売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

ニュース

  • ニュースリリースデータがありません。


最終更新:

E26327 Japan GAAP

売上高

292.1億 円

前期

254.2億 円

前期比

114.9%

時価総額

1,186.5億 円

株価

1,478 (03/28)

発行済株式数

80,279,827

EPS(実績)

-63.57 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

778.1万 円

前期

743.1万 円

前期比

104.7%

平均年齢(勤続年数)

40.7歳(5.2年)

従業員数

208人

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

(1) 主な事業内容

 当社は、2006年10月23日に設立され、保険業法に基づく免許・認可を得て2008年5月18日より営業を開始した、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社です。相互扶助という生命保険の原点を忘れず、「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」という経営理念のもと、生命保険事業を営んでおります。主な事業内容は以下のとおりです。なお、当社は生命保険事業の単一セグメントとなっております。

 

 ①保険引受業務

 生命保険業免許に基づき、人の生存又は死亡に関して一定額の保険金等を支払うことを約し保険料を収受する保険の引受業務を営んでおります。

 ②資産運用業務

 保険業法、同法施行規則に定めるところにより、生命保険の保険料として収受した金銭その他の資産の運用業務を営んでおります。

 ③業務の代理・事務の代行業務

 他の保険会社等の業務の代理又は事務の代行を行っております。

 

 また、当社子会社のライフネットみらい株式会社は、保険選びサイト「betterChoice(ベターチョイス)」の運営を通じたオンライン保険代理店事業等を行っております。

 

 

(2) マニフェストを基軸とした経営

 当社は、「ライフネットの生命保険マニフェスト」を経営の柱として位置づけ、経営理念として「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」と定めております。デジタルテクノロジーを活用しながら、保険相談、お申し込みから保険金等のお支払いまで、一貫してお客さまの視点に立った商品・サービスの提供を実現するとともに、オンライン生保市場の拡大を力強く牽引するリーディングカンパニーを目指します。

ライフネットの生命保険マニフェスト

「正直に わかりやすく、安くて、便利に。」

第1章 私たちの行動指針

(1) 私たちは、生命保険の未来をつくる。生命保険は生活者の「ころばぬ先の杖がほしい」という希望から生まれてきたという原点を忘れずに。

(2) 私たちは、お客さまの声に耳を傾け、お客さまに何が必要かを常に考え行動する。

(3) 私たちは、自分たちの友人や家族に自信をもってすすめられる商品・サービスだけを届ける。

(4) 顔の見える会社にする。私たちは、経営のこと、商品のこと、社員のこと、どんな会社なのか、正直に伝える。

(5) 私たちは、多様性を尊重し、協力しあうことで、変化に対応しつづける。100年後もお客さまに安心を届けられる会社であるために。

(6) 私たちは、常に誠実に行動する。コンプライアンスを遵守し、倫理を大切にする。

第2章 生命保険を、もっと、わかりやすく

(1) 私たちは、「生命保険がわかる」情報を提供する。お客さまが自分にあった保障を納得して、選べるように。

(2) 私たちは、誰もが読んで理解できる「約款」(保険契約書)をつくる。

(3) 私たちは、お申し込みだけでなく、保険金・給付金を請求するときにこそ、わかりやすいと思ってもらえる商品やサービスを届ける。

第3章 生命保険料を、安くする

(1) 私たちは、保障内容を過剰にしない。必要な備えを、適正な生命保険料で提案する。

(2) 私たちは、よい商品を安く提供するための工夫を怠らない。

(3) 私たちは、生命保険料を抑え、その分をお客さまの人生の楽しみに使ってほしいと考える。

第4章 生命保険を、もっと、便利に

(1) 私たちは、ご契約の検討から保険金・給付金の受け取りまで、あらゆる場面でお客さまの便利を追求する。

(2) 私たちは、私たちの考えに共鳴してくれたパートナーと協力して、お客さまに商品やサービスを届ける手段を増やす。

(3) 私たちは、生命保険の枠を超えて、「生きていく」ことを支える情報とサービスに触れる機会を増やす。

(4) 私たちは、お客さまの期待の先にある「便利な生命保険」を通して、次の時代の当たり前をつくる。

お客さま一人ひとりの生き方を応援する企業でありたい。

そのために、これからも挑戦を続けます。

 

(3) 商品構成

 当社の商品は、インターネットを通じてお客さまに「比較し、理解し、納得して」ご契約いただきたいという考えのもと、いずれの商品も複雑な特約や配当のない、シンプルでわかりやすい保障内容となっております。また、パートナー企業との協業として、2016年4月からはKDDI株式会社と「auの生命ほけん」を、2020年4月からは株式会社セブン・フィナンシャルサービスと「セブン・フィナンシャルサービスの生命ほけん」を、2021年7月からは株式会社マネーフォワードと「マネーフォワードの生命保険」を販売しております。商品はいずれも、個人向け保障性商品のみであり、個人年金保険・団体保険・団体年金保険等の取扱いはありません。

 なお、2023年7月1日より、auじぶん銀行株式会社の住宅ローン利用者に向けて、団体信用生命保険の提供を開始する予定です。

 

(主要商品の概要)

 定期死亡保険「かぞくへの保険」は、低廉な保険料で大きな保障が得られる「定期型」で、死亡や所定の高度障害状態となった場合に、保険金を受け取ることができる保険です。

 終身医療保険「じぶんへの保険3」「じぶんへの保険3レディース」は、入院や手術に備える保険です。加入時の保険料が変わらず、一生涯保障が続く「終身型」で、保障内容に応じて、「エコノミーコース」、「おすすめコース」を設けております。また、「じぶんへの保険3レディース」は女性特有の病気で入院した場合に備えて手厚い保障が受けられる保険です。

 就業不能保険「働く人への保険3」は、病気やケガで働けなくなった時の生活費から、就業復帰後も生じる治療費の負担や収入減少もサポートする、新しいコンセプトの商品です。

 がん保険「ダブルエール」は、治療費に備える「治療サポート給付金」と、がん治療に伴う休職や時短勤務等による収入の減少に備える「がん収入サポート給付金」のダブルの保障を受けられる保険です。

 「auの生命ほけん」「セブン・フィナンシャルサービスの生命ほけん」「マネーフォワードの生命保険」は、上記の保険商品と同一の保障内容です。

 

 

(4) 販売チャネル

 当社は、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社です。インターネットを活用することにより、営業職員の人件費や店舗の維持等に係る経費(販売経費)を抑えられることから、営業職員を主体とする従来の生命保険会社と比べ、相対的に低廉な保険料での商品提供が可能となります。

 当社の店舗であるウェブサイト及びコンタクトセンターを活用して、お客さまの保険選びをサポートしております。ウェブサイトでは、商品内容の説明に加え、お客さまに適した保障を選んでいただくためのコンテンツを工夫するなど、ウェブサイトを初めて訪れるお客さまにもわかりやすい説明を心がけるとともに、申し込み過程でお客さまの意向確認を行っております。コンタクトセンターでは、保険の申し込みや見直しでお悩みのお客さまに向けて、保険相談窓口を用意し、電話、メールやチャットによって、経験豊富な保険プランナーが保険選びをサポートしております。

 また、当社は、パートナービジネスチャネルを通じた販売を強化しております。これにより、パートナー企業のブランド力と幅広い顧客基盤を活用して、より多くのお客さまに当社の商品・サービスをお届けすることを目指しております。お客さまのニーズを把握しながら、各パートナー企業とともに、それぞれのチャネルに適合する独自性のある商品・サービスの開発を検討してまいります。なお、当社の保険募集代理店であるKDDI株式会社は、当社のその他の関係会社です。

 これらに加えて、保険料の内訳(付加保険料)や代理店手数料率の開示など、情報開示を積極的に行うとともに、コンタクトセンターは、平日に加え、土曜日・日曜日・祝日営業(平日20時、土日祝18時まで営業)も行うなど、利便性向上に努めております。また、ふれあいフェア(ご契約者さまとの集い)の開催を通じたお客さまとの対話、ソーシャルメディアを活用した情報発信など、顧客接点の充実に取り組んでおります。

 

 

[主な販売チャネル別アクセス経路]

※画像省略しています。

 

 

23/06/20

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における国内経済は、行動制限の緩和により、個人消費や企業の設備投資をはじめとする多くの需要項目が、コロナ禍前水準へと回復基調に向かいました。他方、世界的にみられる物価上昇や金利上昇は、国内経済においても影響を及ぼし、依然見通しは不確実性が高い状況が続いております。

 生命保険業界においては、主に当事業年度の上半期における新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大により、コロナ関連の保険金・給付金のお支払いが急増しました。2022年9月からは、政府の対応を踏まえ、お支払いに係る取扱いを見直しております。

 このような状況において、当社は、「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」という経営理念のもと、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社として2023年5月に開業15周年を迎えました。当事業年度においても、お客さま視点での商品・サービスの提供を継続し、保有契約件数は55万件を突破するなど着実な成長を実現しました。また、主な取組みとして、団体信用生命保険事業への事業領域拡大に向けたパートナー企業との提携や、国際財務報告基準(IFRS)の2023年度からの導入に向けた対応等を推進した1年となりました。

 

(契約の状況)

 当事業年度の新契約の年換算保険料*1は、前事業年度比95.9%の3,919百万円、新契約件数は、前事業年度比97.9%の98,532件となりました。

 当事業年度末の保有契約の年換算保険料は、前事業年度末比111.7%の24,033百万円、保有契約高は、前事業年度末比108.4%の3,633,704百万円となりました。保有契約件数は、前事業年度末比112.1%の568,674件となり、保有契約者数は、360,364人となりました。また、当事業年度の解約失効率*2は、6.5%(前事業年度6.6%)となりました。

*1.年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払い方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額をいいます。当社商品の保険料は全て月払いのみとなっているため、1ヶ月当たりの保険料に12を乗じたものを年換算保険料としております。

*2.解約失効率は、解約・失効の件数を月々の保有契約件数の平均で除した比率を年換算した数値です。

 

(収支の状況)

 当事業年度の保険料等収入は、保有契約の増加に伴う保険料の増加及び修正共同保険式再保険における再保険収入の増加に伴い、前事業年度比114.9%の29,207百万円となりました。また、資産運用収益は、金銭の信託運用益の増加や有価証券売却益の増加等により、前事業年度比146.9%の977百万円となりました。その他経常収益は、83百万円となりました。この結果、当事業年度の経常収益は、前事業年度比115.7%の30,268百万円となりました。

 保険金等支払金は、主に新型コロナウイルス感染症に係る給付金の増加及び修正共同保険式再保険における再保険料の増加に伴い、前事業年度比143.6%の12,445百万円となりました。保険金及び給付金支払額の保険料に対する割合は、前事業年度の20.7%から27.4%となりました。なお、新型コロナウイルス感染症に係る保険金及び給付金支払額は1,378百万円です。責任準備金等繰入額は、前事業年度比108.0%の7,453百万円となりました。責任準備金繰入額の保険料に対する割合は、前事業年度の34.1%から31.5%となりました。資産運用費用は、主に有価証券売却損の計上により、185百万円となりました。事業費は、広告宣伝費を中心とした営業費用の投下等により、前事業年度比110.9%の13,463百万円となりました。事業費のうち、営業費用は前事業年度比105.0%の8,672百万円、保険事務費用は前事業年度比117.9%の1,506百万円、システムその他費用は前事業年度比126.4%の3,284百万円となりました。その他経常費用は、前事業年度比98.6%の1,669百万円となりました。これらにより、当事業年度の経常費用は前事業年度比119.7%の35,217百万円となりました。

 以上の結果、当事業年度の経常利益は、前事業年度のマイナス3,245百万円に対して、マイナス4,949百万円となりました。当期純利益は、前事業年度のマイナス3,319百万円に対して、マイナス5,164百万円となりました。

 また、生命保険会社の収益性を示す指標のひとつである基礎利益は、新型コロナウイルス感染症に係る給付金の増加や事業費の増加等により、前事業年度のマイナス3,213百万円に対して、マイナス5,072百万円となりました。内訳は、危険差益2,292百万円、費差益マイナス7,429百万円、利差益64百万円です。

 当社は、契約業績の継続的な成長を目指すとともに、財務健全性の維持を目的として、2019年度から新契約の一部(以下、出再契約)を対象とした修正共同保険式再保険を行っております。修正共同保険式再保険は、出再契約のリスク及び収支構造の一部を一定期間再保険会社に移転するもので、当該再保険を活用することで、新契約に係る費用の負担が、会計上の資本を急激に減少させる状況を緩和することが可能となります。具体的には、当該再保険では、新契約獲得の初年度に、出再契約に係る新契約費の一部を出再手数料として収受します。そのため、経常収益が増加します。一方、収受した出再手数料は、再保険貸に資産計上された後、一定の期間において再保険収支に基づいて段階的に償却されます。そのため、当該期間において、経常利益及び純利益は減少することとなります。再保険貸の償却が完了し、再保険契約を終了させると、その後の出再契約の利益は当社に帰属することとなります。以上により、当事業年度においては、当該再保険により経常収益は5,671百万円増加(前年同期は4,852百万円増加)、経常利益及び当期純利益は608百万円増加(前年同期は1,283百万円増加)しております。

 

(財政状態)

 当事業年度末の総資産は、68,600百万円(前事業年度末67,820百万円)となりました。主な勘定残高として、高格付けの公社債を中心とする有価証券は、45,606百万円となりました。また、再保険貸4,602百万円のうち、修正共同保険式再保険に係る未償却出再手数料の残高は4,295百万円となりました。

 負債は、主に責任準備金が増加したことにより、53,026百万円(前事業年度末45,749百万円)となりました。主な勘定残高は、責任準備金49,632百万円、支払備金1,364百万円となりました。

 純資産は、当期純損失を計上したこと及びその他有価証券評価差額金が減少したことにより、15,574百万円(前事業年度末22,071百万円)となりました。なお、修正共同保険式再保険の活用により、純資産のうち利益剰余金には、未償却出再手数料の残高分を増加させる効果を含んでおり、資本の急激な減少を緩和しております。一方、収受した出再手数料は、再保険貸に資産計上された後、一定の期間において再保険収支に基づいて段階的に償却されます。それに応じて、当該期間において、純資産が減少することとなります。

 当事業年度末のソルベンシー・マージン比率は、3,158.2%(前事業年度末3,182.8%)となり、充分な支払余力を維持しております。

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、第2[事業の状況]3[事業等のリスク]に記載のとおりです。

 

(商品・サービスなどの取組み)

 当事業年度においては、中長期の持続的な成長の実現に向けて、パートナー企業との提携及び取組みを積極的に推進しました。2022年8月にauじぶん銀行株式会社と、団体信用生命保険に関する業務提携契約を締結しました。これにより、当社は従来の個人保険事業に加えて、新たに団体信用生命保険事業を2023年7月から開始する予定です。また、2022年8月にはエーザイ株式会社と資本業務提携契約を締結し、生活者の医療・介護に係る負担の軽減に貢献することを目指して、両社で認知症領域等での協業に取組みます。さらに、2022年10月には三井住友カード株式会社と、当社子会社であるライフネットみらい株式会社及び当社の3社間において、業務提携契約を締結し、2023年3月よりSMBCグループ会員向けポータルサイト上で当社グループの商品・サービスの提供を開始しております。加えて、既存のパートナー企業を通じた商品開発にも注力しました。KDDI株式会社を通じて販売している商品をPontaポイントがたまる「auの生命ほけん」としてリニューアルしたほか、株式会社カカクコム・インシュアランスが運営する「価格.com保険」において、終身医療保険「じぶんへの保険3」価格.com保険限定プランの提供を開始しました。

 次に、顧客体験の向上に向けたサービスの提供にも取組みました。ご契約者向けに「電子保険証券」と「かぞく登録制度」を導入しご契約者がより便利に当社のサービスを活用いただけるようになりました。

 さらに、当事業年度は外部機関からの多数の評価を獲得しました。商品では、定期死亡保険「かぞくへの保険」が「価格.com保険アワード2022年版」において生命保険の部(定期保険)で6年連続総合第1位を受賞しました。サービスでは、コンタクトセンターとウェブサイトが2022年「HDI格付けベンチマーク(公開格付け調査・生命保険業界)」において業界最多記録(当社調べ)となる10回目の最高評価を受賞しました。さらに、実際に契約手続きをされたお客さまが評価する「J.D. パワー2023年生命保険契約満足度調査SM」では、ダイレクト型チャネル部門で3年連続第1位に選ばれ、当社が経営方針の重点領域として掲げている「顧客体験の革新」への注力がお客さまからの高い評価につながったものと考えております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、事業費が増加したことにより、2,705百万円の収入(前事業年度2,783百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得及び売却や無形固定資産の取得により、245百万円の支出(前事業年度7,749百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、2百万円の支出(前事業年度9,668百万円の収入)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、10,219百万円(前事業年度末7,761百万円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

 生命保険業においては、該当する情報がないため記載しておりません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。本項における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営状況の分析等

 当社は、EEV(ヨーロピアン・エンべディッド・バリュー)を当社の企業価値を表す最も重要な指標と位置づけ、経営方針の経営目標に掲げております。なお、経営方針については、第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3)中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題をご参照ください。

 また、EEVの持続的な成長を支える経営指標として、成長性指標・収益性指標・健全性指標を設定しております。各指標の説明、成果及び分析は以下のとおりです。

(EEVについて)

 EV(エンベディッド・バリュー)は、「修正純資産」と「保有契約の将来利益現価」を合計した指標であり、当社が用いるEEV(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)は、EV(エンベディッド・バリュー)の種類のひとつです。

 「修正純資産」は、期末の純資産に調整額(負債中の内部留保等)を合計して算出します。当年度の純利益がプラスの場合は、修正純資産を増加させる要因となり、マイナスの場合は、修正純資産を減少させる要因となります。「保有契約の将来利益現価」は、現在の保有契約から生じる将来の利益を現在価値に割り引いたもので、新契約を獲得すると、一般的には保有契約の将来利益現価が増加します。

(EEVを経営指標として定めた理由)

 生命保険契約は、一般的に新規の契約を獲得する時に多くの費用がかかるものの、収益となる保険料収入を生み出す期間は長期となるため、費用と収益の発生にタイムラグが生じます。現在の法定会計(日本基準)上の損益計算書では、新規の契約獲得に係る費用を初年度に一括計上する一方で、収益となる保険料収入は長期にわたって計上されます。そのため、新規の契約が増加するほど当年度に計上される費用が増加し、当期の利益にマイナスの影響を与える構造となっております。特に、当社のように保有契約に占める新契約の割合が大きい生命保険会社においては、当期の法定会計上の損益計算書の損益が損失の計上となる傾向にあります。当社は、超長期となるビジネスである生命保険会社の企業価値を評価するためには、法定会計に加えて、将来の利益も含めた長期の収益性を示すEV(エンベディッド・バリュー)も考慮する必要があると考え、経営方針の経営指標として定めております。

(EEV計算結果と変動要因分析)

 当事業年度末のEEVは、前事業年度末比6.9%増加の124,666百万円となりました。修正純資産は18,367百万円、保有契約の将来利益現価は106,299百万円となりました。

(百万円)

 

2022年3月末

2023年3月末

増減

EEV

116,604

124,666

8,062

修正純資産

25,168

18,367

△6,801

保有契約の将来利益現価

91,435

106,299

14,863

 また、前事業年度末から当事業年度末までのEEVの変動要因分析は以下のとおりです。

 なお、修正EV増加額につきましては、EEVの変動のうち、「新契約価値」「将来利益現価の割り戻し」「保険関係の前提条件と実績の差異」の合計額を修正EV増加額と定義したもので、当社の期間業績を表す指標と位置付けております。

(百万円)

2022年3月末EEV

116,604

 

修正EV増加額

4,376

 

2022年度の新契約価値

3,506

 

将来利益現価の割り戻し

1,430

保険関係の前提条件と実績の差異

△560

保険関係の前提条件の変更

4,281

 

経済的前提条件と実績の差異

△639

 

2023年3月末EEVの調整*1

43

 

2023年3月末EEV

124,666

 

*1. 資本の増減による項目

 前事業年度末から当事業年度末にかけて、EEVは8,062百万円増加しました。当事業年度においては、新型コロナウイルス感染症に係る給付金等の支払いの増加、金利上昇による有価証券の評価下落、将来の事業費のインフレ率の引き上げ等がEEVの成長を押し下げたものの、主に修正EV増加額及び保険関係の前提条件の変更による増加によりEEVは伸長しました。

 主な増加要因のうち、修正EV増加額につきましては、その構成要素である当事業年度に獲得した新契約から生じた新契約価値が主にEEVの成長に寄与しました。次に、保険関係の前提条件の変更につきましては、主に保険事故発生率(死亡率及び罹患率)の前提を当社の実績等を踏まえて見直しを行った結果、EEVが増加しました。

 

(EEVの持続的な成長を支える経営指標)

 当社は、成長性指標として保有契約業績及び新契約業績、収益性指標*2として営業費用効率及び営業費用を除く事業費率、健全性指標としてソルベンシー・マージン比率を設定し、EEVの持続的な成長を支える経営指標としております。各指標の結果分析は以下のとおりです。

 成長性指標について、当事業年度末の保有契約業績は、年換算保険料が前事業年度末比111.7%の24,033百万円、件数が前事業年度末比112.1%の568,674件となりました。保有契約業績は、主に新契約業績及び解約失効率により増減します。2022年度の新契約業績においては、年換算保険料が前事業年度比95.9%の3,919百万円、件数が前事業年度比97.9%の98,532件となりました。当事業年度は、新型コロナウイルス感染症拡大等の影響を受け当第2四半期において過去最高の新契約業績を達成したものの、下半期の当該感染症の感染縮小に伴い、保障性の生命保険商品のニーズ低下が継続したことなどにより、当事業年度を通じた成長速度は緩やかとなりました。また、解約失効率においては、前事業年度の6.6%から6.5%となり、ほぼ同水準を維持しております。成長性指標については、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況もご参照ください。

 収益性指標については、営業費用効率(営業費用を新契約件数で除した新契約1件当たりの営業費用)及び営業費用を除く事業費率(事業費*3のうち、営業費用を除いた事業費を保険料収入で除した割合)を指標としております。営業費用効率は、前事業年度の8.2万円から8.8万円となりました。当事業年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大と縮小の中で、営業費用効率が短期的に大きく変動する1年となりました。特に下半期においては、保障性の生命保険商品の需要低下の継続により、新契約の獲得が想定どおりに進捗しなかったことから、営業費用効率は低下しました。また、当事業年度の営業費用を除く事業費率は、保有契約の増大に伴い保険料収入が増加した一方、団体信用生命保険等の新規事業への投資を行ったことにより、21.3%(前事業年度19.5%)と増加しました。

 健全性指標のソルベンシー・マージン比率は、3,158.2%(前事業年度末3,182.8%)で、充分な水準を確保しております。ソルベンシー・マージン比率についての詳細については、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容のc. ソルベンシー・マージン比率もご参照ください。

*2.当社の収益性指標は、財務報告において、当事業年度(2022年度)までは、従前適用している日本基準を踏まえて「営業費用効率」及び「営業費用を除く事業費率」を設定しておりましたが、2023年度より新たに国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することから、それぞれ「保険獲得キャッシュ・フロー効率」及び「保険獲得キャッシュ・フローを除く経費率」に変更します。なお保険獲得キャッシュ・フローとは保険契約群団の獲得増加に直接起因する費用であり主に従来の営業費用に新契約査定に係る費用及びシステムに係る費用を加えたものです

*3.当社は事業費を、営業費用、保険事務費用、システム・その他費用の3つに分類しております。営業費用を除く事業費とは、保険事務費用とシステム・その他費用の合計を指します。なお2022年度の営業費用を除く事業費は4,790百万円です。

 

b. 経常利益等の明細(基礎利益)

(a) 基礎利益

 基礎利益とは生命保険業における収益性を示す指標のひとつです。具体的には、保険契約者から収受した保険料等の保険料等収入、資産運用収益及び責任準備金戻入額等その他経常収益等で構成される基礎収益から、保険金等支払金、責任準備金等繰入額、資産運用費用、事業費及びその他経常費用等から構成される基礎費用を控除したものとして計算されます。

 基礎利益と経常利益との差及びその内訳は、以下のとおりです。

                               (単位:百万円)

 

前事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

当事業年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

基礎利益                  A

△3,213

△5,072

キャピタル収益

190

497

 

金銭の信託運用益

11

155

売買目的有価証券運用益

有価証券売却益

178

296

金融派生商品収益

為替差益

その他キャピタル収益

45

キャピタル費用

0

180

 

金銭の信託運用損

売買目的有価証券運用損

有価証券売却損

180

有価証券評価損

金融派生商品費用

為替差損

0

0

その他キャピタル費用

キャピタル損益               B

190

317

キャピタル損益含み基礎利益         A+B

△3,023

△4,755

臨時収益

 

再保険収入

危険準備金戻入額

その他臨時収益

臨時費用

222

194

 

再保険料

危険準備金繰入額

222

194

個別貸倒引当金繰入額

特定海外債権引当勘定繰入額

貸付金償却

その他臨時費用

臨時損益                  C

△222

△194

経常利益                              A+B+C

△3,245

△4,949

注1.当事業年度の基礎利益には、金銭の信託運用益28百万円を含んでおります。

 2.前事業年度の基礎利益には、金銭の信託運用益59百万円を含んでおります。

3.当事業年度より、投資信託解約益45百万円をキャピタル損益に含んでおります。なお、前事業年度は、投資信託解約益を基礎利益に含んでおります。

 

(b) 三利源について

 基礎利益は「危険差損益」、「費差損益」及び「利差損益」に分解することも可能であり、これらを三利源と呼んでおります。生命保険料の計算は、予定発生率(死亡率、入院率など)、予定利率、予定事業費率(付加保険料部分)の3つに基づいております。これらの「予定」と実績との差によって生命保険会社の利益(基礎利益)が生じていると考え、それぞれの差分を算出することによって、基礎利益がどのような要因から生じているのかを明らかにするのが利源分析の考え方です。

 

危険差損益

想定した保険金・給付金の支払額(予定発生率)と実際に発生した支払額との差

費差損益

想定した事業費(予定事業費率)と実際の事業費支出との差

利差損益

想定した運用収支(予定利率)と実際の運用収支との差

(注)当社の利源分析は、保険数理上合理的な方法を採用しておりますが、具体的な計算方法は他の保険会社と異なることがあります。当社では保険料の内訳計算等について責任準備金の積立方式を考慮した方式とし、解約・失効による利益(解約失効益)は、費差損益に含めております。

 

(c) 基礎利益の内訳(三利源)

 当事業年度の基礎利益及び三利源の状況は以下のとおりです。前事業年度の3,213百万円のマイナスに対して、5,072百万円のマイナスとなりました。

(単位:百万円)

 

前事業年度

(自 2021年4月1日
  至 2022年3月31日)

当事業年度

(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

基礎利益

△3,213

△5,072

 

危険差損益

3,348

2,292

 

費差損益

△6,648

△7,429

 

利差損益

86

64

 

c. ソルベンシー・マージン比率

(a) ソルベンシー・マージン(支払い余力)の考え方

 ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株式市場の暴落など、通常の予測の範囲を超えて発生するリスクに対応できる「支払い余力」を有しているかどうかを判断するための経営指標・行政監督上の指標のひとつです。具体的には、純資産などの内部留保と有価証券含み益などの合計(ソルベンシー・マージンの総額=支払い余力)を、定量化した諸リスクの合計額で除して求めます。なお、ソルベンシー・マージン比率が200%以上であれば、行政監督上、健全性についてのひとつの基準を満たしているとされます。

ソルベンシー・マージン比率 =

ソルベンシー・マージン総額

 × 100(%)

リスクの合計額 × 1/2

 

(b) ソルベンシー・マージン比率

 当事業年度末のソルベンシー・マージン比率は、3,158.2%となり、支払余力は引き続き高水準を維持しております。

                                   (単位:百万円)

項   目

前事業年度末

(2022年3月31日)

当事業年度末

(2023年3月31日)

(A) ソルベンシー・マージン総額

37,758

31,943

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資本金等

21,373

16,252

価格変動準備金

102

124

危険準備金

2,226

2,420

一般貸倒引当金

(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益(税効果控除前))×90%

(マイナスの場合100%)

872

△678

土地の含み損益×85%

(マイナスの場合100%)

全期チルメル式責任準備金相当額超過額

13,184

15,679

負債性資本調達手段等

全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性資本調達手段等のうち、マージンに算入されない額

△1,854

控除項目

その他

(B) リスクの合計額

  ※画像省略しています。

2,372

2,022

 

 

 

 

 

 

保険リスク相当額        R1

1,077

1,043

第三分野保険の保険リスク相当額 R8

379

400

予定利率リスク相当額      R2

3

4

最低保証リスク相当額      R7

資産運用リスク相当額      R3

1,745

1,291

経営管理リスク相当額      R4

96

82

(C) ソルベンシー・マージン比率

※画像省略しています。

3,182.8%

3,158.2%

(注) 以上の数値は、保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、事業費が増加したことにより、2,705百万円の収入(前事業年度2,783百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得及び売却や無形固定資産の取得により、245百万円の支出(前事業年度7,749百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、2百万円の支出(前事業年度9,668百万円の収入)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、10,219百万円(前事業年度末7,761百万円)となりました。

 当社の資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりであります。

 当社は、保険料収入を主な資金の源泉としております。また、保険金・給付金の支払いに対応するために必要な一定程度の預貯金を含め、手元流動性を確保したうえで資産運用を行っております。

 当事業年度においても、公社債など高格付けの円金利資産を中心とした運用を継続しました。また、適切なリスク管理のもとで国内外の株式や債券などを対象とした投資信託への投資を通じて、資産の多様化を行っております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成は経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積り及び予測を必要とします。経営者は、これらの見積りや予測について、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実績はこれらと異なる可能性があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の「重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針の適用が、その作成において用いられる見積り及び予測により、当社の財務諸表に大きな影響を及ぼします。

 

a. 金融商品の時価の算定方法

 有価証券は、時価法に基づいて評価しております。時価は、原則として市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には将来キャッシュ・フローの現在価値等に基づく合理的な見積りによることとしております。将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積り額は変動する可能性があります。

 

b. 有価証券の減損処理

 売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価が取得価額に比べて著しく下落した場合、回復する見込みがあると認められる場合を除き、合理的な基準に基づく減損処理を行うこととしております。今後の金融市場の状況によっては、多額の有価証券評価損を計上する可能性があります。

 

c. 繰延税金資産及び繰延税金負債

 繰延税金資産及び繰延税金負債については、「税効果会計に係る会計基準(平成10年10月30日企業会計審議会)」に基づき、認められる額を計上しております。

 

d. 貸倒引当金の計上基準

 当社は、債権の貸倒れによる損失に備えるため、資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則り、債務者の状況に応じ、債権の回収不能時に生じる損失の見積り額について、貸倒引当金を計上することとしております。将来、債務者の財務状況が悪化し支払い能力が低下した場合には、引当金の計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

e. 支払備金の積立方法

 保険契約に基づいて支払義務が発生したと認められる保険金等について、事業年度末時点の未払いの金額を見積り、支払備金として積み立てております。今後、見積りに影響する新たな事実の発生や裁判の判例等により、支払備金の計上額が当初の見積り額から変動する可能性があります。

 

f. 責任準備金の積立方法

 保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。当社は責任準備金の見積りに使用される基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく異なる場合、あるいは基礎率を変更する必要がある場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。