b
E08587
前期
1,866.6億 円
前期比
100.6%
当社グループは、当社と子会社25社及び関連会社26社(2023年3月31日現在)により構成されており、鉄道ロジスティクス事業、不動産事業を主たる業務としております。各事業における当社及び当社の関係会社の位置づけ等は次のとおりであります。
なお、次の区分は「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表」の注記事項に掲げるセグメント情報の区分と同一であります。
(1)鉄道ロジスティクス事業
貨物鉄道事業を中心に、利用運送事業及び駅構内の倉庫・物流センター事業を展開しております。貨物鉄道事業の主力はコンテナ輸送で、鉄道用コンテナを使ったドアツードアの一貫輸送サービスです。集荷先から発駅までと着駅から配達先までの両端の区間は当社の関係会社を含む利用運送事業者によるトラック輸送、発駅から着駅までの幹線区間は当社の貨物鉄道輸送が連携し、スピーディかつ安全・確実に輸送します。当社の貨物鉄道事業の営業エリアは、北海道から九州まで全国にわたり、駅数は239駅、営業キロは7,829.1km(第1種線区が35.3km、第2種線区が7,793.8km)となっております。
当社の鉄道路線図は「第1 企業の概況 3 事業の内容」末尾に表示しております。
主な関係会社:当社、●全国通運㈱、●日本フレートライナー㈱、□臨海鉄道各社
(2)不動産事業
不動産賃貸・販売業、倉庫業、駐車場業、広告業等を展開しております。
オフィスビル、商業施設のメンテナンス、修繕工事、清掃、警備等のサービス業務を展開しております。
主な関係会社:当社、●㈱ジェイアール貨物・不動産開発
(3)その他
上記のほかリース事業、商品流通(商社)事業、植物工場事業等を展開しております。
主な関係会社:●ジェイアールエフ商事㈱、□山村JR貨物きらベジステーション㈱
(注)1.●は連結子会社、□は持分法適用会社を示しております。
2.複数のセグメントに係る事業を営んでいる子会社は、主たる事業のセグメントに会社名を記載しております。
3.第1種線区とは、第一種鉄道事業(他人の需要に応じ、自らが敷設する鉄道線路を使用して鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業をいう)として使用している線区であります。
4.第2種線区とは、第二種鉄道事業(他人の需要に応じ、自らが敷設する鉄道線路以外の鉄道線路を使用して鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業をいう)として営業している線区であります。
以上に述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
[事業系統図]
※画像省略しています。
※2023年3月31日現在
※画像省略しています。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、度重なる新型コロナウイルス感染症の感染拡大の波がある中で、徹底した感染対策を行い、国の指定公共機関として物流サービスを継続して提供してまいりました。また、「JR貨物グループ長期ビジョン2030」や「JR貨物グループ中期経営計画2023」のもと、鉄道ロジスティクス事業では貨物鉄道事業の役割発揮とさらなる収益性の向上、総合物流企業グループへの進化、不動産事業では利益拡大等の取組みを進めました。特に鉄道ロジスティクス事業では、トラックドライバー不足による物流の停滞という深刻な社会問題となることが懸念される「2024年問題」に伴う課題やその緊急性を訴える活動を強化し、モーダルコンビネーションによる輸送方法の見直しやトラック輸送のみに偏らない輸送体系の提案営業を実施しました。
しかしながら、2022年8月の北海道・東北・北陸地区を中心とした大雨など自然災害の影響、新型コロナウイルス感染症や物価上昇に伴う消費低迷の影響を受けての運輸収入の伸び悩み、またウクライナ情勢の長期化に伴う原油高騰に起因するコスト増が経営成績に影響を及ぼしました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は前期比0.6%増の1,876億円、営業損失は36億円(前期は営業利益14億円)、経常損失は43億円(前期は経常利益2億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は40億円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失14億円)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
a 鉄道ロジスティクス事業
鉄道事業を中心とする当社グループは、「安全は鉄道事業の存立基盤である」との認識のもと、鉄道輸送の商品力強化や信頼性向上に取り組むとともに、収支改善に向けた取組みの継続・強化を実施しております。
しかしながら、2021年12月28日に発生した山陽線瀬野~八本松駅間における貨物列車の脱線事故により同線を運行する列車に運休や大幅な遅延等が発生し、お客様をはじめ、関係する方々に多大なご迷惑をお掛けしました。今回の脱線事故を極めて重大な事故と受け止め、安全管理体制の強化に万全を期すべく2022年5月に国土交通省へ報告した改善措置を実施してまいりました。
輸送サービスにおいては、2023年3月のダイヤ改正で需要が高まっております積合せ貨物について関東~関西間で輸送力を増強するとともに、九州発関東向け列車の速達化を図りました。また、2022年3月ダイヤ改正より運転開始したフォワーダー(利用運送事業者)向けのブロックトレイン「フォワーダーズブロックトレイン」ではお客様からご要望をいただき輸送力の新設等を実施しております。
輸送量につきましては、新型コロナウイルス感染症や原材料費高騰に起因する物価上昇による消費の低迷に加え、8月の北海道・東北・北陸地区を中心とした大雨に伴って一部不通区間が生じた影響により、積合せ貨物、他工業品、自動車部品、家電・情報機器、食料工業品を除く品目で前年を下回りました。
品目別では、紙・パルプは紙需要減に伴う生産減により低調となったほか、エコ関連物資は、建設発生土の輸送が2021年7月に終了したため前年を下回りました。化学薬品及び化学工業品は、需要の低迷等の影響を受け減送となりました。一方、積合せ貨物は、2021年10月からのブロックトレイン運転開始等により増送となったほか、自動車部品および家電・情報機器は、半導体不足及び海外からの部品調達が難しくなっていた状況が緩和されてきたことから前年を上回り、結果コンテナ全体では前年比99.2%となりました。車扱は、石油が新型コロナウイルス感染症の影響緩和によりガソリンを中心に前年を上回ったこと等により、車扱全体では前期比101.5%となりました。結果、コンテナ・車扱の輸送量合計では前期比99.9%となりました。
経費面では、ウクライナ情勢の長期化に伴う原油高騰や物価上昇に起因するコスト増を受け、不要不急の工事・施策の精査を行うなど経費圧縮に努めました。また、固定費削減の取組みとして、機関車の検査周期の最適化やフォークリフト用の再生タイヤ(リトレッドタイヤ)の使用拡大などを実施しました。一方で、安全の確立、安定輸送の確保、輸送品質の維持等に必要な経費は着実に執行しました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は前期比0.4%減の1,674億円、営業損失は148億円(前期は営業損失92億円)となりました。
b 不動産事業
不動産事業では、2022年9月に引渡しが開始された新小岩の分譲マンション販売が好調であること、2022年2月に賃貸開始したフレシア経堂など建物貸付が堅調に推移していることなどにより増収となりました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は前期比7.3%増の220億円、営業利益は前期比4.4%増の107億円となりました。
c その他
その他では、営業収益はリース事業の売上増により前期比4.8%増の41億円となりましたが、前年度に投入したリース事業用資産にかかる固定資産税が当連結会計年度から課税され、原価が増加したことにより営業利益は前期比21.0%減の2億円となりました。
(参考)
当社の貨物鉄道事業の最近の品目別輸送実績は次のとおりであります。
(単位:千トン)
|
前事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
対前期比 |
|
増減 |
% |
|||
輸送量合計 |
26,643 |
26,609 |
△34 |
△0.1 |
コンテナ輸送量計 |
18,484 |
18,331 |
△153 |
△0.8 |
農産品・青果物 |
1,523 |
1,515 |
△8 |
△0.5 |
化学工業品 |
1,612 |
1,588 |
△24 |
△1.5 |
化学薬品 |
1,272 |
1,217 |
△54 |
△4.3 |
食料工業品 |
2,905 |
2,914 |
+9 |
+0.3 |
紙・パルプ |
2,185 |
2,090 |
△95 |
△4.4 |
他工業品 |
1,268 |
1,312 |
+43 |
+3.5 |
積合せ貨物 |
3,052 |
3,134 |
+81 |
+2.7 |
自動車部品 |
623 |
666 |
+42 |
+6.9 |
家電・情報機器 |
313 |
348 |
+35 |
+11.2 |
エコ関連物資 |
495 |
421 |
△73 |
△14.9 |
その他 |
3,230 |
3,121 |
△109 |
△3.4 |
車扱輸送量計 |
8,158 |
8,278 |
+119 |
+1.5 |
石油 |
5,544 |
5,679 |
+135 |
+2.4 |
セメント・石灰石 |
1,359 |
1,330 |
△29 |
△2.1 |
車両 |
808 |
801 |
△7 |
△0.9 |
その他 |
447 |
467 |
+20 |
+4.5 |
また、最近2連結会計年度における主な顧客先別の売上高及び当該売上高実績の総売上高実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
|
前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
日本通運株式会社 |
37,763 |
20.2 |
37,389 |
19.9 |
② 資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、4,369億円となり、前連結会計年度末と比較し、43億円増加しました。これは主に、東京レールゲートEAST建設に伴う固定資産の増加によるものです。
負債総額は、3,408億円となり、前連結会計年度末と比較し、84億円増加しました。これは主に、長期借入等によるものです。
純資産総額は、960億円となり、前連結会計年度末と比較し、41億円減少しました。これは主に、利益剰余金の減少によるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純損失が増加したことなどにより流入額が減少し、191億円の流入(前期は197億円の流入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、前年度に引き続き東京レールゲートEASTの工事など設備投資を実施し、335億円の流出(前期は342億円の流出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、前年度の社債の発行による収入などにより流入額が減少し、64億円の流入(前期は189億円の流入)となりました。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ80億円減の241億円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社及び当社の連結子会社の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。長期に亘り収益が認識される契約を有する鉄道ロジスティクス事業については、未履行の履行義務残高を、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表 注記事項(収益認識関係)」に記載しています。なお、販売の状況については「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成に当たっては、連結決算日における資産・負債及び当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行ったうえで、継続して評価を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表は固定資産の比率が高いことから、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りのうち特に影響が大きいものは、固定資産の減損会計であります。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績
〇 営業収益
当連結会計年度の営業収益は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売上が減少したことなどにより、前期比0.6%増の1,876億円となりました。
鉄道ロジスティクス事業の外部顧客への売上高は、前期比0.3%減の1,671億円となりました。
これは、当社の鉄道ロジスティクス事業における貨物運輸収入が、新型コロナウイルス感染症や物価上昇に伴う消費低迷の影響に加え、2022年8月の北海道・東北・北陸地区を中心とした大雨など自然災害の影響を受けたことによります。
コンテナの輸送量は、積合せ貨物、他工業品、自動車部品、家電・情報機器、食料工業品を除く品目で前年を下回り、前期比0.8%減の1,833万トンとなりました。車扱の輸送量は、石油が新型コロナウイルス感染症の影響緩和によりガソリンを中心に前年を上回ったこと等により、前期比1.5%増の827万トンとなりました。
鉄道ロジスティクス事業以外の事業の外部顧客への売上高については、以下のとおりであります。
不動産事業では、分譲マンション販売や新規貸付等により、前期比8.3%増の202億円となりました。
その他の事業では、前期比0.3%増の3億円となりました。
〇 営業費用
営業費用は、前期比3.3%増の1,913億円となりました。営業収益に対する営業費用の比率は、前連結会計年度の99.2%に対して、当連結会計年度は101.9%となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前期比3.3%増の1,759億円となりました。これは、修繕費、動力費等のほか分譲マンション売上原価が増加したことなどによるものであります。
販売費及び一般管理費は、前期比3.1%増の153億円となりました。これは、主に備消品費などが増加したことなどによるものであります。
〇 営業損益
営業損失は、36億円となりました。前連結会計年度は、営業利益14億円でありました。
〇 営業外損益
営業外収益は、前期比9.1%増の7億円となりました。これは、持分法による投資利益が増加したことなどによるものであります。
営業外費用は、前期比21.9%減の15億円となりました。これは、持分法による投資損失が減少したことなどによるものであります。
なお、受取利息などの金融収益から、支払利息などの金融費用を差し引いた金融収支は、12億円のマイナスとなり、前連結会計年度から1.8%改善しております。
〇 経常損失
経常損失は、43億円となりました。前連結会計年度は、経常利益2億円でありました。
〇 特別損益
特別利益は、前期比81.1%減の17億円となりました。これは、補償金受入額が減少したことなどによるものであります。
特別損失は、前期比74.4%減の28億円となりました。これは、補償金支払額が減少したことなどによるものであります。
〇 税金等調整前当期純損失
税金等調整前当期純損失は、55億円となりました。前連結会計年度は、税金等調整前当期純損失17億円でありました。
〇 親会社株主に帰属する当期純損失
親会社株主に帰属する当期純損失は、営業利益の減少などにより、40億円となりました。(前期は親会社株主に帰属する当期純損失14億円)1株当たり当期純損失は、前連結会計年度の3,760.14円の1株当たり当期純損失に対し、当連結会計年度は10,785.41円となりました。また、当連結会計年度の営業収益に対する親会社株主に帰属する当期純損失の比率は、前連結会計年度の△0.8%に対し、当連結会計年度は△2.2%となりました。
b 財政状態
当連結会計年度末の資産残高は前連結会計年度に比べ43億円増の4,369億円、負債残高は前連結会計年度に比べ84億円増の3,408億円、純資産額は前連結会計年度に比べ41億円減の960億円となりました。
鉄道ロジスティクス事業においては、東京レールゲートEASTの建設ほか、繰延税金資産の増加などにより、当連結会計年度末の資産残高は3,650億円となりました。
不動産事業においては、フレシア経堂等建物取得を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は476億円となりました。
その他の事業においては、大きな投資は行っておらず、当連結会計年度末の資産残高は183億円となりました。
c キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
〇 キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度より6億円少ない191億円の流入となりました。これは、税金等調整前当期純損失が増加したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度より7億円少ない335億円の流出となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものであります。
なお、設備投資については、鉄道ロジスティクス事業に関して、車両の新造、コンテナの新製、東京レールゲートEASTの投資などについて実施しました。
また、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度より0億円少ない、144億円の流出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度より125億円少ない64億円の流入となりました。これは、前年度の社債の発行による収入などによるものであります。なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の321億円から80億円減少し、241億円となりました。
〇 財務政策
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、シンジケート・ローンを含む銀行借入ならびに社債等により、既存債務の返済資金や設備投資資金等の必要資金を調達しております。財務政策の方針は、市場動向等を勘案しながら低利かつ中長期的にわたり安定的な資金調達を行うことであります。弁済期限が1年を超える資金を借り入れる際は、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和61年法律第88号)の第五条に基づき、国土交通大臣の認可を得て実行しています。
なお、運転資金の効率的な調達のため、当座貸越枠を設定しているほか、大規模災害発生時の資金面の備えとして、震災・大雨・噴火対応型のコミットメントライン契約(契約枠210億円)を締結しております。