株式会社フォーラムエンジニアリング

上場日 (2020-03-09) 
ブランドなど:コグナビ
サービス業人材サービスプライムTOPIX Small 2

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

ニュース

  • ニュースリリースデータがありません。


最終更新:

E35487 Japan GAAP

売上高

312.8億 円

前期

287.5億 円

前期比

108.8%

時価総額

565.2億 円

株価

1,058 (07/12)

発行済株式数

53,419,200

EPS(実績)

38.17 円

PER(実績)

27.72 倍

平均給与

470.0万 円

前期

400.0万 円

前期比

117.5%

平均年齢(勤続年数)

37.8歳(7.7年)

従業員数

4,662人(連結:4,722人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の連結子会社)は、当社(株式会社フォーラムエンジニアリング)、連結子会社1社により構成されております。当社は、1981年4月に主として人材派遣サービスを行う企業として設立されました。

エンジニア派遣サービスは、現在、当社グループの主業であり、2024年3月期売上高の99.3%を占めております。このエンジニア派遣サービスにおいて、2024年3月31日時点で1,368事業所に正社員として雇用しているエンジニアを4,224名派遣しております。また、当社グループは、その他に理工系新卒学生の就職支援から転職、教育、社内人材配置まで、エンジニアの全てのキャリアシーンを支援することを目的とした5つの「コグナビ」サービスを提供してまいりましたが、2023年3月31日をもって社内人材配置最適化サービス「コグナビ タレントマネジメント」をより顧客ニーズに合わせたサービス内容に刷新するために終了し、4つの「コグナビ」サービスを提供していくこととなりました。なお、当社グループはエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1)エンジニア派遣

当社エンジニア派遣サービスの主なターゲットは、機械・電機系(以下、「機電系」という。)主要8業種(自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信)に属しており、従業員数が100名以上の約3,200事業所と、それらに属する部署になります。特定の企業や案件に偏ることなく、多くの取引先から受注を獲得出来ているため、取引基盤が広く安定しております。

当社は、これらの顧客企業に対し、設計・開発、実験・評価、生産技術、品質保証等の各職種にエンジニアを派遣しております。当社は、派遣エンジニアを原則正社員として雇用し、通勤可能範囲内の就業先を選定することで、安定した就業環境を提供しております。また、ITエンジニアも派遣エンジニアとして雇用しており、ソフトウエアの開発、IT機器や通信回線の監視等の業務に派遣しております。

当社のエンジニア派遣サービスの特長として、以下の3点があげられます。

①部署単位での顧客企業管理

当社の顧客企業は複数県にまたがって事業所を設置していることが多く、派遣契約に関する決裁権限も各事業所に付与されているケースが一般的です。この点を踏まえ、当社による顧客企業管理も企業単位ではなく事業所単位としております。さらに当社は、顧客企業の各事業所に属する部署までを把握して、その業務内容や必要とされるスキルなどの理解に努めております。このような部署単位での業務内容・人材ニーズ把握努力が、後述のエンジニア人材の人工知能(以下、「AI」という。)によるスキルをベースにしたダイレクトマッチングシステム「cognavi」(以下、「コグナビ」という。)開発の基となっております。

②「コグナビ」によるスキルをベースにしたダイレクトマッチング

当社は、顧客企業各部署の業務に必要なスキルをツリー構造で表した「テクニカルツリー」と、エンジニアが保有するスキルや経験をツリー構造で整理した「スキルツリー」をエンジニア派遣におけるマッチングにも利用しております。

当社は、顧客からの求人案件に対し、業務に必要なスキルの「テクニカルツリー」と当社派遣エンジニア社員の「スキルツリー」をマッチングさせ、それを可視化することで、求人企業から見ても求職人材から見ても主観に頼らないダイレクトマッチングシステムを提供しております。

③独自のルートによる人材採用

当社は、求人・求職情報サイトに広告を掲載して応募者を募る一般的な手法に加え、下記5つの派遣エンジニア人材採用ルートを構築しております。採用にあたっては、地域性を重視し、応募者の書類選考から採用に至るまで全てのプロセスを各営業拠点で行っております。通勤可能範囲や地域特性を考慮し、地元での就業を希望するエンジニア人材の意向に沿った就業機会の場を数多く、迅速に提案できる体制を整えております。

a.居住エリア内の求人案件への応募促進

当社は、自社専用人材採用サイトである「コグナビ 派遣」(旧エンジニアピット、2019年9月改称)を運用しておりましたが、2023年3月31日をもってサイトを閉鎖し、「コグナビ 派遣」の登録会員に向けて、会員が居住するエリアの当社顧客の派遣求人案件情報をメール配信し、応募を促すサービスへと変更いたしました。

b.カムバック採用

   当社で派遣エンジニアとして就業経験のある退職者に対して、当該人材が居住するエリアの派遣求人案件

  情報を定期的にメールで配信することで再応募を促進しております。

c.社員紹介制度

   当社社員から紹介された人材を派遣エンジニアとして採用する制度です。紹介者と求職者それぞれに報奨

  金を支払うことで応募を促進しております。

d.過去の就業辞退者

当社の派遣求人案件に応募されたものの選考過程で辞退された人材に対して、当該人材が居住するエリアの派遣求人案件情報を定期的にメール配信することで再応募を促進しております。

 

 

e.理工系大学からの紹介

当社は、理工系学生が将来エンジニアを目指すきっかけづくりとして、全国の大学でエンジニア経験者による「エンジニア職セミナー」を無料で開催しております。この取組みは、理工系学部の教授からも高く評価され、2024年3月期には機電系学部のある大学(144校)のうち、125校でセミナーを実施いたしました。

当社は、通常の新卒採用に加え、このようにエンジニア職セミナーを通して当社の取組みを評価していただいた教授等から当社を推薦いただき、理工系学生を当社エンジニアとして採用しております。

 

(2)エンジニア紹介及びその他

当社は、設立以来エンジニア派遣サービスを主業としてきましたが、以下の3点に配慮し、市場動向を先取りした新しいビジネスモデルを追求しております。

・当社の顧客企業・エンジニアについて、明確な選択と集中を行う。

・人材派遣ビジネスで一般的な「求人企業の需要」に対する営業活動ではなく、「求職人材」を起点とした営業活動を推進する。

・採用活動における労働集約的な業務のあり方からの脱却を目指して、業務プロセスの効率化を追求する情報通信テクノロジー(以下、「ICT」という。)を活用し、これらの特長を具現化したものが、エンジニアのスキルをベースにしたダイレクトマッチングシステム「コグナビ」です。

 

「コグナビ」の主な特長は以下のとおりです。

①エンジニアのスキルをツリーで体系化

「コグナビ」では、AIを活用し、エンジニアのスキル、顧客企業の各部署における業務内容の双方を、わかりやすく可視化して把握するために、「技術・ツール」「製品・部品」「職種・工程」「学問」の4分野から構成された技術要素に係る用語を、ツリー構造で体系的に整理しております。「製品・部品」を例にとると、「自動車関連」⇒「自動車」⇒「ボディ」⇒「内装部品」⇒「エアバッグシステム」のように、ツリーの階層が深くなるほど細分化されます。選択肢となる技術用語は、2024年3月末時点で約178,000語が登録されております。

②「スキルツリー」と「テクニカルツリー」

エンジニアが保有するスキルや経験を、ツリー構造で登録したものを「スキルツリー」と称しております。登録したスキルにはそれぞれ5段階の習熟度を設定することで、保有スキルの幅と深さを体系化、可視化しております。ツリーを構成する技術用語は、それぞれ「関係線」で結ばれております。ひとつの技術用語を選択すると、その関係線が関係する他の技術用語にも結び付きます。これにより、「このスキルを持っていれば、この製品も扱えるのでは?」といった、業界や職種の枠にとらわれない、それまで見えていなかった新たな可能性を見出すことが可能です。

一方、顧客企業における各部署の業務内容や必要とするスキルを、ツリー構造で登録したものを「テクニカルツリー」と称しております。「スキルツリー」同様、選択した技術用語に対し、それぞれ5段階の重要度を設定することで、必要とするスキルの幅と深さを体系化、可視化しております。なお、エンジニアが選択する「スキルツリー」と、顧客企業が選択する「テクニカルツリー」の項目は、同一のものとなっております。

③ツリーの技術用語を結ぶ「関係線」

ツリーの技術用語は分野ごとに繋がり、体系化されておりますが、各技術用語はそれぞれの分野を超えて技術的、学術的に関連し合っております。当社では、これらの関係性を線で繋ぐ「関係線」によって、エンジニアが気づかなかった職種や製品分野で活躍する可能性を提案できるようになりました。また、顧客企業においても、他業種で活躍したエンジニアの採用や、ジョブローテーションのための自社エンジニアの異動部署選定などに活用できる仕組みを提供しております。2024年3月末時点で、約150,000本の関係線が登録されております。

 

 

※画像省略しています。

ツリーの技術用語間を結ぶ関係線イメージ図

 

 

④「マッチングスコア」と「マッチングツリー」

顧客企業における各部署の「テクニカルツリー」と、エンジニアや理工系学生の「スキルツリー」を重ね合わせてマッチングを行い、それを数値化した結果(「100」を完全マッチングとした場合の比率)を「マッチングスコア」と称しております。「マッチングスコア」のスコアは、エンジニアの持つスキルと顧客企業が求めるスキルが多くマッチするほど高くなります。

スキルのマッチングに際し、「スキルツリー」と「テクニカルツリー」を重ね合わせ、マッチングした箇所をハイライトしたものを「マッチングツリー」と称しております。「マッチングスコア」での判断に加え、「マッチングツリー」では具体的にどの技術要素がマッチしているかを視覚的に判りやすく把握できるため、顧客企業の各部署が重要視するスキルをエンジニアがどの程度保有しているかなど、より双方のニーズに合致した、客観的な意思決定を可能としております。

 

 

※画像省略しています。

     テクニカルツリー・スキルツリー・マッチングツリー(例)

 

⑤「マッチングマップ」

上記の「マッチングスコア」は、「マッチングマップ」と称する地図上に表示されます。顧客企業側の画面には事業所を中心として、通勤圏内に居住するエンジニアとの「マッチングスコア」が表示されます。通勤可能範囲内にどのようなスキルを保有するエンジニアがいるのかを地図上で確認できます。一方、エンジニア人材側の画面には自宅を中心として、通勤圏内にある顧客企業における各部署との「マッチングスコア」が表示されます。通勤可能範囲内にどのような企業の求人があるのかを同様に地図上で確認し、応募することが可能です。

 

※画像省略しています。

※画像省略しています。

顧客企業側のマッチングマップ(例)

エンジニア人材側のマッチングマップ(例)

 

⑥ダイレクトマッチング支援機能

顧客企業の担当者は、上記の「マッチングマップ」上の転職・就職希望者を確認したうえで、着目したエンジニア人材に対して応募を促すためのオファーメールを送信することが可能です。また、エンジニアは、「マッチングマップ」上の興味のある企業に対して、採用を働きかけるアピールメールを送信することが可能です。

応募やオファーメール、アピールメール送信後における、エンジニアと顧客企業担当者とのやりとりは、「コグナビ」上にてチャット形式で行います。書類選考から面接の設定、面接結果の連絡まで、全て「コグナビ」上で完結させることが可能です。

当社は、上記の「コグナビ」の6つの特長を活かした人材サービスとHRマネジメントサービスを提供しております。「コグナビ」をベースとして、エンジニア人材市場における全ての人材流動パターンを捕捉するため、以下の5つの「コグナビ」サービスをラインアップしております。これにより、当社は全てのエンジニア採用ルートを備えたビジネスモデルを構築しております。

(人材サービス)

a.コグナビ 派遣(エンジニア派遣サービス)

b.コグナビ 転職(機電系エンジニア人材紹介サービス)

c.コグナビ 新卒(新卒理工系学生就職紹介サービス)

(HRマネジメントサービス)

d.コグナビ タレントマネジメント(企業内人材最適化配置サービス、2023年3月31日サービス終了)

e.コグナビ カレッジ(企業内エンジニア向け研修仲介サービス)

これら「コグナビ」各サービスの概要は以下のとおりです。

 

a.コグナビ 派遣

上記(1)に記載のとおりです。

 

b.コグナビ 転職

顧客企業と機電系エンジニアの転職希望者を「コグナビ」の根幹となるツリーと「マッチングマップ」によって結びつける人材紹介サービス「コグナビ 転職」を2018年7月に立ち上げました。このサイトは「エンジニアの転職はAIの時代へ。」をコンセプトとし、「コグナビ」の仕組みを活用して求人企業と求職人材をダイレクトマッチングする機能を有しております。

ターゲットとなる顧客企業と機電系エンジニアは「コグナビ 派遣」と共通であり、2024年3月末時点で、24,872名の登録会員を有し、求人案件掲載事業所数は204となっております。

なお、2020年7月から、ITエンジニアに特化した人材紹介サービス「コグナビ 転職IT」を立ち上げましたが、2023年6月30日をもちまして、機電系エンジニア人材紹介サービス「コグナビ 転職」に統合し、単独でのサービスを終了しております。

 

c.コグナビ 新卒

「コグナビ 転職」における、ツリーと「マッチングマップ」を核としたマッチングの仕組みを、顧客企業と新卒理工系大学・大学院学生の就職希望者とのマッチングに応用する理工系学生専門の就職支援サービス「コグナビ 新卒」を2019年7月に立ち上げました。このサービスは「好きな科目が仕事につながる」をコンセプトとし、「学生が自分にどんな仕事が合っているかよくわからないため、知名度のある企業に応募が集中してしまう」という従来型就職活動の課題を解決し、自分の学んだ科目を生かして就職先企業を見つけることができるサービスです。求人企業にとっても、大学名や成績で判断するのではなく、各部署に応じた業務に必要な知識を備えた学生の採用につながるものと考えております。

基本的な仕組みは「コグナビ 転職」と同じですが、「コグナビ 転職」における「スキルツリー」の代わりに、就職を希望する学生が大学で学んできた「履修科目」と「実験実習」に関する「履修ツリー」を作成して利用します。また、「コグナビ 転職」における5段階のスキル「習熟度」の代わりに3段階の実験実習「習得度」を設定し、さらに好きな履修科目に対して「好きな科目」マークを付すことができる仕組みになっております。

また、「コグナビ 新卒」は、文系・理工系双方の学生を対象としている既存の総合型求人・求職情報サイトと異なり、理工系学生が就職後の環境がイメージしやすい独自コンテンツを掲載しております。企業単位ではなく事業所単位でコンテンツを準備し、それぞれの事業所でどのような製品を扱い、どのような部門があるのかを紹介しております。また、実際のオフィスや実験設備、就業している若手エンジニアへのインタビュー等を、写真や動画、360度パノラマ動画にて掲載しております。

これらの企業紹介コンテンツは、当該企業が「コグナビ 新卒」の管理画面上で作成及び更新できるようになっております。この機能により、掲載企業は常に最新の情報を維持することができ、当社は掲載コンテンツの作成及び更新に関する工数負担を削減することが可能と考えております。なお更新にあたっては、当社管理担当者による内容確認を経て公開される流れとなっております。

なお、「コグナビ 新卒」のターゲットとなる顧客企業は、「コグナビ 派遣」のターゲットとほぼ同様となります。

 

d.コグナビ タレントマネジメント

「コグナビ タレントマネジメント」は、「コグナビ」の根幹となるツリーを核としたマッチングの仕組みを応用し、「テクニカルツリー」による部署ごとの業務に必要なスキル情報と、「スキルツリー」による在籍エンジニアの保有スキル情報を登録することで、顧客企業における在籍エンジニアの流動化を促進するような人材配置システムを実現できないかという発想から、2019年10月よりサービスを開始しておりましたが、2023年3月31日をもちましてサービスを終了いたしました。今後は、顧客企業のニーズを再検討し、サービスを刷新することを考えております。

 

e.コグナビ カレッジ

顧客企業内の各部署における不足したスキルをカバーするためには、人材を社内もしくは社外からの補充、又は在籍エンジニアへの教育が必要となります。教育の受け皿として、機電系製造業の自社エンジニア向けリスキリング研修を近隣の大学で実施するために両者の仲介を行うサービスを「コグナビ カレッジ」という名称で2019年2月より提供しております。

これまで企業の研修は、外部研修業者の施設で実施するか、企業内でのOJT、Off-JTという形が殆どでしたが、より専門的な知識の習得や、技術革新に伴う企業の業態変換等に対応するにあたっては、選択肢の少なさや講師の不在が課題となっていました。また採用環境が厳しい中、設計部門に理工系以外の学生を採用してから育成するといったニーズも発生しております。

一方、大学にとっては少子化に伴って学生の確保が年々困難となる中、施設や教授の稼働率向上、競合となる近隣大学との差別化、近隣企業との関係強化による就職率の向上等、様々な課題を抱えております。

専門知識を持った大学教授と充実した大学の設備を活用し、企業のニーズに沿った研修を当社がカスタマイズして提供することで、双方の課題を解決すると共に、企業と大学とのコミュニケーションが強化されることで、将来の新卒採用や共同研究の可能性を広げ、地域活性化にも貢献し得るサービスです。

また、2024年3月末時点で、11大学と基本契約を締結しております。2024年3月期においては、655名が受講しております。

 

以上のほか、当社から派遣されているエンジニアを顧客が直接雇用したい場合に、本人の希望を確認のうえ、一定の手数料を受け取り、雇用関係を変更する場合があり、これを「転籍」としております。

以上で述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりです。

 

[事業系統図]

 

※画像省略しています。

 

 

24/06/26

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当連結会計年度は連結初年度に当たるため、前年度との比較は行っておりません。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によって経済活動の正常化が進み、所得環境が改善する中で、一部の産業で足踏みもみられるものの、緩やかな回復基調を示しました。中でも、当社主要顧客である大手製造業の景況感は、価格転嫁の進展や資源高の一服から収益環境が改善し、回復基調が鮮明となっております。

このような環境のもと、依然としてマーケット全体の慢性的人材不足感は強まっており、当社主力のエンジニア派遣サービスへの需要はコロナ以前同様の高い水準に回復しました。前連結会計年度から引き続き、派遣エンジニア求人広告の掲載内容の見直しや当社社員によるエンジニア社員紹介制度(リファラル採用制度)、退職者のカムバック採用制度等の施策を講じた結果、派遣エンジニアの採用数は前期比223名増加の970名となりました。

理工系学生のための就職支援サービスである「コグナビ 新卒」に関しては、当サービスを利用した学生の内定受諾数が増加したことにより、売上高は前期と比べて大きく上回りました。

利益面においても、派遣エンジニアの稼働者数が順調に増加したこと、人手不足、インフレ影響により派遣単価が上昇したこと、及び経費を戦略的に見直したことにより、前期と比較し、大きく上昇しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は31,279百万円、営業利益は3,029百万円、経常利益は3,017百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は2,039百万円となりました。

なお、当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、15,117百万円となりました。その主な内訳は、現金及び預金が11,006百万円、売掛金が3,959百万円であります。固定資産は2,800百万円となりました。その主な内訳は、ソフトウエアが1,087百万円、繰延税金資産が782百万円であります。

この結果、総資産は17,918百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、4,618百万円となりました。その主な内訳は、賞与引当金が1,726百万円、未払法人税等が796百万円であります。固定負債は、9百万円となりました。その主な内訳は、リース債務が6百万円であります。

この結果、負債合計は4,628百万円となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、13,289百万円となりました。その主な内訳は、利益剰余金が13,242百万円であります。

この結果、自己資本比率は72.4%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、9,904百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は3,299百万円となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益を3,016百万円計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は1,078百万円となりました。

これは主に、定期預金の預入による支出1,060百万円や有形及び無形固定資産の取得による支出209百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は2,771百万円となりました。

これは主に、短期借入金の返済による支出2,000百万円や配当金の支払額1,290百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。

 

b.受注実績

当社は、エンジニア派遣を中心とするサービスを提供しているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

当社はエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントでありますが、エンジニア派遣とその他の二つのサービスがあります。当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

エンジニア派遣サービス

30,920

-

その他

358

-

合  計

31,279

-

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析

当社の当連結会計年度の経営環境としては、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によって経済活動の正常化が進み、所得環境が改善する中で、一部の産業で足踏みもみられるものの、緩やかな回復基調を示しました。このような環境のもと、我が国が現在直面している構造的なエンジニア不足の環境において、AIを駆使した当社独自のスキルマッチング技術「コグナビ」各サービスの浸透と拡充に取り組んでおります。

エンジニア派遣サービス「コグナビ 派遣」は、顧客企業の需要に確実に応えるべく、稼働人員数の更なる増加に繋げるため、派遣エンジニアの採用強化に取り組んでおります。当連結会計年度末時点の稼働人員数は、前期と比べ297名増加し、4,224名となりました。

理工系学生のための就職支援サービスである「コグナビ新卒」は、機電系の新卒学生年間約4万人すべてがメーカーに就職し、エンジニアとして働ける世界を実現するため、元メーカーエンジニアの当社社員が講師となり、大学3年生を対象にエンジニアの魅力を伝える「エンジニア職セミナー」を機電系学科のある大学で実施しております。当期は2025年卒の理工系学生を対象としたセミナーを精力的に実施し、新規会員数の獲得に注力しております。当社はこのセミナーを実施することによって培われた大学とのつながりを活かし、「コグナビ新卒」を第2の収益の柱とすることを目指してまいります。こうした取組みにより、2024年卒会員数は2023年卒会員数と比較し1.6倍となり、当サービスを利用して企業に採用された2024年卒会員数は2023年卒会員数と比較し1.8倍増加しております。また、2025年卒登録会員数も順調に増加しており、約1.1万人に達しております。

経験者採用向けエンジニア紹介サービスである「コグナビ転職」は、「コグナビ新卒」でメーカーに就職したエンジニアが、やがて転職する際の受け皿となり、この流動機会を捕捉し、中長期には第3の収益の柱とすることを目指してまいります。全国各地の提携大学の現役教授等による企業研修を提供するサービス「コグナビ カレッジ」は、大学教授の保有スキルをデータベース化する事で、企業のリスキリング需要に沿った専門性の高い研修を実施しております。

また、2022年10月に設立した当社の連結子会社であるCognavi India Private Limitedは2023年6月22日、インド初のAIマッチング技術を駆使したジョブポータルサイト「Cognavi(コグナビ)」をオープンいたしました。大学や企業のニーズなど、インドの市場環境に合わせたビジネスモデルを現地スタッフが考案し、機電系学生のみならず、すべての学生を対象とした新卒採用メディアとしてビジネス展開を進めております。学生会員数や提供大学数、採用企業数を指標に事業を進めており、インドの新卒学生と企業を結ぶ就活インフラになることを目指しております。2024年1月には、大学及び企業と、初の有償契約を締結いたしました。

なお、当社グループはエンジニア派遣・紹介事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の業績の記載を省略しております。

また、財政状態及びキャッシュ・フローの分析については、(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

前記 3「事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社の運転資金・設備資金については、主に自己資金により充当しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は9,904百万円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。

また、不測の事態に備えた資金の流動性を確保する手段として、取引金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。

 

d.経営者の問題認識と今後の方針について

 わが国の今後の経済状況は、雇用情勢の改善・人手不足の深刻化を背景に、高い賃上げ率が期待され、実質賃金の改善が進むと考えられます。また、業績改善により、企業の投資意欲の強さも維持され、設備投資は底堅く推移すると考えられます。しかしながら、人件費や物流コストの増加を背景とする物価上昇圧力の強い状態が継続する懸念も出ております。こうした中、日本国内では高齢化と人口減少を背景とした労働力人口の減少による人材不足に直面しており、エンジニア人材市場においても、構造的な人材不足が続いております。エンジニア人材の確保は、日本の製造業にとって引き続き大きな課題となります。

 このような前提に基づき、2025年3月期の当社グループは、エンジニア派遣サービス「コグナビ 派遣」、理工系学生向けエンジニア就職支援サービス「コグナビ 新卒」及びインドにおける就職支援サイトの開発・運営の3つの分野に経営資源を集中してまいります。また、中長期的な企業価値の向上を図るため、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をしており、企業価値(株価・時価総額)の向上を経営の重要課題と位置付けております。中期経営計画「cognavi Vision2026」最終年度の計画値(営業利益率11.3%、ROE20.0%)の達成と、注力事業への集中及び成長投資の実施、さらに株主還元策としての「安定配当」と「継続的な増配」を優先事項としております。

 当社の主力であるエンジニア人材派遣サービス「コグナビ 派遣」は、派遣エンジニアの採用に引き続き注力することで稼働者数の増加につなげてまいります。また、派遣単価アップの実現により収益成長を目指します。理工系学生のための就職支援サービス「コグナビ 新卒」は、成約数増加に向け、求人掲載企業数を増やすべく、企業への営業活動に注力する方針です。なお、大学でのエンジニア職セミナーやオンライン就活セミナーの積極的な実施により、「コグナビ 新卒」会員数の更なる増加を目指してまいります。また、新しくサービスを開始したオンライン就活フェアサイト「CogFest(コグフェス)」を積極的に展開しております。

 インドにおけるジョブポータルサイトの開発・運営を行うCognavi India Private Limitedでは、これまでトライアル利用であった大学及び企業から、2024年1月に初の有償契約を締結いたしました。今後も、有償契約を増加させ、インドでの事業展開を本格化してまいります。

 なお、当社の中長期的経営課題とそれらへの取組状況につきましては「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますので、ご参照ください。