売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E31851 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間末日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況

当第3四半期累計期間において当社は、新規がん免疫治療薬の創出を目指して研究開発を推進いたしました。

 

細胞医薬

〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕

BP2201(iPS-NKT)は、がん細胞の殺傷を含め多面的な抗腫瘍効果をもつナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1を、iPS細胞技術を使って大量製造し、がん治療に用いる新規の他家細胞医薬候補です。

がん治療は、患者自身または健常人から採取したT細胞に、がんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を付加しがん細胞殺傷能を高めたCAR-T細胞*2が、新しいがん治療医薬として加わり、新しい時代に入りました。血液がんで患者自身から採取したT細胞を遺伝子改変したCAR-T細胞製品は、すでに複数承認されており、現在はより機能を高めた次世代のCAR-T細胞の開発が進められています。当社は、ここで用いるT細胞として、健常人ドナー由来のiPS細胞から作製したNKT細胞を用いることで差別化されたCAR-T細胞(CAR-iPSNKT)を開発しています。

これまでに当社は、開発元の国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)からのiPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許(日米欧で登録済み)の独占使用権の取得や、マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる製造法の構築、遺伝子編集技術の導入等を進めるとともに、国立大学法人千葉大学で頭頸部がん患者を対象とした医師主導の第1相試験(2020年6月開始)が行われています。本治験は順調に進んでおり、臨床上の安全性における問題も報告されていません。

このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台となり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。

 

〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕

BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。HER2を発現する固形がんが対象となり、2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。

 

これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301 では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。

 

  抗体医薬

抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39とTIM-3を共発現する免疫細胞において同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。

 

BP1202に関しては、特定のがん種および腫瘍組織でがん免疫に強力な抑制をかける制御性T細胞(Treg)でのCD39の高発現を確認していることから、がん細胞およびTregを選択的に排除する機能を加える改変を施しました。また、BP1212の標的の組み合わせは、ファースト・イン・クラス(同じカテゴリーの中で最初に認可された新薬のこと)を狙うものとなります。

これらにおいては非臨床段階でのコンセプト証明に至っております。

 

    がんワクチン

〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕

BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを目印にがん細胞を殺傷するT細胞をペプチド単体よりもはるかに多く誘導することを、担がんマウスモデルで証明しました。

 

〔がんペプチドワクチンGRN-1201〕

GRN-1201は、欧米人に多いHLA*5-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。2022年5月に米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験の早期中止を決定し、当初の治験対象と試験プロトコルを見直し、新たに臨床試験を開始するための開発パートナーを模索しております。

 

 この結果、当第3四半期累計期間におきましては、営業損失は947,173千円(前年同期の営業損失は1,218,371千円)、経常損失は947,580千円(前年同期の経常損失は1,223,957千円)、四半期純損失は953,765千円(前年同期の四半期純損失は1,225,382千円)となりました。

 なお、当社は単一事業であり、セグメントは「医薬品開発事業」でありますので、セグメントごとの記載はしておりません。

 

<語句説明>

*1(NKT細胞)

 ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。

 

*2(CAR-T細胞)

 Chimeric Antigen Receptor T-cell:キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入したもの。

 

*3(免疫チェックポイント分子)

 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。

 

*4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン

 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、そのなかにはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質名ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる

 

*5(HLA)

 Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。

 

(2)財政状態の状況

(資産)

当第3四半期会計期間末における総資産は前事業年度末より272,872千円減少1,428,572千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発に関連する支出等で234,026千円減少したことが主な要因であります。

 

(負債)

当第3四半期会計期間末における負債は前事業年度末より521,915千円増加655,819千円となりました。これは、社債が500,000千円増加したことが主な要因であります。

 

(純資産)

当第3四半期会計期間末における純資産は前事業年度末より794,787千円減少772,753千円となりました。これは、四半期純損失953,765千円を計上したことが主な要因であります。

以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の90.9%から52.4%となりました。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期累計期間において、重要な変更および新たに生じた課題はありません。

 

(4)研究開発活動

当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は647,578千円であります。

なお、当第3四半期累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。