E00143 Japan GAAP
当第3四半期連結累計期間における世界経済は、物価上昇率が一時より低下するものの、世界的なインフレ圧力により各国が金融引き締め政策を継続し、物価情勢及び国際金融資本市場の動向、ならびに地政学リスクが資源価格等に与える影響に注視が必要な状況が続きました。そのような中、アメリカをはじめとする一部の国では、個人消費や雇用者数が増加する等、景気回復の動きもみられました。
住宅市場は、国内の新設住宅着工戸数がアフターコロナの消費行動の変化や建設コスト増の影響もあり全体としては弱含んでいるものの、賃貸住宅については底堅い状況が続いています。アメリカでは、新築住宅の需要は引き続き強いものの、住宅ローン金利の上昇と住宅価格の高騰等が需要に及ぼす影響に注視が必要な状況が継続しています。
このような事業環境の中、当社グループは、2050年を見据えたグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現に向け、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)に基づき、ハード・ソフト・サービスを融合した様々な高付加価値提案等を積極的に推進しました。
当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高は2,189,508百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益は186,688百万円(前年同期比7.8%減)、経常利益は186,659百万円(前年同期比7.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は141,889百万円(前年同期比5.3%減)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
なお、2024年1月期第1四半期連結会計期間より、報告セグメントの区分を変更しており、当第3四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。
(戸建住宅事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は342,144百万円(前年同期比2.7%減)、営業利益は26,312百万円(前年同期比12.6%減)となり、前期から続く資材価格高騰の影響を受けました。
価格レンジ別戦略の深化による戸建住宅ブランドの強化を図るべく、1stレンジ商品である「積水ハウス ノイエ」の販売を推進するとともに、2nd・3rdレンジの中高級商品・高価格商品の拡販に注力し、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)「グリーンファースト ゼロ」をはじめ、大空間リビング「ファミリー スイート」、次世代室内環境システム「スマート イクス」や間取り連動スマートホームサービス「PLATFORM HOUSE touch」等の高付加価値提案が好評で、受注は底堅く推移しました。
また、良質な住宅ストックに“愛着”を編み込むことで、人生100年時代の「幸せ住まい」を提供するべく、お客様の“感性”を住まいに映し出す新デザイン提案システム「life knit design」を全国展開するとともに、国内の良質な住宅ストック形成に貢献するため、創業以来培ってきた積水ハウスの安全・安心の耐震技術を世の中に広く開放し、地域のパートナー企業が建築する木造住宅の基礎と構造躯体の施工を積水ハウス建設が請け負い、外装と内装については、主にパートナー企業が担う、業界初となる共同建築事業「SI※事業」を新たに開始しました。
※SI(エス・アイ):S=スケルトン(建物の構造躯体)とI=インフィル(外装・内装)のこと
(賃貸・事業用建物事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は390,460百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益は57,984百万円(前年同期比5.5%増)となりました。
エリア戦略に基づく高付加価値物件を供給し、シャーメゾンブランドの更なる向上を図るべく、当社オリジナル構法を用いた3・4階建て賃貸住宅の拡販、ネット・ゼロ・エネルギーの賃貸住宅「シャーメゾンZEH」の普及に注力しました。「シャーメゾンZEH」は、太陽光発電の電力を各戸に配分することで、入居者がメリットを実感できる光熱費の節約やエシカル志向への対応を考慮した入居者売電方式が好評で、賃貸住宅受注に占めるZEH住戸割合は75%となりました。
これらの高付加価値提案に加え、高い入居率と賃料水準を実現する都市部を中心としたプライスリーダー戦略が奏功し、CRE(法人)・PRE(公共団体)事業も含め受注は好調に推移しました。
(建築・土木事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は189,308百万円(前年同期比3.0%減)、営業利益は8,598百万円(前年同期比0.9%増)となりました。
建築事業において追加変更工事の獲得等により採算性が改善するとともに、民間における設備投資意欲が持ち直すなか建築・土木事業ともに受注は改善傾向で推移しました。
(賃貸住宅管理事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は482,604百万円(前年同期比4.5%増)、営業利益は38,046百万円(前年同期比4.8%増)となりました。
好立地に建築した高品質・高性能な賃貸住宅「シャーメゾン」の供給により管理受託戸数が堅調に増加しました。オーナーの資産価値の最大化に向けた多様なソリューション提案とリレーション強化、入居者に向けたブロックチェーンを用いた入居手続きのワンストップ対応等、充実したサービスの提供により高水準の入居率と賃料を維持し、増収に寄与しました。
(リフォーム事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は125,813百万円(前年同期比5.7%増)、営業利益は16,070百万円(前年同期比9.0%増)となり、前期の好調な受注および順調な工事進捗が増収に寄与しました。
住宅ストックの資産価値向上と長寿命化を図るべく、戸建住宅では、住まい方をアップデートするリノベーション提案等の提案型リフォーム、断熱改修や最新の省エネ・創エネ・蓄エネ設備等を導入する環境型リフォームに注力しました。また、賃貸住宅では、資産価値を向上させ、賃料の上昇と高入居率の維持を実現するリノベーション提案に注力しています。これらの取り組みにより、受注は好調に推移しました。
(開発事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は347,094百万円(前年同期比14.0%増)、営業利益は42,920百万円(前年同期比37.7%増)となりました。当事業に集約された仲介・不動産事業、マンション事業、都市再開発事業の経営成績は次のとおりです。
[仲介・不動産事業]
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は199,192百万円(前年同期比23.1%増)、営業利益は18,651百万円(前年同期比37.8%増)となり、積水ハウス不動産各社における販売用不動産の売却が順調に進捗し増収に寄与しました。
また、情報ルートの強化により顧客からの引合い増加に注力するとともにエリアマーケティングに沿った優良な住宅用地の積極仕入れ、土地取得から検討中の顧客への拡販に注力した結果、受注は好調に推移しました。
[マンション事業]
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は59,806百万円(前年同期比5.7%減)、営業利益は9,022百万円(前年同期比17.8%減)となりました。
引渡時期の違い等により減収となるも、「グランドメゾン白金高輪パークフロント」(東京都港区)、「グランドメゾン大濠公園THE TOWER」(福岡市中央区)の引渡しが順調に進む等、計画通りに進捗しました。
また、東京・名古屋・大阪・福岡の商圏において展開する高付加価値の分譲マンション「グランドメゾン」については、ブランドの更なる向上を図るべく開発用地を厳選するとともに、家庭部門の脱炭素化への貢献を目指して2023年以降に販売する物件を全住戸ZEH仕様としています。これらの取り組みが評価され、「グランドメゾン代官山 THE PARK」(東京都渋谷区)が完売したほか、「グランドメゾン北堀江レジデンス」(大阪市西区)等の販売が好調に推移しました。
[都市再開発事業]
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は88,095百万円(前年同期比11.3%増)、営業利益は15,245百万円(前年同期比128.4%増)となりました。
計画に沿い物件売却が順調に進捗したことにより、増収となりました。また、当社が開発した賃貸住宅「プライムメゾン」等の当社グループ保有物件の入居率は堅調に推移するとともに、ホテル物件の運営状況についても都市型ホテルを中心に改善傾向で進捗しました。
(国際事業)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は332,581百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益は33,311百万円(前年同期比45.5%減)となりました。
アメリカでは、戸建住宅事業及びコミュニティ開発事業において、前期における住宅ローン金利の急激な上昇に伴い受注残高が減少した影響を受けましたが、高品質な新築住宅等へのニーズは高く受注は回復傾向で推移しました。加えて、米国子会社であるWoodside Homes Company, LLCは、住宅販売エリアを拡大し積水ハウステクノロジーの更なる展開を進めるべく、アイダホ州の住宅販売会社であるHubble Group, LLCの持分を取得しました。また、賃貸住宅開発事業において、「St.Andrews」(ロサンゼルス)の引渡しが計画通りに完了しました。
オーストラリアでは、戸建住宅事業の販売戸数減少等はあったものの、マンション開発事業において「West Village」(ブリスベン)の商業棟の一部、「Melrose Park」(シドニー)のマンションの引渡しに加え、計画していた開発物件の引渡しが順調に進捗しました。
(その他)
当事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は9,240百万円(前年同期比35.3%増)、営業利益は1,641百万円(前年同期比5.8%減)となりました。
ESG経営のリーディングカンパニーを目指す当社グループは、第6次中期経営計画において「住まいを通じて環境課題の解決に貢献」「従業員の自律を成長ドライバーにする」「イノベーション&コミュニケーション」を基本方針とし、積水ハウスグループらしい「全従業員参画型ESG経営」を推進しています。
環境面では、新築戸建住宅ZEH比率が93%(2022年度)と過去最高を更新するとともに、賃貸住宅「シャーメゾン」や分譲マンション「グランドメゾン」等の集合住宅においてもZEHを推進しました。さらに、2025年夏の実用化に向け、自宅で水素を製造・貯蔵・使用し、ゼロカーボンを実現する住宅メーカー初(当社調べ)の水素住宅の実証実験を開始しました。また、当社の温室効果ガスの削減目標の一つである事業活動におけるCO₂排出量の75%削減の早期実現を目指し、当社グループの業務用車両にCO₂排出ゼロの電動車の導入を開始しました。住宅事業を通じた生物多様性保全に向けた取り組みとしては、戸建住宅、賃貸住宅等において、住宅と外構との一体提案を強化するとともに、地域の気候風土・鳥や蝶等と相性の良い在来樹種を中心とした植栽を提案する造園緑化事業「5本の樹」計画や株式会社シンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータ・AIを活用して、「生物多様性の純増と算出方法の標準化」を目指し、同社と共同で推進する連携協定を締結しました。
社会性向上に関しては、「社員の健康をつうじた日本企業の活性化と健保の持続可能性の実現」というビジョンに共感する企業・団体により設立された健康経営アライアンスに参画する等、グローバルビジョンの“「わが家」を世界一幸せな場所にする”を実現するため、「まず従業員が幸せでなければならない」という考えのもと「幸せ健康経営」を進めています。重要な経営戦略の1つである「女性活躍の推進」においては、2014年から開始している女性管理職候補者研修「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」やキャリア形成の手本となるロールモデルづくりを継続・推進しました(2023年1月末現在女性管理職人数302人)。2018年から開始している3歳未満の子を持つ男性従業員を対象とした男性育児休業制度(2023年1月末現在対象者1,571人)については、当社グループ全体で1ヵ月以上の取得率100%を継続するとともに、男性育休取得推進に賛同する企業・団体と共に男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU.PJT」を実施しています。また、積水ハウス建設グループにおいては、新たな人事評価制度を導入する等、建設現場での高齢化や若年就業者の減少等の社会的な問題に対応し、良質な住宅ストックの形成に向けた担い手や地方の雇用の創出に貢献すべく、住宅技能工の育成と採用を大幅に強化することとしました。
ガバナンス面では、トップマネジメント・事業マネジメント両輪での効果を推進する第6次中期経営計画の方針に則り、第三者機関による実効性評価を踏まえた取締役会の機能向上や情報開示の更なるレベルアップに取り組むとともに、成長著しいアメリカ事業等におけるグループガバナンスのグローバル展開を進めています。8月1日からは、人権及びコンプライアンスのグローバル展開を促進する観点から、専任組織を明確化すべく、当社法務部のヒューマンリレーション室を「人権・コンプライアンス推進室」に名称変更しました。また、積水ハウスグループのコアコンピタンスの一つである「施工力」の充実・拡大を図るべく、2024年2月1日(予定)を期して積水ハウス建設グループを中間持株会社体制へ移行する方針を決定しました。事業領域拡大も見据え、積水ハウス建設各社の地域密着性を踏まえながら、高品質で安全な建設工事を実現し、機動的な人事制度改革等を実施するとともに、中間持株会社への権限委譲と責任の明確化により、成長戦略の実現とガバナンスの強化を推進していきます。
また、当第3四半期連結会計期間末における資産総額は、販売用不動産の増加等により前連結会計年度末と比較して14.0%増の3,429,634百万円となりました。負債総額は、借入金の増加等により前連結会計年度末と比較して23.9%増の1,660,634百万円となりました。純資産は、配当金の支払いがあったものの、為替換算調整勘定の増加や親会社株主に帰属する四半期純利益を計上したこと等により前連結会計年度末と比較して6.1%増の1,768,999百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間における研究開発費総額は6,613百万円です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
①受注実績
当第3四半期連結累計期間における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
②販売実績
当第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 主な相手先別の販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しました。
※ 第1四半期連結会計期間より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比及び前期末比は、それぞれ前年同期及び前期末の数値をセグメント変更後に組み替えて算出しています。
※ 第2四半期連結会計期間に連結子会社化したHubble Group, LLC及びその子会社について、同社の数値を各指標の「国際事業」に含めて表示しています。