E00808 IFRS
(1) 経営成績
当社グループの当第3四半期連結累計期間における事業環境は、経済活動の正常化に伴う緩やかな回復基調が続く一方で、物価上昇による影響に加え、欧米を中心とした金融引き締めや中国景気の減速による影響等、先行きに対し不透明感のある状況が続いております。
このような状況下、売上収益は3兆2,451億円(前年同期比1,611億円減)となりました。利益面では、コア営業利益は1,839億円(同60億円増)、営業利益は2,125億円(同1,639億円増)、税引前四半期利益は1,918億円(同1,526億円増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,039億円(同869億円増)となりました。
(注) 1 当社グループは、IFRSに基づいて、要約四半期連結財務諸表を作成しております。
2 コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
② 各セグメントの業績
各セグメントの売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
<コア営業利益 増減要因>
(注) その他差には、在庫評価損益の前第3四半期連結累計期間(223億円)と当第3四半期連結累計期間(20億円)の差額△203億円、持分法投資損益の差額△34億円等の金額が含まれております。
当第3四半期連結累計期間におけるセグメント別の業績の概要は、以下のとおりです。
(ポリマーズ&コンパウンズ、フィルムズ&モールディングマテリアルズ、アドバンストソリューションズ)
当セグメントの売上収益は8,734億円(前年同期比593億円減)となり、コア営業利益は173億円(同379億円減)となりました。
ポリマーズ&コンパウンズサブセグメントにおいては、販売価格の是正に加え、為替影響があったものの、バリア包材や塗料・インキ・接着剤用途等の需要が減退したこと等による販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
フィルムズ&モールディングマテリアルズサブセグメントにおいては、販売価格の是正に加え、為替影響があったものの、高機能エンジニアリングプラスチックや炭素繊維を始め、ポリエステルフィルムや食品包装用フィルム等、総じて需要が減退したこと等による販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、販売価格の是正に加え、為替影響があったものの、半導体関連事業を中心に販売数量が減少したことにより、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、販売価格の維持・向上により売買差が改善したものの、総じて需要が減退したことによる減販等により、大幅に減少しました。
当第3四半期連結累計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・電解液事業の拡大に向け、Neogen Chemical Limited(本社:インド・マハラシュトラ州)と、インドにおけるリチウムイオン二次電池(LIB)用電解液の製造技術ライセンス供与に関する契約を2023年4月に締結しました。また、フッ素ケミカルメーカーのKoura社(本社:アメリカ・マサチューセッツ州)と、北米におけるLIB用電解液のサプライチェーン強化などに向けた協業検討を実施する覚書を2023年4月に締結しました。
・負極材事業の拡大に向け、LIB用正極材メーカーの韓国L&F Co., Ltd.(本社:大韓民国テグ市)と、米国FTA締結国におけるLIB用負極材のサプライチェーン強化などに向けた協業検討を実施する覚書を締結しました。
・炭素繊維事業の強化に向け、炭素繊維強化プラスチック製の自動車部材メーカーである持分法適用会社のC.P.C.S.r.l.(本社:イタリア・モデナ市)の全株式を取得することを2023年10月に決定し、2024年1月に完了しました。このたびの全株式取得により、垂直統合したサプライチェーンの強化・拡大を図り、当事業の長期的な成長を加速していきます。
ロ 産業ガスセグメント(産業ガス)
当セグメントの売上収益は9,224億円(前年同期比560億円増)となり、コア営業利益は1,225億円(同382億円増)となりました。
国内外の需要は軟調であったものの、各地域で推進する価格マネジメントや為替影響等により、売上収益は増加しました。コア営業利益は、売上収益の増加に加え、コスト削減の影響等により増加しました。
当第3四半期連結累計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・Terranova nv(本社:ベルギー)とLuminus(本社:ベルギー)とともに、グリーン水素を製造する合弁会社Terranova Hydrogen NV(本社:ベルギー ゼルザーテ)を設立し、グリーン水素製造プラントを建設し、運営します。製造開始は2025年初頭を予定しています。
・1PointFive社(本社:アメリカ)と、同社がテキサス州に建設するDAC(Direct Air Capture)プラント向け酸素供給契約を締結しました。2025年半ばの操業開始を予定しています。
・大陽日酸系統科技股份有限公司(本社:台湾新竹県)に2023年11月に新工場を建設し、エレクトロニクス向け機器事業拡大に向け製作能力を約2倍に増強しました。
当セグメントの売上収益は3,379億円(前年同期比180億円増)となり、コア営業利益は554億円(同354億円増)となりました。
国内医療用医薬品で薬価改定等の影響を受けたものの、重点品・新製品や米国で発売した筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「RADICAVA ORS®」の販売が順調に推移したことにより、売上収益は増加しました。コア営業利益は、売上収益の増加に加え、メディカゴ社の事業撤退に伴う研究開発費等の減少により、増加しました。
当第3四半期連結累計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・エダラボン経口懸濁剤(開発コード:MT-1186)について、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を適応症として、2023年5月にスイス(製品名:「RADICAVA® Oral Suspension」)で承認を取得しました。同剤は、米国・カナダ・日本で既に承認されています。
当セグメントの売上収益は2,071億円(前年同期比290億円減)となり、コア営業利益は3億円の損失(同5億円減)となりました。
MMAモノマー等の市況の下落により、売上収益は減少しました。コア営業利益は、英国のキャッセル工場閉鎖に伴う費用の減少はあるものの、市況の下落による売買差の悪化により、減少しました。
ホ ベーシックマテリアルズセグメント(石化、炭素)
当セグメントの売上収益は7,488億円(前年同期比1,135億円減)となり、コア営業利益は104億円の損失(同281億円減)となりました。
石化サブセグメントにおいては、為替影響があったものの、原料価格の下落等に伴い販売価格が下落したことに加え、需要が減退したこと等による販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
炭素サブセグメントにおいては、原料価格の下落及び需要の低迷に伴いコークスの販売価格が下落したことにより、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、ポリオレフィン等において原料と製品の価格差が拡大したものの、原料価格の下落に伴い在庫評価益が縮小したことに加え、コークス市況の下落等による売買差の悪化や総じて需要の減退等に伴い販売数量が減少したことにより、大幅に減少しました。
当第3四半期連結累計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・LIBや半導体の需要拡大に対応するため、岡山事業所においてγ-ブチロラクトンの生産能力を、現在の18,000t/年から20,000t/年に増強することを決定しました。2024年7月の稼働を予定しています。
・ポートフォリオ改革の一環として、当社グループが保有する高純度テレフタル酸(PTA)事業を行う三菱ケミカルインドネシア社の株式を、PT Lintas Citra Pratamaに譲渡することを2023年12月に決定しました。これに伴い、当社グループの三菱ケミカルインドネシア社の株式保有比率は20%となります。今後段階的に売却し、三菱ケミカルインドネシア社は将来的にPT Lintas Citra Pratamaの100%子会社となる予定です。
ヘ その他
その他セグメントにおいては、売上収益は1,555億円(前年同期比333億円減)となり、コア営業利益は86億円(同16億円減)となりました。
当第3四半期連結累計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・ポートフォリオ改革の一環として、当社グループが保有するクオリカプス株式会社の全株式を、Roquette Frères SA(本社:フランス・レストロン)へ譲渡することで同社と合意し、2023年7月に株式譲渡契約を締結し、同年10月に譲渡を完了しました。
ト グループ全般
当社グループは、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、「One Company, One Team」の考えによるフラットな組織体制への移行を進めています。これに伴い、2023年10月に、当社と三菱ケミカル㈱のシンガポールにおけるそれぞれの子会社を当事者とするグループ内組織再編を行い、分散している管理機能を再編し集約、最適化することにより、経営効率の向上を図ることといたしました。
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、従業員賞与及び法人税等の支払いもありましたが、税引前四半期利益や減価償却費等により2,850億円の収入(前年同期比1,110億円の収入の増加)となりました。
当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の売却による収入や、支配喪失会社からの貸付金の回収による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得1,975億円等により、1,193億円の支出(前年同期比551億円の支出の減少)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、1,657億円の収入(前年同期比1,661億円の収入の増加)となりました。
当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い569億円や、有利子負債の返済による支出310億円等により、1,038億円の支出(前年同期比1,126億円の支出の増加)となりました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間末の現金及び現金同等物残高は前連結会計年度末に比べて696億円増加し、3,668億円となりました。
(注) ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債(*1)/親会社の所有者に帰属する持分
(*1) ネット有利子負債=有利子負債-(現金及び現金同等物+手元資金運用額(*2))
(*2) 手元資金運用額は、当社グループが余剰資金の運用目的で保有する現金同等物以外の譲渡性預金・有価証券等です。
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、円安の進行に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の増加や、有利子負債の借換に伴う一時的な現金及び現金同等物の増加等により、5兆9,846億円(前連結会計年度末比2,103億円増)となりました。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は、有利子負債の借換に伴う一時的な社債及び借入金の増加等により、3兆8,071億円(前連結会計年度末比212億円増)となりました。
なお、当第3四半期連結会計期間末のリース負債を含む有利子負債は、2兆4,139億円(前連結会計年度末比381億円増)となりました。
当第3四半期連結会計期間末の資本合計は、配当による減少がありましたが、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上や、在外営業活動体の換算差額の増加等により、2兆1,775億円(前連結会計年度末比1,891億円増)となりました。
これらの結果、当第3四半期連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は、28.4%(前連結会計年度末比1.3ポイント増)となり、ネットD/Eレシオは、1.20(前連結会計年度末比0.13減)となりました。
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は890億円です。
当第3四半期連結会計期間末の当社従業員数は、前連結会計年度末から73名増加し、503名となりました。これは、当社グループの組織体制の変更によるものです。