E00792 IFRS
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。
(1) 財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、有形固定資産及びその他の金融資産の増加などにより前連結会計年度末に比べて1,008億6千8百万円増加し、1兆1,925億1千4百万円となりました。負債は、社債及び借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べて683億6千3百万円増加し、7,135億2千6百万円となりました。資本は、親会社の所有者に帰属する四半期利益の積み上げ及びその他の資本の構成要素の増加などにより前連結会計年度末に比べて325億5百万円増加し、4,789億8千7百万円となりました。
なお、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,892.36円から2,017.53円に増加し、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の39.4%から38.6%となりました。
(2) 経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における我が国経済は、新型コロナウイルス禍から社会経済活動の正常化が進み、製造業では関連産業の裾野が広い自動車生産が回復したことに加え、省力化や脱炭素化などに伴う設備投資も底堅く推移するなど、総じて回復基調で推移しました。しかしながら、中国の景気減速を背景とする海外経済の下振れリスクや、中東地域での紛争激化に伴う地政学リスクの高まりなど、依然として先行き不透明な状況が継続しました。
このような経営環境の下、当社グループは、ユニット制を基軸としたグループ一体経営によって、国内既存事業の収益力を強化する一方、今後の成長領域である海外での産業ガス事業の基盤構築と、社会課題解決に貢献するカーボンニュートラル及びアグリ関連の新事業創出に向けた取り組みを加速しました。
国内既存事業では、グループ会社の統合再編を継続し、各事業ユニットで自律的な成長を果たす「中核会社」の形成を進めました。また、製品・サービスの価値に見合った利益水準を確保するための価格マネジメントを徹底するとともに、事業の総点検を通じて、生産性の向上や低採算案件の見直しをはじめとした収益強化策に取り組みました。
海外事業では、重点戦略エリアである北米とインドにおいて、積極的な投資を実行し、産業ガス事業のインフラを拡充しました。北米では、複数のガスディーラーを買収するとともに、ニューヨーク州で北米初の製造拠点となる大型ガスプラント建設に着手したほか、ヘリウム事業にも参入しました。インドでは、新たに国営鉄鋼公社であるSAIL(Steel Authority of India Limited)社の製鉄所向けオンサイトガス供給案件を受注したほか、インド南部での液化ガス製造拠点や北部でのガス充填拠点の建設が計画どおり進展しました。
社会課題解決を通じた新事業の創出では、カーボンニュートラル社会の実現に向け、ガス精製・分離技術と北海道の事業基盤を活用し、LNGの代替燃料となる家畜ふん尿を原料とした「バイオメタン」のサプライチェーン構築に取り組みました。また、CO2回収・再利用、低炭素水素、アンモニアといった多様な脱炭素需要を見据え、全社横断的な事業推進体制の構築を進めました。
アグリ関連では、食料安全保障や食料自給率の向上が社会課題となる中、農産・加工分野において、北海道の事業体制を再構築するとともに、業界大手企業2社との資本業務提携による新たな青果流通加工事業の構築に注力しました。また、全事業の基盤であり、シナジーの源泉となるガス技術に特化した「ガス技術開発センター」を新設し、農産物の鮮度保持や輸送にガス技術を活用する実証を進めました。
当第3四半期連結累計期間の業績といたしましては、各種コストの上昇に対応した収益構造の改善が進展したことで、半導体市場の低迷や中国における景気減速などのマイナス影響を補い、大幅な増益となった第2四半期からさらに伸長し、順調に推移しました。
特に、前年度よりコストが高騰した産業ガスや業務用塩において、生産・物流面の効率化をはじめとしたコスト低減と価格改定の効果が発現したことに加え、グローバル&エンジニアリング事業においても、需要が旺盛な液化水素タンクや大型データセンターの新規プロジェクトを受注したことなどにより、拡大基調が続きました。さらに、アグリ&フーズにおける飲料事業の伸長や青果卸売事業の新規連結効果なども寄与しました。また、前年度の業績に大きな影響を与えた木質バイオマス発電事業も発電燃料の海上輸送コストが低下したことから大幅に回復しました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における当社グループの売上収益は7,446億6千8百万円(前年同期比102.7%)、営業利益は498億3千2百万円(同120.3%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、310億4千6百万円(同117.2%)となりました。
各セグメントの概況は次のとおりであります。
第1四半期連結会計期間より、従来「デジタル&インダストリー」に区分していた国内のエンジニアリング事業及び海外エンジニアリング(インド産業ガス等)事業を「その他の事業」に、「エネルギーソリューション」に区分していた炭酸ガス・水素事業を「デジタル&インダストリー」に移しました。
なお、前第3四半期連結累計期間のセグメント情報は、変更後の報告セグメント区分に基づき作成したものを開示しております。
<デジタル&インダストリー>
当セグメントの売上収益は2,515億6千1百万円(前年同期比102.1%)、営業利益は227億3千5百万円(同120.6%)となりました。
事業全体では、機能材料事業が半導体市況の低迷等による影響を受けましたが、産業ガスを中心とした価格改定に加え、業務効率化や生産性向上に取り組んだことで、国内産業ガスの需要が総じて弱含みで推移する環境下にあっても収益力が大きく向上しました。
インダストリアルガス事業は、国内産業ガスの需要が全般的に弱含みで推移する中、エネルギーコストなどの上昇に対応し、物流の効率化やコスト削減等に取り組むとともに、産業ガスの価格改定が継続して進捗したことや新たな取引先の獲得が進展したことにより、好調に推移しました。また、炭酸ガス供給においても前年度から影響があった原料ガス不足が第2四半期から改善し、回復基調で推移しました。
エレクトロニクス事業は、半導体市況の低迷による在庫調整等の影響を受け、ガス関連装置や半導体製造装置向け熱制御関連機器の販売が低調となりましたが、大手半導体工場向けのオンサイトガス供給が一定の稼働率を維持するとともに、大手半導体工場の新増設を背景に、高純度薬品や塗布材料、特殊ケミカル供給機器などの販売が拡大し、その影響を補った結果、堅調に推移しました。
機能材料事業は、精密研磨パッドをはじめとした半導体関連製品が市況低迷の影響を受けたことに加え、中国の景気減速を背景に農薬向けナフトキノンの販売が低調に推移し、厳しい状況となりました。
<エネルギーソリューション>
当セグメントの売上収益は428億6千9百万円(前年同期比94.7%)、営業利益は15億6千7百万円(同73.9%)となりました。
エネルギー事業は、工業用の顧客に対する燃料転換が進んだことで、LPガスの販売数量は増加しましたが、輸入価格に連動して販売単価の下落が続き、売上収益が減少しました。また、利益面においては、年度前半に発生したLPガスの在庫評価による影響が残ったことに加え、第3四半期が暖冬となった影響からLPガスに付帯して家庭に配送する灯油の販売が低調に推移したことで、前年同期を下回りました。一方、低・脱炭素需要が高まる中、LNGタンクローリーや小型LNGサテライト設備の販売が順調に推移しました。
グリーンイノベーション事業は、脱炭素社会の実現に貢献する新事業の創出に向けて、小型CO2回収装置「ReCO2 STATION」やLNG代替燃料として利用可能なクリーンエネルギーである「液化バイオメタン」の各種実証を進めました。
<ヘルス&セーフティー>
当セグメントの売上収益は1,657億3千1百万円(前年同期比98.1%)、営業利益は89億6千7百万円(同92.4%)となりました。
事業全体では、防災事業が総じて堅調に推移するとともに、各事業領域で生産の合理化や価格改定を実施したことで原材料や人件費の上昇による影響を補いました。一方、新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴い、酸素濃縮装置のリース契約終了や感染管理製品の需要が減少した影響を受け、前年同期を下回りました。
メディカルプロダクツ事業は、医療ガス分野において価格改定や低採算案件の見直しにより収益性が向上したほか、一酸化窒素吸入療法の症例数が順調に拡大しましたが、酸素濃縮装置の自治体向けリース契約が前年度末に終了した影響を受け、前年同期を下回りました。
防災事業は、工事部材費や人件費上昇の影響を受けたものの、病院のリニューアル工事やデータセンター向けのガス消火設備工事が堅調に推移するとともに、シンガポールの病院設備工事も拡大基調で推移しました。
サービス事業は、病院の経営効率を高める施策の提案を通じて新規顧客の獲得を進めましたが、SPD(病院物品物流管理)の新規受注に伴う立上げコストが発生したほか、一部の大型病院との契約が終了した影響を受けました。
コンシューマーヘルス事業は、エアゾール分野において化粧品メーカーへの積極的な提案営業により液体充填品の受託製造が伸長しましたが、衛生材料分野において前年同期に計上した負ののれん発生益の反動減があったほか、マスクや手指消毒剤などの感染管理製品やワクチン針の需要が減少した影響を受けました。
<アグリ&フーズ>
当セグメントの売上収益は1,250億2千万円(前年同期比107.7%)、営業利益は66億6千8百万円(同128.1%)となりました。
事業全体では、価格改定や生産効率の改善を通じて収益力が向上しました。また、飲料の製造受託量が増加するとともに、青果小売分野の拡大やM&Aに伴う新規連結効果により、好調に推移しました。
フーズ事業は、ハム・デリカ分野において、コンビニエンスストア向け総菜などの新規採用が進みましたが、価格改定により一部製品で需要減退の影響があったほか、スイーツ分野において第1四半期を中心に発生した鶏卵不足の影響が残り、前年同期をわずかに下回りました。
ナチュラルフーズ事業は、飲料充填ラインの増強投資や自社ブランド商品の拡充とともに、得意とする野菜・果実系飲料を中心とした紙パックや大口顧客向けのペットボトル飲料などの飲料受託製造が拡大し、好調に推移しました。
アグリ事業は、北海道を中心とする農産・加工分野において農産品の生育不良や不安定な相場が継続しましたが、青果小売分野においてコロナ禍の収束により全国的に客足が回復したことに加え、農産物直売所の新規出店効果もあり、順調に推移しました。また、第3四半期より九州で青果仲卸事業を展開する丸進青果㈱を新規連結しました。
<その他の事業>
当セグメントの売上収益は1,594億8千6百万円(前年同期比107.7%)、営業利益は81億3千6百万円(同223.4%)となりました。
物流事業は、自社低温物流ネットワークの拡充による新規荷主の獲得と、人件費やエネルギーコストの上昇に対応した価格改定を進めました。しかしながら、前年同期に好調だった感染性廃棄物の取扱量が減少したほか、新たに建設した低温物流センターが本格稼働するまでのコスト影響を受け、前年同期を下回りました。
㈱日本海水は、石炭価格や資材価格などの上昇に対応するため、前年度から取り組んできた業務用塩や水酸化マグネシウムの価格改定効果により、好調に推移しました。また、電力分野では、発電燃料の海上輸送コストが下落基調で推移したことに加え、苅田バイオマス発電所(福岡県苅田町)が2023年8月より営業運転を開始したことで、前年同期を上回りました。
グローバル&エンジニアリング事業では、インド産業ガス分野は、旺盛な需要を背景に鉄鋼向けオンサイトガス供給及び外販ガス供給ともに、堅調に推移しました。北米産業ガス分野は、脱炭素関連投資の拡大を背景に液化水素タンク等の販売が拡大したほか、米国ニューヨーク州及びアリゾナ州における産業ガスの販売も順調に推移しました。なお、第2四半期にM&Aを実施した北米においてヘリウムガス供給事業を展開するAmerican Gas Products, LLCの新規連結効果は第4四半期に発現する見込みです。高出力UPS(無停電電源装置)分野は、アジアや欧州における工事遅延などの解消に加え、生成AIの利用拡大を背景に市場成長が進む東南アジアにおいて、大型データセンターの新規プロジェクトを受注したことで、好調に推移しました。
電力事業は、発電燃料の海上輸送コストが下落基調で推移したことに加え、荷揚げ港湾施設における滞船緩和施策を進めたことで、前年同期より業績が大きく改善しました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益及び減価償却費などから法人所得税の支払などを差し引いた結果、前第3四半期連結累計期間に比べ134億1千4百万円収入が増加し、493億7千3百万円の収入となりました。
当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出及び投資有価証券の取得による支出が増加したことなどにより、前第3四半期連結累計期間に比べ276億3百万円支出額が増加し、822億9百万円の支出となりました。
当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入が増加したことなどにより、前第3四半期連結累計期間に比べ31億9百万円増加し、283億4千2百万円の収入となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当第3四半期連結会計期間末残高は、前第3四半期連結会計期間末残高に比べ42億8千9百万円減少し、629億1千2百万円となりました。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は35億7千2百万円であります。
(5) 主要な設備
前連結会計年度末において計画中であった重要な設備の新設について、重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設計画は次のとおりであります。