売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E00752 IFRS


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当第3四半期連結累計期間における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。また、当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断および仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(1) 経営成績

当社グループの当第3四半期連結累計期間における売上収益は、前年同四半期連結累計期間(以下「前年同四半期」という。)に比べ4,502億円減少し、1兆8,069億円となりました。損益面では、コア営業損益は1,139億円の損失、営業損益は1,606億円の損失、親会社の所有者に帰属する四半期損益は1,098億円の損失となり、それぞれ前年同四半期を大幅に下回りました。

 

  (売上収益)

医薬品においてラツーダ(非定型抗精神病薬)の独占販売期間終了により販売が減少し、エッセンシャルケミカルズにおいては原料価格の下落に伴い市況が低水準で推移し、さらに石油化学品の需要減少等により出荷も減少しました。健康・農業関連事業においては南米での農薬の高騰売価が落ち着いたことに加え、流通在庫の増加の影響により出荷が減少しました。また、メチオニン(飼料添加物)の市況も下落しました。この結果、売上収益は、前年同四半期の2兆2,570億円に比べ4,502億円減少し、1兆8,069億円となりました。

 

 (コア営業損益/営業損益)

医薬品においてラツーダの独占販売期間終了に伴い販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が上回りました。また、エッセンシャルケミカルズにおいて当社の持分法適用会社であるラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)の業績が悪化したことに加え、健康・農業関連事業においても売上総利益の減少の影響が残りました。この結果、コア営業損益は、前年同四半期の1,422億円の利益に比べ2,560億円悪化し、1,139億円の損失となりました。

コア営業損益の算出にあたり営業損益から控除した、非経常的な要因により発生した損益は、医薬品における北米グループ会社再編に伴う費用の計上や、健康・農業関連事業における減損損失の計上等により、468億円の損失となりました。

以上の結果、営業損益は、前年同四半期の714億円の利益に比べ2,321億円悪化し、1,606億円の損失となりました。

 

 (金融収益及び金融費用/税引前四半期損益)

金融収益及び金融費用は、当第2四半期連結会計期間末から当第3四半期連結会計期間末にかけて為替相場が円高に進んだものの、当第3四半期連結累計期間においては円安方向に推移したため為替差益を計上し、7億円の利益となりましたが、前年同四半期の233億円の利益に比べ227億円減少しました。この結果、税引前四半期損益は、前年同四半期の948億円の利益に比べ2,547億円悪化し、1,600億円の損失となりました。

 

 (法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する四半期損益及び非支配持分に帰属する四半期損益)

法人所得税費用は50億円となり、税引前四半期損益から法人所得税費用を控除した四半期損益は、1,649億円の損失となりました。

非支配持分に帰属する四半期損益は、主として住友ファーマ株式会社等の連結子会社の非支配持分に帰属する四半期損益からなり、前年同四半期の186億円の損失に比べ366億円悪化し、552億円の損失となりました。

以上の結果、親会社の所有者に帰属する四半期損益は、前年同四半期の603億円の利益に比べ1,701億円悪化し、1,098億円の損失となりました。

 

当第3四半期連結累計期間のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。

なお、セグメント損益は、持分法による投資損益を含む営業損益から非経常的な要因により発生した損益を控除した経常的な収益力を表す損益概念であります。

 

(エッセンシャルケミカルズ)

合成樹脂やメタアクリル、各種工業薬品等は原料価格の下落により、市況が低水準で推移しました。また、世界的な景気減退に伴う石油化学品の需要減少や合繊原料の事業撤退等により、出荷が減少しました。この結果、売上収益は前年同四半期に比べ、788億円減少し5,967億円となりました。コア営業損益は市況の下落や出荷数量の減少に加え、ペトロ・ラービグ社の業績が悪化したことにより、前年同四半期に比べ、600億円悪化し620億円の損失となりました。

 

(エネルギー・機能材料)

アルミニウムの市況や正極材料の原料貴金属の市況が低水準で推移しました。また、自動車関連用途を中心に出荷は低調となりました。この結果、売上収益は前年同四半期に比べ、318億円減少し2,253億円となり、コア営業利益は前年同四半期に比べ、75億円減少し94億円となりました。

 

(情報電子化学)

ディスプレイ関連材料、半導体プロセス材料である高純度ケミカルやフォトレジストのいずれも、インフレ懸念に伴う消費マインドの悪化等により出荷が減少しました。この結果、売上収益は前年同四半期に比べ、275億円減少し3,111億円となり、コア営業利益は前年同四半期に比べ、69億円減少し368億円となりました。

 

(健康・農業関連事業)

農薬は南米におけるジェネリック品の高騰売価が落ち着いたことや流通在庫の増加の影響により出荷が減少したため、販売が減少しました。また、メチオニンの市況は前年同四半期に比べ下落しました。この結果、売上収益は前年同四半期に比べ、722億円減少し3,670億円となりました。コア営業損益は農薬において南米等で需要が弱含む中、在庫の削減に努めたほか、メチオニンの交易条件の悪化等により、前年同四半期に比べ、485億円悪化し14億円の損失となりました。

 

(医薬品)

北米ではオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)等の売上は増加しましたが、ラツーダの米国での独占販売期間が終了した影響が大きく、減収となりました。また、日本では国内の連結子会社2社の全株式を譲渡したことに伴い、減収となりました。この結果、売上収益は前年同四半期に比べ、2,261億円減少し2,564億円となりました。コア営業損益はラツーダの独占販売期間終了および北米グループ会社の再編等に伴い、販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、前年同四半期に比べ1,387億円悪化し956億円の損失となりました。

 

(その他)

上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前年同四半期に比べ、137億円減少し504億円となり、コア営業利益は前年同四半期に比べ6億円増加し83億円となりました。

 

(2) 財政状態

当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ541億円増加し、4兆2,197億円となりました。有形固定資産やのれん及び無形資産が増加しました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ911億円増加し、2兆7,674億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ2,045億円増加し、1兆6,658億円となりました。

資本合計(非支配持分を含む)は、円安により在外子会社に係る邦貨換算差額が増加しましたが、四半期損失計上の影響が大きく、前連結会計年度末に比べ369億円減少し、1兆4,523億円となりました。

親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて0.6ポイント減少し、27.5%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期損益悪化の影響が大きく、前年同四半期に比べ2,353億円減少し、1,350億円の支出となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同四半期は貸付金の回収による収入があったこと等により前年同四半期に比べ795億円減少し、778億円の支出となりました。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前年同四半期の1,020億円の収入に対して、当第3四半期連結累計期間は2,128億円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の増加等により、1,611億円の収入となりました。

以上の結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物の四半期末残高は、売却目的で保有する資産への振替額を加味した前連結会計年度末に比べ297億円減少し、2,762億円となりました。

 

(4) 経営方針・経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

 

(6) 研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は1,345億円であります。

また、当第3四半期連結累計期間における、当社グループの研究開発活動の状況の変更の内容は、次のとおりであります。

 

エネルギー・機能材料)

 世界に先駆けて超微粒αアルミナの量産技術の開発に成功し、愛媛工場(愛媛県新居浜市)に新設した製造設備で、2023年9月から量産を開始しました。今回量産を開始するのは、主に工業製品に用いられるαアルミナの超微粒グレード「NXAシリーズ」で、粒子径が150nm(0.15μm)以下の均質な超微粒子という特徴を有しております。粒度が比較的大きい当社製品と比較すると、およそ200分の1のサイズとなります。新グレードは、次世代半導体向けの研磨材用途のほか、超微細な粒子で焼結させやすい特長により、高強度・耐薬品性が必要な半導体製造装置用部材等の先端分野や、高強度・審美性が求められる人工関節や歯科材料といったライフサイエンス分野等、新たな領域での利用が見込まれております。

 

(健康・農業関連事業)

 2023年4月、日本において、有効成分アブシシン酸(一般名)を含有する天然物由来の植物成長調整剤「アブサップ液剤」を上市しました。「アブサップ液剤」は、当社がグローバル展開を進めるバイオラショナル製品の1つで、巨峰・ピオーネという日本を代表する黒系ブドウ品種に対して果房へ直接散布することで効率的に果皮の着色を促進します。

 

(医薬品)

 精神神経領域では、2023年6月、日本において、株式会社ヘリオスと共同開発中の他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞(開発コード:HLCR011)について、網膜色素上皮裂孔を対象としたフェーズ1/2試験を開始しました。また、2023年7月、米国において、大塚製薬株式会社と共同で開発中のウロタロント塩酸塩(開発コード:SEP-363856)の急性期の統合失調症患者を対象とした2本のフェーズ3試験のいずれにおいても主要評価項目を達成しなかったという解析結果の速報を得ました。更に詳細なデータ解析を続けており、統合失調症の今後の開発方針は大塚製薬株式会社と検討中であります。2023年10月、米国および日本において、大塚製薬株式会社と共同で開発中のSEP-4199(開発コード)の双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験において被験者登録の進捗の大幅な遅れにより試験の中止を決定しました。また、2023年11月、米国において、カリフォルニア大学サンディエゴ校が、当社の連結子会社である住友ファーマ株式会社が製造するiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験(フェーズ1/2試験)を開始しました。

 その他の領域では、2023年9月、米国で販売中の過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)について、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱(OAB)を対象としたフェーズ3試験において主要評価項目を達成しました。また、2023年11月、中国において、市中肺炎治療剤「XENLETA」(一般名:lefamulin acetate)について承認を取得しました。

 

全社共通およびその他の研究分野

 当社の定める重点4分野のうち環境分野において、新エネルギー・産業技術総合開発機構のグリーンイノベーション(GI)基金事業の助成を受けている開発案件のうち、CO2からメタノールを高効率に製造する実証パイロット設備を愛媛工場(愛媛県新居浜市)に新設し、2023年12月より運転を開始しました。本技術は、国立大学法人島根大学と共同開発を進めてきた内部凝縮型反応器(Internal Condensation Reactor)により、従来技術の課題を解決したものになります。2028年までには実証を完了し、2030年代の事業化、および、他社へのライセンス供与を目指してまいります。