223

134

1.67

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。

 

(船舶)

受注高は84億39百万円(前期比△56.8%)、売上高は65億98百万円(前期比△76.5%)、営業利益は83百万円(前期は4億38百万円の損失)となりました。なお、船舶セグメントを構成する三井E&S造船株式会社及びその子会社2社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間より連結の範囲から除外したため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第2四半期連結累計期間までとなります。

 

(海洋開発)

持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、前期から続く新型コロナウイルス感染症の感染拡大による建造工事の収益率低下の影響が当期にも及んでいることや、ブラジルで操業するFPSO等への追加的な修繕費用等の発生による利益の押し下げ要因があったものの、比較的収益率の高い建造工事の進捗及びチャーター事業の収益の積み上げなどにより、23億11百万円となりました。

 

(機械)

受注高は2,312億10百万円(前期比+55.4%)、売上高は1,742億11百万円(前期比+13.3%)、営業利益は83億74百万円(前期比+2.7%)となりました。

 

(エンジニアリング)

売上高は224億6百万円(前期比+193.7%)、営業利益は5億47百万円(前期は108億10百万円の損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローは150億43百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは29億99百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは95億15百万円の収入となったことなどにより、前連結会計年度末に比べて73億50百万円減少(△14.5%)して434億68百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の支出は、150億43百万円(前連結会計年度は202億65百万円の支出)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益の計上及び仕入債務の増加などによる収入があった一方、受注工事損失引当金の減少、売上債権及び契約資産の増加、棚卸資産の増加、契約負債の減少、その他負債の減少などによる支出があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、29億99百万円(前連結会計年度は709億23百万円の支出)となりました。これは主として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入があった一方、有形及び無形固定資産の取得による支出などがあったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、95億15百万円(前連結会計年度は8億6百万円の収入)となりました。これは主として、長期借入金の返済及び社債の償還による支出などがあった一方、短期借入金の純増加及び株式の発行による収入などがあったことによるものであります。

 

〔財政状態の推移:連結ベース〕

 

総資産

(百万円)

純資産

(百万円)

自己資本比率

(%)

営業活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

投資活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

財務活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

有利子
負債残高

(百万円)

2023年3月期

439,959

110,686

24.2

△15,043

△2,999

9,515

141,547

2022年3月期

409,150

62,949

14.0

△20,265

△70,923

806

142,374

2021年3月期

759,029

88,480

8.5

7,478

21,115

△6,813

164,531

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

船舶

6,299

△76.9

海洋開発

△100.0

機械

187,748

21.0

エンジニアリング

22,273

163.1

その他

58,545

△12.7

合計

274,866

△52.4

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

3.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは主に、海洋開発セグメントにおいて、前連結会計年度より、連結子会社であった三井海洋開発株式会社を連結の範囲から除外し、持分法適用関連会社としたことによるものであります。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比(%)

船舶

8,439

△56.8

△100.0

海洋開発

△100.0

機械

231,210

55.4

149,191

65.0

エンジニアリング

6,669

303.7

6,411

△69.2

その他

76,031

7.9

156,215

20.8

合計

322,351

△36.9

311,817

25.4

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、受注高に著しい変動がありました。これは主に、海洋開発セグメントにおいて、前連結会計年度より、連結子会社であった三井海洋開発株式会社を連結の範囲から除外し、持分法適用関連会社としたことによるものであります。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

船舶

6,598

△76.5

海洋開発

△100.0

機械

174,211

13.3

エンジニアリング

22,406

193.7

その他

59,084

△11.3

合計

262,301

△54.7

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは主に、海洋開発セグメントにおいて、前連結会計年度より、連結子会社であった三井海洋開発株式会社を連結の範囲から除外し、持分法適用関連会社としたことによるものであります。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Equinor Brasil Energia Ltda.

86,234

14.9

当連結会計年度については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載しておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ308億9百万円増加の4,399億59百万円となりました。これは、現金及び預金が59億58百万円減少した一方、仕掛品が102億37百万円、投資有価証券が255億22百万円それぞれ増加したことなどによります。

負債は、前連結会計年度末と比べ169億27百万円減少の3,292億73百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が62億33百万円、短期借入金が206億30百万円、未払費用が351億92百万円それぞれ増加した一方、1年内償還予定の社債が100億円、契約負債が56億円、受注工事損失引当金が455億81百万円、社債が50億円、長期借入金が77億29百万円それぞれ減少したことなどによります。

純資産は、A種優先株式の発行、第1回行使価額修正条項付新株予約権の行使、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、繰延ヘッジ損益の増加及び為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末と比べ477億37百万円増加の1,106億86百万円となりました。また、減資により増加したその他資本剰余金600億15百万円を利益剰余金に振り替えることで欠損填補に充当し、利益剰余金のマイナスを解消いたしました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度と比べて1,887億38百万円減少(△36.9%)の3,223億51百万円となりました。

売上高は、海洋開発部門の三井海洋開発株式会社を連結の範囲から除外したことにより、前連結会計年度と比べて3,170億62百万円減少(△54.7%)の2,623億1百万円となりました。

営業利益は、エンジニアリング部門においてインドネシア共和国向け火力発電所土木建築工事の進捗による損益改善などにより、93億76百万円(前期は100億29百万円の営業損失)となりました。

経常利益は、営業利益の計上及び為替差益や持分法による投資利益の計上などにより、125億32百万円(前期は257億42百万円の経常損失)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、155億54百万円(前期は218億25百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(船舶)

一般商船分野においては、コンテナ船並びにバルクキャリアの用船マーケットは引き続き高値を維持しておりますが、資機材価格の上昇並びにロシアによるウクライナ侵攻から景気の不透明感はいまだ払拭されておらず、船主、造船所双方の様子見姿勢が続いております。一方、環境負荷低減の動きは停滞しておらず、船主、造船所から新燃料搭載船舶検討の要望が寄せられております。

船舶セグメントを構成する三井E&S造船株式会社及びその子会社2社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間より連結の範囲から除外したため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第2四半期連結累計期間までとなります。

受注高及び売上高は、前連結会計年度に艦艇事業を譲渡した影響などにより、それぞれ、前期と比べて110億82百万円減少(△56.8%)の84億39百万円、214億89百万円減少(△76.5%)の65億98百万円となりました。営業損益は、前期の4億38百万円の損失から83百万円の利益となりました。

 

(海洋開発)

原油価格は、EUによるロシア産原油の禁輸措置の導入を発端に、供給不足が強まるとの見方などから、一時1バレル120米ドル台前半へ上昇したものの、その後中国経済の下振れや、主要先進国の金融引き締めによる景気後退への懸念から、エネルギー需要が減少するとの見方が強まった結果、1バレル70米ドル台まで下落しました。こうしたことから、脱炭素の流れと併存しながらも、安定したエネルギー供給の維持は依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続すると考えられ、当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトは、今後も安定した成長が期待されます。

持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、前期から続く新型コロナウイルス感染症の感染拡大による建造工事の収益率低下の影響が当期にも及んでいることや、ブラジルで操業するFPSO等への追加的な修繕費用等の発生による利益の押し下げ要因があったものの、比較的収益率の高い建造工事の進捗及びチャーター事業の収益の積み上げなどにより、23億11百万円となりました。

 

(機械)

舶用ディーゼル機関については今期の生産実績は136基/283万馬力、来期は143基/290万馬力を見込むなど受注環境は回復しつつあります。また、メタノール焚きや二元燃料機関の受注及び引き合いが急増しており、これらに対応するための設備増強に着手し、アンモニア焚き機関についても積極的な研究開発を行っております。今後は、株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン事業の承継効果を活かし、MAN B&W機関とWinGD機関のダブルライセンス体制によるシナジーを生み出してまいります。

運搬機については東南アジアでの大型案件の受注が続いて海外での受注は好調を維持しており、国内においても、新設、増設に加え、既設の老朽化更新などの需要も堅調です。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で実証を行っていた、世界初のゼロ・エミッショントランステーナ(水素燃料電池パワーパック駆動のトランステーナ)について無事に実証実験に成功し、今後の商業化を加速させます。

産業機械については往復動圧縮機や製鉄所向けの軸流圧縮機・炉頂圧回収タービンで厳しい環境が続きましたが、プロセス機器で国内向け大型案件の受注があり実績のある国内顧客向けの案件や、当社グループが得意とする特殊機器案件を中心に堅調に推移しました。今後は産業界の急速な脱炭素化の流れに対応し、水素関連市場への取り組みを強化していきます。

ソリューション事業についてはレーダ、マニピュレータとロボティクスに加え、大型造波装置などの水実験施設や大型可動構造物、設備機械に注力しました。素粒子物理学実験設備の分野では、ハイパーカミオカンデ水槽設備関係施行におけるECI(Early Contractor Involvement)方式の公募にて優先交渉権者に選定され、先行する一部本体工事を受注しました。

アフターサービス事業については円安等の好材料や、就航船に対する規制対応の需要でディーゼル部品が好調です。クレーン分野は海外で荷役機器の補修投資の意欲が高まり回復基調で、国内でも密着営業の効果で好調に推移し、今後はドローン点検やクレーンリモートモニタリングなどの新サービスの拡販も推進してまいります。

受注高は、各事業において新型コロナウイルス感染症拡大に伴う投資抑制が解消されつつあることに加え、舶用ディーゼル機関の前期からの期ずれ受注の影響などにより、前期と比べて824億41百万円増加(+55.4%)の2,312億10百万円となりました。売上高は、舶用ディーゼル機関の環境規制対応やコンテナクレーン工事の進捗などにより、前期と比べて204億75百万円増加(+13.3%)の1,742億11百万円となり、営業利益は、売上高が順調に推移したことなどにより、前期と比べて2億17百万円増加(+2.7%)の83億74百万円となりました。

 

(エンジニアリング)

インドネシア共和国向け火力発電所土木建築工事については、残工事を除き、顧客への引き渡しが完了し、顧客による発電プラントの商業運転が開始されています。残工事は商業運転に直接の影響がない一部のものに限られ、顧客による商業運転の操業の都合に合わせて粛々と進められている状況であり、関係各社との費用精算や為替予約の締結等により未確定費用の確定を進めた結果、不確実性は解消されたと判断できる状況となりました。本工事完了後は、同事業から撤退し、そのリソースを当社グループの成長の見込める事業に再配置いたします。

売上高は147億77百万円増加(+193.7%)の224億6百万円となり、営業損益は、未確定費用の確定に努めてきた結果、113億57百万円改善し、5億47百万円の利益となりました。

 

c. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a. 資金需要

当社グループは個々の契約金額が大きな製品を受注生産しており、運転資金は工事にかかる材料費、請負工事費、及び人件費が占めておりますが、個々の工事の契約による支払い条件、工事の進捗により、一時的に多額の運転資金需要が発生しやすい傾向があります。

投資資金の主なものは、中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金、及び製造工場を維持・増強するための設備資金となっており、成長投資資金については、優先株の発行により得た資金、及び新株予約権の行使により得られる資金を中心に充当いたします。

なお、有利子負債の増加を抑制する観点から、当社グループでは設備投資、投融資などの長期的な資金は、主力事業の成長投資資金に集中させることで、一時的な多額の支出を抑制していく方針としております。

 

b. 資金調達

当社グループの運転資金、投資資金は主に営業活動による収入を財源とすることを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入で調達しております。なお、残工事を除き顧客への引き渡しが完了している海外大型EPCプロジェクトについては、関係各社との確定費用の精算支払のための資金を主要取引金融機関からの借入により調達済みであり、当該残工事遂行資金の調達の目途も付いております。これらの借入金を適時調達できる状態を維持するため、主要取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持しており、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定し、緊急の資金需要にも備えています。また、上場子会社を除いた連結子会社との間でCMS(キャッシュ・マネージメント・システム)を導入して、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。

さらに、成長機会の取り込みに必要な資金の調達と、財務健全性の向上を図るための資本対策として、2022年3月31日に公表した「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」により、2022年6月30日に「A種優先株式」90億円の払込が完了し、「第1回行使価額修正条項付新株予約権」は2023年3月末時点で約23億円が行使されております。

 

なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

合計

返済・償還

1年以内

返済・償還

1年超

短期借入金

115,245

115,245

長期借入金

21,302

9,375

11,927

社債

5,000

5,000

有利子負債 計※

141,547

 129,620

11,927

リース債務

8,924

1,863

7,061

総計

150,472

131,483

18,989

      ※当社では、リース債務を別管理しております

 

④ 経営計画の達成・進捗状況

当社グループは、エンジニアリング事業における過年度の大規模な損失により、財政基盤が著しく毀損し、自己資本の回復と資金の確保が急務となっておりました。

このような状況を解消すべく、当社グループは2019年5月に策定した「三井E&Sグループ 事業再生計画」(同年11月に一部見直し、以下、事業再生計画)に沿って、不採算事業の整理・撤退等を進め、祖業である船舶の建造事業からも事実上撤退する等、2022年度までに、子会社・不動産等、約20件、総額1,200億円超の事業・資産売却を断行いたしました。

さらに、財務体質の健全化及び成長投資のための資本対策として、2022年3月31日に公表した「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」により、合計約170億円の資金調達を進めております。

インドネシア共和国向け火力発電所土木建築工事についても、残工事を除き、顧客への引き渡しが完了し、顧客による発電プラントの商業運転が開始されています。残工事は商業運転に直接の影響がない一部のものに限られ、顧客による商業運転の操業の都合に合わせて粛々と進められている状況であり、関係各社との費用精算や為替予約の締結等により未確定費用の確定を進めた結果、不確実性は解消されたと判断できる状況となりました。当社グループはこれら一連の施策を計画通り全て実行し、この度、事業再生計画を完遂することができ、当連結会計年度は営業利益を計上いたしました。

一方、持続可能社会への急速な移行等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化しているため、当社グループは次期中計を1年前倒しで取り組むこととし、「2023中計」を2022年5月に公表しております。2023中計では、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義から脱却する等、健全な財務体質と堅実な利益を追求する観点から、経営指標として連結営業利益率、自己資本比率及びNET有利子負債EBITDA倍率を選定し、最終年度である2025年度において、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26.0%及びNET有利子負債EBITDA倍率:5.0倍を達成することを目標として設定いたしました。

「マリン領域を軸に、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業を『グリーン』と『デジタル』の切り口で発展させる」ことを成長戦略の柱とし、「中核事業の強化」「収益モデルの変革」を通じて達成に向けて取り組みます。2023中計の各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。

 

<2023中計の進捗>

指標

2025年度目標

2022年度実績

連結売上高

2,800億円

2,623億円

連結営業利益率

6.0%

3.6%

自己資本比率

26.0%

24.2%

NET有利子負債EBITDA倍率(※)

5.0倍

4.5倍

※ NET有利子負債EBITDA倍率=(有利子負債残高-現金及び預金)÷(営業利益+減価償却費+持分法による投資損益)