E04151 Japan GAAP
前期
348.2億 円
前期比
117.4%
当社は2005年8月24日に開業したつくばエクスプレスを第一種鉄道事業者として運営する旅客運送業者です。
つくばエクスプレスは秋葉原~つくば間(58.3km)を最速45分で結ぶ都市高速鉄道で、利用者及び沿線地域に以下のような効果を生み出すことを期待されています。
① 東京圏北東地域の交通体系の充実
東京圏北東方面は東京都心からの放射方向の鉄道網の密度が極めて低い地域となっていましたが、開業により、都心までの時間距離が大幅に短縮されました。
② 沿線地域における住宅・宅地の供給
沿線地域は多くの開発計画地を抱えており、沿線開発と鉄道整備を一体的・計画的に整備することにより、良質の住宅・宅地の供給が可能となります。
③ 首都圏の地域構造改編
IT拠点として発展する秋葉原と研究開発拠点のつくばが結びつくことにより、筑波研究学園都市の一層発展を可能とするとともに、沿線の八潮市、三郷市、流山市、柏市等においても生活利便性の向上、人、物、情報等の流れの活発化による業務機能や研究開発機能の移転、整備が図られ、首都圏一極集中の是正に寄与します。
④ 沿線地域の活性化
開業により、沿線の計画開発地の開発及び既成市街地の活性化が促進され、地域産業や商業が活性化し、大きな経済波及効果を生み出します。
なお、つくばエクスプレスの鉄道施設については、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)工事として建設を進めてきましたが、開業に当たり、主要な鉄道施設の譲渡(2005年8月23日)を受けました。また、2008年3月31日に復旧工事を含む残工事分について譲渡(二次譲渡)を受けました。これにより、つくばエクスプレス建設工事は完了となりました。
つくばエクスプレス建設事業にかかる資金等の流れ及び調達方法は、国及び関係自治体の合意により、以下のとおりとなっています。
(つくばエクスプレス建設事業にかかる資金等の流れ)
(注) 鉄道施設は、工事完成後において鉄道・運輸機構から譲渡を受け、増資資金により賄われた工事費を除く譲渡代金は長期延払によって支払うこととしています。
(つくばエクスプレス建設事業にかかる資金調達方法)
(注1) 建設事業費は1兆473億円(うち、都市鉄道整備事業資金無利子貸付対象事業費1兆283億円)でしたが、コスト縮減の取り組み等により、8,081億円となりました。
(注2) 各年度毎に建設事業の進捗に応じ、所定の割合(40%)を調達しました。
(注3) 原則として、各年度毎に建設事業の進捗に応じ、所定の割合(14%)を調達しましたが、1997年度以降の建設事業費見合い分については、1997年度から1999年度の3ヶ年度に前倒しし、概ね均等に調達しました。
この資金は、各年度毎に所定の割合(14%)を建設費に充当するほか、1997年度以降2002年度までは当該年度の財政投融資等の6%相当分にも充当し、有利子資金導入の遅延に資することとしました。
(注4) 財政投融資等については、1996年度までは鉄道・運輸機構において調達されてきましたが、1997年度から2002年度までは、(注3)のとおり当社が関係自治体から前倒し増資により調達した資金を毎年度鉄道・運輸機構に支払いをしました。
(注5) 増資及び財政投融資等が所定の割合(各々14%、6%)となるよう、2003年度から2005年度にかけて増資による鉄道・運輸機構への支払いを調整しました。
(注6) 本表には財政投融資資金、鉄道・運輸機構債の利子を含んでいませんが、鉄道・運輸機構の鉄道施設譲渡代金に算入され、当社の負担となります。
①財政状態及び経営成績の状況
社会に大きな影響を与え続けてきた新型コロナ禍もここに来てようやく沈静化しつつありますが、当社の業績はコロナの影響で大きく落ち込み、徐々に回復を見せているものの、コロナ前にはなかなか戻らず、依然厳しい状況が続いています。一方、ウクライナ危機に端を発して、諸物価の著しい高騰という予想外の事態に直面しています。
こうした状況下においても、当社は鉄道事業者の根幹である安全・安定・安心輸送の維持・継続を果たしてまいりました。
この厳しい事業環境を乗り越え、将来にわたり鉄道サービスを提供するため、当社は「コロナ禍における安全輸送の徹底と輸送動向の変化への対応~ポストコロナ社会に向けた基礎づくり~」をテーマとする「中期経営計画(2021~2023年度)」を策定し、「安全で安心な鉄道輸送の確立」・「充実したサービスの提供」・「経営基盤の強化」を基本方針とする「2022年度事業計画」に基づいて、様々な取り組みを進めてまいりました。
これらの推進等により、当期の輸送人員は126,381千人[前期比14.3%増、内訳は、定期79,828千人(前期比8.6%増)、定期外46,553千人(前期比25.5%増)]となりました。一日当たりの輸送人員で見ると約349千人(前期比約43千人増)と一定程度の回復が見られ、当期の鉄道事業営業収益は40,868百万円(前期比17.3%増)となりました。内訳は、定期運賃18,938百万円(前期比8.0%増)、定期外運賃20,204百万円(前期比29.5%増)、運輸雑収1,725百万円(前期比2.2%増)となりました。
一方、営業費は燃料費調整単価の上昇等による動力費・水道光熱費の増加が1,121百万円ありましたが、修繕費や減価償却費の減少があったことから、36,602百万円(前期比1.0%減)となりました。
この結果、営業損益は、4,265百万円の利益(前期は2,179百万円の損失)となりました。また、営業外収益は68百万円(前期比28.0%減)、営業外費用は2,375百万円(前期比6.1%増)、経常損益は1,959百万円の利益(前期は4,323百万円の損失)となりました。
以上により、法人税、住民税及び事業税353百万円、法人税等調整額△535百万円を差引後の当期純損益は2,141百万円の利益(前期は4,331百万円の損失)となり、3期ぶりに最終利益を計上することができました。
また、当期純利益2,141百万円の計上により、利益剰余金残高は1,543百万円となりました。
財政状態については、資産合計724,770百万円(前事業年度末比40,746百万円減)、負債合計538,211百万円(前事業年度末比42,888百万円減)、純資産合計186,559百万円(前事業年度末比2,141百万円増)となりました。
資産の減少は、主として、鉄道・運輸機構からの返済により無利子貸付金が減少したこと及び鉄道施設等の減価償却によるものであり、負債の減少は、主として、関係自治体への返済により無利子借入金が減少したこと及び鉄道・運輸機構から譲渡を受けた鉄道施設の未払金が返済により減少したことによるものです。
純資産の増加は当事業年度の純利益の計上によるものです。なお、固定負債の大半を占める長期未払金435,793百万円は、主として、長期割賦により譲り受けた鉄道・運輸機構への長期未払金ですが、その返済条件は、元利均等半年賦支払の方法による期間5年据置、35年償還であり、当面の財政状態は特に問題はないと考えています。
(注) 乗車効率の算出方法
当事業年度における現金及び現金同等物は15,756百万円となり、前事業年度に比べて7,894百万円増加しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは19,349百万円となり、前事業年度に比べて4,235百万円増加しました。
これは主として、減価償却費が1,042百万円、法人税の還付額が601百万円とそれぞれ減少した一方で、税引前当期純利益が1,959百万円と前事業年度に比べて6,282百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動によるキャッシュ・フローは32,667百万円となり、前事業年度に比べて2,607百万円増加しました。
これは主として、収入面では、鉄道・運輸機構との間に締結した「事業費の貸付等に関する協定」に基づく鉄道・運輸機構からの貸付金回収による収入が23,866百万円と前事業年度に比べて2,803百万円減少した一方で、投資有価証券の償還による収入が11,100百万円と前事業年度に比べて3,100百万円増加したこと、支出面では、有形固定資産の取得による支出が2,018百万円と前事業年度に比べて2,446百万円減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動によるキャッシュ・フローは△44,122百万円となり、前事業年度に比べて2,823百万円支出が減少しました。
これは、関係自治体が定めた「常磐新線建設資金貸付要綱」に基づく長期借入金返済による支出が23,881百万円と前事業年度に比べて2,803百万円減少したこと、また、鉄道・運輸機構との間に締結した「常磐新線の建設及び譲渡・引渡し基本協定書」に基づく長期未払金の返済による支出が20,241百万円と前事業年度に比べて20百万円減少したことによるものです。
当社の事業内容は、役務の提供を主たる事業としており、生産、受注及び販売の状況について、金額あるいは数量で示すことはしていません。そのため、「生産、受注及び販売の状況」は「(1)経営成績等の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」の項において記載しています。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2023年3月31日)現在において判断したものです。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、財務諸表の作成に当たっては、決算日における資産・負債および会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行った上で、継続して評価を行っています。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたっての重要な方針・見積りは、「重要な会計方針」及び「重要な会計上の見積り」に記載のとおりですが、そのうち見積りの重要度が高いものは以下の通りであります。
従業員の退職給付債務および費用は、割引率、昇給率、退職率、死亡率等の数理計算上の前提条件を用いて見積りを行っております。数理計算上の前提条件と実績が異なる場合または前提条件の変更があった場合には、翌事業年度以降の退職給付債務および費用に影響を与える可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見込額に基づいて判断しております。将来の課税所得の見込額については、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響が、収束に向けて段階的に回復した場合の輸送人員に基づく旅客運輸収入等、経営者による重要な判断を伴う主要な仮定が含まれています。これらの仮定が変更された場合には、翌事業年度以降の財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
当事業年度の経営成績等は、「 (1)経営成績等の概要①財政状態及び経営成績の状況」の項に記載のとおりですが、当事業年度の輸送人員は、前事業年度に比べて一定程度の回復が見られ、営業収益は40,868百万円(前期比17.3%増)となったこと、営業費が減少したことから営業利益は4,265百万円となり、営業外費用の増加はありましたが、当期純損益は2,141百万円の利益(前事業年度は4,331百万円の損失)となりました。
資本の財源及び資金の流動性については、当社は運送費、一般管理費等の営業費用の支払いや設備投資を実施しながら、主に鉄道・運輸機構への長期未払金の返済に資金を費やしています。
なお、重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりです。