売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E27486 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当第3四半期連結累計期間(2023年1月1日から2023年9月30日)において、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しております。

 

1. 創薬開発事業

当社では、創薬開発事業において①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充という3つの事業戦略を進めており、2023年9月30日現在130のプログラムが進行しております(2023年6月末比で3プログラム増加)。

下表では、各創薬アプローチごとのプログラム数を記載しております。

【創薬アプローチごとのプログラム数】

2023年6月末時点

2023年9月末時点

特殊ペプチド医薬品

66

66

低分子医薬品

ペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)

61

64

多機能ペプチド複合体(MPC医薬品)

127

130

 

 

下表では、各研究開発ステージにおけるプログラム数を2023年6月末時点のものと比較しております。

【研究開発ステージごとのプログラム数】

2023年6月末時点

2023年9月末時点

ターゲット検証 - ヒット化合物

14

16

ヒット化合物 - リード化合物(Hit-to-Lead)

70

70

リード化合物 - GLP安全性試験 (Lead-to-GLP-Tox)

29

28

GLP安全性試験 - IND申請(GLP-Tox-to-IND)

9

10

臨床試験 第1相(フェーズ1)

5

6

臨床試験 第2相(フェーズ2)

0

0

臨床試験 第3相(フェーズ3)

0

0

127

130

 

(注)上記のプログラム数は以下のものが含まれます:(1)共同研究開発および自社/戦略的提携における前臨床および臨床段階のすべてのプログラム、(2)PDPSの技術ライセンスにおける臨床段階のプログラム。但し、放射性医薬品事業のプログラムは含んでおりません。

 

下表では、主要なプログラムの開発状況を記載しております。

※画像省略しています。

 

臨床開発ステージのプログラムについて:

1.GhRプログラム:適応症:先端巨大症;モダリティ:ペプチド医薬品;Amolyt Pharma社(以下 Amolyt社)との提携(AZP-3813) 

 AZP-3813は、GhR(成長ホルモン受容体)拮抗作用を示すペプチド医薬品であり、現在第1相臨床試験を実施しております(2023年6月開始)。AZP-3813では、既存薬であるソマトスタチンアナログによる治療で十分な効果が得られない患者さんに対して、同剤との併用を想定した臨床開発が実施される可能性があり、今回の第1相試験では、健常人での単回用量漸増試験および反復用量漸増試験におけるAZP-3813の安全性、忍容性、薬物動態の評価が主たる目的となっております。2024年第1四半期には第1相試験の結果が得られる見通しです。

 

2.PD-L1バイオイメージング剤プログラム:適応症:がんイメージング;モダリティ:RI-PDC(診断薬);Bristol-Myers Squibb社(以下 BMS社)との提携(BMS-986229)
 18F-BMS-986229では、上部消化管がんの診断および経過観察におけるPETイメージング剤としての有用性を確認するための臨床試験が現在実施されております(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04161781、2019年11月より開始、米国Memorial Sloan Kettering Cancer Centerにおいて実施中)。18F-BMS-986229は、がん細胞に発現するPD-L1タンパク質の局在をより鮮明にイメージングできる可能性があり、従来のPET診断(FDG-PET)と比べて、医師がPD-L1阻害剤を用いた治療方針を決定する上でより有用な情報を提供できるものと考えております。

 

3.PD-L1阻害剤プログラム:適応症:がん; モダリティ:ペプチド医薬品;BMS社との提携(今後の開発方針については、本文をご参照下さい)
 特殊環状ペプチドによるPD-L1 (programmed death ligand-1)阻害剤の第1相臨床試験が現在実施されております(ISRCTN17572332、2022年4月より開始、Quotient Sciences社が実施 (コード:QSC203717))。本試験は、136名の健常人を対象に安全性・忍容性・薬物動態を確認することを目的として英国で実施されております。2023年10月26日に発表いたしました通り、BMS社から、他プログラムとの優先順位付けの観点から、現在健常人を対象に実施している第1相試験が完了した後は、第2相試験以降の開発は自社では継続しない旨の通知を受けております。現在実施している第1相試験は2023年11月に終了し、2024年前半には結果がまとめられる見通しです。当社では、BMS社からの結果報告書の内容を確認した上で、今後の別の形での開発継続の可能性について検討していきたいと考えております。 

 

4.CD38-ARM™プログラム:適応症:多発性骨髄腫;モダリティ:MPC医薬品;Biohaven社との提携(BHV-1100)

 BHV-1100 (CD38-ARMTM)では、第1相a/第1相b臨床試験(オープンラベル、単一施設)が現在実施されております(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04634435、2021年10月より開始、米国Dana-Farber Cancer Centerにおいて実施中)。BHV-1100は、多発性骨髄腫細胞に発現するCD38タンパク質をターゲットとしており、自己サイトカイン誘導記憶様(CIML)ナチュラルキラー(NK)細胞、BHV-1100、イムノグロブリンを投与後、低用量のIL-2を投与するという治療で、初回または2回目の再発があり測定可能残存病変が陽性である多発性骨髄腫の患者さんを対象に実施されております。Biohaven社は、2023年3月時点のプレゼンテーション資料において、最初の投与を受けた患者さんが1年以上生存していること、また2名の患者さんがランダム化比較試験に参加していることを報告しております。

 

5.プログラム(非開示):適応症:非開示;モダリティ:ペプチド医薬品;Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A.(以下 MSD社)との提携
 2018年に両社で合意したPDPS(Peptide Discovery Platform System)のライセンス実施許諾契約に基づき、MSD社がPDPSを用いて見出したペプチド医薬品の第1相臨床試験が実施されております(2023年7月開始)。試験の詳細について、現時点では非開示となっております。 

 

6.S2タンパク質阻害剤プログラム:適応症:新型コロナウイルス感染症;モダリティ:ペプチド医薬品;ペプチエイド株式会社(以下 ペプチエイド)で実施中(PA-001)
 PA-001では、2022年8月に報告書が公表された通り、臨床研究法に基づく特定臨床研究により日本人健康成人男性30名に対する探索的な用量漸増単回投与試験が実施されました(dRCTs031210601)。その結果、PA-001投与による有害事象等は確認されず、良好な安全性プロファイルが確認されております。また、PA-001の用量依存的な血中濃度プロファイルの相関を確認する結果が得られております。現在、PA-001については米国FDA(食品医薬品局)へのIND(新薬臨床試験開始届)申請の準備が進められております。 

 

 

1つ目の事業戦略であるPDPSを活用した国内外の製薬企業との創薬共同研究開発については、当第3四半期において、2023年7月には、アステラス製薬と2つの創薬ターゲットに対する新規タンパク質分解誘導剤創出に向けた、共同研究およびライセンス契約を締結いたしました。両社で合意した場合、最大3つの創薬ターゲットの追加が可能となっております。本契約により、当社独自の創薬開発プラットフォーム技術であるPDPSとアステラス製薬の創薬ケイパビリティを融合し、既存の技術では実現が難しかった、多様な標的を対象とする次世代のタンパク質分解誘導剤の創出が可能になるものと期待しております。本共同研究から創出された製品の開発および商業化は、アステラス製薬が担います。当社はアステラス製薬から契約一時金として30億円を受領いたしました。今後は、創薬ターゲットごとに、プログラムの進捗に応じて最大206億円の研究、開発、販売マイルストーンフィー、および上市後の売上高に応じた売上ロイヤルティー(一桁台のパーセント)を受領する権利を有します。

2023年9月には、Genentech社と複数の新たな創薬ターゲットに対するペプチド-放射性核種複合体(RI-PDC)の創製・開発に関する共同研究開発およびライセンス契約を締結いたしました。本契約に基づき、当社は独自の創薬開発プラットフォーム技術であるPDPSを用いて、RI-PDCの創製を目的としてGenentech社が選定する創薬ターゲットに対するペプチド候補化合物の同定・最適化を実施いたします。当社は、RI-PDCの前臨床試験の前半までを実施し、その後はGenentech社が開発および商業化を実施いたします。また、当社は本契約下で創製されるRI-PDCの日本における開発および商業化の権利を有しております。本契約に基づき、当社はGenentech社から契約一時金として40百万ドル(約59億円*)を受領いたしました。今後は、プログラムの進捗に応じて最大10億ドル(約1,477億円*)の開発、承認、販売マイルストーンフィー、および上市後の日本国外(日本国内は当社グループによる販売を想定しております)における正味売上高に応じて段階的に比率が定められた売上ロイヤルティーを受領する権利を有します。
* 1ドル(USD)=147.7円として計算

 

2つ目の事業戦略であるPDPSの技術ライセンスについては、2023年9月30日現在、11社;BMS社(2013年)、Novartis社(2015年)、Eli Lilly社(2016年)、Genentech社(2016年)、塩野義製薬株式会社(2017年)、MSD社(2018年)、ミラバイオロジクス株式会社(2018年)、大鵬薬品工業株式会社(2020年)、Janssen社(2020年)、小野薬品工業株式会社(2021年)、富士レビオ株式会社(2022年)との間で非独占的技術ライセンス契約を締結しております。同事業においては、当社は、各ライセンス先企業から技術ライセンスフィーに加えて開発プログラムの進捗に応じてマイルストーンフィー、および上市後の売上高に応じた売上ロイヤルティを受領する権利を有します。

2023年7月には、MSD社から2018年に両社で合意したPDPSのライセンス実施許諾契約に基づきマイルストーンフィーを受領いたしました。本マイルストーンフィーの受領は、MSD社がPDPSを用いて見出した開発候補化合物(詳細は非開示)の第1相臨床試験の開始によるものです。

なお、マイルストーンを達成するまでの間は、ライセンス先企業での研究内容や進捗について当社に知らされることはございません。また、当社はPDPSの技術ライセンス契約に関心をもつ複数の企業との交渉を継続的に進めております。

 

3つ目の事業戦略は、世界中の高い技術力を有する創薬企業・バイオベンチャー企業及びアカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の推進・拡充を図ることが狙いです。同事業においては、これらのプログラムを少なくともリード化合物/開発候補化合物の選定完了まで、場合によっては第1相臨床試験あるいは第2相臨床試験完了まで自社開発又は戦略的パートナーとの共同開発を進めることにより、通常の開発候補品よりも収益性の高い条件で大手製薬企業にライセンスアウト(導出)することを目標にしております。当社では、PDPS技術を用いて同定したヒット化合物を起点に、①特殊ペプチド医薬品、②低分子医薬品、③ペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)、④多機能ペプチド複合体(MPC医薬品)の4つのカテゴリーの医薬品開発を進めていくために必要な能力の拡充を進めております。同事業では、戦略的パートナーの独自の技術・ノウハウと当社の技術を組み合わせることでより高い価値のプログラムが生み出されることに加え、開発費用を両社で負担することにより、開発に成功した場合には、多くの場合従来の創薬共同研究開発プログラムと比べてより高い比率で当社に収益が分配されます。また、自社創薬についても、複数の創薬プログラムが進行しており、今後、臨床開発に向けた新たな進捗の報告ができるものと考えております。

当社は現在9社(JCRファーマ株式会社、モジュラス株式会社、Sosei Heptares、Biohaven社、ポーラ化成工業株式会社、三菱商事株式会社(ペプチグロース株式会社)、RayzeBio社、ペプチエイド株式会社、Amolyt社)との戦略的提携を実施しております。また、川崎医科大学とは難治性希少疾患に対するペプチド創薬に関する共同研究を実施し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からは結核に対する新規治療薬開発に関する研究支援金を受領しております。

 

JCRファーマ株式会社(以下 JCRファーマ)とは、2016年2月に開始した共同研究において、血液脳関門(BBB)を通過し脳組織及び筋肉組織へ医薬品候補化合物を届けることを可能とするトランスフェリン受容体(TfR)結合ペプチド(キャリアペプチド)の創製に成功しています。多くの薬物はBBBを容易に通過することができず、脳内への取り込み効率の低さが中枢神経疾患の医薬品開発において大きな課題となっております。今回創製したキャリアペプチドは、抗体を中心とするタンパク質、ペプチド、核酸、低分子化合物等、様々な種類の治療薬と結合し、PDC医薬品とすることで脳内への取り込み効率を向上させる効果を有しております。また、本キャリアペプチドは共通するメカニズムを介して筋組織への効率的な治療薬の輸送も実現いたします。神経筋疾患の医薬品開発においては、全身に存在する筋肉内標的組織に治療薬を届けることが大きな課題となっており、本キャリアペプチドはこうした課題を解決する手段としても応用可能です。JCRファーマと当社は第三者へのライセンス活動に注力しており、契約締結からキャリアペプチドの供給まで当社が主導しております。2020年12月22日には、両社から最初の導出となる、武田薬品工業株式会社(以下 武田薬品)との間での神経筋疾患領域における包括的な共同研究及び独占的ライセンス契約の締結を発表いたしました。2021年7月27日には、武田薬品との共同研究及び独占的ライセンスの枠組みを中枢神経系(CNS)疾患にも拡大させました。両社は、キャリアペプチドと武田薬品が選択した医薬品候補化合物を組み合わせ、神経筋疾患領域、CNS領域で多くの医薬品を生み出していきたいと考えております。また、当社は、TfRキャリアペプチドに関して、様々な企業とのさらなる共同研究やライセンス契約について引き続き協議しております。本キャリアペプチドのライセンス活動によって得られる収益は、当社とJCRファーマとの間で分配されます。

 

モジュラス株式会社(以下 モジュラス)とは、これまで開発が難しかったキナーゼターゲットに対し、PDPSを用いて同定したヒットペプチド化合物を基に低分子医薬品候補化合物の開発を進めております。モジュラスは最先端の計算科学を駆使した高速かつ効率的な低分子医薬品候補化合物のデザインに関する技術を有する創薬企業です。両社は開発コストを分担し、得られた成果も両社で共有いたします。2023年8月に、両社の間で実施している戦略的提携プログラムから 一つ目の開発候補化合物(モジュラス社でのプロジェクトコード:MOD-B)を選定いたしました。本開発候補化合物は、マスト細胞により引き起こされる炎症経路において重要な役割を果たすキナーゼであるKITに対して選択的阻害活性を示す新規の低分子化合物(MOD-B)であり、マスト細胞により引き起こされるアレルギー疾患を含む様々な免疫炎症性疾患などの治療への活用が期待されます。今後、モジュラスが主導し本化合物の臨床入りに向けたIND申請の準備を進めるとともに、パートナリング/導出活動についても精力的に進めてまいります。モジュラスに対する当社の出資比率は5%未満となっております。

 

Sosei Heptaresとは、疼痛、がん、炎症性疾患等への関与が既に検証されているGタンパク質共役受容体(GPCR)として知られるプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)をターゲットとして新規治療薬の研究開発・商業化を目的とした戦略的共同研究を行っております。この共同研究では、両社のもつ業界屈指のプラットフォーム技術を融合いたします。両社で選択したGPCRターゲットに対して、Sosei HeptaresのStaRプラットフォームを用いて安定化し、当社のPDPSを用いてヒット化合物を得ることで、新たな治療薬の開発を進めてまいります。本契約のもと両社はコストを分担し、得られたすべての成果を共有いたします。2021年5月12日に発表いたしました通り、両社は既にPAR2に対して高い親和性と選択性を有するペプチド・アンタゴニストを同定しておりましたが、その後の最適化により経口投与でも消化器内での安定性が見込まれるリード候補化合物の特定に成功いたしました。現在、非臨床試験を実施しており、炎症性腸疾患(IBD)をはじめとする消化器領域における炎症性・疼痛性の疾患に対する新たな経口ペプチド医薬品としての開発を目指します。両社は、引き続き非臨床試験を実施するとともに、様々なパートナリングや導出の可能性を協議しております。

 

Biohaven社とは、ヘテロ2量体ペプチド複合体である二重特異性化合物であるBHV-1100(CD38-ARMTM)の開発を進めており、多発性骨髄腫を適応症としております。BHV-1100はCD38に結合するペプチドと免疫グロブリンに結合するペプチドの複合体であり、体内の免疫細胞を骨髄腫細胞に誘導することで体内の免疫反応を活性化し、骨髄腫細胞を攻撃する作用機序を特徴としております。「BHV-1100 + 自家NK細胞」は2020年9月8日に米国FDAよりオーファンドラッグ(希少疾患用医薬品)指定を受けております。現在、BHV-1100とCIML-NK細胞を投与する第1a/1b相臨床試験(オープンラベル、単一施設(Dana-Farber Cancer Institute)、ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04634435)を実施しております。この臨床試験では、造血幹細胞移植前に測定可能残存病変が陽性である多発性骨髄腫の被検者において、CIML-NK細胞、BHV-1100、低用量のIL-2を投与し、安全性、忍容性、探索的有効性に関する評価を実施しております。主要評価項目は、投与100日後の用量制限毒性および投与90日~100日後における薬剤に関連する副作用の発現率と重症度と規定されております。

 

ポーラ化成工業株式会社(以下 ポーラ化成工業)とは、ペプチドを用いた化粧品、医薬部外品、及び医薬品の研究開発を行っております。当社のPDPS技術を活用することで、ポーラ化成工業における医薬部外品や化粧品の素材開発に拡大するとともに、ポーラ化成工業との協業により、皮膚に効果のある医薬品シーズの創出等に取り組んでまいります。両社は、in vitro及びex vivoモデルにおける有効性や化粧品用途での活用可能性確認されている、複数の有望なリード化合物について取得が完了しております。

 

当社は、川崎医科大学との共同研究により、マイオスタチンを阻害する可能性のある一連の特殊環状ペプチド化合物を創製いたしました。マイオスタチン(別名growth differentiation factor 8、増殖分化因子8)は、筋細胞で産生・放出されるタンパク質で、筋細胞に働きかけ筋細胞の増殖を抑制します。多くの前臨床および臨床試験により、マイオスタチン阻害剤によって筋肉量の増強、身体強度の改善、内臓脂肪量の減少、インスリンによる血糖値低下等の代謝機能障害の改善につながることが示唆されており、マイオスタチンが様々なSMA(Spinal muscular atrophy、脊髄性筋萎縮症)・FSHD(Facioscapulohumeral muscular dystrophy、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)・DMD(Duchene muscular dystrophy、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)等の筋ジストロフィー、他の筋肉消耗を伴う疾患、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病等の創薬ターゲットとして重要であることを示すエビデンスが蓄積されてきております。当社の開発候補化合物は、動物モデルにおいてマイオスタチンのシグナル伝達を強力に抑制するとともに筋肉組織への移行性が高く、筋肉量・筋肉強度の改善につながることが既に確認されております。当社は、2023年10月に開催されたWorld Muscle Society 2023において前臨床試験の結果を発表いたしました。現在当社は、さらに開発を進めていくための選択肢を検討するとともに、並行してライセンス/パートナー候補先との協議を進めております。

 

ビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下 ゲイツ財団)とは、世界の最貧国において大きな問題となっている3つの感染症である結核、非結核性抗酸菌症及びマラリアを治療するための新規特殊環状ペプチドを見出すことを目的としたプログラムにつき、ゲイツ財団からの研究支援金を受けて研究開発を進めております。細菌感染は全世界の死因の中で上位に位置しており、結核は世界人口の約3分の1が潜伏感染しているといわれ毎年1,040万人の新規感染症例と180万人の死亡例が報告されております。2017年11月に研究支援金を受領し、結核に対する複数の有望なヒット候補化合物が特定されました。2019年11月に、当社はゲイツ財団から結核に対する新規治療薬開発に関して第2回目の研究支援金を受領し、結核治療薬として最も有望なヒット化合物を、将来的な臨床開発を視野に入れて最適化を行い、リード化合物の同定を行いました。2022年、これらのリード化合物に経口投与でのバイオアベイラビリティを向上させる最適化を実施し、動物モデルでの薬効検証を継続しております今回の支援金により開発される治療薬は、ゲイツ財団との合意に基づき、低中所得国(LMIC)においては安価で提供されることになっております。一方、先進国においては、当社が自社での商業化及びライセンス活動の権利を有しており、導出/提携に関する協議を進めております。

 

三菱商事株式会社(以下 三菱商事)とは、細胞治療・再生医療等製品や成長市場である培養肉等の製造等に使用される、細胞培養向け培地の重要成分である、成長因子を代替するペプチド(以下 代替ペプチド)の開発・製造・販売を行う合弁会社・ペプチグロース株式会社(以下 ぺプチグロース)を設立いたしました。ペプチグロースは、両社が持つノウハウを活用し、医薬品産業における細胞治療・再生医療等の発展に向け、取り組んでおります。成長因子は、ヒトを含む動物の体内に広く存在し、細胞の成長・増殖や、またiPS細胞・ES細胞等の幹細胞を神経細胞や血液細胞等へと分化誘導させる際に重要な役割を担うタンパク質です。現在は、動物血清からの抽出物、あるいは組み換え技術によって製造されたものが主に使用されていますが、不純物混入による安全性上のリスク、製造ロット間の品質のばらつき、高額な製造コスト等が、医薬品産業が直面する課題となっております。当社がPDPSを用いて、成長因子と同等の機能を有する代替ペプチドを同定し、動物血清・組み換え技術を用いない、化学合成による新規製造手法を開発いたします。ペプチグロースが商業ベースでの製造工程・体制を確立することで、品質面においては高純度で製造ロット間のバラつきも無くし、またコスト面の合理化も実現してまいります。また、三菱商事グループが有する幅広いネットワーク・顧客基盤を活用することで、グローバル市場における代替ペプチドの販売及び市場拡大を図ってまいります。2021年に、HGF代替ペプチド(PG-001)とTGFβ1阻害ペプチド(PG-002)の販売を、2022年にBDNF代替ペプチド(PG-003)、BMP4,7阻害ペプチド(PG-004)、BMP7選択的阻害ペプチド(PG-005)、BMP4選択的阻害ペプチド(PG-006)の販売を、2023年9月よりVEGF代替ペプチド(PG-007)の販売を開始いたしました。今後も順次新たな製品の開発・上市を計画しております。当社は、独占的にこれら代替ペプチドの医薬品としての開発・販売権を有し、複数のパートナー候補先と医薬品開発の協議を実施しております。2022年5月、PG-001の医薬品としての開発に関して、Genentech社と創薬共同研究開発契約を締結いたしました。また、2023年8月には、ペプチグロースはオリヅルセラピューティクスとの間で再生医療の製造に使われる成長因子代替ペプチド創出に向けた共同開発契約を締結いたしました。本契約に基づき、ペプチグロースは、当社のPDPSと独自の開発技術により創出した複数の候補ペプチドをオリヅルセラピューティクスに供給し、オリヅルセラピューティクスでは、自社が開発する評価系を用いることで提供された候補ペプチドからさらに有望なペプチドの絞り込みを行います。それらペプチドをさらに最適化することで、生理活性、化学的安定性、溶解性等の向上を図り、細胞増殖、分化誘導において、従来の成長因子とほぼ同等の機能を有する、革新的で化学合成が可能な成長因子代替ペプチドの創製を目指します。ペプチグロースへの出資比率は、ペプチドリーム39.5%、三菱商事60.5%となっております。

 

RayzeBio社とは、2020年8月4日に、ペプチド-放射性核種複合体(以下 ペプチド放射性医薬品)の創製に関する戦略的共同研究開発契約を締結いたしました。本契約に基づき当社は、両社で選定した複数の創薬ターゲットに対し、PDPS及び当社の研究開発機能を用いて、PDC医薬品として使用する新たなペプチドの同定及び最適化を行います。RayzeBio社は、それらペプチドを用いたペプチド放射性医薬品の開発を進めます。当社は非臨床段階までの研究開発を主導し、RayzeBio社はその後のトランスレーショナルリサーチ、臨床開発を主導いたします。当社は契約一時金として2020年8月に、またマイルストーンフィーとして2020年11月、2021年6月、2022年9月にRayzeBio社の一部株式を受領いたしました。当社は、今後プログラムの進捗に応じてマイルストーンフィーや日本国外の売上高に応じた売上ロイヤルティーを受領する権利を有します。2022年8月9日には、両社が共同開発するペプチド放射性医薬品プログラムについて、日本での開発・商業化を行うことができるオプション権をRayzeBio社から当社に付与することを合意いたしました。2022年12月には、当社とRayzeBio社の戦略的提携プログラムから一つ目となるペプチド-放射性核種複合体(RI-PDC)の開発候補化合物を、2023年3月には、肝臓がんで発現されるグリピカン3をターゲットとする二つ目の開発候補化合物(開発コード:RYZ801・RYZ811)を選定いたしました。RYZ801は、放射性核種としてアクチニウム225(Ac-225)を用いる治療用途の開発候補化合物であり、RYZ811は、RYZ801と同一のペプチドを用いた診断イメージング用途の薬剤です。海外の複数の医療機関において、2023年8月1日時点までに計47名の肝細胞がんの患者さんに対してガリウム68を核種とするイメージング試験が実施され、約90%の患者さんにおいてRZY811が肝細胞がんに取り込まれたことを確認いたしました。また、重篤な有害事象については確認されておりません。2023年9月には、Rayzebio社のNasdaq Global Market(「Nasdaq」)への上場に伴い、当社はRayzebio社の株式を一部売却いたしました。当社は、売却により得た資金の一部をRYZ801およびRYZ811の日本国内における開発費用に充てる予定です。RayzeBio社に対する当社の出資比率は約2%となっております。

 

ペプチエイドは、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目的として、2020年11月12日に富士通株式会社(以下 富士通)、株式会社みずほフィナンシャルグループの連結子会社であるみずほキャピタル株式会社(以下 みずほキャピタル)、株式会社竹中工務店(以下 竹中工務店)、及びキシダ化学株式会社(以下 キシダ化学)との間で設立した合弁会社です。当社は、PDPSを用いて、コロナウイルスがヒト細胞に侵入する際に必須となるスパイクタンパク質を創薬ターゲットとした、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補化合物の同定を実施し、PA-001を見出しました。ペプチエイドは、2021年3月23日に、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補化合物の特定を完了し、開発候補品PA-001の非臨床試験を開始したことを発表いたしました。国立感染症研究所等と共同で化合物の評価を進めてまいりましたが、PA-001は従来型のSARS-CoV-2だけでなく現在同定されているすべての変異株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株)に対しても同様に高い抗ウイルス活性を有することを確認しております。また、現在緊急使用許可承認を得ている新型コロナウイルス感染症治療薬との併用において、in vitro試験での高い相加効果を確認しております。各種一般毒性、安全性薬理、遺伝毒性試験等から構成されるPA-001の非臨床試験が予定通りのスケジュールで完了し、PA-001の高い安全性が確認されました。2022年2月より、臨床研究法に基づく早期探索的臨床研究(以下、「臨床研究」)を実施いたしました。臨床研究では、健常人に対するPA-001の用量漸増単回投与を静脈内注射により実施し、有害事象の有無・注射部位反応・バイタルサイン等の評価を行いました。2022年8月10日に公表した通り、PA-001の投与による有害事象等は確認されず、良好な安全性プロファイルが確認されました。また、PA-001の用量依存的な血中濃度プロファイルの相関を確認する結果が得られました。2023年5月15日、PA-001の開発は国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の事業に採択され、ペプチエイドは第1相試験等の実施に向けた補助金を受領することが決定いたしました。現在PA-001について、米国FDA(食品医薬品局)へのIND(新薬臨床試験開始届)申請の準備を進めており、2024年にはPA-001の第1相臨床試験開始を予定しております。ペプチエイドに対する当社の出資比率は39.4%となっております。

 

Amolyt社とは、2020年12月8日に、内分泌系の希少疾患であり重篤な合併症を伴う先端巨大症や神経内分泌腫瘍を適応症とする新たな治療薬の開発を目的とした、成長ホルモン受容体拮抗薬(GHRA)候補ペプチド化合物の最適化に関する戦略的共同研究開発及びライセンスオプション契約を締結いたしました。2021年9月9日に、Amolyt社がGHRA候補ペプチド化合物に関するライセンスオプションを行使し、当社は、Amolyt社に対して全世界を対象とする開発・商業化の権利をライセンスいたしました。当社は今後、GHRA候補ペプチド化合物に関し、Amolyt社から開発及び商業化の進捗に応じたマイルストーンフィー、及び上市後は売上金額に応じたロイヤルティーを受領する権利を有します。最適化に成功した先端巨大症に対する治療薬候補化合物(AZP-3813)は、既存薬であるソマトスタチンアナログによる治療で十分な効果が得られない患者さんに対して、同剤との併用を想定した臨床開発が実施される予定です。AZP-3813については、ビーグル犬を用いたモデルでIGF-1濃度の抑制が維持されることを示す結果が2023年5月の欧州内分泌学会(ECE)、2023年6月の米国内分泌学会(ENDO)において発表されております。2023年6月5日にAmolyt社は、AZP-3813の先端巨大症を対象とした第1相臨床試験の開始を発表いたしました。2024年第1四半期には、第1相試験の結果が得られる見通しです。また、2021年9月にAmolyt社は、80百万ドルのシリーズB資金調達、2023年1月に138百万ドルのシリーズC資金調達を実施し、調達資金の一部をAZP-3813の開発に充当することを発表しております。

 

当社は、多くの自社プログラムにも継続的に取り組んでおります。一つ目の重点領域は、がん治療を目的に放射性核種と結合させたRI-PDCを開発するにあたり、様々ながん特異的ターゲットに結合する高い親和性や選択性を有するペプチド候補化合物を同定し最適化する取り組みです。2023年11月には、自社での研究開発から創製された放射性医薬品プログラムから自社プログラムとして一つ目の開発候補化合物の選定が完了し、ヒューマン・イメージング試験およびIND申請に向けた試験の準備を開始いたしました。本開発候補化合物(PD-32766)は、新規の医薬品として、Carbonic Anhydrase IX(炭酸脱水酵素、以下 「CAIX」)に対して選択的に結合するペプチド-放射性核種複合体(以下「RI-PDC」)です。CAIXは、炭酸脱水酵素ファミリーの一種で、腎細胞がん(RCC)、膠芽腫、トリプルネガティブ乳がん、子宮がん、大腸がん等の様々な固形がんで発現していることが知られております。PD-32766は、ペプチドリーム独自の創薬開発プラットフォームであるPDPSを用いて見出され、当社子会社であるPDRファーマにおいて実施したin vivoイメージングおよび薬効試験をもとに最適化されたRI-PDC医薬品です。当社では、現在PD-32766のIND申請に向けた試験の準備を進めており、腎細胞がんを対象に同一のペプチドを用いた診断薬および治療薬の同時開発(セラノスティクス)を計画しております。同一のペプチドによる診断薬を用いることで、PD-32766による治療がもっとも奏効するであろうCAIXを発現するがんの患者さんの選別を行うことが可能となります。また当社は、第1相臨床試験の実施に先立ち、患者さん体内での局在の検証等を目的としたヒューマン・イメージング試験を2024年前半に実施することを計画しております。腎細胞がんは、米国内のがん患者数において9番目に多いことが知られており、全世界でがんと診断されて亡くなられる患者さんの約2%を占めております。また、5年生存率は12%と、予後の悪いがんとしても知られております。2020年には全世界で431,288人の患者さんが腎臓がんと診断され、そのうち約9割が腎細胞がんと推定されています。CAIXは、腎細胞がんの約7割を占める淡明腎細胞がんにおいて95%以上の高い確率で発現していることが知られており、腎細胞がんの診断・治療の標的として最適なマーカーの一つと考えられております。

今後は、これらのRI-PDCプログラムの日本における権利を保持しつつ、プログラムに関心を有する製薬企業に対して日本以外の権利を導出する形で自社プログラムの開発を加速していく方針です。また、これらのがんをターゲットとするペプチドについて、様々な既存パートナーや新たなパートナーとの共同研究開発により、他のペイロードとの組み合わせにおいて活用する取り組みも積極的に進めております。

二つ目の重点領域は、多機能ペプチド複合体(MPC医薬品)における創薬開発です。当社では、MPC医薬品が二重特異性抗体をはじめとする他の多機能分子よりも優れたモダリティとなる可能性があるものと考えております。がん特異的ターゲットに結合するペプチドとの組み合わせが可能な、T細胞・NK細胞に結合する新規ペプチドの同定にも注力しており、これまでにないT細胞・NK細胞Engagerを創製することで新たな治療の選択肢が増えることを期待しております。また当社では、T細胞やNK細胞Engagerに加えて、IL-17をはじめとする様々な炎症誘発性サイトカインに対して選択的に作用するペプチド候補化合物を有しております。複数の炎症誘発性経路を同時に阻害することがより適した治療戦略となる可能性を示す臨床エビデンスが増加しつつあることから、様々なペプチド候補化合物を組み合わせたMPC医薬品開発の可能性についても検討を進めております。さらに、重点領域以外でも複数の自社プログラムについて開発を実施しております。H5N1株を含むインフルエンザ1型株に対して幅広く有効性を示すHAタンパク阻害剤のプログラムでは、タミフル等の既存のインフルエンザ治療薬との併用による相加的な有効性が動物モデルで示されており、新型コロナウイルス感染症パンデミック終息後はインフルエンザの症例数が世界的に再増加するリスクも指摘されていることからも、様々な提携/導出の可能性を継続的に検討しております。

 

当社は、塩野義製薬株式会社、積水化学工業株式会社と合弁で特殊ペプチド原薬の製造プロセスに関する研究開発、製造及び販売を行うCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)であるペプチスター株式会社(以下 ペプチスター)を2017年9月に設立いたしました。ペプチスターは国内の様々な会社が有する技術を融合し、高品質、高純度でしかも製造コストを大幅に低減する最先端技術を開発、提供することを目指しております。同社の製造工場は、大阪府摂津市に設立されております。ペプチスターに対する当社の出資比率は15%未満となっております。

 

当社は、2021年9月17日に、独立行政法人都市再生機構が実施した川崎市殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)の川崎市川崎区殿町三丁目地区(2-11・2-12画地)の土地譲渡人の公募入札に参加し、落札いたしました。キングスカイフロントは、世界的な成長が見込まれるライフサイエンス分野を中心に、世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点として「国家戦略特区」及び「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」として指定を受けております。今回落札された土地には、当社の本社・研究所の増設を念頭に建設準備を進めておりましたが、その後、2022年3月に放射性医薬品事業を取得したことに伴い、放射性医薬品事業の機能強化のために活用するニーズが出てきたことから、現在、設計の一部見直しを進めております。今後の建設計画につきましては、詳細が決定次第すみやかな公表を予定しております。なお、すでに土地については手元資金により購入しており、今後の建設費用については手元資金ならびに金融機関からの借入による充当を予定しております。

 

2. 放射性医薬品事業

当社は、2022年3月28日に100%子会社化したPDRファーマ株式会社(以下 PDRファーマ)を通じて、放射性医薬品(治療薬および診断薬)等の研究・開発・製造・販売を行っております。現在、PDRファーマでは放射性診断薬として、22品目のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)製剤と、2品目のPET(Positron Emission Tomography)製剤、及び8品目(3製品カテゴリー)の放射性治療薬を販売しております。また、放射性診断薬の画像読影の支援を目的とした画像解析ソフトウェアの開発・提供も行っております。

 

PDRファーマが販売する主な放射性医薬品は下表のとおりです。

・診断用放射性医薬品(SPECT)

 

販売名

薬効分類名

ニューロライト®注射液 第一

局所脳血流診断薬

カーディオライト®注射液 第一

心臓疾患診断薬・心機能診断薬・副甲状腺疾患診断薬

塩化タリウム-Tl201注射液

心臓疾患診断薬・腫瘍診断薬・副甲状腺疾患診断薬

ミオMIBG®-I123注射液

心交感神経診断薬・神経芽腫診断薬・褐色細胞腫診断薬

テクネ®MDP注射液

骨疾患診断薬・脳腫瘍及び脳血管障害診断薬

ウルトラテクネカウ®

脳・甲状腺・唾液腺及び異所性胃粘膜疾患診断薬・局所肺換気機能診断薬

オクトレオスキャン®静注用セット

神経内分泌腫瘍診断薬

 

 

・診断用放射性医薬品(PET)

 

販売名

薬効分類名

アミヴィット®静注

アミロイドイメージング剤

フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」

悪性腫瘍診断薬・虚血性心疾患診断薬・てんかん診断薬

 

 

・治療用放射性医薬品

 

販売名

薬効分類名

ライアットMIBG-I131静注

褐色細胞腫・パラガングリオーマ治療薬

ヨウ化ナトリウムカプセル

甲状腺疾患治療薬・甲状腺疾患診断薬

ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット

CD20陽性非ホジキンリンパ腫・マントル細胞リンパ腫治療薬

 

 

 

PDRファーマでは、現在下表の4つの臨床開発プログラムを実施しております。

※画像省略しています。

 

PDRファーマは、Lilly社と共同で、脳内の異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化(NFTs)を可視化するPET診断薬であるflortaucipir(18F)(米国での商品名:Tauvid)の日本における共同開発を実施しております。既に承認されているアミヴィッド®静注に加えFlortaucipir(18F)が承認されることでアルツハイマー型認知症領域におけるPET診断薬の活用範囲がより一層拡大していくことを期待しております。

 

2023年3月には、PDRファーマは、「テクネ®フチン酸キット」について、「子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん及び頭頸部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ」を適応として、効能又は効果の一部変更承認を取得いたしました。2023年8月には、アミロイドPET検査用イメージング剤「アミヴィッド®静注」の効能又は効果の追加に関する一部変更承認を取得いたしました。今回の効能追加により、アルツハイマー病による軽度認知障害が疑われる患者さんに対しても、本剤を用いたPETイメージングにより、脳内のアミロイドベータプラークの蓄積を確認することができるようになりました。また、2023年10月に放射性医薬品の投与による医療被ばく線量の管理を電子化することで医療従事者の業務効率化を実現する4つの製品(「Bridgea GATEWAY」「Bridgea TIMER」「onti」「ankan」)に関連する資産をRYUKYU ISGより譲受いたしました。今後はPDRファーマがこれらの製品の製造・販売・保守サービスを行ってまいります。

 

当社は、これまで放射性診断薬/放射性治療薬に用いるRI-PDCに関して、自社プログラムならびにBMS社(放射性診断薬)やBayer社(放射性診断薬)、Novartis社(放射性診断薬/放射性治療薬)、RayzeBio社(放射性診断薬/放射性治療薬)との間で多くの研究開発プログラムを進めてきており、RI-PDC創薬における主要プレーヤーの1社としての地位を確立してまいりました。今後はグループ全体として、当社及びPDRファーマの技術、ノウハウ及びネットワークを融合することにより、新たな放射性医薬品の創出、海外からの有望な放射性医薬品の導入などを進めることで放射性医薬品事業の拡大を図ってまいります。

 

当社グループは、サステナビリティへの取り組みに関して、当社の基本方針、重点取組み、主要ポリシー/データを自社WEBサイト上での専用ページやサステナビリティレポート等にて積極的に情報開示を行っております。またグループとしてのサステナビリティへの取り組みをより推進するため、2022年7月より、PDRファーマでのサステナビリティへの取り組みを検討・推進する「サステナビリティ推進委員会」をPDRファーマ内に新設いたしました。当社グループは、地球環境への配慮、社会・従業員に関する取組み、企業統治(ガバナンス)に関して業界トップクラスの水準を目指して取り組んでまいります。

 

当社の事業活動におけるGHG排出量(Scope1及びScope2)は主に電力消費に由来しており、これまで再生可能エネルギーへのシフトを積極的に推進する電力会社から電力供給を受けておりました。この取り組みをさらに推進するため、当社本社・研究所で消費する電力を実質CO2(二酸化炭素)フリーとなる電力として2022年1月より導入いたしました。これにより、自社事業活動における「カーボンニュートラル」実現の中期目標を4年前倒しで達成いたしました。

 

当社は、研究開発型のイノベーション企業として、多様性が競争優位性やイノベーションを生み出し、我々のミッション実現につながることを確信しています。特に、従業員一人一人の有する専門性やサイエンティフィックな感性の多様性を重視しており、研究開発及び経営の中核を担う管理職・上級専門職層において、年齢や性別・文化背景に捉われないサイエンスベースの議論や意思決定ができる体制の確保が重要と考えております。その前提となる、中核人材(※1)の多様性を構成する要素として、「博士号 (Ph.D.)取得者比率(2022年12月末:51.2%、2030年目標:50%以上維持)」、「女性マネージャー比率(同:18.6%、同:30%以上)」、「外国人又は海外勤務経験者(※2)比率(同:32.6%、同:30%以上維持)」、「20~30代比率(同:16.3%、同:30%以上)」の4つの定量指標を設定し、これらの現状及び2030年までの目標数値を定めております。

※1:管理職・上級専門職(役員を除く)

※2:海外での研究・就労経験を有する者(半年未満、または留学を除く)

 

当社は、サステナビリティに関する継続的な取組みにより各評価機関から高い評価を受けております。2022年1月には、グローバルな ESG評価機関である Sustainalytics社から、ESGの取り組みに関して業界最高水準にある(評価対象となっているバイオテック企業439社中、世界第二位)との高い評価を受け、「TOP-RATED ESG PERFORMER 2022」を受賞いたしました。また、環境情報開示に取り組むCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の「気候変動プログラム」に2021年から参加し、CDP気候変動レポート2022において最上位レベルのリーダーシップレベルである「A-(A マイナス)」評価を取得いたしました。2023年5月には、日本取引所グループであるJPX総研が選定した「JPXプライム150指数」の構成銘柄として選定されました。2023年7月には、グローバルインデックスプロバイダーである FTSE Russellにより構築されたFTSE4Good Index Series および FTSE Blossom Japan Index に3年連続、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexに2年連続で構成銘柄として選定されました。なお、FTSE Blossom Japan Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexは、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) の国内株式を対象とするESG総合指数としても採用されております。

 

当社グループの従業員は2023年9月30日現在で704名(ペプチドリーム株式会社:207名、PDRファーマ株式会社:497名、派遣を含む。女性社員比率は約26.6%)となっております。当社グループは取締役及び監査役12名を含めると総勢716名の体制となりました。

以上の結果、当第3四半期連結累計期間における創薬開発事業の経営成績については、売上収益10,721,322千円(前年同四半期比7,151,499千円増加)、セグメント利益6,573,586千円(前年同四半期はセグメント損失196,580千円)、放射性医薬品事業の経営成績については、売上収益11,822,628千円(前年同四半期比4,183,910千円増加)、セグメント利益246,760千円(前年同四半期比63,829千円増加)となり、当社グループ全体としては売上収益は22,543,951千円(前年同四半期比11,335,410千円増加)、Core営業利益7,042,788千円(前年同四半期比6,899,536千円増加)、営業利益6,752,846千円(前年同四半期は営業損失426,772千円)、税引前四半期利益4,661,920千円(前年同四半期は税引前四半期損失368,500千円)、親会社の所有者に帰属する四半期利益3,541,432千円(前年同四半期は親会社の所有者に帰属する四半期損失186,603千円)となりました。

 

当社グループは、IFRS業績に加えて、会社の経常的な収益性を示す指標として非経常的な項目をNon-Core調整として除外したCoreベースの業績を開示しています。当該Coreベースの業績は、IFRS業績から当社グループが定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。

Core営業利益は営業利益から企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用、有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益、非経常的かつ多額の損益、個別製品又は開発品導入による無形資産の償却費を控除して算出しております。

なお、Core営業利益から営業利益への調整は以下のとおりです。

(単位:千円)

 

2022年12月期

第3四半期

2023年12月期

第3四半期

前年同期比

Core営業利益

143,251

7,042,788

6,899,536

企業買収に係る会計処理の影響

及び買収関連費用

546,961

255,347

△291,614

△53.3

有形固定資産、無形資産及び

のれんに係る減損損失

損害賠償や和解等に伴う損益

非経常的かつ多額の損益

個別製品又は開発品導入による

無形資産の償却費

23,062

34,593

11,531

50.0

営業利益(△損失)

△426,772

6,752,846

7,179,619

 

 

当社グループは当第3四半期連結累計期間において2,021,149千円の条件付対価に係る金融費用を計上いたしました。当該金融費用の計上は、2022年3月に実施したPDRファーマ株式会社の株式取得に際し、2024年4月30日までに脳内アミロイドβプラーク可視化を行うPET診断薬であるアミヴィッド®静注の軽度認知障害への適用拡大が日本国内で承認された場合、4,000,000千円の追加支払いが発生する旨の条件付対価が設定されておりましたが、2023年8月31日に一部変更承認を取得し、「アルツハイマー病による軽度認知障害又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」が新たな効能又は効果として追加されたことに伴い、富士フイルム株式会社に対する4,000,000千円の条件付対価の支払いが確定したことによるものです。

 

(2)財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間の総資産は66,103,857千円となり、前連結会計年度末と比べて2,238,656千円増加しました。その主な要因は、営業債権及びその他の債権が5,765,800千円減少したものの、現金及び現金同等物が8,323,155千円増加したこと等によるものです。

負債は28,642,492千円となり、前連結会計年度末と比べて3,181,242千円減少しました。その主な要因は、営業債務及びその他の債務が2,427,562千円増加したものの、未払法人所得税等が1,480,331千円減少、借入金が2,142,576千円減少、その他の金融負債が2,056,239千円減少したこと等によるものです。

資本は37,461,364千円となり、前連結会計年度末と比べて5,419,898千円増加しました。その主な要因は、四半期利益により利益剰余金が4,478,421千円増加したこと等によるものです。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ8,323,155千円増加し、13,570,821千円となりました。

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払による支出3,667,008千円等があったものの、営業債権及びその他の債権の減少額5,765,800千円等により、9,186,629千円の収入(前年同四半期は1,408,588千円の支出)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入2,864,600千円等により、1,780,966千円の収入(前年同四半期比は26,963,720千円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少額500,000千円及び長期借入金の返済による支出1,680,000千円等により、2,948,813千円の支出(前年同四半期は20,925,538千円の収入)となりました。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は、2,259,523千円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。