売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E27208 Japan GAAP


 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

本文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

 

当第3四半期連結累計期間において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。

開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」について、2023年3月に米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局 (FDA: Food and Drug Administration) に新薬承認申請書 (NDA: New Drug Application) を提出したものの、2023年9月にFDAから審査完了報告通知(CRL: Complete Response Letter)を受領しました。CRLにおいて、非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められており、追加試験を行うことなくデータの再解析によりFDAの指示に対応できるとの判断の下、再解析を進めて2023年内に再申請することを計画しています。「MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても治験許可申請をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ています。また、2023年9月に米国の創薬ベンチャーである Alto Neuroscience, Inc.(カリフォルニア州ロスアルトス、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補に関する提携契約を締結しました。当該医薬品候補について、現在臨床第Ⅰ相試験が実施されており、2024年に様々な精神疾患を対象とした臨床第Ⅱ相試験の開始が計画されています。

当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。

 

 

当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

 

<開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>

ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2022年において約1,700億円(1,272 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、チザニジンを経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。

2017年4月からインドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の100%子会社であるCipla Technologies, LLC(以下「Cipla Tech」)との間で世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結していました。しかし、2020年2月のCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techと協議を続けた結果、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、2023年4月に「ライセンス終了合意契約」を締結し、MRX-4TZTに関する全ての権利が当社に返還されました。

2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了しており、臨床第Ⅱ相試験(痙性麻痺患者を対象とした最長4週間の用量増加試験)の準備を進めています。

 

<開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>

ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2022年において約340億円(264 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。

2023年3月に新薬承認申請書を提出したものの、2023年9月にFDAから審査完了報告通知(CRL)を受領しました。CRLにおいて、非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められており、追加試験を行うことなくデータの再解析によりFDAの指示に対応できるとの判断の下、再解析を進めて2023年内に再申請することを計画しています。

 

<開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)>

フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。

当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。

米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2022年において約190億円(143 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。

 

<開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>

当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。FDAに対して治験前相談(pre IND meeting)を実施し、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができればMRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第2相試験、臨床第3相試験)は必要ないことを確認しています。

2021年11月に治験許可申請(IND)FDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ました。一方で、INDにおけるFDAとのやりとりの中で製剤改良に関する示唆・助言を得ました。FDAからの示唆・助言を反映する形で製剤を改良し一部の非臨床試験を追加実施した上で、臨床試験を開始する計画です。

2022年において米国アルツハイマー治療薬市場は約380億円(294 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約90億円(66 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。

 

<開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>

米国における慢性疼痛市場は2019年時点で約3.5兆円(31.5 billion USドル)であり、変形性関節症疼痛、慢性腰痛等の患者人口の増加等により2027年まで年平均成長率3.4%を記録すると予測されています(出所: Reportocean.com)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。

MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第Ⅰ相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。

 

Altoとの共同開発品>

2023年9月に米国の創薬ベンチャーである Alto Neuroscience, Inc.(カリフォルニア州ロスアルトス、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補に関する提携契約を締結しました。Altoは、患者をより良くより早く治療するために、ターゲットを絞った医薬品の開発を通じてPrecision Psychiatry(精度の高い精神医学)を開拓しています。個々人の生物学的差異は治療効果に影響を及ぼしますが、AltoPrecision Psychiatry PlatformTMは、脳波記録、行動タスクパフォーマンス、ウェアラブルデータ、遺伝的特徴などを解析することにより脳のバイオマーカーを計測して、それぞれの患者に合うAltoの薬を提供することを目指しています。

当該医薬品候補について、現在臨床第Ⅰ相試験が実施されており、2024年に様々な精神疾患を対象とした臨床第Ⅱ相試験の開始が計画されています。

 

<マイクロニードルアレイ>

マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。

臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場について、2020年4月から稼働開始し、2021年1月にはワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心とした設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、2021年8月に株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を、2022年3月にコロンビア大学(米国ニューヨークシティ)と免疫賦活剤および抗がんペプチドとMNを組み合わせた乳がん治療のための共同研究を、2022年10月にVaxSyna Inc.(米国ニューハンプシャー州フランクリン)とヒトパピローマウイルスに対するワクチンとMNを組み合わせた子宮頸がんワクチンに関する共同研究を開始しています。

当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。

 

上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。

 

<上市製品>

当社グループでは、PCL等の製品を提携先の販売会社を通じて販売しており、当第3四半期連結累計期間の製品売上として6百万円を計上しました。

 

これらの結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は29百万円(前年同四半期は9百万円)、研究開発費用とその他経費を合わせた販売費及び一般管理費は697百万円(前年同四半期は628百万円)を計上しました。営業損失は670百万円(前年同四半期は621百万円)、営業外収益として、東かがわ市事業強靭化補助金交付事業に係る助成金収入2百万円、為替差益10百万円等を含め12百万円を計上、営業外費用として、主に第25回新株予約権の発行に係る営業外支払手数料5百万円、株式交付費5百万円等を含め11百万円を計上し、経常損失は668百万円(前年同四半期は636百万円)、特別利益として従業員の退職に伴う新株予約権戻入益0.5百万円により、親会社株主に帰属する四半期純損失は671百万円(前年同期は635百万円)となりました。この結果、1株当たり純損失は20円00銭(前年同期は25円82銭)となりました。

なお、当社は単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

(2) 財政状態の状況

(資産)

当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて871百万円増加し、2,269百万円となりました。これは現金及び預金が872百万円増加したこと等によるものです。

流動資産は1,992百万円となりました。主な内容は、現金及び預金1,866百万円等であります。固定資産は276百万円で、主な内容は建物及び構築物186百万円、長期前払費用43百万円及び差入保証金38百万円等であります。

(負債)

負債は、前連結会計年度末に比べて99百万円減少し、86百万円となりました。これは主に未払金の減少85百万円、未払法人税等の減少15百万円等によるものであります。

流動負債は58百万円となりました。主な内容は未払金51百万円、未払法人税等3百万円であります。固定負債は27百万円となりました。内容は資産除去債務22百万円、繰延税金負債4百万円であります。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べて970百万円増加し、2,182百万円となりました。

これは主に親会社株主に帰属する四半期純損失671百万円により利益剰余金のマイナスが671百万円拡大したこと、第24回及び第25回新株予約権の行使に伴い、資本金及び資本剰余金がそれぞれ820百万円ずつ増加したこと等によるものであります。また、 2023年3月29日開催の第21期定時株主総会において、資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分に関する議案が承認可決され、その後、債権者保護手続きが実施され特に異議が生じなかったため、資本金及び資本剰余金(資本準備金)の額の減少に関する効力が2023年5月8日付で生じました。その結果、資本金及び資本剰余金(資本準備金)がそれぞれ200百万円、1,967百万円減少しており、その合計額2,167百万円を繰越利益剰余金に振り替えることにより欠損てん補を行いましたが、これによる純資産に与える影響はありません。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の82.2%から93.4%となりました。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は519百万円であります。

 

(5) 主要な設備

該当はありません。