売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS




E30865 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績の状況

 当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboART System」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。

 当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応えること」であり、その実現のための最重点経営目標を、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」として、当中間会計期間においても様々な取り組みを進めてまいりました。

 その具体的な進捗を以下に要約いたします。

 

※1:臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効を有することが示されること。

 

「umedaptanib pegol」の開発について

 

(イ)「umedaptanib pegol」(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い

 当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」と「滲出型加齢黄斑変性(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」の治療薬としての開発を進めております。

 

(ロ)開発状況、及び既存治療法との比較

a)軟骨無形成症(ACH)

・臨床試験の進捗

 2021年度から3年間、AMEDの希少疾患用医薬品指定前実用化支援事業として助成を受け、ACHの小児患者(5~14歳)における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と第2相臨床試験の被験者選定を目的とした第2相観察試験、及びACHの小児患者(5~14歳)でのumedaptanib pegolの有効性と安全性を調べる第2相臨床試験と、これに引き続き実施する第2相長期投与試験の3つの臨床試験を実施しております。第2相観察試験(26週)については、2022年11月に患者の登録を開始し、東京、岡山及び関西地区の8施設で13名のACH小児患者を組み入れ、2024年12月に最終症例の観察期間が完了いたしました。第2相臨床試験については、2023年4月に投与を開始、コホート1(低用量群、6名、1回/週の0.3mg/kg皮下投与、26週)とコホート2(高用量群、6名、1回/2週の0.6mg/kg皮下投与、26週)の2群に分けて実施し、2025年9月に投与が完了いたしました。第2相臨床試験を完了した12名のうち11名は、同一投与条件の第2相長期投与試験に移行しており、継続して被験薬の有効性及び安全性を評価しております。

 

・試験結果の概要

コホート1については、途中休薬の1名を除いた5名のうち、3名で被験薬投与前(観察試験)に比較して身長の伸展速度の増加が確認され、うち2名は、+4.6、+3.3cm/年と顕著に増加しました。コホート1で顕著な身長の進展速度の増加が確認されていた2名においては第2相長期投与試験に移行しておりますが、1年間投与を継続した時点においても身長の伸展速度増加効果が持続されていました。

 コホート2については、6名のうち、5名で被験薬投与前(観察試験)に比較して、身長の伸展速度の増加が確認され、うち2名は、+5.0、+2.0cm/年と顕著に増加しました。

 第2相臨床試験の平均身長伸展速度は、コホート1、コホート2でそれぞれ+1.5、+1.4cm/年であり、現在ACH治療薬として承認されているボックスゾゴ(以下、「既承認薬」という。)の平均身長伸展速度+1.7cm/年※2と同程度となりました。

 また、既承認薬の治療歴を有する小児患者2名において、umedaptanib pegol投与後に身長伸展速度が、+1.1、+2.0cm/年改善しております。

 

 なお、これまでにumedaptanib pegolを投与したACH小児患者において、安全性に関する懸念は発生しておりません。本試験の最終的な解析結果の総括は2026年3月を予定しており、現在も詳細なデータ解析を進めております。

 

 当社は、コホート1での結果に基づいて、厚生労働省に対して、希少疾病用医薬品指定(ODD)申請を行い、2025年5月に指定承認されました。これに伴い、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)に対して、助成金の交付申請を行い、今年度助成される金額は22,030千円を予定しております。

 現在、ライセンス・アウトによる収益化や今後協業できるパートナー選定を目的とした事業開発活動を実施しておりますが、これと並行して、第2相臨床試験の成績等を考慮して、第3相臨床試験を実施する計画(1回/週の1mg/kg皮下投与、対象患者年齢:2歳程度~)を検討しており、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談をしております。これにより、既承認薬に比較しても大幅な治療成績の向上を期待することが可能と考えております。

第3相試験は、2026年度第1四半期に開始、2027年度に完了する予定としており、厚生労働省から希少疾病用医薬品指定を受けていることから、その優遇措置を利用して、2028年に承認申請、2029年に上市を目指します。

 

※2:https://clinicaltrials.gov/study/NCT03197766?tab=results

 

・ACHの既存治療法と課題

 ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けております。umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認いたしました(非臨床POC獲得)※3。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。

 ようやく、2022年6月にACH治療薬としてBioMarin社のボックスゾゴの製造販売が承認されました。しかし、その効果は十分とは言えず、毎日の投与が必要となっているため、小児のACH患者にとって、もっと効果が強く、皮下注射の間隔が長く取れる新薬の開発が望まれています。

 今般、当社のumedaptanib pegolの第2相臨床試験において、既承認薬と同程度の平均身長伸展速度が確認されたことは、ACHの小児患者にとっては朗報となるものです。今後、umedaptanib pegolの用量をさらに増やすことで、一段と優れた治療方法を確立していくことを検討しております。

 

※3:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, et al.: RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021)

 

b)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)

 umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC獲得を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、①umedaptanib pegolの硝子体内注射による単剤投与群、②既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーア)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及び③afliberceptの硝子体内注射による単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。

 また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内投与を1ヶ月間隔で計4回行いました。

さらに、治療歴のないwet AMD患者を対象にumedaptanib pegolの単独投与の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。

 これらの結果は、英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※4,5

 その要約は以下のとおりです。

 

 [論文要点]

・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。

・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力や網膜厚の改善が確認された(TEMPURA試験)。

・抗VEGF標準治療歴のあるwet AMD患者においては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であり、症状の進行抑制が確認された(TOFU試験)。

・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。

 

 [今後の開発方針]

 今般、umedaptanib pegolの臨床POCが獲得されたと同時に、umedaptanib pegolは抗VEGF薬に先立つ処方が推奨される“first-line”治療薬となる可能性が示唆されました。現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きな Unmet Medical Needs になっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、“first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携・ファンド等からの資金調達を含めて検討してまいります。

 

※4:Pereira DS, Akita K, et al: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154.

 

※5:Pereira DS, Maturi RK, et al.: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148.

 

c)眼科領域における適用疾患の拡大

 umedaptanib pegolのwet AMD臨床試験におけるPOCの獲得によって、本剤が未だ治療法のない網膜疾患に対して有効であることが動物実験で示唆されれば、umedaptanib pegolの適応拡大として次の臨床試験が可能となります。その視点から、日本大学とumedaptanib pegolのPVR(後述「umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン」RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)にて記述)への適応拡大を目的とした共同研究を実施しておりましたが、臨床病態に近い有効な動物モデルの確立に至る事が出来ず、2025年5月31日付にて共同研究を終了しております。

 umedaptanib pegolに関しては別途複数の眼科疾患モデルを用いて薬理試験を継続中であり、今後実施されるPVR薬理試験においても評価を行う予定となっております。

 なお、糖尿病網膜症(DR)モデルを用いた薬理試験において、umedaptanib pegolを投与した際に、眼底出血の発生が有意に抑制されることが確認されました。これはumedaptanib pegolが血管安定化作用を有し、糖尿病網膜症の進行を抑える効果があることを強く示唆するものであります。この結果に基づいて、umedaptanib pegolの糖尿病網膜症に対する用途特許を2025年9月に特許出願をしております。

 糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症のひとつで、本国の成人の失明原因の上位に位置いたします。糖尿病網膜症の治療薬としては、現在、抗VEGF薬が用いられますが、その奏効率は限定的であるため、新規治療薬の開発が強く望まれており、本成果は糖尿病網膜症の新たな治療法になり得るものと考えております。

 

umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン

 

 当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し、中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-006及びRBM-011を、umedaptanib pegolに次ぐ臨床開発優先度の高いパイプラインと位置づけております。

 

(イ)RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)

 RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。

 当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVRモデルにおける抗オートタキシンアプタマーの効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました※6

 Autotaxinは脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)の合成酵素であり、緑内障や特発性肺線維症等の複数の疾患においてLPAやAutotaxinの亢進が見られることから、新規治療薬の標的として注目されております。

 また、当社は2024年7月に東京大学医学部眼科学教室と眼科疾患に関する2年間の共同研究契約を締結いたしました。本共同研究では、主要な眼科疾患である緑内障や糖尿病網膜症などをターゲットに治療薬の開発を目指します。これらの共同研究の成果が眼科疾患に対して新たな薬物治療の道を切り開くことを期待しております。

 

※6:Hanazaki H, Yokota H, et al.: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023).

 

(ロ)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症)

 RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。

 当社は、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究として、AMEDの支援のもと、抗IL-21アプタマーを用いたPAH治療薬の開発を実施してきました。その結果、抗IL-21アプタマーがPAHモデル動物において、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかになり、2020年6月に特許出願をしております。

 また、原薬合成を終え、毒性試験も完了して、第1相臨床試験が実施可能な準備が完了しております。

 

その他のプロジェクト並びに自社創薬に付随する事業

 

(イ)自己免疫疾患に対する治療薬の創製

 国立大学法人北海道大学大学院保健科学研究院とANCA関連血管炎に対する薬理作用を検討するための共同研究契約を2023年10月に締結し、検討を進めて参りました。

 本共同研究において、自己抗体の産生と炎症の増強に関与することが予想されるIL-21に着目し、抗IL-21アプタマーの薬理効果を検証した結果、肝臓で観察される死細胞の抑制を含む複数の病態指標を改善する効果が確認されました。本成果は、抗IL-21アプタマーの新しい用途の開発とANCA関連血管炎におけるIL-21の役割の一端の解明に繋がることが期待され、肝臓の病態改善が必要となる自己免疫疾患や新たな適応疾患の拡大に資するものです。

 なお、本共同研究は2025年3月31日の契約満了をもって終了しております。

 

(ロ)AIアプタマープロジェクト

 アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、国立研究開発法人科学技術振興機構から委託されているコンピューター科学を応用した技術開発(JST委託事業)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業において、当社は早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術RaptRankerを開発いたしました※7。さらに、2021年4月から3年間の事業として、「AIアプタマー創薬プロジェクト」がJST委託事業に採択され、当社は早稲田大学と共同で、RNAアプタマーの創薬プロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで、創薬期間の短縮及び創薬成功確率の向上を実現させることを目指し、研究を進めて参りました。この研究において、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを新たに開発いたしました。SELEXで得られた特定の標的に対する多数の標的結合アプタマーの配列を、RaptGenを用いて解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceに掲載されております※8。また、JST委託事業では課題事後評価結果に基づき、研究期間延長及び研究費の追加によって戦略目標達成に大きく貢献する研究成果が期待できる課題に対し1年間の追加支援を実施しており、「AIアプタマー創薬プロジェクト」は、これまでAI(人工知能)を用いたRaptGenの開発等、革新的な成果を挙げていることから、他領域も含む課題の中から追加支援に採択されました。

 共同研究を推進した結果、大規模言語モデルを用いたアプタマーの結合活性予測手法の開発に成功し、日本国特許庁に対して、2025年3月に共同で特許出願をいたしました。本手法では、従来手法では困難であった任意の配列に対してもアプタマーの活性を予測することが可能であり、SELEX実験には出現しなかった配列も含め、短鎖化や最適化などを実現することが可能となります。

 また、本開発技術を当社の「RiboART System」に活用することで、迅速かつ正確に高活性アプタマーの取得が可能となり、研究開発スピードの向上に繋がります。

 さらに、2023年度から2025年度の予定で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」において、当社と産業技術総合研究所及び早稲田大学を実施予定先とする研究課題「量子・AI次世代創薬」が採択されました。本研究課題では、RNAアプタマーの最適化を題材として、量子計算技術と人工知能を組み合わせた“量子・AIハイブリッド技術”の活用により、従来技術では達成困難な医薬品創生プラットフォームの確立を目指します。

 本事業は初期仮説検証フェーズと本格研究フェーズから構成されており、中間時点において約半数のプロジェクトを打切りとするステージゲート審査が設けられておりますが、2024年9月にステージゲート審査を通過し、本格研究フェーズへ移行しております。

 また、本事業の取り組みにおいて、イジングマシンを活用により、SELEX実験データに基づいて、核酸配列を最適化するための定式化手法を提案し、実際に配列探索によってアプタマーを取得することに成功しており、この核酸配列を最適化するための定式化手法を日本国特許庁に対して、2024年11月に共同で特許出願をいたしました。

 

※7:Ishida R, Adachi T, et al.: RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020).

 

※8:Iwano N, Adachi T, et al.: Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022).

 

(ハ)DDSアプタマープロジェクト

 当社では、RaptRanker及びRaptGenを含む「RiboART System」をさらに発展させると共に、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用のアプタマー開発に取り組んでおります。DDSとは、体内における薬剤の分布を制御することで、薬剤の効果を最大に高める一方で、薬剤の投与回数及び副作用を軽減するための、薬剤の体内動態を制御する技術です。近年の医薬品開発を取り巻く環境は著しい変化を遂げており、ブロックバスター創出のための疾患発症の標的分子の枯渇や、Unmet Medical Needsの高まりなどを理由に、多数のモダリティ(治療手段)が生まれてきております。特に核酸医薬を中心として、さまざまな生体内バリアを突破させ、標的部位(臓器、組織、細胞等)へと効率的に送り込むにはDDSが必要不可欠となります。

 アプタマーは化学合成品であり、抗体、低分子化合物、及びASO、siRNA、mRNAなどの核酸医薬等に化学的に結合させることが可能です。DDSとして利用可能なアプタマーを取得するための期間は1年から2年単位と短いため、アプタマー取得後は、大手製薬企業を含む様々な企業に提供することで、基礎段階より早期に収益をあげていきたいと考えております。

 

 ①細胞表面受容体アプタマーの光免疫療法への応用

 当社の所有するアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討するために学校法人慈恵大学との共同研究契約を2023年9月に締結いたしました。光免疫療法は、標的特異的な薬剤送達と腫瘍に限局した光照射を組み合わせることで、正常組織へのダメージを最小限に抑えた、患者負担の少ない治療法として、がん領域を中心に注目を集めております。共同研究先である学校法人慈恵大学・光永眞人講師らのグループは光免疫療法に関する高い研究実績があり、細胞試験系、動物実験系のノウハウを保有しております。

 当社では、膜タンパク質を認識する複数のアプタマーを開発しており、本共同研究においてこれらアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討しております。

 

 ②デングウイルス膜タンパク質アプタマーの核酸デリバリーへの応用

 ウイルス感染症の1つであるデングウイルス(以下、「DENV」といいます。)に対して増殖を抑制する核酸分子の開発を東京大学医科学研究所(RNA医科学社会連携研究部門・高橋理貴特任准教授(開発当時)、アジア感染症研究拠点・山本瑞生特任講師)、東京大学医学系研究科(Moi Meng Ling教授)、早稲田大学(浜田道昭教授)と共同で進めてきました。デングウイルス感染症はワクチン開発が進んでいる一方で、未だ有効な予防薬、治療薬がないウイルス感染症です。

 DENVは大きく分けて4つの種類(DENV1~DENV4の血清型)が存在しますが、全ての血清型に対して、DENV膜タンパク質に構造相補性で結合するRNAアプタマーを、人工的なウイルス様粒子(VLP,virus-like particle)を標的にした分取方法(VLP-SELEX※9)で作成し、さらにDENV由来のRNAを塩基配列相補性で分解に導くsiRNAを開発いたしました。

 これらの核酸分子を1分子として結合させることで、DENVに結合し、DENV感染と共に細胞内に侵入することでウイルス由来のRNAを感染した細胞内で分解する多機能核酸分子「キメラ核酸(siRNA-aptamer複合体)」を開発し、その有効性を疑似的な感染評価系及び実際のウイルス感染評価系を用いて評価してまいりましたが、その結果、キメラ核酸はDENVの増殖を強く抑制できることが分かりました。

 また、複数存在する血清型に対しても有効であることを示唆する結果も得られております。本分子の開発戦略は、DENV以外のウイルスにも適応できるものであり、幅広いウイルス感染症の予防及び治療分子の迅速な開発に新たな選択肢を提供することが期待できると考えており、開発を進めております。

 これらの結果は、2024年12月25日にNucleic Acids Research Molecular Medicineに掲載されております※10

 

※9:Takahashi M, Amano R, et al.: Nucleic acid ligands act as a PAM and agonist depending on the intrinsic ligand binding state of P2RY2. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 118 No. 18 e2019497118 (2021).

 

※10:Amano R, Takahashi M, et al.: A chimeric RNA consisting of siRNA and aptamer for inhibiting dengue virus replication. NAR Molecular Medicine. 1(4):ugae025 (2024).

 

③アプタマー修飾脂質ナノ粒子を利用した核酸医薬の技術開発

各種疾患における治療標的組織に対して医薬品を効率的に送達する汎用的なDDS技術の開発が世界的に大きな課題となっております。

 疾患の標的遺伝子に作用する核酸医薬は、病変を示す標的組織への効率的なDDSが必要となります。そのDDS実現に有効な手段の1つとして脂質ナノ粒子(Lipid nanopartiole,LNP)の利用が注目されておりますが、LNPだけでは送達組織の指向性を制御することが困難とされております。

 この課題を克服するため当社では、標的に対する高い結合活性と化学修飾が容易であるというアプタマーの利点を活かして、LNPの表面に標的指向性アプタマーを結合させることで、LNPのみでは送達が困難である脳などの組織への核酸医薬の送達を可能にするDDS技術の開発に成功いたしました。

 今後、DDSを目的とした種々のアプタマーを開発することで神経変性疾患やがんなどの難治性疾患に対する核酸創薬を実現するプラットフォーム技術として確立していきます。

 なお、本取り組み及び成果については、2025年6月に特許出願をするとともに、日本核酸医薬学会第10回年会にて口頭発表に採択され、成果報告を実施しております。

 

(二)製剤化技術開発

 当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(PEOZ)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出し、2024年4月に特許出願をいたしました。

 さらに、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結し、味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPを利用して、免疫グロプリンの部分タンパク質であるFc領域に対して核酸アプタマーを共有結合させて、血中半減期の飛躍的な延長に成功し、2025年3月に特許出願をいたしました。

 本技術により、核酸アプタマーが抗体医薬と同等の血中滞留性を獲得できれば、アプタマー医薬品の開発が飛躍的に発展するものと考えております。なお、味の素株式会社との共同研究契約は2025年3月31日に終了しております。

 

共同研究事業

 

(イ)化粧品アプタマー事業

 三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施してまいりました。

 紫外線やストレスなどが引き金となり過剰分泌されることでシワ形成やたるみを引き起こす原因となる可能性がある、免疫系の重要な細胞である好中球から分泌されるエラスターゼ(タンパク質分解酵素)を阻害するアプタマー(抗好中球エラスターゼアプタマー)の創製・開発に成功しており、日本国特許庁に対して、2025年1月に共同で特許出願をいたしました。先方とは引き続き実用化に向けた検討を進めております。

 

(ロ)サウジアラビア事業

 サウジアラビア政府の招聘により、当社代表取締役社長中村義一は2024年11月に首都リヤドで開催されたRiyadh Global Medical Biotechnology Summit(RGMBS)2024で講演を行い、キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC:King Abdullah International Medical Research Center)とアプタマーを使った基礎研究や臨床試験等に関するMOUを締結いたしました(2024年11月)。現在、当社とKAIMRCとの間で、本件に関する事業提携の可能性を検討しております。

 

世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向

 

 Macugenは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬(Lucentis、Eylea、Avastin等)が開発されて、現在、Macugenはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenの成功の後、20年間、アプタマー医薬品の開発は停滞しましたが、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国FDAは製造を承認しました。IZERVAYTMを開発したIveric Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。

 MacugenやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも眼科疾患に対して奏功したことから、アプタマーは眼科疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが示唆されました。眼は閉鎖系の小さな器官であるため硝子体内投与に必要な薬剤量が少なく、全身への薬剤の暴露が少なく安全性にも優れているため、眼科疾患に対する新薬の開発はアプタマーに最適な疾患だと考えております。

 当社のACH治療薬開発におけるumedaptanib pegolの全身投与は、アプタマーの全身投与としては世界初の成功事例(POC)となるもので、今後は、眼科疾患にとどまらず、全身性のアプタマー医薬品の開発が推進されるものと期待するところです。

 

 これらの結果、当中間会計期間において、事業収益の計上はありません(前年同期の事業収益は2百万円)。事業費用として研究開発費を333百万円、販売費及び一般管理費を204百万円計上し、営業損失は538百万円(前年同期の営業損失は512百万円)となりました。

 また、営業外収益として、コンピューター科学を応用した技術開発を目的としたJST委託事業の研究課題成果に対して高評価が得られたことによる1年間の追加支援の助成や量子計算技術と人工知能を組み合わせた技術の活用により、医薬品創製プラットフォームの確立を目的としたNEDO委託事業等による助成金収入18百万円を計上した一方で、営業外費用として、第18回新株予約権乃至第20回新株予約権の発行及び第18回新株予約権の行使に伴う株式交付費10百万円等を計上したことにより、経常損失は513百万円(前年同期の経常損失は479百万円)となりました。これにより中間純損失は514百万円(前年同期の中間純損失は479百万円)となりました。

 また、当社は創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 ② 財政状態に関する説明

  (イ)資産の部

 当中間会計期間末における総資産は、前事業年度末に比べて182百万円増加し、3,367百万円となりました。これは有価証券が100百万円、現金及び預金が84百万円増加したこと等によるものです。なお、当中間会計期間末において保有している有価証券は、第18回新株予約権等により調達した資金の一部について、研究開発への充当時期まで、一定以上の格付けが付された金融商品で元本が毀損するリスクを抑えて運用することを目的としたものです。

 

(ロ)負債の部

 当中間会計期間末における負債は、前事業年度末に比べて10百万円減少し、131百万円となりました。これは未払金が24百万円、未払法人税等が12百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 

(ハ)純資産の部

当中間会計期間末における純資産は、前事業年度末に比べて192百万円増加し、3,236百万円となりました。これは、第18回新株予約権の行使に伴い、資本金及び資本準備金がそれぞれ353百万円増加した一方で、中間純損失514百万円を計上したこと等により、利益剰余金が同額減少したことによるものです。

 

 (2)キャッシュ・フローの状況

 当中間会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比較し84百万円増加し1,921百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は502百万円(前年同期は475百万円の支出)となりました。主な資金減少要因は、税引前中間純損失513百万円によるものです。

 

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は109百万円(前年同期は231百万円の支出)となりました。資金減少要因は、有価証券の増加額100百万円、有形固定資産の取得による支出9百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は696百万円(前年同期は372百万円の収入)となりました。資金増加要因は、第18回新株予約権が行使されたことに伴う株式の発行による収入703百万円によるものです。

 

 (3)会計上の見積り及び見積りに用いた仮定

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

 (4)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当中間会計期間において、当社が対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

 (5)研究開発活動

 当中間会計期間の研究開発費の総額は333百万円であります。

 なお、当中間会計期間において、2025年6月20日に提出の有価証券報告書に記載した研究開発活動(研究開発に関する活動の状況(戦略、成果、特徴、並びに体制)について、新薬候補化合物の主な開発状況)に関し重要な変更はありません。