E00883 IFRS
当第3四半期連結累計期間における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが当四半期連結会計期間の末日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
注:以下、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。また、数量等には製品構成差を含んでいます。
業績の評価及び、将来の予測に有用な情報を提供するため、非定常的な要因により一時的に発生した損益(事業撤退・縮小や資産の除売却から生じる損益等)を除いた利益を「コア利益」として表示します。なお、下記表内の2023年12月期第3四半期累計期間と増減率の営業利益以下の下段数値は、「コア利益」に基づいて算出しています。
世界は新型コロナウイルス感染症拡大前の状況に戻って来ていますが、成長市場であった中国市場の減速、欧州、中東の地政学リスクやインフレによるコストの高止まりの状況は続いており、経営環境は不透明な状況が続きました。
当社グループの主要市場である日本のコンシューマープロダクツ(トイレタリー及び化粧品)市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると、2023年1月から9月において前年同期を上回りました。
売上高は、前年同期に対して0.2%減の1兆1,259億円(為替2.7%増、実質2.9%減(内訳:数量等2.2%減、価格0.7%減))となりました。営業利益は、構造改革費用を201億円計上したことにより、507億円(対前年同期262億円減)となり、コア営業利益は、計画を上回る708億円(対前年同期61億円減)となりました。税引前四半期利益は546億円(対前年同期305億円減)となりました。四半期利益は345億円(対前年同期249億円減)となりました。コンシューマープロダクツ事業は計画を上回りましたが、ケミカル事業は欧米市場の需要回復が遅れている影響等を受け計画を下回りました。
当第3四半期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。
注:[ ]内は前年同期の換算レート
セグメントの業績
販売実績
(億円、増減率%)
注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。
売上高 対前年同期比分析
注:ケミカル事業の売上高は、セグメント間取引を含んでいます。
売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前年同期の46.5%から45.1%となりました。
コンシューマープロダクツ事業
売上高は、前年同期に対して3.1%増の8,835億円(為替2.0%増、実質1.1%増(内訳:数量等1.5%減、価格2.6%増))となりました。
世界の市場は、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い着実に回復していますが、これまで成長をけん引してきた中国市場は減速しました。また、原材料価格は落ち着きを見せていますが、石化原料等は、中東の地政学リスク等の影響で再び上昇のリスクもあります。このような中、日本を中心に計画通り戦略的値上げの実施、新製品・改良品への投資を進め、その成果が出てきました。
日本の売上高は、前年同期に対して3.0%増の5,666億円となりました。
アジアでは、売上高は3.3%減の1,701億円(実質6.8%減)となりました。
米州の売上高は、10.6%増の919億円(実質3.3%増)となり、欧州の売上高は、13.6%増の549億円(実質4.2%増)となりました。
営業利益は、減損損失を含む構造改革費用201億円の計上の影響等により、315億円(対前年同期181億円減)となりました。コア営業利益は、戦略的値上げの実施により原材料価格の上昇を吸収したこと等により、516億円(対前年同期20億円増)となりました。
当社は、〔ハイジーン&リビングケア事業〕、〔ヘルス&ビューティケア事業〕、〔ライフケア事業〕、〔化粧品事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。
〔ハイジーン&リビングケア事業〕
売上高は、前年同期に対し2.3%増の3,792億円(為替1.2%増、実質1.1%増(内訳:数量等3.5%減、価格4.6%増))となりました。
ファブリックケア製品は、売り上げは前年同期に比べて増加しました。衣料用洗剤で戦略的値上げの実施と新製品・改良品の発売が大きく貢献し、売り上げ、シェアを大きく伸ばしました。柔軟仕上げ剤は、回復の兆しが見えてきました。
ホームケア製品の売り上げは、ほぼ前年同期並みでした。食器用洗剤「キュキュット」は、日本では値上げを実施するとともに改良を実施し売り上げ、シェアを伸ばしました。
サニタリー製品は、前年同期を上回りました。生理用品「ロリエ」は、日本では共感型コミュニケーションによりロイヤルユーザーが増加すること等で前年同期を上回りましたが、中国では販促活動を抑制することになり影響を受けました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、売り上げは前年同期を下回りました。日本、インドネシアでは順調に推移しましたが、中国では市場縮小や厳しい競争環境により売り上げは前年同期を下回りました。
営業利益は、ベビー用紙おむつ事業で減損損失を含む構造改革費用を187億円計上し、52億円(対前年同期137億円減)となりました。コア営業利益は、ファブリック&ホームケア製品で、原材料価格の上昇に対して戦略的値上げを積極的に実施し、利益率は改善してきており239億円(対前年同期49億円増)となりました。
〔ヘルス&ビューティケア事業〕
売上高は、前年同期に対して6.5%増の2,885億円(為替3.4%増、実質3.1%増(内訳:数量等0.9%増、価格2.2%増))となりました。
スキンケア製品は、売り上げは前年同期を上回りました。日本では、「ビオレ」のUVケア製品等のシーズン品やメイク落としの新製品が貢献し、売り上げは市場伸長を上回るとともにシェアも上昇しました。欧米でも、今年度に販売を開始したUVケア製品が計画を上回りました。
ヘアケア製品は、売り上げは前年同期を上回りました。日本では厳しい競争環境の中、「エッセンシャル」の新製品・改良品が順調に推移しました。ヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE」がEコマースを中心に堅調に推移しました。
パーソナルヘルス製品は、売り上げは前年同期を上回りました。新しいマーケティング施策により「めぐりズム」の売り上げは伸長しました。入浴剤は市場が縮小する中、シェアを伸ばしました。
営業利益は、303億円(対前年同期31億円増)となりました。コア営業利益は、306億円(対前年同期33億円増)となりました。
〔ライフケア事業〕
売上高は、前年同期に対して1.2%増の408億円(為替1.7%増、実質0.5%減(内訳:数量等1.8%減、価格1.3%増))となりました。
業務用衛生製品は、売り上げは前年同期を上回りました。日本では、外食産業や宿泊施設等に向けた製品の需要が高まりましたが、消毒剤の市場縮小により売り上げは減少しました。米国では対象業界が伸長し、売り上げは伸長しました。
健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」の売り上げが減少しました。
営業利益は、12億円(対前年同期13億円減)の損失となりました。
〔化粧品事業〕
売上高は、前年同期に対して0.2%減の1,751億円(為替1.4%増、実質1.7%減(内訳:数量等1.2%減、価格0.5%減))となりました。
日本では市場が回復してきた中、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」が前年同期に対して二桁伸長を継続し好調を維持しましたが、韓国のトラベルリテールにおいて代理購買抑制の影響を受けました。また、中国では、KOL(キー・オピニオン・リーダー)の活動自粛や販売促進活動の抑制等により前年同期を下回りました。欧州では、インフレにより消費が冷え込む中、「MOLTON BROWN」の新製品が順調に推移し、売り上げは前年同期を上回りました。
営業利益は、構造改革費用を12億円計上したことにより28億円(対前年同期62億円減)の損失となりました。コア営業利益は、16億円(対前年同期50億円減)の損失となりました。
ケミカル事業
売上高は、前年同期に対して9.5%減の2,750億円(為替4.6%増、実質14.0%減(内訳:数量等4.0%減、価格10.0%減))となりました。
油脂製品では、天然油脂価格の下落に伴う販売価格の改定と海外における顧客の在庫調整の継続が影響し、売り上げは減少しました。
機能材料製品は、コスト増に対する販売価格の改定は寄与していますが、需要の低迷の影響を受けている分野があり、売り上げは前年同期を下回りました。
情報材料製品では、ハードディスクや半導体関連分野の需要の低迷が続いており、売り上げは減少しました。
営業利益は、景気回復の遅れに伴う需要の減少と油脂製品の利幅縮小の影響が続いており、185億円(対前年同期83億円減)となりました。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ243億円増加し、1兆7,506億円となりました。主な増加は、現金及び現金同等物151億円、のれん94億円です。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ39億円減少し、7,270億円となりました。主な増加は、社債及び借入金139億円であり、主な減少は、営業債務及びその他の債務163億円です。
資本合計は、前連結会計年度末に比べ282億円増加し、1兆236億円となりました。主な増加は、在外営業活動体の換算差額598億円、四半期利益345億円であり、主な減少は、配当金702億円です。
なお、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の56.3%から56.8%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,203億円となりました。主な増加は、税引前四半期利益546億円、減価償却費及び償却費670億円、営業債権及びその他の債権の増減額204億円、減損損失184億円、棚卸資産の増減額110億円、主な減少は、営業債務及びその他の債務の増減額283億円、法人所得税等の支払額188億円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、△506億円となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出416億円です。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、697億円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、△709億円となりました。主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金695億円、リース負債の返済による支出161億円です。なお、2023年3月に借入金400億円を返済し、適正な資本コスト率の維持及び成長投資のための財務基盤の強化を目的に、同額の借り入れを行いました。その借り入れのうち200億円については、SPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)の達成状況に応じて金利が変動するサステナビリティ・リンク・ローンを利用しています。また、社債の発行と償還を行い、その内訳は、社債の発行による収入249億円、社債の償還による支出250億円です。発行した社債は、SPTsの達成状況に応じて利率が変動する、サステナビリティ・リンク・ボンドです。
当第3四半期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前連結会計年度末に比べ151億円増加し、2,834億円となりました。
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は、465億円です。
(5)主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、日本でのベビー用紙おむつ事業の生産体制最適化及び中国でのベビー用紙おむつ事業の自工場生産の終了に伴う費用として固定資産の減損損失183億円を計上しております。
詳細については、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表に関する注記事項 8.有形固定資産及びコミットメント」を参照ください。
現時点では、中国での化粧品市場回復の遅れやケミカル事業での欧州を中心とした需要減等のリスクがあります。このような中、好調な日本のトイレタリー市場で、戦略的値上げを積極的に実施するとともに、高付加価値商品の比率アップ及び戦略ブランドへの集中投資を進めます。さらに構造改革を着実に実行していきます。そして、効果的に資本を投下することでEVA(経済的付加価値)を拡大しながら公表数値の達成を目指していきます。
連結業績予想の数値については、2023年11月8日公表の「2023年12月期 第3四半期決算短信」を参照ください。