売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E00987 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日において当社グループが判断したものであります。

(1) 業績の状況

当社は、創薬事業においては、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては、新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため、営業活動に取り組んでおります。

創薬事業においては、がん領域で2つのキナーゼ阻害剤、BTK阻害剤AS-1763とCDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の臨床試験を実施しており、免疫・炎症疾患領域ではBTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の臨床試験を実施中です。また、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤のプログラムについて導出先である米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)が、GS-9911の臨床試験を進めております。住友ファーマ株式会社とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。また、キナーゼ以外を標的としたパイプラインとして当社が創製したSTING(Stimulator of Interferon Genes)アンタゴニストを米国フレッシュ・トラックス・セラピューティクス社(以下「FRTX社」)に導出しておりますが、同社は2023年9月に、2023年11月開催予定の株主総会の決議を条件とする清算・解散計画を発表いたしました。そのため、当該ライセンス契約及び同社が開発中の成果の取扱いにつきましては、協議により決定する予定です。

臨床試験段階にある3つの医薬品候補化合物の開発の進捗状況は以下の通りです。

 

BTK阻害剤AS-1763(対象疾患:血液がん)

AS-1763は、健康成人を対象とした単回投与用量漸増(SAD)パートおよび新製剤を用いたバイオアベイラビリティ(BA)パートをオランダで実施し、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されましたので、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験を開始しています。当該フェーズ1b試験は2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、2022年5月に米国FDA(Food and Drug Administration)から当該試験を米国で実施するために必要な新薬臨床試験開始届(Investigational New Drug (IND) application)の承認を得ています。本試験は、用量漸増パートと拡大パートから構成され、現時点で、6つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。すでに、用量漸増パートの最初の用量群において、3名の患者に投与が開始され、安全性、忍容性が確認されたため、次用量に移行しております。

 

BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)

sofnobrutinibの第1相臨床試験は、オランダで健康成人を対象として2021年中に完了したSAD試験および2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験を実施しました。SAD試験においては、全ての用量でsofnobrutinibの安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されました。また、SAD試験においては簡易製剤を用いましたが、MAD試験では新たに開発した新製剤を用いており、MAD試験はこの新製剤を用いた相対的BAを評価するBAパート、および反復投与時の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学的作用を評価するMADパートで構成されています。BAパートではカプセル製剤および2022年に新たに開発したタブレット型製剤を用いた試験を行い、タブレット型製剤がより良い薬物動態を示したため、2023年1月末から当該タブレット型製剤を用いてMADパートを開始しました。2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化され、これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。

 

CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん)

monzosertibは日本国内で切除不能進行・再発または遠隔転移を伴う固形がん患者を対象とした第1相臨床試験を2021年から実施しています。第1相臨床試験は用量漸増パートおよび拡大パートの2段階に分かれており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、加速漸増デザイン (accelerated titration design)を採用し、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート6(300 mg BID)まで用量漸増しましたが、Grade 2以上の有害事象(AE)が発現したため、試験計画に基づき、加速漸増デザインから3+3デザインに移行しました。その後、同用量において用量制限毒性が3名中2名で発現したため用量を下げて症例を追加しておりました。その結果、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されました。今後は、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更し、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。

 

創薬支援事業では、収益の柱の一つに成長したビオチン化タンパク質の更なる品揃えを積極的に推し進めるとともに、売上が順調に拡大しているNanoBRETサービスの市場への浸透に取り組んでいます。また、プロファイリングサービスにおいては、開発に成功した次世代アッセイ機器を用いたプロファイリングシステムによるサービス開始に向けて順調に準備が進んでいます。さらに、各地域において、技術営業を中心としたきめ細やかな営業により、既存顧客のフォローを行うとともに新規顧客の獲得を目指しています。

当第3四半期連結会計期間においては、既存顧客向けのプロファイリングサービスが米国において好調に推移し、また、タンパク質販売については、急激に売上を伸ばした前年実績には届かなかったものの堅調に推移しました。

以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は711,294千円(前年同四半期比35.1%減)、営業損失は1,201,755千円(前年同四半期は753,705千円の営業損失)、経常損失は1,203,335千円(前年同四半期は735,543千円の経常損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は1,230,344千円(前年同四半期は795,218千円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。

 

セグメント別の業績は次の通りです。

①創薬事業

当第3四半期連結累計期間の創薬事業の売上はなく(前年同四半期は286,045千円)、臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、営業損失は1,420,236千円(前年同四半期は1,089,213千円の損失)となりました。

②創薬支援事業

キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス及びセルベースアッセイサービスの提供等により、創薬支援事業の売上高は711,294千円(前年同四半期比12.1%減)、営業利益は218,480千円(前年同四半期比34.9%減)となりました。売上高の内訳は、国内売上が155,133千円(前年同四半期比0.1%増)、北米地域は357,670千円(前年同四半期比24.6%減)、欧州地域は88,625千円(前年同四半期比74.4%増)、その他地域は109,864千円(前年同四半期比15.2%減)であります。なお、前年度は、米国において、ギリアド社とのライセンス契約に関連し、当社の特定の創薬基盤技術を独占的に供与したことに関連した売上が含まれていたことから、対前年では減収となりました。

 

(2) 財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間末における総資産は4,192,236千円となり、前連結会計年度末と比べて74,217千円減少しました。その内訳は、売掛金の減少52,519千円等であります。
  負債は375,617千円となり、前連結会計年度末と比べて248,991千円減少しました。その内訳は、未払金の減少127,738千円、長期借入金の減少89,991千円等であります。
  純資産は3,816,618千円となり、前連結会計年度末と比べて174,774千円増加しました。その内訳は、株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加1,388,455千円、親会社株主に帰属する四半期純損失1,230,344千円の計上等であります。
  また、自己資本比率は91.0%(前連結会計年度末は85.0%)となりました。

 

(3) 研究開発活動

   当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は1,323,301千円であります。

   また、当第3四半期連結累計期間におけるセグメント別の研究開発費は以下のとおりであります。

創薬事業

1,232,037

千円

創薬支援事業

91,263

千円